ANTIQUE JAPANESE RADIO/日本の古いラジオ

written by Koji HAYASHI, Ibaraki JAPAN

Technical Report on Tube Tester TV7/U/真空管試験器の技術報告

Basic/基本
Application/応用
Suppliment Data/追補データ
Appendix/付録

Tube Checker TV7/U/真空管チェッカーTV7/U


PART 2 Applications/応用編

2nd edition (2007.1.27)-(2010.5.3)

TV7U/TV7UAp.html

 

ここでは,応用編として,マニュアルに記載されていない球を測る方法,測定例を紹介します。また,安心して測定できる球や,測ると危ない球,テスト条件の改善法,gmのばらつきの原因について考察しました。さらに,異常の発見に役立つ情報寿命の判定法を経験的な話としてまとめました。

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Contents/目次

5. Measurement of New Tubes/新しい球の測定

5.1 Socket Adapter/ソケットのアダプタ

5.2 Select Heater-Voltage/ヒータ電圧の選択

5.3 Connect Base-pins/ベースピン接続

5.4 Measurement Condition and Judgement for Rectifier/整流管の測定条件と判定

5.5 Measurement Condition and Judgement for Amplifier Tube/増幅管の測定条件と判定

5.6 Measurement Example of 6JS6A/測定例:6JS6A

6. Error Evaluation of gm measurement/gm測定精度の評価

6.1 Low mu Power Triode -6AS7-G/低μ3極出力管

6.2 High mu Voltage Amp Triode -12AX7/6AV6/高μ3極管

6.3 High gm Power Pentode -6BQ5/高gm5極管

6.4 Small Beam Power Tube -6AQ5/小型ビーム出力管

6.5 Large Beam Power Tube -25E5/高gmビーム出力管

7. Safety of the measurement/測定の安全性

7.1 Tubes Measured Safely/安心して測定できる球

7.2 Safty of Battery Tubes/電池管の安全性

7.3 Improvement of Test Condition/テスト条件の改善

8. Reason of gm Measurement error/gmのバラツキの原因

8.1 Insufficient Ageing/エージング不足

8.2 Differences among Tube Makers/メーカ格差

8.3 Error of Pair Tube/ペア球の誤差

9. Find Abnormals/異常の発見

9.1 Brighten Heater/ヒータの輝き

9.2 Short Test/ショート・テスト

9.3 Abnomal Sign in gm Measurement/gm測定時の異常兆候

9.4 Gas Test/ガス・テスト

9.5 Judgement on Life-time/寿命の判定

10. Final Comments/10.おわりに

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5. Measurement of New Tubes/新しい球の測定

記載されていない球は,このままではチェックできません。日本独自の古典管やJIS名の国産管は全て該当します。また,1962年以降の米国球も例外ではありません。

5.1 Socket Adapter/ソケットのアダプタ

(1) Exchange Adapter/変換アダプタ

(1)欧州古典管(UFソケットなど),(2)欧州MT(リムロック),1960年以降に新しくできたベースのうち小型の(3)ニューヴィスタ,(4)シールド筒足付きの一部のサブMT管(6D-HH12,13など),などは,8ピン以下ですので,これらのソケットとUSオクタル用プラグあるいは9ピンMT用プラグと結線するだけで簡単にアダプタが作れます。

私は戦時中の国産UFベース球をテストするためUF-UXアダプタを作りました。UFソケットが入手できなくても,ウェファ型のUZソケットを裏返しに用いて,1本だけ工夫すればUFに合せることができます。

(2) Adapter Box/外付けアダプタ

一方,新しいベースのうち,(1)ノバー,(2)マグノーバルは9ピンMT用プラグを用いた変換アダプタも製作可能ですが,大電力管が多くお勧めできません。9ピン以上の球には(3)欧州型小型10ピンMT管(6AB9など),(4)シルヴァニア型小型10ピンMT管(6C9など)の2種,また(5)コンパクトロンは12ピンで対応できません。特に(5)はTV用水平偏向出力管6JE6A40KG6A6JS6Aや新型オーディオ用出力管(50H-B26,50C-A10)など興味ある大出力管が多数含まれています。そこで,丈夫なUSオクタル用プラグを用いて(1)(2)(5)用の外付けアダプタを作りました。別シャーシに各ソケットを取り付け,8本のリード線を12個の陸軍端子のいずれかに手動で切り換えるものです。端子の一部が裸になりますので,配線を変えるときは感電やショートを防ぐために一度オクタル・プラグをはずす用心が必要です。これにより,従来不可能だった21JS6A31JS6A40KG6Aなどの中古球が面白いように測定できます。

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5.2 Select Heater-Voltage/ヒータ電圧の選択

ヒータ電圧が本器の切り換えスイッチのレンジと一致する球は,何も問題が無い様に見えますが,本器の実際の供給電圧は表2に示すように高めであり,例えば6.3Vでは,許容誤差は6.2〜6.8Vで,規格の±10%以内ですが,小電流管では8%程オーバーし,また大電流管では10%以上ドロップすることも珍しくありません。実際,6CB5A(6.3V,2.5A)は7.5Vに設定するよう指示されています。計測前にLINE電圧を調整してヒータ電圧をうまく合せても,テスト時にはプレート電流が流れると同時にヒータ電圧もドロップしますので,あまり意味がありません。

一方,TVなどの新型トランスレス球は該当する電圧レンジがなく,さらに20V以上は300mA巻線ですので450mA系や600mA系は電圧降下が大きくなります。管球メーカの規格ではヒータ電圧は誤差10%が許されるので,例えば8B8(8.0V,600mA)の例では,7.5Vを選択すればその他変更する必要は無いと思われます。一方,40KG6A(40V,300mA)では35V(-12.5%)と50V(+25%)しか選択できません。35Vレンジの場合は,電圧降下のため実質30V程度となりエミッションが低下しますので,棄却値の補正が必要です。また50Vレンジの場合は,ヒータ電圧が規定値になるまでLINEつまみで電源供給電圧を下げますが,バイアス,プレート,スクリーン電圧も同時に下がりますので,バイアスと棄却値の補正が必要です。

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5.3 Connect Base-pins/ベースピン接続

新型の米国管や国産管は,管球メーカのマニュアルでピン配置を調べます。ヒータピンだけは本器特有の記号の位置(表5参照)にセットします。どうしても,ヒータが点灯しない場合,目で確かめることのできないピンチステム(つまみステム,バタフライ)のGT管やメタル管は,断線を疑う前に今一度あらゆる資料を動員して確認しましょう。時には,マニュアルの誤りを発見することがあります。

Tabel 5 Heater pin switch/表5.ヒーターピン・スイッチ

Tube pin number/真空管ヒータピン番号

1 2 3 4 5 6 7 8 9

pin select switch 1/ピン選択スイッチ1

B C D E F G H J K

pin select switch 2/ピン選択スイッチ2

R S T U V W X Y Z

なお,戦後の一時期の国産UX,UY,UZ,Utソケットの球は,粗製濫造というよりは,もともとピン間隔の規格自身が米国球と若干異なっていたため,ピンの先端しか入らない球,最悪の場合はどれも入らない球もあります。今日でも流通している国産のステアタイト製UYソケットの一部には米国系の球や国産UY-807などが入らないものがあります。この場合,無理に差込むと壊れますが,球の頭を手でおさえながらピンの先端だけをソケットの電極に入れて接触させて(サーカスの如く)測れば何とかなります。

