ANTIQUE JAPANESE RADIO/日本の古いラジオ

日本の真空管の開発の歴史

戦後日本のラジオ・TV球-JIS名/CES規格の球-

C Series : 周波数変換管

(1998.4.10)
/HomePageVT/CESc.html

written by Koji HAYASHI, Ibaraki JAPAN


目次

周波数変換管の概要

[日本真空管名称制度以前]

UZ-135, Ut2A7/Ut6A7, UZ-1C6B,

Ut6L7G, US6L7,

[日本真空管名称制度非登録]

CH-1, 1R5-SF,1AQ5/1R5-SF,

[日本真空管名称制度]

3W-C1/6W-C1/12W-C1(Ut-2A7,Ut-6A7)

2Z-C2(UZ-1C6B), 6Z-C3(Ut-6L7G), 12G-C4(N-361)

3W-C5/6W-C5/12W-C5

6W-C5A, 6G-C5/12G-C5

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周波数変換管の概要

周波数変換管Cは,ラジオ時代に活躍した多極管であり,真空管の歴史の中では最後に誕生したこと,用途が限定されていること,などから品種が少ない。しかし,戦前から戦後にかけての無線通信やラジオに重要な地位を占め,旧制度から新制度に渡りで幾つかの球が登録された。日本標準名称制度が発足する以前の品種は5品種ある。いずれも米国品種を原型に国産化あるいは改造したもので,名称だけ異なるものが2品種,ベース違いが1品種,日本独自の規格を持つものが2品種ある。日本標準名称制度が発足した1941年から1942年にかけて登録されたST管の3品種(C1からC3)は旧品種の再登録であった。さらに,戦時中には日本独自の名称と規格をもつ軍用管が1品種作られた。戦後の復興時期には,GHQにより再生方式が禁止され,庶民にもスーパー・ラジオ時代が到来した。この時,C4とC5が登録された。G4はGT管のみであるが,主流になったC5はST版とGT版が作られさらにマイナーチェンジ版C5Aも作られた。国内ラジオのMT管化は1950年頃に始り1950年代末に終ったが,専用変換管は米国品種の6BE6とレスの12BE6だけで事足り,より高性能を求める短波用無線機には汎用5極管や3極管が使われたことから,これ以上の品種は開発されなかった。MT管の新しい品種が誕生した唯一の分野はポータブル電池管で,省電力型が1品種誕生したが,輸出を考慮して国際名となった米国のRETMA(EIA)名が取得された。またTV用の周波数変換には双3極複合管や5極3極複合管が利用され,国内でも発振・混合専用管の6R-HH3や6D-HH13などが開発された(高増幅率3極管H,HHの項参照)が,これらは変換管Cには分類されていない。ミキサー管Mの分類もあるが,これに登録された球は無いようである。

 


[日本真空管名称制度以前]

UZ-135

1.1V,0.13A

米国1A6(2.0V,0.06A)のヒータ電圧違い。1A6の原型の米国35は2.5V,1.75A。

 


Ut2A7,Ut6A7

米国2A7,6A7そのまま。国産化は1934年,1935年。(3W-C1/6W-C1参照)

 


UZ-1C6B

米国1C6のベースピン配列違い。開発は1937〜1938年あたり?(2Z-C2参照)

 


Ut6L7G

米国6L7(オクタル・ベース・メタル管),6L7G(オクタル・ベース・G管)に対してUtベースのST管にしたもの。開発は1937〜1938年あたり?(6W-C3参照)

 


US6L7

米国6L7(オクタル・ベース・メタル管)。国産化は1938年。

 


[日本真空管名称制度非登録]


CH-1

周波数変換用傍熱型7極管。東芝マツダ1943年。

(原型・構造・特性)

12.0V,0.175A,GT,8R(S-G5,H,P.G2-G4,G1,K,H,G3)

米国6SA7-GTに類似の特性を持つが,ベース・ピン配置はG5とKを分離している点が異なる。

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1R5-SF(1AQ5/1R5-SF)

周波数変換用直熱型7極管。携帯用電池式受信機用。東芝マツダ1954年

(原型・構造・特性)

1.4V,0.025A,MT,7AT,

Ep90V,Eg1;0V,Eg3;0V,Eg2+4;45V,Ip;0.64mA,Ik2.5mA,gc0.25mA/V,Eg1=15Vac,Rg1=100k

原型は1942年頃に登場した米国のMT管1R5(1.4V,0.05A)で,ヒータを省電力化したもの。1AQ5/1R5-SFは米国RETMA(EAI)登録名。その他,1AM4/1T4-SF(V),1AR5/1S5-SF(DR),1AS5/1U5-SF(DR),3W4/3S4-SF(P)があった。

