ANTIQUE JAPANESE RADIO/日本の古いラジオ

日本の真空管の開発の歴史

戦後日本のラジオ・TV球-JIS名/CES規格の球-

P Series : 電力増幅用4極・5極管

(1998.7.10)+(1999.1.16)
HomePageVT/CESp.html

written by Koji HAYASHI, Ibaraki JAPAN


目次

電力増幅用4極・5極管の概略

[日本標準名称制度以前の球]

UZ-31MC, UY-38A, UY-46C,

UY-47A, UY-47B, UX-47C, UZ-47D

[日本標準名称制度の球]

(1-10)  12Z-P16Z-P13Y-P112Z-P1A

2Y-P2(UY-1F4), 3Y-P3(UY-47B), 3Z-P4/6Z-P4(UZ-2A5,UZ-42)

6Z-P5(UZ-6L6A), 3Y-P6, 12G-P7(N053), 2Y-P8

30G-P9, 6R-P10

(11-20)  19R-P11, 8M-P12, 4M-P12/6M-P12/9M-P12

P13は欠番, 6R-P15, 6B-P16

6M-P17, 6M-P18/7M-P18, 7M-P18A, 15M-P19

6M-P20/8M-P20/25M-P20

(21-30)  4M-P21, 6R-P22/7R-P22/9R-P22, 30M-P23

P24は欠番, 12R-P25/50R-P25, 3M-P26/4M-P26/6M-P26

30M-P27, 6R-P28/50R-P28, 5M-P29, 5M-P30

(31-)   P31は欠番, 30M-P32

JIS/CES登録されてない近代出力管

#3041

3S4-SF, 3W4/3S4-SF

5極複合管:LP

8R-LP1

5極複合管:HP

8R-HP1/32R-HP1, 6R-HP2/8R-HP2/32R-HP2

6R-HP3/8R-HP3/10R-HP3, 8R-HP4

5極複合管:DDP

6R-DDP1

5極複合管:PR

9C-PR1

5極複合管:PP

13R-PP1

5極複合管:HHP

11C-HHP1

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電力増幅用4極・5極管の概略

JIS/CES登録の受信管で最も古い分類の1つがこの電力増幅用4極・5極管である。登録が確認されている通番はP1からP32までの29品種で,P13,P24,P31は欠番となっている。外形記号の違う品種(3Y-P1)や改造品種(12Z-P1A,7M-P18A)を別に数えると全部で32品種あり,外形の内訳はSTが9品種,GTが2品種,7ピンMTが14品種,9ピンMTが5品種,9T9が1品種,マグノーバルが1品種である。

米国RETMA(EIA)では,ユニットが同じでも足(ベース接続)が異なる球には異なる名前を付けられているが,JIS/CESでは初期の頃,中身に重きを置いて命名され,ベース違いでは6Z-P13Y-P1,同一ベースで配置違いは6Z-DH36Z-DH3Aとされた例がある。しかし,後期では,同一ベースで配置違いの球に別名5M-P29,5M-P30が与えられた。

また,日本標準真空管名称は初期の頃,ビーム管は5極管(P)に分類されていたが,戦後になって(B)が割り当てられた。このため,分類(P)には初期の頃登録されたビーム出力管6Z-P5(UZ-6L6-A)が存在する。さらに,真空管設計技術の進歩と共に両者の境界が曖昧になり,1960年代に入るとビーム翼を持つ球も5極管(P)に分類されるようになった。原物でビーム翼が確認できるものとして,12R-P25/50R-P25,3M-P26/4M-P26/6M-P26,6R-P28/50R-P28の3品種がある。一方,国内で開発されたにもかかわらずJIS/CES名を名乗らず,米RETMA(EIA)名に添え字を付した名称を名乗り,さらにその後RETMAに正式に登録して別名を名乗った球(3S4-SF,3W4/3S4-SF)がある。この球も収録した。

(補則:5極管とビーム出力管の分類について)

ビーム出力管は米国で使われた名称で,欧州では広く5極管と呼ばれていた。RCAが1937年に発表した6L6がその第1号であるが,当時の定義は

  1. 臨界距離;G2-P間距離を空間電荷が自然に下がる位置に最適化することでG3が不要になる,
  2. 目合わせ;G1巻線とG2巻線の目合せをして電子流にビームを作るとともにG2に電子流が流れ難くする,
  3. ビーム翼;グリッド支持棒方向の電子流は臨界距離がずれ焦点が合わないのでカソード等電位の遮蔽板をG3の代りに使用する,

の3点と考えられる。(1)だけの球は6L6以前にイギリスで既に商品化されていた。また,1960年代に米国で影のグリッドを採用したビーム出力管も出現している。

  1. (4)影のグリッド;巻線は同一ピッチでも端部は目合せが不完全になるため板フレームに並行線を貼り合わせG2が完全にG1の影になるようにしたものを採用したビーム出力管