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5.4 Measurement Condition and Judgement for Rectifier/整流管の測定条件と判定

本器で行っている整流管のエミッション効率は,管種毎にシャント抵抗値を変えるため指示値は相対スケールとなっています。本器では,ほとんどの球について新品正常球の分布中心値をメータ中央(60目盛)に集め,棄却値をその2/3(66.7%)の40目盛に設定しているようです。表6参照。したがって,新品は棄却値の1.5倍を指示し,劣化が進むほど棄却値に近付いていくようです。棄却値を下回る球は,経験上相当劣化した球で,外観上もガラスやプレートの変色,ゲッター膜が薄い,カソード被膜が飛散している,などの痕跡があります。

Table 6 Relationship between Reject Value and Nomal Value in Emission Efficiency/

表6.エミッション効率の棄却値と正常値の関係

Nomal Value/

正常値

Reject Value/

棄却値

Tube Type/

球の種類

Reject Value x2

棄却値の2倍

50% of Nomal Value/

正常値の-50%

6SQ7(d)

Lessthan Reject Value x1.5

棄却値の1.5倍以下

66.6% of Nomal Value/

正常値の66.6%

6X5GT,6X4,6CA4,35W4,

6AX4GT,6W4GT,5AR4

Lessthan Reject Value x1.2

棄却値の1.2倍以下

83% of Nomal Value/

正常値の83%

5U4G,5V4G,5Y3GT,5R4,80,84

6H6,6AV6(d)

データ・ブック未掲載の新型管や国産球は,測定条件と棄却値の設定が必要です。測定データを整理した結果,シャント抵抗値SはパービアンスKと一定の関係(非線形曲線ですが)があることが判りました。データ・ブックを見ると判るように,Sの値は

80系(K=0.24〜0.58)はS=0,

5AR4/GZ34(K=3.9)がS=70で,

ほとんどの球はその間の値を取ります。

パービアンスKは,球メーカのデータ・ブックにEb(DC)-Ib曲線が出ていれば求めることができます。またGEのデータ・ブックではDrop Voltageとして出力電流Ibに対するドロップ電圧Ebが記されていますが,同じように使えます。パラメータが入手できない場合には,類似球の測定条件で代用しますが,管種が限られており動作条件も単純ですから,適当に設定しても十分測定できます。

また,整流管は同じ名前でも規格に何度か改良が加えられた球が多く(特に1950年代後半には),パービアンスは2倍程度異なることもあります。そのような例として805U4G5AR4などが有名です。いつの時代の球かで棄却値にも異なってきますので製造年代にも注意を払う必要があります。

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5.5 Measurement Condition and Judgement for Amplifier Tube/増幅管の測定条件と判定

増幅管は大きく分けて,3極管,4-5極管の2つで,6-7極管の多くは3極管接続で測定します。プレート電源,スクリーン電源は固定ですので,測定条件はバイアス値とレンジ(信号源電圧が連動)の設定です。指示値は整流管のエミッション効率測定とは異なって絶対値であり,メータの中心には位置せず2つのレンジにまたがることもしばしばあります。

 

Table 7 Relationship between Reject Value and Nomal Value in gm (Mutual Conductance)/

表7.gmの棄却値と正常値の関係

Nomal Value/

正常値

Reject Value/

棄却値

Tube Type/

球の種類

b-range

Tube Type/

球の種類

c-range

Tube Type/

球の種類

d-range

Reject Value x3

棄却値の3倍

33% of Nomal Value/

正常値の33%

(Low Mu) 6J5, 6DE7(t)

(Low Mu) 76, 12BH7A

Reject Value x2.5

棄却値の2.5倍

40% of Nomal Value/

正常値の40%

(Vari-Mu) 6SD7

Reject Value x2.25

棄却値の2.25倍

45% of Nomal Value/

正常値の45%

(Po Pentode) 6AR5, 42

(Po Triode) 6S4A

Reject Value x2

棄却値の2倍

50% of Nomal Value/

正常値の50%

(Converter) b/c6K8

(Po Pentode) 42, 6F6, 6AK6, 3A4, 3S4, 3Q4,

(Vol Amp) 6C6, 6SJ7, 6J7, 24, 6AU6

(Vari-Mu) 6D6, 6SK7, 1T4

(Low Mu) 6SN7GT, 6FQ7, 6CG7, 6EW7(T)

(High Mu)6SL7, 6SQ7(T), 6F5, 6SF5, 6AB8(T)

(Converter) b/c6K8, 6SA7

(Po Pentode) 6BQ5, 6AB8(p), 6BM8(p)

(Po Beam) 6AQ5, 807, 6BQ6-GT, 6V6,

(Po Triode) 6CK4, 6AS7-G

(Vol Amp) 6SH7

(Vari-Mu) 6BA6, 12BA6

(High Mu)6AQ8

(Po Pentode) 6AG7

(Po Triode) 6BX7

 

Reject Value x1.9

棄却値の1.9倍以下

53% of Nomal Value/

正常値の53%

(PoTriode) 2A3

(PoTriode) 6CS7(a)

Reject Value x1.8

棄却値の1.8倍以下

55% of Nomal Value/

正常値の55%

(PoTriode) 12A

(VariMu) 6BD6

(PoTriode) 6AH4GT

(Pentode) 6CL6, 6GK6

(Beam) 6CB5A, 6EM5, 6BK5, 5881,

(PoTriode) 12B4A

Reject Value x1.6

棄却値の1.6倍以下

62.5% of Nomal Value/

正常値の62.5%

(LowMu) 6CS7(t)

(Pentode) 6CW5/EL86, 12BY7A, 6CA7/EL34,

(PoTriode) 6DE7(a)

(V.Amp) 6AC7-GT

Reject Value x1.5

棄却値の1.5倍以下

66.6% of Nomal Value/

正常値の66.6%

(HighMu) 6BM8(t), 12AX7, 6AV6(t), 12AV6(t)

(HighMu) 12AT7

(conv) 6BE6, 12BE6

(Beam) 25E5/PL36, 6CN6/EL38, 6DQ5, 6Y6-G, 6BG6-G, 35C5, 50C5, 5763

(PoTriode) 6EW7(a)

(Notations) (t) Triode, (a) Power-Triode and (p) Pentode for Combination Tube

(注)複合管の名前の後の記号はそれぞれ(t)3極ユニット, (a)3極出力ユニット, (p)5極ユニットを表す。

棄却値の設定は品種によりバラバラで,おおよそ新品正常球の分布中心の1/3〜1/1.5倍(33〜67%)に設定されているようです。球種毎にグループを作っているようにも見えます(表参照)。通常の電圧増幅管はもっぱら1/2倍(50%)に設定されているようです。1/3倍(33%)という例も少数ですが(例えば,7612BH7Aなど)見受けられます。一方,同じ増幅管でも大電流管の場合は,1/1.5倍(67%)程度と差が小さくなっています。gmの低下は出力に大きく響くようです。私のサンプルで最も精密に測定できた例として出力管5881があります。この球はもともと高信頼管ですが,サンプルが多く52本(新品24,中古28),全部Tung-Sol社製,製造時期もほとんど同じ時期,ということもあり,ほとんど綺麗に棄却値の1.6〜1.8倍に集中しました。逆算すれば,棄却値は1/1.6〜1/1.8倍(63〜56%)で,中心を取れば1/1.7(59%)ということになります。