(その後)

東芝マツダの他,TEN,NEC(1956年あたり)が生産。米国では1S5-1T4-1U4-3S4のラインなどのMT型の携帯用電池管を用いたラジオは1942年頃から作られ始め,1940年代後半にピークを迎えたが,国内の流行は約10年遅れの1950年代中頃であった。新しく登場した省電力型の電池管シリーズはもっぱら民生用ラジオに用いられたが,より小型のサブMT管やトランジスタ・ラジオと競合し,すぐに需要を奪われてしまった。このため,先に業務用に使用されていた従来の電力を多く必要とする米国系電池管シリーズよりも先に廃品種になってしまった。

(参考1R5/DK91)

1.4V,0.05A,MT,7AT,

Ep90V,Eg1;0V,Eg3;0V,Eg2+4;45V,Ip;0.8mA,Ik2.75mA,gc0.25mA/V,Eg1=15Vac,Rg1=100k

(欧州型との比較)

省電力型は欧州でも開発され,米国EIAに登録され,国内では松下が同時期に国産化した。

1AB6/DK96(C)-1AJ4/DF96(R)-1AH5/DAF96(DR)-3C4/DL96(P),3Y4/DL97(P),3Z4-1H3/DM90(E)

DK92/1AC6(1.4V,0.05A)

DK96/1AB6(1.4V,0.025A)

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3W-C1/6W-C1/12W-C1

(Ut-2A7/Ut-6A7/-)

周波数変換用傍熱型7極管。東芝1939年。登録1942年。

(原型・構造・特性)

12.0V,0.15A,ST38-,7C(H,P,G3-G5,G2,G1,K,H,top=G4)

180V,180V,Eg3=75V,Eg4=-1.5V,2.2mA,1.5mA,Ig3=2.5mA,Ic1=0.6mA,gc0.65mA/V,

3W-C1/6W-C1は米国2A7/6A7(日本名Ut-2A7/Ut-6A7)の別名。1942年頃名称変更。Ut-2A7(2.5V,0.8A,ST38-1)は1934年,またUt-6A7(6.3V,0.3A)は1935年に東京電気マツダによって国産化されている。12W-C1は,米国6A7系を原型としてヒータ電流150mAのトランス・レス管として1939年に開発した日本独自のもの。米国では6A7のトランスレス化は行われなかった。国内のトランス・レス管の仕様は150mAであるが,ヒータ電圧は独特の12.0Vになった。管名は1942年に日本標準名称として再登録された。

(その後)

このシリーズには,他に12Y-V1,12Y-R1,12Y-L1,12Z-DH1,12Z-P1,24Z-K2,12X-K1が同時に開発されたが,戦前は5球スーパは普及することが無かった。

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2Z-C2(UZ-1C6B)

周波数変換用直熱型7極管。東芝?年。登録は1942年。

(原型・構造・特性)

2.0V,0.12A,ST,6-1(F,P,G3-G5,G2,G1,F,top=G4)

180V,67.5V,180V,-3V,50k,1.6mA,2mA,3.2mA,gc0.325mA/V,R=20k

原型は米国の電池用ST管1C6であり,ベース・ピン配置6L(F,P,G2,G1,G3-G5,F,top=G4)が異なる。ちなみに1C6は1A6の改良型でベース・ピンは同じ。

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6W-C3(Ut-6L7G)

周波数混合用傍熱型7極管。東京電気1937〜1938年あたり?。登録は1942〜1943年頃。

(原型・構造・特性)

6.3V,0.3A,ST,(H,P,G2-G4,G3,G5,K,H,top=G1)

250V,100V,-3V,6.5mA,3.2mA,1M,gc0.3m/V

Ut6L7Gの別名。米国6L7(オクタル・ベース・メタル管),6L7G(オクタル・ベース・G管)に対してUtベースのST管にしたもの。

(その後)

この球は民生用ラジオにはほとんど使用されず,もっぱら通信機や測定器などの業務用に使われた。

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12G-C4(N-361)

周波数発振混合用3極6極管。JRC(日本無線)1946年。

(原型・構造・特性)

12.6V,0.36A,GT,()

(M)250V,100V,-2V,4mA,1.5mA,16k,1mA/V,gc0.4mA/V

(O)150V,-6V,4mA,11.5k

ボタン・ステム。詳細不明。同時発表に12G-C4(N-361),12G-R4(N-051),12G-V3(N-053),12G-DH4(N-231),12G-P7(N-052)があった。ヒータ電流は0.36A,0.22A,0.22A,0.22A,0.36A。

