Return to Tube Ham Radios/真空管アマチュア無線にもどる
Overview of TX-88A/TX88Aの概要
Get and State/入手と現状
Restoration Plan/修復の方針
Take Pictures/写真撮影
Reassemble and Clean-up -Remove CR Parts and Cables/CR類とケーブルの撤去と清掃
Restore Front Panel and Cabinet/パネルとキャビネットの修復
以下未完
Check Parts/部品チェック
Re-build/組立
Adjustment/調整
TX88Aは,1960年にトリオ(現ケンウッド)からキットで販売されたオールバンドの送信機です。時を同じくして受信機9R59も発売しています。TX88Aは1年前のTX88のマイナーチェンジ版というよりは,まったく新しく設計された別物でした。
中身は,高周波回路としては,水晶発振またはVFOを受けての第1周波数逓倍(マルチプライヤー)に6AQ5,第2逓倍または励振(ドライバー)アンプに同じく6AQ5,終段にUY-807という構成で,CW時には入力17.5W,出力10W,また変調器としてマイク・アンプとドライバーに12AX7,ドライバー・トランスを経て,プッシュプル出力に6BQ5x2という構成で,AM時には入力25W,出力10W,電源は整流管に5U4G,という仕様です。オール・バンドという用語は普通,3.5MHzから28MHzまでのHF帯を指していましたが,当時としては画期的なことに国内で人気の高いVHFの50MHzを含む6バンドでした。
電話級最大の10Wをフルに出せ,おまけに50MHzまで出れましたので,ペアの9R59(C)とともに一世を風靡し日本の標準機となりました。しかし,UY-807で50MHz専用なら大丈夫なのですが,オールバンドではロータリスイッチ周りの配線の引き回しが余分に必要なため,トラブル・メーカとなりました。
ちなみに春日無線(トリオ,現ケンウッド)は戦後の5球スーパ時代が到来した時にラジオ用IFTやコイルの販売から出発した戦後のメーカですが,1954年にハム用受信機キット9R42J(K)を発売,1955年には国内初の送信機キットTX-1(UY-807,10W,3.5/7MHz)を販売しています。1956年には9R42Jの5球スーパ版,6R-4も販売。1958年には9R42Jの完成機も発売,1959年にはTX-1よりも小型のTX88(3.5MHz/7MHzの2バンド,終段6AR5)も販売しました。
今日の視点で眺めてみると,C級アンプは能率の点では最も良いのですが,半面これを3段も重ねると高調波の漏洩は当たり前,しかもフィルタは終段のパイマッチ以外無く,周波数カウンタもスペクトル・アナライザも無い時代,初心者向けとしては最も難しい機械だったようです。
1990年2月にCQ誌の交換欄を通じてTX88A/9R59の完動品を求め,奈良県大和郡山市のM氏からJR-60と供に入手。始めからオーバーホール,今で言うレストアをするつもりで求めましたが,完動品と指定したのは,トランスの断線や主要部品の故障を避けたかったからです。一応,21MHzでCW15Wという実績があるという話だけは聞けました。キット組立マニュアルは無理でしたが,完成品の取り扱い説明書はハム・ショップを通じて@1.5kで入手できました。伝統なのでしょうか,トリオ(現ケンウッド)は過去の製品の情報提供をしない八重洲に比べて親切です。
原型への復帰,これが大前提。
組立マニュアルが入手できないこともあり,配線を記録する意味で写真撮影を行いました。
錆が出ている。メータ下のスライド・スイッチは改造されパネルに穴が空いている。シーメンス・キーは交換されている。
電話(A3)と電信(A1)は裏ののキャノン?・プラグで切り替える構造。もはや入手不可能。昔大量に捨てた記憶がある。磨いて使うしかない。受信機の送受信制御(STAND-BY)はアンテナ信号の切断とコンバータ部の+B電源の切断で行う。これをTX88Aの内部のリレーで制御する。VFOと受信機のリモート信号はAC100V用の2Pソケットを利用している。アンテナの受信機への接続は陸軍端子が使われており,シールドという概念がない。
内部も錆が出ている。バリコンは緑錆が少し出ている。パネルを飾るメータはネジが2本欠けている。メータも実は錆で断線していた。
SSB時代と比べればおおらかであるが,結構余裕の無い配置になっている。清掃のためには分解した方が良い。
配線は当時としては標準だろうが,綺麗に直したいという衝動にかられる。ロータリースイッチ廻りの配線はどうしても長くなってしまう。
メータにシールド・ケースを被せる改造記事を目にしたことがあるが,やはりなー。発振管が近接している。ドライブ段も丸裸。
UY-807は袴をはかせるのが当時の常識。プレート・キャップのパラ止めは遠いところにある。
20W出る割にタンクコイルは小さい。UY-807のシールドで渦損失があるのでは?
完全に分解し,シャーシは丸裸。風呂場で丸洗いし,乾燥。スライド・スイッチ(新品)だけを取り付けたところ。
Removed Parts -Variable Capacitor, Coil, Rotary Switchs, and Relay/取り外したバリコン,コイル,ロータリ・スイッチとリレー。
バリコンの錆は少しは削りました。接点復活材も使いました。
Removed Transfommers- Drive and Output Power Transformer of Moduration Amplifier, choke and Power Transformer/取り外したトランス。変調用ドライブ,変調出力,電源チョーク,電源トランス。
Screws, Lags, Switchs, Sockets, Nobs and Chaft, and so on/ネジ類とラグ,スイッチ,ソケット,ツマミ,シャフトなど。
特にネジ類は台紙にテープで張り付け,取り付け場所をメモ。
CR Parts/CRパーツ。
オイルコンデンサ,ケミコンは無条件で交換。VRも交換。セラミック・コンデンサ,L型抵抗は信頼性が高いのですが,一応交換することにしました。マイカ・コンデンサだけは代替品がありません。
New CR Parts for Replacement/新しい交換用のCRパーツ。
オイル・コンデンサは別の容量チェック済みのものを使ったのですが,後から漏洩電流の点で不合格だったことが判明しました。フィルム・コンデンサにすべきでしょう。
メータの切り替えスイッチ用に丸穴が開けられていました。オリジナルのスライド・スイッチに戻すべく,パテで縁を補修し,後でペイントしました。
キャビネットは洗浄後,スプレーしました。色は同じ灰色系ですがオリジナルと異なり,やや明るいようです。スプレー缶では自分で調整できないのが欠点。
以下,未完である。
Check Parts/部品チェック
Re-build/組立
Adjustment/調整
TX-88Aの修復は,一部の調整を残したまま完了していますが,つづきはなかなか書けません。全波受信機JR-60と比較すると,このTX-88Aの記事は全く不評のようで,読者からの反響が全くありません。今の時代,実用性に乏しいからでしょうか。いっそうのこと,Hi-Fiアンプかラジオに改造すると読者からは喜ばれるかもしれません。しかし,当初の目的は完全なレストレーションであり,改造は以ての外です。実は,手元にはTX-88Aの抜け殻,高周波部品を無くしたジャンクがもう一台あります。これだったら,Hi-Fiアンプかラジオに改造しても罰が当たらないと思い,密かに構想を練っています。おっと,うっかりしゃべってしまった。