一方,データ・ブック未掲載の新型管や国産球は,自分で設定する必要があります。このうち,測定条件に関してはEb-Ib曲線から正式に決めることも可能です。これに必要なgm値の算出法については後で例を示します。しかし,棄却値は理論がありません。

最も簡単な方法は,米国の類似管を探すことです。球のルーツが判っていれば親戚筋の球のバイアス条件やシャント抵抗値と棄却値をそのまま用いてもある程度のチェックが可能です。どうしても参考になる球が見つからない場合には,条件を大雑把に合せてとにかく測定します。これでも,極端なエミ減の球は判定できます。さらに,確実な新品サンプルが1本あれば比較が行え,正常かどうかの区別も付きます。

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5.6 Measurement Example of 6JS6A/測定例:6JS6A

コンパクトロン管6JS6Aは1960年代前半に開発された球で,データ・ブックに掲載されてません。足が12本あり各ピン配置は,

H=(1,12),G1=5,P=CAP,G2=3/11,K=2,G3=4/10

となっています。アダプタでは,これらをオクタル8ピンに変換する必要があります。

Duodecal (12T12)

1

2

3

4

5

6

7

8

9

10

11

12

Top Cap

6JS6A Electrode

H

K

G2

G3

G1

-

-

-

-

G3

G2

H

P

Octal Adopter

1

2

3

4

5

-

-

8

Top Cap

オクタルにない9〜12ピンのうち,G2とG3は2本出ているので問題なく,H=12だけが繋ぎ代えの必要があります。一方,オクタルで未使用のピンは,6,7,8です。そこで,本体とアダプタの結線で,例えばGTG=アダプタKとすれば,完了です。

ヒータは6JS6Aの場合は6.3Vレンジ,21JS6Aの場合は20Vレンジ(実測17.9V),31JS6Aの場合は35Vレンジ(実測30.3V)としますが,特に問題はありません。

問題のバイアスと棄却条件は,6JS6AがGT管6DQ5の直系の後継管であることが判れば簡単です。データ・ブック掲載されている6DQ5の条件を借用します。

6DQ5 6.3V HS1-0430 53,D 34< P=CAP

6JS6A 6.3V JR5-0324 53,D 34< P=CAP, (GTG=COMPACTRONK)

TEST DATA of 6JS6-A Using Duodecal-Octal Adopter

Eh V

H

H

G1

P

SG (G3)

K

G3

Range

Min

Top Cap

Adopter

6DQ5

6.3

H (7)

S (2)

1

0

4

3

0

D

34

P

-

6JS6A, 21JS6A, 31JS6A Duodecal with Octal Adopter

6.3

20

35

J (8)

R (1)

5

0

3

2

4

D

34

P

Duodecal-12 = Octal-8

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6. Error Evaluation of Mutual Conductance Measurement/

gm測定精度の評価

 次に,私の測定記録を整理した結果,判った測定例をお目に掛けましょう。

6.1 Low mu Power Triode -6AS7-G/低μ3極出力管

出力用低μ3極管は,バイアス電圧の設定が17〜100目盛と広範囲で,動作条件の違いを無視して公表gm値を基準とした測定誤差を計算すると+28%〜-48%に分布しています。一方,電圧増幅用低μ3極管は,バイアス設定が17〜37目盛付近に集中しており,この誤差は+45〜-37%に分布しています。出力管の測定ではバイアスが増加するとgm値が減少するという比較的綺麗な逆比例関係が見られ,バイアス0〜35目盛で+30%〜+20%,35〜60目盛で+20%〜-10%,70目盛付近では-30%,100目盛では-50%程度となっています。この誤差は球の動作条件の違いを反映していると思われます。

一番誤差の大きかった6AS7のケース(-48%)を検討してみましょう。公表されている動作例は次の通りです。

Eb=135V,Rk=250Ω(計算するとEg=-31.25V),Ib=125mA,gm=7mA/V

これに対して,中古混じりの4社10本計20ユニット分のサンプルは,80C(換算gm=4.0mA/V,公表値の57%)付近に集中し,新品正常球の指示値は80Cであると推定されました。データ・ブックの棄却値は36C(gm=1.8mA/V)で,正常球の分布中心を72C=3.6mA/V(公表値の51%)と仮定し,その1/2に設定したものと思われます。

では本器の動作条件下でのgmを理論的に推定してみましょう。

バイアス100目盛=-40Vrms,

ドライブ電圧は5Vrms(14Vpp),

プレート電圧Ebb=150V

プレート電圧Ebb=150Vですが,大電流出力管ではプレート負荷抵抗92Ωが無視できず相当な電圧降下が生じます。

負荷直線(150Vat0mA-135Vat160mA)

ドライブ範囲:基点Eg=-40Vrmsを中心に正側と負側の半サイクル,

Eg=[-35Vrms,-45Vrms]

動作基点Eg=-40Vのプレート電圧Ebと電流Ib:Eb-Ib曲線から,Eb(-40V)=132V,Ib(-40V)=165mA。

正側半サイクルドライブ時のEbとIb:負荷直線上の点を読むことにより,Ib(-35V)=183mA,Eb(-35V)=128V,

負側半サイクルドライブ時のEbとIb:Ib(-45V)=134mA,Eb(-45V)=134V。

gm=(183-134)mA/10Vrms=4.9mA/Vと求まります。

実測値に比べてまだ約20%大きいですが,この計算ではプレート電源容量を無視しています。実際には,トランスの定格電流は160mAで,基点のIb(-40V)=165mAと正側ドライブ時のIb(-35V)=183mAでは,相当分の電圧降下が生じ,実際のgmは計算値よりも小さくなると考えられます。

この計算値を基準にとった実測値の誤差は-17%となりました。以上のようなgmの計算は,不確定要素が多くて正確な値が求まらないとしても,本器における球の動作状態を推定する上では大いに役立つと思われます。

結局,公表値と測定値の誤差は,動作条件の違いで生じていることが判ります。これを公表値に近づけるためには,本器ではバイアスをもっと小さくする必要がありますが,プレート電源の容量が足りません。

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6.2 High mu Voltage Amp Triode -12AX7/6AV6/高μ3極管

12AX7/6AV6などの高μ3極管は,バイアスが0〜15目盛前後のものが多く,公表gm値を基準とした測定誤差は-50%〜+5%に分布しています。先の低μ3極管に比べると負の方向に偏っています。原因は球自身が小電流動作でメータが十分振れる電流を流せない点にあります。本器ではメータアンプが無いので,感度不足を少しでも補うために入力に過大な5Vrmsを加え,何とグリッドの正電圧領域をドライブしています。

 12AX7は比較的良い精度を持つ例です。gmの公表値は

(1)Eb=100V,Eg=-1V,Ib=0.5mA,gm=1.25mA/V,

(2)Eb=250V,Eg=-2V,Ib=1.2mA,gm=1.6mA/V

です。本器ではEb=150Vですので(1)が近いでしょう。中古混じりの多数のサンプルの実測値は40B(換算gm=1.0mA/V)〜50B(1.25mA/V)付近に分布しています。棄却値は32B(0.8mA/V)で,正常球の中心は棄却値の1.5倍48B(1.2mA/V)に想定していると思われます。

