ANTIQUE JAPANESE RADIO/日本の古いラジオ

written by Koji HAYASHI, Ibaraki JAPAN

Mini-Museum of Japanese Radios/日本のラジオのミニ博物館

Radio Tubes After WWII/戦後のラジオ球

Audio Tubes/オーディオ球

Power Triode Japanese

Power Triode American

Power Beam Japanese (B Series)

Power Beam American(1) Large

Power Beam American(2) Small


Page-AjpT. Japan Oriented Power Triode Tubes/日本独自の3極出力管

Japanese JIS Name and CES Standard Tubes/日本のJIS名-CES規格の3極出力管

2nd Edition (2006.11.22)-(2010.11.20)-(2013.5.2)

HomePageVT/Audio_JP_Triode.html


6R-A2

6R-A3/6R-A5

6G-A4

6R-A6/9R-A6

6R-A8

6R-A9

6C-A10/ 50C-A10

9R-AL1

8045G

6240G


Toshiba 6G-A4

私はオーデイオ・マニアでは無かったので,昔はこのような球は見向きもしませんでした。本来安いのが取り柄の球なのですが,いざ集めようとした時には既に枯渇していました。でも,私は,日本の球がどんな造りだったかを調べるのが収集の第1の目的でしたので,死んでいる球でも何でも良かったのです。中古球を多量に安く譲ってくださる親切な方が現れた時には本当に喜びました。

[YbA]

Toshiba 6G-A4, Early-time Samples, 1959-60, 1961-63 and 1964-66./東芝の6G-A4,初期のモデル。上の3本は初期のモデル2(1959年-1960年),中期のモデル3(1961年-1963年頃),モデル4(1964-1966年)。最初期のモデル(1959年,ベースのシェルが長い)は手持ちにない。

初期(モデル2):モデル2の特徴は,ガラス管頭が丸く,ゲッタは角型2つで天井にゲッタ遮蔽用マイカ付き。ガラス管壁にToshibaのロゴと8角枠に管名を表示,その裏面にHiFiの印。電極材料と構造は同社の6BX7のユニットと全く同じで,プレートはカーボンで黒化した扁平楕円型,プレート中央には先端をT字型にした大型の放熱フィン。グリッド支柱は銅で頂部にはそれぞれ板状黒化フィン,またベース・ピンへのリード線2本のうちピン1には金属板を用いている。この球は中古,gm=34でほぼ寿命。

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中期モデル3(1961年-1963年頃)は,中身は変わらない!が,ガラス管頭がやや平坦に,ゲッタがドーナツ型1個に,ToshibaのロゴとHiFi印はベースに金文字印刷になる。この球は中古,gm=22でエミ減。

中期モデル4(1964年-1966年頃)は,ガラス管の頭が平坦に。この球は中古,gm=40-50近辺で新品の半分程度。

[YbA]

Toshiba 6G-A4, Last Model/後期(モデル5,モデル6,モデル7)。

後期モデル5(1967年-?)は,ガラス管壁の管名の枠が横長になる。この球は中古,gm=76-78と新品より10%程度低い。

後期モデル6(1970年-?)は,ベース印字が金から銀色に変わる。この球は箱に入った中古で,gm=68-70と新品より15%程度低い。

後期モデル7(1970年代?)は,ベースにあったToshibaのロゴとHiFiの印字が管壁に移り白字印刷に変わる。ガラス管壁の管名と枠の色は銀色からアルミ色に変わる。白の印刷は擦ると取れてしまうし,管名も薄くなってほとんど見えなくなってしまう。グリッドのベース・ピン1への接続に使用されていた金属板は通常の丸棒に変わる。この球は箱入新品で,gm=80-86。

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Box of 6G-A4, Last Model/後期の箱,モデル6,モデル7

ともに東芝真空管Hi-Fi箱でロット番号も(4CF50R2 ね09)と同じだが,上蓋にゴム印されている6G-A4の文字の大きさが違う。モデル6の方は文字が小さく,その下に製品番号(300-36040)が付いている。モデル7は文字が大きい。

私の持っている球のほとんどは,シングル・アンプで使用し寿命の度に交換した中古球を一括して譲ってもらったもの。後世の大型管なら寿命に近づくまでgmの減少には気づかないことが多いが,gmの測定値から分かるように,6G-A4は目に見えてくたばるのが早い。6G-A4はA級シングルは過酷だと言わざるを得ない。CR結合のアンプではグリッド電流は管理できないから,エミ減を招く要因となる。

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NEC 6R-A8

この球は,6G-A4と同様に,本来安いのが取り柄の球なのですが,いざ集めようとした時には完全に枯渇していて,秋葉原で見かけることはなく,マニアが保存しているだけという状況でした。以下は最近になって本当に大金(私にとって)を叩いてマニアから購入した球です。