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3W-C5/6W-C5/12W-C5

周波数変換用傍熱型7極管。6/12W-C5は東芝マツダ1948年。3W-C5は松下1948〜1951年頃。

(原型・構造・特性)

2.5V,1.0A/6.3V,0.35A/12.0V,0.175A,ST,(7-1)(H,P,G2-G4,G3,K-G5,G1,H)

(6SA7と同じ)Ep:250V,Eg2+4:100V,Eg3:0V,Eg1:0V,Ip3.5mA,Ig2+4;8.5mA,1M,0.45mA/V,

Rg20k,Ig1:0.5mA

米国6SA7-GTのST版。外囲器がST12,ベースがUtの他,ヒータ電流が異なる。

(その後)

6.3V管の6W-C5は,6W-C5,6D6(6C6),6Z-DH3A,6Z-P1,12F(42,80)というラインで爆発的にスーパーラジオを国内に普及させた。この形式のラジオは1958年頃までの約10年間生産された。トランスレス175mA系の12W-C5は,12W-C5,12Y-V1A,12Z-DH3A,12Z-P1A,36Z-K12のホーム・スーパー・シリーズとして売出したがほとんど普及しなかった。また,東芝マツダは戦後にヒータ電圧を6.3V系と12V以上のトランスレス系に絞り,低電圧管は保守用としてのみ生産したのに対して,従来の低電圧ヒータ管の再生式ラジオをスーパーに改造したいという国内ユーザの強い要望に答えて,松下を始めとする中小メーカが3W-C5を開発,生産し,稀に使用された。ライン・アップは3W-C5,UY-58/UY-57,UZ-2A6,3Y-P1/UY-47B,KX-12F/KX-80BKなど。

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6W-C5A

周波数変換用傍熱型7極管。松下など1949〜1955年

(原型・構造・特性)

6.3V,0.3A,ST,(7-1)(H,P,G2-G4,G3,K-G5,G1,H)

(6SA7と同じ)Ep:250V,Eg2+4:100V,Eg3:0V,Eg1:0V,Ip3.5mA,Ig2+4;8.5mA,1M,0.45mA/V,

Rg20k,Ig1:0.5mA

米国6SA7-GTの日本版ST管。6W-C5とヒータ電流が異なり,米国6SA7-GTに同じ。

(その後)

6W-C5Aは6W-C5の流行とともに使用された。ユーザ側のメリットは全く無いが,メーカにとっては,ヒータ電流を0.3Aにすれば米国型6SA7-GTと同じユニットが使え,生産効率が上がるというメリットがあった。

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6G-C5/12G-C5

周波数変換用傍熱型7極管。6G-C5/12G-C5は東芝マツダ1948年,6G-C5のみ川西(TEN)1948年,松下両方

(原型・構造・特性)

6.3V,0.35A/12.0V,0.175A,(8-1)(NC,H,P,G2-G4,G1,K-G5,H,G3)

(6SA7と同じ)Ep:250V,Eg2+4:100V,Eg3:0V,Eg1:0V,Ip3.5mA,Ig2+4;8.5mA,1M,0.45mA/V,

Rg20k,Ig1:0.5mA

(松下54)6.3V,0.35A/12.0V,0.175A,8AD?

Ep:250V,Eg2+4:100V,Eg3:0V,Ip3.5mA,Ig2+4;8.5mA,1M,0.45mA/V,

6G-C5/12G-C5はそれぞれ6W-C5/12W-C5をGT化したもので,米国6SA7-GT/12SA7-GTの日本版GT管。米国系とは特性,ベース・ピン配置は同じで,ヒータの規格と電極容量だけが異なる。ST管と同時に開発された。

(その後)

戦後,国内メーカはラジオ球の6.3V化,トランスレス化とGT化を図ろうとし,またGHQの再生ラジオの販売禁止(1947年)により,国内ラジオのスーパー化が進められた。東芝は12G-C5,12G-R6,12G-DH3,30G-P9,30G-K5で,川西は12G-C5,12G-V4,12G-DH6,30G-B1,30G-K7であった。しかし,まず普及したのはST管の6W-C5で,ほとんど活躍する場が無かった。また6.3V管の6G-C5は移動無線用として,6G-R7の開発,6V6-GT,6H6-GTの国産化と同時に開発された。その後ラジオはGT化を経ずしてMT化されてしまったこと,同一目的には米国系の6SA7-GTが国産化され(1949年),各社で生産されたことで,このシリーズの存在価値は全くなくなった。

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