理論的なgmを求めてみましょう。バイアス12目盛=-1.4Vrms,ドライブ電圧は5Vrms。Eg=0〜-9Vp〜0〜+5Vpと変化します。ドライブ中のグリッド電圧(実効値)は,基点が1.4Vrms,正側,負側半サイクル・ドライブで[+3.6Vrms,-6.4Vrms]となります。見掛け上の動作基点はEg=1.4x1.4=-2.0V,見掛け上のドライブ範囲は[+3Vrms,-7Vrms]となります。

プレート電流が10mA以下では負荷抵抗92Ωによる電圧降下は1Vに満たず無視できるので,Eb=150Vになります。入力5Vrmsではグリッド正電圧領域までドライブされますが,グラフはありません。一方,負側はカットオフされてしまいます。

実効値の動作基点Eg=-1.4Vのプレート電流は,特性図から,Eb=150V,Ib(-1.4V)=0.64mAと判ります。ドライブ範囲は[+3.6Vrms,-6.4Vrms]。正側半サイクルでは取り敢えず,ゼロ・バイアス電流Ib(0)=3.2mAが判ります。正の半サイクル[-1.4V〜0V]で2.56mA,負の半サイクルで0.64mA流れますので,gm=(3.2mA)/10V=0.32mA/Vと計算できます。これでは実測値(1.0〜1.25mA/V)とも合いません。実測値から逆算すれば,Ib(+3.6V)=10〜12.5mAとなり,正領域での増加分は6.8〜9.3mAと推定できます。

以上の例のように,高μ管ではバイアスが小さいため,本器のB,Cレンジでは過大入力を強いられ,動作基点以下はプレート電流がカットオフしてしまい,gmは基点より上の正のグリッド電圧の領域までのプレート電流で決まることになります。本器では,測定値が公表値に近くなるように,グリッド電流を流してまで無理をして測定条件を設定している,とも言えます。

12AX7をD(1Vrms),Eレンジ(0.5Vrms)で測定したらどうなるでしょう。バイアスと信号源電圧は最適にできますが,本器の指示値は1/2目盛,1/4目盛となって事実上測定できません。やはり,指示メータ用にアンプを内蔵していない簡易型チェッカーの宿命でしょう。

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6.3 High gm Power Pentode -6BQ5/高gm5極管

4極管,5極管は,3極管に比べてパラメータが1つ増えるのでその動作は複雑ですが,本器ではスクリーン電圧は固定で,3極管と同様にバイアス設定の自由があるだけです。5極出力管のバイアスは,水平偏向出力管のような大型管が無いので,9〜34(-1V〜-7V程度)に集中しています。(gm公表値を基準とする)測定誤差は,一般の小型出力管は-20%〜+20%に分布しておりますが,電池出力管はEbが高すぎるので+20〜+40%に分布し,また高gm管は-30〜-56%と悪くなっています。6AG7(-32%),6CL6(-39%),6CA7/EL34(-45%),6BQ5(-56%)。この測定誤差とバイアスとの関係は3極管のように単純ではありません。さらに,gmの理論値の推定では,3極管ではEb-Ib曲線の図1枚で事足りますが,5極管では少なくともEb-Ib曲線図の他に,Esgに対するEb-Ib0曲線の図が必要です。

6BQ5の例

6BQ5は,悪い測定条件(=30C)が誤差増大の原因になっています。公表値11.3mA/V(250V,250V,-7.3V)に対して,中古を含むサンプルの測定値は80〜100C(換算4〜5.0mA/V)に分布し,これでは6AQ5並です。棄却値の2倍100Cは5.0mA/Vで44%に過ぎません。

gmの理論値を求めてみましょう。本器のバイアス30目盛=-5Vrmsで,ドライブ電圧は5Vrmsです。Ebb=150V,Esgb=130V。グリッド電圧は脈流的にEg=0Vp〜14Vp〜0Vp〜0Vpとなります。動作基点(実効値)はEg=-5V,正側,負側のドライブ範囲は[0Vrms,-10Vrms]です。見掛け上の交流動作基点はピーク値Eg=-7Vで,見掛け上のドライブ範囲は[-2Vrms,-12Vrms]となります。ただし,実際には負の半サイクルは完全に打消合いゼロ・バイアスとなります。したがって,見掛け上の動作計算は大きなギャップを生じます。

Eb=Esg=250Vから150Vへの電圧スケール変換は(150/250V)=0.6,電流スケール変換は(150V/250V)3/2=0.46。Esg=150Vから123Vへの電流スケール変換(123/150)=0.82。

負荷直線は(150Vat0mA-135Vat160mA)です。Eb-Ib曲線図で250V上の負荷直線は,Eb=150V/0.6=225V,Ib=(160/0.46/0.82)=430mAですから,(250Vat0mA-225Vat430mA)となり,ほとんど垂線で近似できます。

実効値の基点はEg=-5Vです。Eb=Esg=250Vの図では,Eg(-5V)=-5x(1/0.6)=-8.3V,また,ドライブ範囲は[-0V,-10V]-->[-0V,-16.6V]となります。基点のプレート電流は,Eb-Ib曲線図(250V)からIb(-8.3V)=約37mA,Eb=Esg=143V時にはIb(*)=37x0.46=17mA,Esg=123V時には,Ib(-7V)=17x0.82=14.0mAを得ます。正の半サイクルは完全なゼロ・バイアス(DC=0V)となるので,別の図Eb-Ib0曲線より,Eb=135〜150V,Esg=123Vの電流Ib(0)=53mAが,ただちに求まります。また負の半サイクルではEg=-10/0.6=-16.6V。Ib(-16.6V)=5mAと仮定しても,Ib(-10V)=5x0.46x0.82=1.9mA。これからgmは簡単にgm=(53-1.9)/10=5.1mA/Vと求まります。これは新品の実測値5mA/Vと良い一致を示します。

上の解析から,6BQ5の測定条件30Cでは,入力が過大で負側は高μ3極管と同様にカットオフされていることがわかります。

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6.4 Small Beam Power Tube -6AQ5/小型ビーム出力管

ビーム出力管と5極出力管の違いは肩特性にあるだけで本質的な差はありません。ビーム出力管の多くはバイアスが20〜50(-3.5V〜-16V程度)に設定されており,一部0〜10のものも見受けられます。(gm公表値を基準とした)測定誤差は5極管と同様に-40%〜+25%の間に分布します。誤差の大きい例は水平偏向出力管の一部で-39%(6DQ5),-36%(25E5),また+25%に6AQ5があります。

6AQ5(21C)は+25%と上側に比較的大きく分布した例です。公表値は(1)3.7mA/V(180V,-8.5V),(2)-4.1mA/V(250V,-12.5V)があり,本器は(1)に近い条件です。多数の中古を含むサンプルの測定値は80〜100C(換算4.0〜5.0mA/V)に分布し,公表値(1)と比較した誤差は+8%〜+35%に相当します。また棄却値48Cの2倍は96C=4.8mA/V(誤差+30%)です。