これに対して5極管は,当然,時代とともにビーム管の技術を取入れた設計が行われるようになった。このような例は先のJIS/CES球に限らず世界的に多く見られる。例えば,フィリップス系のEL86/6CW5シリーズ(1950年代末)はもともと5極管であり同系列の松下も5極管の6CW5を製造していたが,1960年代途中から松下はG3をビーム翼に変更し最大定格を引き上げて同一名称を名乗っていた。これは,もともと5極管でありながら途中で同特性のビーム出力管に設計変更された例であるが,もともとビーム出力管でありながら,5極管として通用していたものに欧州系の6BM8/ECL82系の出力部がある。マニュアルに一貫して5極管として記載されているが,国内各社が製造した球は当初からビーム翼がありG3は無かった。6CA7/EL34は米国の各社がビーム構造のものを製造しており,両方が同時に流通していた。JIS/CESでは登録者の判断で(B)と(P)に分けたようである。

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日本標準名称制度以前の球

(詳細は略)工事中

UZ-31MC

UY-38A

UY-46C

UY-47A

UY-47B

UX-47C

UZ-47D

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12Z-P1

トランスレス・ラジオ用5極出力管(12V,0.15A)。NHK・東京電気(マツダ)。1939年。

(原型・構造・特性)

(特性)12.0V,0.15A,ST38-3,6B,

180V,180V,-10V,15mA,2.5mA,rp130k,gm=1.75mA/V,RL12k,1.0W

100V,100V,-5.5V,7mA,1.0mA,rp160k,gm=1.4mA/V,RL16k,0.25W

(推定T)180V,-10V,17.5mA,μ8,gm=2.0mA/V,4k

 原型は米国RCAで1931年に開発された6.3V管の238/38で,これを150mAヒータでレス化しさらに高感度化したもの。誕生の2年前(1937年)に日本は中国大陸で戦争(日支事変)を始め,国内での鉄,銅が不足するとともに政府による物資統制が強化され,ラジオのトランス・レス化案が一挙に浮上した。

 米国では,1933年頃に既にトランスレス・ラジオが実用化されていたが,これは従来の300mA系の6.3Vラジオ管6A7,78,6B7を利用し,直列点火が可能なように専用出力管43,整流管25Z5を新たに開発したものである。この米国方式は,全管合計電圧は68.9Vで残りは抵抗で消費させるためヒータ点火だけで30VA,全消費電力は40VA前後を要したのに対して,国内標準は全消費電力が20VA程度だったのである。その後,国内のレス管の開発と同じ時期(1938〜1939年頃)に米国でも経済的な150mA系オクタル管のレス球(12SA7,12SK7,12SQ7,35L6/50L6,35Z5)がようやく誕生した。当時,国内ではST管の製造設備しかなかったから,米国の新型メタル管やGT管がただちに国産化できる訳でもなかったが,1936年以降に発表されたこの種の6L6,6H6,6L7などは,国内ではST版に焼き直したUZ-6L6A,Ut-6H6A,Ut-6L7Gとして国産化していたのである。したがって,もし米国のレス管の開発がもう少し早かったならば,あるいはUt-12SA7A,Ut-12SK7A,Ut-12SQ7A,UZ-35L6A/50L6A,UZ-35Z5Aなるものが誕生していたかも知れない。

 そんな訳で,国内のレス管開発は米国の150mAレス球とは独立に進められたのである。その結果,ヒータ電圧に違いが見られる規格となった。6.3V,300mA管の150mA化は米国では12.6Vとなったが,日本では12.0Vとなったのである。これはヒータ効率の違いから生じたものである。

 NHKは150mA系トランスレスST管を企画し,東京電気が開発した。レス用の出力管にはヒータ電流を揃える必要がある他,傍熱型であること,また従来の再生式ラジオをそのままレス化するには感度の高い出力管が必要であった。ところが,国内標準のUY-47Bは国内開発品種であり,傍熱型は作られておらず,またこれに相当する省電力型,高感度,傍熱型小型5極出力管は本家米国には作られていなかった。省電力型,傍熱型の米国球は238/38(6.3V,0.3A)が唯一相当品種であった。この球は国内でもマツダがUY-38として作った記録があった。そこでこれを原型としてトランスレス出力管を新たに開発した訳であった。

