Return to Gallery/真空管の開発の歴史にもどる
高増幅率3極管はHシリーズが12品種(外形はmT7ピンが1,mT9ピンが1,サブミニが4, ニュービスタ(B,N)が4,GTが2種),HHシリーズが15品種(mT7ピンが1, mT9ピンが9種, サブミニが4種),そしてHRが4品種(全てmT9ピン),HVが2品種(全てmT9ピン)である。他にDHVがあるがDの項参照。
JIS/CES登録の受信管で,激しい開発競争を行ったものの1つはTV用のチューナー管であり,HまたはHHシリーズに含まれている。
超高周波格子接地型電圧増幅3極管(高信頼管)。NEC(日電)。1953-55年。米国6J4類似。
(原型・構造・特性)
6.3V,0.4A,mt18,150V,-,14.5mA,-,13mA/V,μ46
原型は米国高周波GG増幅用の6J4。通信管として超寿命化。
広帯域格子接地型電圧増幅3極管(高信頼管)。NEC(日電)。1957年。WE417A類似。RF GG
フレーム・グリッド管
(原型・構造・特性)
6.3V,0.35A,mt21,150V,-,28mA,-,27.5mA/V,μ40
原型は米国のRF-GG増幅管WE417A。フレーム・グリッドを採用し高GM化,さらにグリッド導入線インダクタンスを小さくするための特別の考慮を払っている。電気的特性はWE417Aに類似し,置き換えが可能。
コンデンサ・マイク用高増幅率3極管。NEC(日電)。1957〜1960年。高入力抵抗,低雑音。
(原型・構造・特性)
6.3V,0.175A,SmT9,150V,2k,1mA,-,2mA/V,μ55
Ig:-1x10-9〜+2x10-10A
カラーTV高圧調整(シャント・レギュレータ)用ビーム3極管。東芝。1960年。米国6BK4B同等。
(原型・構造・特性)
6.3V,0.2A,GT38-05(43.6mm-108mm),(K,H,IC,IC,G,IC,H,IC,+Pcap)
Ebb44kdc, Eb20kVdc, Eg-125Vdc, Egm-400Vdc, Pb20W, Ik1.2mA, Rg3MΩ, Ehk(0VatH+,225VatH-)25kV, 最小(-5.5V,1.0mA), 最大(-32V,0.1mA), μ2100, Cin,Cout,Cgp記述なし
グラフより;25kV,最小(-8.0V,1.0mA),最大(-12.5V,0.1mA)
原型は米国6BK4Bで,特性は同じだが外形が異なる。小型TV用にガラス管を24mm短かくした。最大定格は,プレート最大電圧,プレート損失が低い(25W>20W)。
(参考6BK4)
6.3V,0.2A,GT38-30A(43.6mm-132mm),(K,H,IC,IC,G,IC,H,IC,+Pcap)
Ebb55kdc,Eb25kVdc,Eg-125Vdc,Egm-400Vdc,Pb25W,Ik1.5mA,Rg3MΩ,Ehk(0VatH+,225VatH-)
Ebb36kV(Req11MΩ),Ek200V(Req1kΩ),R1,R2(VR),R3(220M,1M,820k),
24.5kV,最小(-,1.0mA),25kV最大(-,0.045mA),μ2000,
Cin2.6pF,Cout1.0pF,Cgp0.03pF(外部シールド付き)
グラフより;25kV,最小(-8.0V,1.0mA),最大(-12.0V,0.1mA)
6BK4AはGT38-36,Ebb60kV,Ik1.6mA,Pb30W
6BK4BはGT38-36,Ebb60kV,Ik1.6mA,Pb40W
TVの中和型高周波増幅用3極管。日立。1961年。
(原型・構造・特性)
1.8V,0.6A,NY,110V,130Ω,7.6mA,6.3k,9.8mA/V,μ62
原型は米国RCAのニュービスタ管6CW4。当時発表されていなかった600mAシリーズ用にヒータを改造し,JIS/CES登録したもの。
(その後)日立に遅れて国内各社もニュービスタ管の国産化を実施。2B-H5は1964年に三菱,NEC(新日電)でも生産された。米国では後に2CW4(450mA)が誕生した。
TVの中和型高周波増幅用3極管。東芝。1961-1962年。MT管2/4/6GK5のサブMT管。
(原型・構造・特性)
2.3V,0.6A/4.3V,0.3A/6.3V,0.2A/SmT13-01,(K,-,G,H,H,P,K)
135V,-1V,11mA,-,15mA/V,μ77,200V/2.5W,Eg-50V,25mA,Rg1MΩ,Ehk+/-100V,
(標準,最小,最大)Ib(11,7,18mA),gm(15,11,18mA/V),μ(77,60,89)
Cin1.75pF,Cout0.65pF,Cgp1.85pF