では,本器の動作条件のgm値をEb=Esg=250VのEb-Ib曲線から計算で求めてみましょう。本器のバイアス21目盛=-3.5Vで,ドライブ電圧は5Vrms。Ebb=150V,Esgb=130V。グリッド電圧は脈流的にEg=0Vp〜-11.9Vp〜0Vp〜+2.1Vpとなります。動作基点(実効値)はEg=-3.5V,正側,負側のドライブ範囲は[+1.5Vrms,-8.5Vrms]です。見掛け上の交流動作基点はピーク値Eg=-4.9Vで,見掛け上のドライブ範囲は[+0.1Vrms,-9.9Vrms]となります。Eb=Esg=250Vから150Vへの電圧スケール変換は(150/250V)=0.6,電流スケール変換は(150V/250V)3/2=0.46。Esg=150Vから126Vへの電流スケール変換(126/150)=0.84。負荷直線は(150Vat0mA-135Vat160mA)で,Eb-Ib曲線図で250V上の負荷直線は,ほとんど垂線で近似できます。

さて,動作基点Eg=-3.5Vrmsは,Eb=Esg=250Vの図では,Eg(-3.5V)=-3.5x(1/0.6/0.84)=-6.9V,また,ドライブ範囲は[+1.5Vrms,-8.5Vrms]-->[+3.0Vrms,-16.9Vrms]となります。基点のプレート電流は,Eb-Ib曲線図(250V)からIb(-6.9V)=約??mA,Eb=143V,Esg=126V時には,Ib(-3.5V)=??x0.46x0.84=??mAを得ます。

正の半サイクルでは,正のグリッド電圧に対するEb-Ib曲線が必要ですが,マツダ58年版に出ています。Ib(+3.0V)=???mA。Eb=143V,Esg=123V時には,Ib(+1.5V)=???x0.46x0.84=55.2mAを得ます。また負の半サイクルではIb(-16.9V)=???,Ib(-8.5V)=??x0.46x0.84=???mA。これからgmは簡単にgm=(55.2-11.6)/10=4.36mA/Vと求まります。これは実測値と比較してやや小さい値です。

注意すべきは,正グリッド電圧領域までドライブしていることです。動作は送信管なみにグリッド電流を流していると思われます。

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6.5 Large Beam Power Tube -25E5/高gmビーム出力管

先にビーム管の測定精度(gm公表値との比)は-40%〜+25%と紹介しましたが,精度の悪い例に高gm大電流型の一部の水平偏向ビーム出力管があります。-39%(6DQ5),-36%(25E5)。

25E5/PL36(バイアス35D)はその例です。公表値14mA/V(100V,-8.5V)に対して,多数の中古を含むサンプルの測定値は60D(換算7.5mA/V)に分布し,棄却値48D(6.0mA/V)の1.25倍にすぎません。棄却値の2倍あったとしても96D(12mA/V)です。

本器のバイアス35目盛=-6.9Vrmsで,ドライブ電圧は1Vrmsです。グリッド電圧は脈流的にEg=0V〜-8.2Vp〜0〜-11.0Vpと変化します。ドライブ範囲は,実効値では[-5.9Vrms,-7.9Vrms]となります。見掛け上の交流動作基点はピーク値-9.6V,見掛け上のドライブ範囲は[-8.6Vrms,-10.6Vrms]です。

プレート電圧Ebb=150Vですが,大電流出力管のため,プレート負荷抵抗92Ωを考慮して,動作基点は負荷直線(150Vat0mA-135Vat160mA)上に置きます。しかし,結論から言うと,本器は電流が不足するため,動作開始と同時にEb,Esgはかなり下降し,この負荷直線にも従いません。トランスの電流容量は170V/150mAです。150mAを越えると急激に電圧降下が起きるものと思われます。実測で,25E5の動作時にはEb=120V,Esg=110Vとなりました。

一方,25E5の特性図はEsg=170VのものとEsg=40V〜170Vの20V間隔のIb0電流曲線が知られています。この条件で,gmを計算してみましょう。

Eb=Esg=170V時は,

Eg=6.9x1.42=-9.8V,Ib(-9.8V/170V)=295mA。

Eb-Esgスケール変換(120V/170V)3/2=0.59,

Esgスケール変換(110/120)=0.92

これを用いて,

Eb=120V,Esg=110V,Eg=-6.9Vの電流Ibは,

Ib(-6.9V)=295x0.59x0.92=160mAと計算できます。

同様に正側の半サイクルでは

Eg=-5.9-->8.4V,390mA,390x0.59x0.92=212mA,

負側の半サイクルでは

-7.9-->11.2V,270mA。270x0.59x0.92=147mA。

これより,gm=(212-147)/10=6.5mA/V

 60D(換算7.5mA/V),棄却値48D(6.0mA/V)からすると結構な一致です。

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Safety of Measurement/測定の安全性

安心して測定できる球,低電圧の電池管も測れる?,テスト条件の改善など。

7.1 Tubes Measured Safely/安心して測定できる球

本器は,私の経験では,ST管や初期のGT管など古い球に対しては,結構安定して測定でき,データ・ブックの棄却値も信頼性が高いと思います。特に整流管のエミッション・テストや増幅管のgmテストでは,棄却値付近あるいはそれ以下の球は本当にダメ球ばかりなのを経験しており,本当に重宝しています。

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7.2 Safety of Battery Tubes/電池管の安全性

一般の電池管(MT管では米国の1R5, 1T4, 1U4, 1S4, 3S4や日本のSFシリーズなど)は低電圧仕様で,最大プレート電圧は90Vや110V,最大スクリーン電圧は45Vや67.5Vのものが多いのですが,本器のテスト条件がEb150V,Esg130Vあるいは58Vなので,少なくともプレート電圧はかなりオーバーしています。しかし,テストは短時間のためか放電などの心配はないようです。MT管の電極や内部配線間のギャップは数100V以上には耐えるので,これらの最大定格はどうやらフィラメントの最大電流で規定されているようです。

しかし,極めて細いフィラメントを用いていますので測定には特別注意が必要です。通常,2極−5極複合管などのテストでは片ユニット測定後,球をさしたままピン接続を切り換えます。一般の傍熱型TV球ではピン接続に誤りがあっても大丈夫ですが,この種の球では,フィラメントに+Bがかかる接続をしてしまうと,写真のフラッシュ球のようにパッと光ってあえなく断線してしまいます。また,規格以上の高圧を掛けるので,gmはメーカ公表値より高くなります。

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7.3 Improvement of Test Condition/テスト条件の改善

本器ではデータ・ブックのテスト条件を変更する自由度は,(1)バイアスの変更(0〜-40Vの範囲),(2)入力信号振幅を変更(B,Cレンジは5Vrms,Dが1Vrms,Eが0.5Vrms),(3)プッシュ・ボタン2(Diode)を併用してEsgを130Vから58Vに下げる,の3つに限られています。

テスト条件が適正の場合は,これ以上救いようがありません。球がピキピキ音を立てる現象は,プレート電流を制限すれば改善できる可能性があります。簡単な方法としては,これまでの条件に(3)を併用れば良いのですが,棄却値も自分で変更する必要があります。一方,条件全体の変更には球の特性図の検討が必要で,簡単ではありませんが,かなり有効な場合もあります。

(1) Exaple of 6BQ5/6BQ5の例

テスト条件を変更できる例外として,同族品種が異なる条件で掲載されている場合があります。例えば,6BQ5,7189,6GK6では何故か測定条件が異なります。

6BQ5 30 C 50<

7189 10 D 46<

6GK6 10 D 47<

高gm管6BQ5は初期にデータが作られたものと思われ,古典的な6AQ5などと同列に扱われていますが,これでは明らかに過大入力です。測定結果もおもわしくなく,精度は6AQ5が99%に対して6BQ5は僅か35%です。一方新しく定義された7189や6GK6の条件では入力が1/5に減り,精度も75%に改善されています。これは,バイアス条件を変えることにより悪条件から救われた例です。ただし,6BQ5の測定ではプレート電流が小さいせいもあり,ピキピキ音を立てるようなことはありません。