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[Photo 8-1] NEC 6R-A8, in 1969, 1970, 1973 and 1972

左からNEC(899/91, 1969年1月),NEC(700/9Z,1969年12月),NEC(739/38 or 389/38, 1973年8月), Luxman(900/729, 1972年9月)。この時代の球は造りはほぼ同じ。いずれも後期モデルに属す。

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[Photo 8-2] Top of 6R-A8s, in 1969, 1970, 1973 and 1972

違いがあるとすれば,左2本と右2本でg1のU字型フィンの向きが異なる。また,左の1本だけがg1,g2支柱は銅製であるが,右3本はg2支柱は銀色に変わった。

[YbE]

[Photo 8-3] Box of 6R-A8s, Pair box in 1969, Pair Box 1973, Pair box 1969 and Luxmann White box in 1972.

NEC(899/91, 1969年1月)のペア箱(一体型, Hi-Fi Green series),NEC(739/38 or 389/38, 1973年8月)のペア箱(バラ箱,Hi-Fi Green series),以上は新品として入手。しかし,内実は不明。[Photo 8-4]NEC(700/9Z,1969年12月)のペア箱(バラ箱,Hi-Fiでない?Greenの指定なし),Luxman(900/729, 1972年9月)の白箱。以上は中古として入手。

入手した球のチェックは,真空管試験器で行いました。gmをチェックした限りではどれもOKでしたが,箱入りだけれども正直に中古と言われた球のうち,Luxmanの球はgmがやや低く,エミッションも低下していることが分かりました(gm測定開始直後に指示値がすーと数%下がる)。おそらくヒータ電圧10%減のテストでははっきりするでしょう。他は大丈夫でした。新品の球でも皆開封してあるし,売り主の測定値まで付いているので,本当にNewという訳にはまいりません。箱と中身がマッチしない場合もあります。

[YbE]

[Photo 8-5] 6R-A8s in 1966, Accident tubes from Sansui SAX-30.

その後,山水SAX-30を只で譲り受けました。中には事故球3本が残っていました。ともにNEC (129/68, 1966年8月)。プッシュプルアンプの2本をそれぞれ,Upとlowと呼ぶと,上の3本は左よりLeft-chのLow, Left-chのUp, Right-ch.のUpに配置されていた球。Right-ch.のLowの球は事故時にガラスが割れたので廃棄したという話。おしい事をしました。上の3本のうちの1本は,そのうち分解して内部を調べるのに使ってみましょう。

写真左の球は白い数字68印字の部分が熱で変形し凹んでいる。左2本はゲッタがほとんど無くなるまで加熱された。右の球はガラス変形こそしてないが,プレートの同じ部分の黒化が激しい。事故の直接の原因は,固定バイアス電圧の喪失と思われるが,特にアンプの両チャネルとも,Low側の損傷が酷いのは放熱設計の不良によるもの。Low側に他のセクションに対する熱遮蔽板があり,6R-A8の輻射熱が自分自身に跳ね返ってくる構造になっていた。

また,どの球もプレート中央の同じ部分が酷く黒化しているから,電子ビームはほぼ均等に放射され,最も放熱の過酷な中央部の温度上昇が激しかったことを物語っている。またガラスは一般にソーダガラスで300-400度位で融けるらしい。管壁温度はMT管の場合250度C位に最大値が規定されている。放熱には気を付けましょう。また,事故になる固定バイアスは避けましょう。

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NEC 6C-A10/50C-A10

解説は「戦後日本の真空管の開発の歴史:戦後日本のラジオ・TV球-JIS名/CES規格の球-A Series:3極出力管」(CESa.html)にある。参照ください。ここでは,実際のサンプルを観察した結果について書きましょう。

サンプルを見ると発表後少なくとも3回改良されているのが分かる。50C-A10の開発当時1967年の最初期モデルでは,プレートはTV用偏向出力管のプレートを流用していたのでキャビトラップ型だったが,1968年頃には専用のプレス型を作り角形になった。さらに側面の3つの穴は小穴だったが後に大きくなった。そして,プレート材料はオリジナルではアルミ被覆鉄だったが,放熱対策を改善するために最後には黒化ニッケルへと変えたようだ。電極頂部のグリッド・フィンは,当初,g2支柱にのみ小型の平型フィンが2枚付いていたが,後に,g1とg2両方に付くようになり,g2は特大型になった。ゲッタ・リングは当初プレート側面に付いていたがプレート側面での熱輻射をかせぐために数年後には頂部へと移動した。

[1iB]