原型は米国のTV高周波増幅用3極管。MT管2/4/6GK5。東芝は,カスケード増幅管3/6D-HH10,3/6D-HH11を開発した翌年に,改めてシールド付きに改造した3/6D-HH12,3/6D-HH13を発表したが,それと同時期に中和型高周波増幅用3極管の開発を行った。開発に際してはMT管(6FY5),6GK5のサブミニアニュア管(ミクロビスタ),ニュービスタ管(M3205)を比較し,結局サブミニアニュア管(ミクロビスタ)を採用した。
(その後)同時期に6HM5,6HQ5
カラーTV高圧シャント・レギュレータ用ビーム3極管。日立。1962年。米国6BK4B同等。
(原型・構造・特性)
6.3V,0.2A,GT29-16,(K,H,IC,IC,G,IC,H,IC,+Pcap)
Ebb45kdc,Eb22kVdc,Eg-125Vdc,Egm-400Vdc,Pb20W,Ik1.5mA
20kV,最小(-4.0V,1.0mA),最大(-30V,0.1mA),μ1800,
Cin2.2pF,Cout2.2pF,Cgp0.05pF
原型は,米国6BK4Bで,特性は同じだが外形が異なる。小型TV用に管径の細いT29バルブを用いて小型化したもの。水平偏向出力管16G-B16と同時に開発された。
低周波増幅用3極管。東芝1962年頃。12AX7の片ユニットのサブミニュアチュア管
(原型・構造・特性)
6.3V,0.15A,SmT13-01,(G,NC,NC,H,H,P,NC,K)
100V,-1V,0.5mA,80k,1.25mA/V,μ100,330V/0.55W
250V,-2V,1.2mA,62.5k,1.6mA/V,μ100
Cin1.75pF,Cout0.65pF,Cgp1.85pF
原型は米国12AX7の片ユニットで,サブミニュアチュア化したもの。Pbは1Wに対して半分に。電極容量はやや増加。マイクロフォニック雑音等に強い。
(12AX7)330V/1W,Cin1.6pF,Cout0.34/0.46pF,Cgp1.7pF
低周波増幅用3極管。東芝1962年頃。6D-H8のシールド付き(ミクロビスタ)。
(原型・構造・特性)
6.3V,0.15A,SmT13-01,(G,NC,NC,H,H,P,NC,K)
(特性は6D-H8に同じ),Cin2.3pF,Cout3.1pF,Cgp1.8pF
原型は東芝が同時開発した6D-H8で,シールド付き。外観と電極容量以外は同じ。
?62〜63年。日立64 LowNoise
(原型・構造・特性)
6.3V,0.12A,NY,100V,-2.3V,0.8mA,44k,2.7mA/V,μ100
ステレオ装置の低雑音増幅用に開発。
単3極中和型TVチューナ高周波増幅器用3極管。日立63。
(原型・構造・特性)
1.8V,0.6A,NY。
2DS4(450mA),6DS4(6.3V)の600mA版
日立63 局部発振用
(原型・構造・特性) 6DV4,2DV4の600mA版
1.8V,0.6A,NY
UHF帯TVの局部発振用。ニュービスタはミニュアチュア管に比べて長寿命,不要輻射が少ない,高安定度などの特徴を持つ。2DV4(450mA),6DV4(6.3V)の600mA版
高周波増幅用双3極管。日立1958年。TVチューナのカスケード増幅器用。6.3Vトランス付きセットにだけ対応。
(原型・構造・特性)
6.3V,0.4A,mT21-2,
120V,-0.7V,15mA,-,13mA/V,μ40
原型は不明(カスコードアンプは沢山ある)。gm向上のために民生用管では初めてフレーム・グリッドを採用し,またグリッド巻線にこれまでにない細いタングステン線を使用,カソードに精度良く近接させ一挙に2倍程度に引き上げた。しかし,電気的性能面においてはgm引き上げに伴い,電極間容量が増加し,入力インピーダンスが低下したことから,実質的な感度改善効果は余り期待できないものとなった。また経済面では,フレーム・グリッドは民生用には高価すぎたこと,またトランスレス管を発表しなかったこと,すぐ後に東芝がより廉価な4/6R-HH2を発表したことなどから,6R-HH1は日立の自社製TVセットに一時期使用されたに留り,余り普及せずに終わった。
(時代背景)日本のTV作りは米国各社のセットの模倣で始ったが,本格的に普及したのはトラスレス化された1955年あたりである。当時,チューナには米国系の6BQ7/4BQ7によるカスケード増幅器が使われており,トランス付きセットでは問題なかったが,レスのセットでは,商用電源電圧の違い(117Vと100V)によるヒータ電圧不足,+B電圧不足のため増幅度が低下し雑音指数NFも悪化した。さらに,山岳地帯が多い,放送周波数帯が低周波チャンネル(1から3)と高周波チャンネル(4から12)に別れた,という事情も事態を悪化させた。したがって,セットの感度を如何に挙げるか,またチャンネル間の感度差を如何に無くすか,という日本独自の問題が生じた。各メーカはこの解決策としてカスケード増幅器用管のgm引き上げを図ったのである。その第1号がこの日立の球。