 

(2) Example of 6G-B8/6G-B8の例

国産球では,High-gmの低電圧大電流管の代表格,6G-B850H-B26などは動作条件が悪く,うまく測定できませんでした。

6G-B8の場合には,新品(同一ロット9本,他1本)も中古(新品と同一ロット10本,他13本)も測定値がバラバラでした。新品球は封が無いので本当に新品かどうか真偽は不明ですが,これが正しいとすればこの原因は他にあります。6G-B8固有の特性,gmが20mA/Vと非常に高くバラツキも並大抵ではないはずですが,これに加えて不安定なダイナトロン領域が異常に大きいという特徴が影響していると思われます。本器のような低Eb,Esg条件では,プレート電圧−電流図において6G-B8の増幅管本来の負荷線の左側はほとんどダイナトロン領域となってしまいます。ところが,本器は脈流による測定なので,プレート電圧とプレート電流は半サイクル毎にゼロ点と最大点の間を往復し,その往路と復路は必ずダイナトロン曲線を辿って行くので,gmのバラツキはΔibの大きなバラツキとなって現れることになる可能性があります。

したがって,6G-B8に関する限り,正式にメーカ発表の代表特性の条件下で動作できるアンプを組んでテストしないと,本当のところは判らないと思われます。

 

(3) Example of 50H-B26/50H-B26の例

50H-B26の場合,代表特性は12GB3/25E5と類似しているので,テスト条件1(レンジとバイアスD35)で実施したところ,メータ指示は逆振れし,ヒューズ・ランプが煌々と点灯しました。その時の電極電圧は表の通りです。

逆振れはプレート電流の差がΔib=ib(+)-ib(-)<0となっている時に起きるので,ib(+)<ib(-)を意味しています。また,バイアスを深くしたテスト2と3では指示は正になりますが,これでは値が小さすぎます。テスト2ではバイアスをちょっとでも低くすると逆振れになってしまいます。原因はどうやら発振しているようです。

この球はG1とKがそれぞれ2本出ているのですが,測定中は各1本がアダプタ引き出し口で無接続ですので内部ではアンテナになってしまいます。本体とアダプタを結ぶリード線のうち,プレート線を他と離し,またKとG1を互いに巻き付けて納りました。Esgを下げてテストしたところ表のようにようやく測定できました。しかし,Esgをフルに供給すると発振は止りません。K-P間に小容量のCを入れると良いそうですが,うまくいきませんでした。

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8. Reason of gm Mearurement Error/gmのバラツキの原因

gmのばらつきの原因について考えましょう。

8.1 Insuffitient Ageing/エージング不足

1996年に,ロシア製の6BQ5を10本バラで購入しましたが,gmの分布がバラバラで,指示値が安定しないものもありました。国産管も含めて分布図を書いみると,本当にバラバラに分布していることが判ります。ペアの選別外品か,あるいはエージング不足だと思われました。

また英国Colomerの6CW5/EL86は10本購入したのですが,ゲッタ飛ばしに失敗した球と思われ,頂部のゲッタが蒸発時にベース底部にも廻り込んでガラス表面に蒸着しております。gmの分布はまともですが,数本がやはり不安定で低めの指示を出しました。エージング不足のようです。エージングを行えばもっと分布が集中すると思われます。

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8.2 Differences among Tube Makers/メーカ格差

国産管12G-B36G-B3Aのgmは外来品種の25E5とほぼ同じ分布を示し,同一構造・同一品種であることを裏付けています。この中で,東芝を始めとする各社の製品中,NEC製だけが製造時期によらず飛び抜けて高い値を示し,後継品種の12G-B7でも同様の傾向にあることが判りました。NECは,独自の規格で製造していたのではないかと疑いたくなります。実際,NECにはTV球の製造では使用開始後のgm低下を考慮し,始めからgmを引き上げて製造したとの記録があります。

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8.3 Error of Pair Tube/ペア球の誤差

オーディオ用のペア球はパラメータが類似しているだけでは不足で,経年変化の特性も同じ必要があるため,かつての国内管球メーカは同一ロットから選別を行っていました。現在でも,良心的な店では原則としてそのような選別をしていると聞きます。VT7/Uで測るとそのようなペア球のgmの一致度はどのようなになるでしょう?

3極管では,NECが選別したと思われる6R-A8の5ペア例の誤差は,0%,3.2%,3.1%,3.2%,2.1%と分布し,あるお店が選別した東芝のHi-S球6R-A3の2ペアの誤差は,6.5%,6.9%でした。後者は自己バイアス条件(Ib100V,Rk200Ω)でプレート電流が69.5mAに一致する球を同一ロットから揃えたものです。ちょっと,誤差が大きいと思いますが,これは6R-A3本来のバラツキの多さも原因しています。自己バイアスで動作させれば,gmの誤差は相対的に減少するので問題はないでしょう。昔の球メーカは自己バイアスを勧めていました。

5極管では,同じ店で,6R-P15の4本ペアが2組があります。Eb250V,Ib47mA,Esg250V,Isg6mA,Rk150Ωの自己バイアスで,異なるロットのものが混ざっています。1組目の誤差は最大3%以内,もう1組は2.1%以内となっていました。

VT7/Uは,以上のようにペア球のgmチェックには使えますが,ペア球自身の選別には補助的な道具としてしか使えないと思います。

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9. Finding Abnomals and Judgement of Life-time/異常の発見と寿命の判定

異常の発見に役立つ情報,ヒータの輝き方,ショート・テスト時のランプの点き具合,gm測定時やガス測定時のメータの微妙な動き,ガス測定時のグローなどと,寿命の判定法を経験的な話としてまとめました。

9.1 Brighten Heater/ヒータの輝き

(1) Antique Tube - Increase Heater Power Slow/古典管は徐々に点灯

同じ種類の球を数多くテストする時には,各スイッチを万年床のように一定にしたまま,球だけを抜き挿ししていますが,ヒータ電圧だけは,本当は球を挿した後にゼロから徐々に上げていき,レンジと点灯具合を注意深く見守ります。特に希少価値のある超古典管はなおさらです。フィラメント/ヒータ電圧を段階的に上げてやり,フィラメントや各電極の機械歪を徐々に延ばしてやる必要があります。また,いきなり動作させず一日位点灯しておくと,フィラメントやカソードの酸化物陰極材料が活性化し良いといわれています。さもないと,いきなり陰極に大電流を流すと酸化物陰極材料の内部組織の破壊や剥離を起こすこともあるようです。しかし,本器では同時に1本しか点灯できないので,多数の場合には別の点火装置を用意する必要があります。