NEC 50C-A10s, From left, front and side (080 97 (1969.7) ), and LUXMAN side and front (803 052 (1970?) ). (NECのサンプルは茨城県橋詰直樹氏からも御寄贈いただきました。)

NEC 080 97 (1969.7): プレート側面丸穴小さい,g1フィンが黒化U字,ドーナツゲッタはプレートに2つ。

LUXMAN 803 052 (1970?): プレート側面丸穴でかい,g1フィンが灰色独立フィン

[1iB]

Bottom view of 50C-A10 and 6C-A10, Metal Plate Conectors between Control Grid Rods, and between Screen Grid Rods, on mica plate./ マイカ板中央に2本のグリッド支柱を結ぶ金具が見える。左はコントロール・グリッド,右はスクリーン・グリッド。

[1iB]

Heater of 50CA10

50C-A10と6C-A10はともにヘアピン型ヒータを採用しているが,何故か50C-A10の場合はヒータ束がカソード下部にまではみ出ている。他のサンプルも同じだった。

[1iB]

LOG of LUXMAN

NECのラックス用OEM版はこのようなロゴが付く。

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Sample of 6C-A10 540 4X (1974)

その後,プレート黒化,上部2重マイカ,管名は消えやすいペイントのみで,銀色のプリントは廃止してしまったようだ。

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Luxman-NEC 8045G

8045Gは1974年にLuxがNECと共同で開発した最後のオーディオ用3極出力管。プレート最大損失を大きくするためにプレート材料は4-5重被覆材が使用されている。通常の民生管はアルミ被覆鉄を使用している(アルミ-鉄,電極内面にも施すとアルミ-鉄-アルミの3重積層合板)が,1960年代にはさらに過大損失用にアルミ-鉄の内面に銅板を施したものが広く使用されるようになっていた。8045Gは5重積層金属板(アルミ-銅-鉄-銅-アルミ)を使用したとある。また,当時の技術としてシャドーグリッドが流行し,水平偏向出力管もスクリーン・グリッド電流低減が工夫されていたが,8045Gも3接時のスクリーン電流を低減するために,目合わせを調整しスクリーン・グリッド巻き線の径を細線化して電流を低減したとある。

マニア向けにベースはメタル・シェル付きオクタル(GT)になっている辺りは松下のアマチュア無線用S2003を思い出す。その後1978年頃にはNECは真空管製造を終結していること,また販売数も限られていたので,製造は数年間,製造量もLUXが発注した数万本,に限定されると思われる。

[1iB]

Luxman-NEC 8045G, side and front. (High Fidelity Electron Tube, LUXMAN, special designed for Lux corporation, manifactured by NEC). 転がし球につきプリント位置は定まらない。(三重県,橋本さんのご厚意により入手)

プレートは2本のリブ付き箱形で,銅内張のアルミ被覆鉄である他,正面のフィン部にエクストラ・フィンを左右に2枚づつ,計4枚付けて(カシメ接続)放熱を図っている。これは6JS6A,B,Cにも見られる芸当。ヒータはヘアピン型で2本並列型である。これは6CB5Aなどもにも見られる。水平偏向出力管のノウハウを結集した感じ。

[1iB]

Top of Luxman-NEC 8045G/

グリッド支柱は上部にg1,g2それぞれ独立したフィンを持つ。g1支柱は銅,g2支柱は黒化ニッケルか。g2フィン頂部にドーナツゲッタが2個つく。ビームプレートのフレームもちゃんとある。その意味でまったくの5極ビーム管の構造である。電極下部でg2はプレートに,ビームプレートg3はカソードに接続されている。この辺りは,NECが6R-A2開発以来の伝統。

それでも,この球の評価は2分し,ヘビーデューティー(凄い)という宣伝とは別に,所詮は民生管であるので規格がラフであり,熱暴走し易いという評価も最後まで付きまとった。

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Luxman-NEC 6240G -Special 12BH7A

オーディオ用のドライバー管。TV用双3極管12BH7Aを高電圧型に改良した球。

耐圧350Vを400Vにするには管内汚染対策と電極引出線の引き回しを工夫すれば良い。また,ヒータにも絶縁対策に工夫があるかもしれないが,サンプルからは見えない。

通常の12BH7Aは上下マイカ板とも,マイカ板の汚染に対してプレートと他電極間のセパレータスリットで防備している。本球は上部マイカに透明なマイカをもう1枚乗せて,バネ押さえで,カソードの防振を図っている。このあたりはオーディオ管たる由縁であるが,ここにはマイカ面の汚染を考慮してグリッド用のセパレータスリットがある。下部ステムの引き出し線は他と十分な間隔がある。それ以外,さしたる違いは見あたらない。

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LUXMAN/NEC 6240G (907 LUX 743)

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