高周波増幅用双3極管。東芝1958年(6.3V管,600mA管)。日立1959年(150mA管)。TVチューナのカスケード増幅器用。NEC59
(原型・構造・特性)
6.3V,0.4A/4.2V,0.6A/16.8V,0.15A,mT21-2,
90V,-1V,8.5mA,4.5k,8mA/V,μ36
原型は米国RCA系の4/6BQ7。フレーム・グリッドを使わない従来型の構造で,グリッドに6R-HH1よりはやや太いが0.04mm径の金メッキタングステン線を使用,6BQ7系と比べて電極間容量を維持しながらgmを40%程度引き上げた。6.3V用と600mAトランスレス管を同時発表した他,周波数混合用の高gm管(5M-HH3,6M-HH3)を同時に発表し,総合的に感度とNFを改善した。価格設定自体は6R-HH1と大差ないが構造自体が量産向きであったため,TVセット各社が採用に踏み切り,また真空管製造メーカ各社が生産したこともあり爆発的に普及した。東芝が発表した後,日立,NECも数ヵ月遅れて発表し,三菱,双葉,TENなど。製造しなかったのは松下位である。日立は自社の6R-HH1の普及を諦め,東芝とほとんど同時に4R-HH2/6R-HH2を生産した他,FMラジオ用の150mA管を発表した。gmのバラツキは誤差範囲ともいわれ,4/6BQ7Aとは上位互換で差し替え可能である。
TVチューナの周波数混合発振用双3極管。東芝1958年。日立59, NEC59
(原型・構造・特性)
4.7V,0.6A/6.3V,0.45A/18.8V,0.15A,mT18-2,
100V,-10V,11mA,5.1k,7.5mA/V,μ38
原型は米国RCA系の5/6J6。4R-HH2と同様に従来構造のままgmを引き上げ,総合的に感度とNFを改善した。各社が生産し,爆発的に流行した。gmのバラツキは誤差範囲ともいわれ,5/6J6とは上位互換で差し替え可能である。
微小電流(DC増幅)用。双3極管(業務管)。NEC(日電),1959年頃。高入力抵抗の超低周波平衡型増幅器初段用
(原型・構造・特性)
4.6V,0.25A(9.2V,0.125A),
80V,-0.8V,0.05mADC,Ig-5x10-9〜+5x10-9ADC
1959年頃。NEC(新日電)?,三菱61。
(原型・構造・特性)
4.2V,0.6A,MT,105V,-1V,15mA,-,13mA/V,μ43
フレーム・グリッド管。高gm
1959年頃。東芝?
(原型・構造・特性)
6R-HH2をリモート・カットオフ型(バリμ型)にしたもの。
日立1960年。NECも作った(1961(6)年)。
(原型・構造・特性)
4.2V,0.6A,MT,110V,-1V,16mA,-,16mA/V,μ40
6.3V,0.4A
フレーム・グリッド管。高gm管。原型は6R-HH1?。
日立は1960年12月から米国IRE誌に広告を載せ,同じ広告を翌年には毎月のように載せた。この頃,トランジスタ・ブームのために米国の球業界は不振に陥り,民生用受信管の広告は皆無だった。また,新鋭管の広告は広告料がかかるので1回限りのことが多かったから,同じ内容の広告を毎回載せているのは一際目立つ存在だった。日立の販売への強い意気込みが伺える。しかし,技術的に見ると,フレーム・グリッドの球では,本家のAmperexが1957年に6922/E88CC(6DJ8/ECC88の高信頼管)を発表しており,また1961年にはビデオ用の高gm50mA/Vという驚くべき球7788を発表している。またチューナ管の主流は米国ではこの頃ニュートロード方式に移っていたから,6R-HH8の登場は時既に遅かりしといったところだろう。
1960年頃。フレーム・グリッド管。高gm管バリμ
(原型・構造・特性)
4.2V,0.6A,MT,90V,0V,16mA,-,16mA/V,μ38
6.3V,0.4A
東芝1960年
(原型・構造・特性)
6.3V,0.3A,Smt,90V,-1V,9mA,3.8k,9.5mA/V,μ36
詳細は3/6D-HH13参照
東芝1960年
(原型・構造・特性)
6.3V,0.3A,Smt,90V,-1V,9mA,3.8k,9.5mA/V,μ36
詳細は3/6D-HH13参照
東芝1961年(3/6D-HH10シールド付き), NEC62, TEN
(原型・構造・特性)