(2) Brighness in Abnomal Tubes/事故球の点灯具合

TV中古球には事故球も含まれています。何本か折曲げて入っているヒータ線が途中でショートした事故球(40KG6Aなどの大電力管)は一部に大電流が流れるため煌々と輝き,きれいです。本器では,ヒータにセンタ・タップがある双3極管は直列点火を採用しています。したがって,点灯しない場合は片ユニットの断線で,スイッチでヒータ・ピンを切り換えると原因が特定できます。逆に,片ユニットが異様に輝いているケースは,他ユニットのヒータがショートしています。ヒータ・ピンを接続しなおして,そのユニットだけむりやり点灯させると一瞬パッと燃え尽きて一巻の終りになります。内部に余分なガスが発生しますから,片ユニットだけ使用する場合には良くありません。

(3) Lost Name Tube/名前が消えた同族管

名前が消えた古典管UZ-57,58(UZ-)6C6,6D6は外見上区別がつきません。一般にトップ・グリッドへのリード線が直線(57,6C6)と巻線(58,6D6)の違いがありますが,ヒータの違いは点灯して明るさで判定します。名前の消えたマジック・アイ6E512Z-E8もこれで判定する以外方法がありません。これら中古球では誤って使われエミ源になっているケースが見受けられました。またTV用MT管の中には,同じ顔をしていて6.3V,300mA,450mA,600mA系と製造されているものが多々あり,一度名前が消えてしまうと判別に苦しみます。この場合も,ヒータ点火で,例えば6AQ89AQ8の区別が付きます。

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9.2 Short Test/ショート・テスト

(1)Tubes with no Bright/点灯しない球

ショート・テストは必ず実施しています。ロータリ・スイッチをぐるぐる廻すと,幾つかのランプは瞬間的に必ず光ります。これは健康の印で,光らない球は足の接触不良や断線などが考えられます。足は良く錆び取りをして再度挑戦します。国産の古いラジオ用ST管はベークライト製ベースのセメントが取れて弛んでいることが多く,ベース内部で半田が取れて断線していることもしばしばです。

(2)Abnomal Tubes/事故球

本当にショートの例も幾つかありました。国産トランスレス整流管24Z-K2の例では,ヒータ無点火時には正常ですが加熱が進むとショート(K-H)を示しました。カソードの一部がヒータにタッチし赤熱しているのが見れます。これは致命傷です。国産オーディオ管6CA7の例では,箱入りの美しい球でしたがショート(全部点灯G2-G3)を示しました。調べたところ,ベース床部のピン2-3間が炭化しており,中古事故球だった訳です。炭化した部分を削り取りましたが,まだ(H-P)ショートは取れません。ベースの接着剤を剥がして裏側も削れば生き返るかもしれません。

(3)Brighness caused by Induced Current/誘導による点灯

電極が複数のピンに接続されている球は,テスト時に宙ぶらりんになるピンを生じ交流的に高インピーダンスになるため,誤診断の原因となるようです。6BQ5/EL84系(6BQ5,7189/A)では,海外製品は無事通過しますが国産は6R-P15も含めて新品でもショート(G1-K)を示します。6CW5/EL86は国産に加えて欧州産(Colomer)もひっかかりました。他に日本独自の50R-P2550R-P28なども同様です。また,国産の3極管6R-A8, 6R-A3(後期モデル2,3)はショート(G2,G3)を示します。これらは不良球ではありません。

(4)Over Maximum Heater Voltage/耐圧オーバー

6Z-P1など国産古典管はAC45Vが規格で,ショート・テスト時のAC100V印加はオーバースペックです。RCAのマニュアルにもチューブテスタのショート・テストは必要以上に感度が良すぎるので注意と書かれています。ショート・テストをクリアできなくても捨ててはいけません。また,使い古したラジオ球はテスト開始時にショートを示すものでも,ヒータ加熱が進むとランプが消えクリアできる球がかなりあります。ゲッタが加熱され電極間のゴミやガスが多少清掃されるのでしょう。

(5)Tubes with Beat Sound/唸る球

ショート・テストではある特定のスイッチ位置で球から唸りが聞こえてくることがあります。これはAC100Vに同期して電極が振動を起こしているのです。電極に弛みがある証拠で,こういった球は外来の振動を拾うばかりでなく,ガスが出やすく寿命も短かくなるので要注意です。

(6)Bright intermittent/時々点灯の球

ショート・テストは機械的に静的な条件で実施しますが,中には振動や加熱で電極がタッチする悪質な球もあります。手持ちの例では,初期の国産水平偏向管6DQ5の1本にこの種の事故球がありました。電極のガタが多く自分のヒータ通電で振動を起こします。ショート・テストをクリアしgmの測定を始めると,突然メータ指示がゼロになります。驚いて測定を止め,叩き直すと正常に戻ります。直接の原因は(K-G1)のショートですが,電極のガタによるものでした。またテスト済みの正常中古球として譲り受けた古典管の例では,始めからショートを起こしており首をかしげていましたが,これも機械振動でタッチしたもで,何回も叩いてテストを繰り返したら正常になる場合もあることが判りました。これらの球は使えません。

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9.3 Abnormal Sign in gm Mearurement/gm測定時の異常兆候

(1)Increase gm value continuously/指示値が上昇し続ける

測定中,増加傾向を示し飽和特性を示してくれないケースが多くあります。長くボタンを押し続けることは球を壊すので禁止されていますが,まだまだ飽和には至りません。この種の球はテストを止めて対策を考えねばなりません。

原因は,測定条件の設定不良か,あるいは球のエミッション不良などが考えられます。新品球でもエージングが不完全あるいは長期保管中に劣化したエミッション不良あるいは安定しない球があります。

指示値が上昇し続ける時には真空管の内部を良く観察することも重要です。中古12BY7Aの例では,他に比べて大きな上昇を示したサンプルがあり,良く見るとプレート内部にほれぼれする程綺麗な青白いグローができていました。頭のゲッタ鏡面は半分剥離している球でした。この場合は,ガス・テストが有効でしょう。

 

(2) Decrease gm Value after peak Value/指示値が下がる

測定ボタン(3)を押してテストを開始すると,メータ指示が一瞬大きく振れ最大値に落ち着くのが普通ですが,一瞬大きく振れた後にやや下がった値に落ち着く場合には,指示値が棄却値よりも大きい場合でも何らかの異常が疑われます。

その1つはエミッション不良で,フィラメントあるいはカソードの酸化物材料の内部構造に障害がある,不活性となっていると考えられ,後に述べる再エージングをしてみる手があります。もう1つは管内のガス発生です。これには,後述するガス・テストを実施してみます。

(3) Abnormal Sound from Tube Inside/ピキピキ音がする

 測定に入ると急速加熱のためにピキピキ音を立て,不安を募らせる球があります。マニュアルには測定は短時間で済ませろとという簡単な注意があるだけですが,まずこれを順守する必要があります。新型の低電圧大電流型・高パービアンス球,特にOTL用として開発されたMT管,例えば,6CW530A5族や大ゼロ・バイアス電流の水平偏向出力管,6DQ5など,は要注意で,Eb150V, Esg130Vの条件では大電流領域にあり,しかも高gmのため小入力でも大きなプレート電流が流れます。これに加えて,本器は脈流動作ですので,バイアスが適正値に設定してあっても瞬時にはゼロ・バイアスまで振っているのですから,通常よりも苛酷な動作になっていると思われます。実際には,バイアス条件が不適切な例があり,改善できるケースもあります。

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9.4 Gas Test/ガス・テスト

(1)Gas Value/指示値

高温下では各電極からガスが発生します。ガラス管内壁全体が黒や茶色ですすけていたり,プレートの穴や足に近い部分が金属色になっている中古球は,電極の金属物質が蒸発しガラス管壁に凝結したものです。金属の凝縮だけなら正常に動作できる場合がありますが,外見上何も特徴が無くても,マイカ板は高温下で分解し水分を放出しガスとなります。新品でもマイカ板が折れたり,粉が飛び散っている球は,マイカ内部から水分が放出されガスとなります。機械振動を受けた中古球も同様です。戦後しばらくのST管やGT管ではマイカ材料が悪いため,また近代MT管や水平偏向出力管は高温動作のためガスが発生しやすく注意が必要です。

指示がおかしい場合には,ガス・テストをしてみます。これは3極管接続(5極管ではEsgゼロ)時にグリッド抵抗180kΩを挿入して,カソード電流の変化を読むものですが,1目盛以上変ってはいけないことになっています。gmが棄却値以上の球でもガスがある場合もあります。

外見上は新品と遜色の無い中古6R-A8の例では,gmの読みが89から86へと下がります。これは新品正常球に比べて5%〜10%小さい値です。この時,ガス・テストはメータが振切れるのでバイアスをやや深くして(D39.5)の条件で実施しますと,約3〜4目盛の増加を示します。この球は電流が多く流れるピーク時には出力が減少してしまうと考えられます。特に箱入りの綺麗な球であっても,中古球と烙印を押すことができます。

内部が見えないメタル管6SJ7などは周囲に出ているわずかなサビが特徴です。指示値が最大値を経てやや下がる傾向にあり,内部で鉄酸化によるガス発生が疑われます。

(2)Grow/グロー

通常はガスがあってもグローは見えませんから,グローが出る球はよっぽど悪い状態と思わねばなりません。先に紹介した中古12BY7Aの例では綺麗な青白いグローができていましたがgmは一応測定できました。しかし,ガスが発生しすぎるとバイアス条件が狂うために,gmの測定ではメータが逆振れすることもあります。ラジオの中古球12Z-P1の例ではメータが逆振れしましたが,驚くなかれヒータを切ってもグローが見えました。つまり,冷陰極のガス入り管になっていた訳です。

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9.5 Judgement Tube Life-Time/寿命の判定

gmの値とエミ減とは関連を持っているものの,gmの大小は必ずしも寿命とは関連付けられないようです。相当使い込んで黒化した球や,ゲッタ膜がほとんど無い球も,指示値だけはりっぱなものがあります。このような球は,絶縁不良やゲッタ膜の退化により突然の寿命停止がやってくると思われます。しかし,外観上何等特徴の無い球は,何とかgmの測定値だけで新品か中古かを判定したいところです。

(1) Comparison with New Tube/新品球との比較

1つの判定法はgmの値を新品球の分布と比較する方法です。高gmの水平偏向管などは同じ新品でもメーカや製造時期により分布が異なる可能性もあるので,この場合,同一メーカの同一ロットの新品と比べるのが一番です。ただし,判定は統計的に行う必要がありますが完全な新品球の分布は得られないでしょうから,大きく下回る球だけ中古と判定することになります。

(2) Comparison of Emission/エミッションの比較

もう1つはエミッション・テストを応用したgm測定です。エミッション・テストはヒータ電圧が規定のものと10%落ちの場合とで,プレート電圧に対するプレート電流の飽和特性を比較する方法です。本チェッカーではヒータ電圧だけを10%落とすことは不可能ですが,代りに2つの方法が実施できます。

(1)本器の電源電圧100VACを調整してヒータを10%下げる,(2)1段下のヒータ電圧を選んでテストする。

前者は他の電源電圧も同時に下がるので少々面倒です。後者は隣り合うレンジの電圧差が10%以上となり,例えば6.3V/5.0Vレンジ(中心は6.5V/5.4V)では-20%,12.6V/10Vレンジ(中心は12.9/10.2V)では-21%となっています。

一例として,(2)の方法を3BE6(3接)で試みたケース(-17%)を表8に示します。まず規定の電圧3.15Vに対して,近いレンジ3.0V(実測3.27,規定の+4%)を選んだ場合,サンプル3を除いた4つのサンプルは,約52(6.25mA/V)を示します。

次に,その1つ下のレンジ2.5Vレンジ(実測2.73V,規定値の-14%,差の合計は約17%)を選ぶと,3つのサンプルは約42(5.25mA/V)を示し,gmが16%下がったことになります。つまり,ヒータ電圧とgmは良い比例関係にあります。

ところが,サンプル1と3は32付近(4mA/V)を示しています。gmの減少はサンプル1では38%,サンプル3では20%ですから,サンプル1だけは異常に下がったことになります。以上から,サンプル1は一段と「中古化」が進んでいること,またサンプル3はもともとgmが低い(エミッションが低い)球だが,カソードが老朽化した訳ではないと判定できます。

なお,サンプル1と3はいずれも足に緑錆が出ており保存状態も良くなかった証拠です。メタル管では表面のサビは内部にもガス発生の可能性がありますが,MT管はジュメット線を介して酸素が侵入するかどうかは不明です。サンプル3が悪いことは確かです。

Table 8 Examples of Decreasing of Emission -3BE6(Triode Connection)

表83BE6(3接)のエミッション減少の例(-17%)

Sample

サンプル

Maker

メーカ

State

程度

gm in the case of Eh 3.27V (100%)

gm in the case of Eh 2.73V (-17%)

Judgement

判定

備考

 

1

Toshiba

東芝

Used like new

新品同様 (中古)

52

Good

33-

No-Good

足サビ在り

2

Futaba

双葉

New in Box

新品 箱入

54

Good

42

Good

3

Futaba

双葉

New in Box

新品 箱入

40

No-Good

32

No-Good

足サビ在り

4

TEN

New in Box

新品 箱入

51

Good

42

Good

5

Toshiba

東芝

Used

中古

52

Good

43-

Good

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10. Final Comments/おわりに

TV7/Uは古い機械ですが,これを使用し解析してみて多くの新しい知見が得られました。管球メーカの動作例通りのテストができる本格的なチューブ・チェッカにはかないませんが,本器のような簡易型でも,測定原理さえ判ってしまえば簡単で,測定精度は従来言われていた40%どころか,自分で計算すれば10%近くまで持っていくことも可能です。また,本器のデータ・ブックに掲載されてない新型管や国産管にも十分対応できます。

ただし,本器はメータ用アンプを内蔵してないので,高μ3極管や一部の高gm5極管などでは小型のMT管であってもグリッド電流をタップリ流した条件で測定しています。短時間で切り上げる必要があるでしょう。TV7/Uより高級なTV2クラスのチューブ・チェッカーは,各電極電圧が任意に設定できるようですが,アンプ用真空管を内蔵していないところを見ると,同様の傾向にあると思われます。一部の国産チェッカー(国洋など)は直流で任意の電圧が供給できアンプも内蔵していますが,トランスの化け物でとても机の上には置けません。メンテナンス・マニュアルも不出来で入手しても幾多の困難が待っているでしょう。

将来型のチューブ・チェッカーとしては,(1)TV7/Uの内部にメータ用半導体アンプを内蔵させ,(2)外部にTV7/Uと同じサイズのメータ付きコンパクトAVR(-C,+B,+BSG)を用意する,というものを作れば,鬼に金棒です。どなたか,作っていただけるとありがたいのですが。

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