6.3V,0.3A,Smt,90V,-1V,9mA,3.8k,9.5mA/V,μ36
詳細は3/6D-HH13参照
東芝1961年(3/6D-HH11シールド付き), NEC62, TEN
(原型・構造・特性)
6.3V,0.3A,Smt,90V,-1V,9mA,3.8k,9.5mA/V,μ36
HH10はTVチューナ高周波混合発振用双3極管。HH11はTVチューナ高周波増幅用双3極管。ともに,東芝1960年。HH12はTVチューナ高周波混合発振用双3極管。HH13はTVチューナ高周波増幅用双3極管。ともに東芝1961年。これら一連のサブミニュニア管のうち,HH10とHH11はシールド・ケースなし,HH12とHH13は付き。前者は市販されなかった?。これらはRCAのニュービスタ(これを日本で生産した日立,三菱)に対抗してミクロビスタと呼んだ。
4R-HH2を原型にサブミニチュア化したもの。引き出し線を短くできることから電極間容量を小さく抑えることができ,高チャンネルの感度差改善に役立った。小型化によりヒータ電力も節約できたが,HH10,HH11では放熱面で問題があった。このため,HH12,HH13ではシールド・ケースをガラス管に密着させたため放熱効果が改善できた。
NEC(日電),5751(12AX7高信頼管)類似。マイクロフォニック,グリッド電流改善。
(原型・構造・特性)
6.3V,0.36A/12.6V,0.18A,MT,250V,-1V,1mA,-,1mA/V,μ70
低周波増幅用双3極管(業務管)。NEC。1963年頃。12AX7の高信頼管5751に類似。低雑音。
12AX7の高信頼管5751を原型に,マイクロ・フォニック雑音(電極の機械振動による雑音)とグリッド電流を低減。カソード温度の適性化により12AX7,5751より長寿命。ヒータ・カソード間絶縁を向上。
TVチューナ高周波増幅用双3極管。松下1963年頃。
(原型・構造・特性)
6.3V,0.365A,MT,90V,-,7mA,-,8mA/V,μ44
4/6R-HH2のフレームグリッド版に相当。そのまま差し替えできると宣伝。
日立62, TEN
6GH8A同等。600mA版。
映像増幅管。NEC67.7
ヒータ600mA管はJEDECに登録されてないのでJIS名を取ったとある。
(6U8相当)NEC
ラジオ用中間周波増幅5極管・低周波増幅3極管。東芝1957
(原型・構造・特性)
6.3V(5.7V-6.9V), 0.5A, mt21-2
(V)250V,100V,-1.0V,9.0mA,3.0mA,300k,3.5mA/V,-20V(40μA/V), Eb300V, Esg125V, Ebsg300V, Eg0V,3W, 0.4W
(H)100V,-1V,0.5mA,80k,100,1.25mA/V, Eb300V, Eg0V, Pb0.5W,
250V, -2V, 1.2mA, 62.5k, 100, 1.6mA/V
6R-DHV1の2極部を取り除いたもの。構造上の無理を改良したもので,フィードバックがかけられるので優れた周波数特性が得られる,5極部のカソードとヒータを分離したため,ハムの発生が少なくなり,5極部にAVCがかけられる。とある。
中間周波増幅段に使用する可変増幅率5極部,低周波電圧増幅段に使用する高増幅率3極部を同一管内に封じた9ピン・ミニアチュア管。5極部のgmは6BA6と6BD6の中間程度(3.5mA/V)で使いよく,3極は6AV6と同一特性。第2検波としてゲルマニューム・ダイオード等を使用することにより,使用球を減らし,良好な音質が得られるので高級HiFiスーパ・ラジオ受信機の製作が可能。通信機,測定器の球数を減らし,スペースを節約できる。
ちなみに,この球より前に,サン真空管は6W-DH3Aという球を発表している。これは2極部と3極部のカソードを分離し,ハムやNFBの問題を解決しようとしたものである。世はHi-Fiラジオ時代を迎えていた。東芝のこの球の発想は同じ,すなわち,2番煎じであった。
トランスレス・ラジオ用中間周波増幅5極管・低周波増幅3極管。東芝1961
(原型・構造・特性)
28.0V, 100mA, mT21-2
(V)250V,100V,-1.0V,9.0mA,3.0mA,300k,3.5mA/V,-20V(40μA/V), Eb300V, Esg125V, Eg0V, 3W, 0.4W, Ehk+/-200V
(H)250V,-2V,1.2mA,62.5k,100,1.6mA/V, Eb300V, Eg0V, Pb0.5W
100mA系のトランスレスラジオ用。ヒータ電力もほぼ同等で,6R-HV2のトランスレスとしての絶縁特性を付加したマイナーチェンジ版とみて良い。