 12Z-P1は,38のヒータを150mAシリーズのヒータに置き換えるにあたり,戦後普及した米国規格の12.6VではなくNHKが定めた日本独特の12.0V規格を採用したため,ヒータ電力は原型の1.89W(6.3Vx0.3A)よりも僅かに小さい1.8W(12Vx0.15A) になった。ヒータ・ウォーム・アップ時間は10secであったが,この当時の規格は恐らく後にTV時代に600mAシリーズが誕生した頃ほど厳格ではなかったと思われる。設計に際して,プレートの形状を38の楕円筒形ではなく,41,42と同じ円筒形が採用された。感度改善には,グリッドをカソードに近接させgmをUY-38の1.05mA/VからUY-47Bなみの1.75mA/Vに引き上げた。そのかわり内部抵抗も110kΩから140kΩへとアップし,スクリーン電流が余計に流れるようになり,これを抑えると肩特性が悪くなった。プレートの材質はUY-38が黒化プレートを用いているのに対して,無垢のニッケル板を用いた。小型出力管であるから放熱には問題なく,またG1フィンも設けられている。しかし,gmを上昇させた割に,G2に特別の放熱対策を取らなかったことから,最大スクリーン電圧は180Vに抑えざるを得なかった。このため,180V動作時の定格は原型のUY-38と同じであるが,250V動作では38はスクリーン・グリッド電圧も250Vに設定でき2W以上の出力が得られるのに対して,12Z-P1はスクリーン・グリッド電圧を180Vに抑える必要があり出力は1.5Wとやや小さくなった。ベースには4142と同じUZ型を採用し,トップ・グリッドは廃止した。

(その後)1939年から生産されたが,戦時中1943年頃には全ての民生用受信管は生産が中止された。初期の12Z-P1は戦時下のガラス材料の入手難から外囲器のST管用ガラスは緑色のものが混ぜられているので一目で分る。マイカ板は円形で戦後の小型長方形よりも良くできている。ベースには刻印がある。

 戦後,生産が再開され各社で生産されたが,生産施設の破壊と再建,材料不足,熟練工不足,メーカーの乱立により品質が粗悪になった。またトランスレス・ヒータの製造技術は後のTV時代の1950年代中盤にようやく確立されたことからも分かるように,断線事故が多かったものと思われる。また,トランス・レスは修理がめんどうなため,ラジオ屋泣かせのセットとして嫌われたと云われている。戦後の一時期,電力供給事情が悪化しライン電圧がかなり落ちる場合もあった。トランス付きセットは85V端子などにヒューズを入れ替えステップアップにより回避できたが,このセットは無力であった。このため,10%以上のドロップに耐える175mA系も後に誕生した。しかし,電力事情の好転と品質の向上によりラジオの動作も安定したが,米国型の民生管の普及とともに使命を終えて保守管になり,1960年代には廃品種になった。東芝60(保守品種)

(名称の由来)日本放送協会NHKが型番12Z-P1と定格を決定し,東京電気マツダ支社が開発と製造を行った。1942年に日本標準真空管の名称方式が識者により約10年程検討された後当時の商工省(後の通産省)により制定され,登録第1号として改めて12Z-P1の名称がこの制度で付与された訳である。NHKの命名はほぼそれに沿っていたのである。同時に12X-K1,12W-C1,12Y-V1,12Y-R1,12Z-DH1などが登録されている。NHKは1941年このシリーズの球を用いて,トランスレス・ラジオ放送局型122号(12Y-V1,12Z-P1,24Z-K2,B49の3球式),123号(12Y-R1高周波増幅付き,B49B37に,他は同じ)を発表した。さらに,戦後,JIS名およびCES登録の出力管1号となった。

(時代背景) トランス・レス用ラジオ球は,米国では1933年頃に自動車などの移動用に交直両用の電源で働く球としてWHが倍電圧整流管25Z5を作り,またRCAが出力用5極管43を作ったのが始りらしい。これらはヒータ電圧が25Vであるが,電流が300mAで,特に自動車蓄電池用の規格として誕生した6.3V,300mA管と直列点火できるように設計されているのがミソであった。こうして,早くもトランスレス・スーパ・ラジオが誕生している。そのラインは,6A7-78-6B7-43-25Z56A7-6F7-43-25Z5(ヒータ電圧合計は62.6Vで残りは直列抵抗で消費)が典型であった。国内では球メーカのリーダ東京電気(東芝マツダ)が翌年の1934年に出力管UZ-43(25V,0.3A)と整流管KX-25Z5(25V,0.3A)を国産化している。国内スーパー用球は,低電圧2.5V系は1933年のUZ-57,UZ-58に続き1934年にUt-2A7を国産化しており,また6.3V系は1934年に5極3極Ut-6F7(6.3V,0.3A)が,翌1935年にUt-6A7が国産化され,スーパーラジオや,300mA系のトランスレス・スーパも国産化の体制は整っていた。しかし,国内ユーザに購買力が無かったため,結局,スーパー形式もまたレス・スーパも普及はしなかった。

 この頃は米国でも新しい球が次々と発表され,国内でも数年遅れで新しい球が次々と国産化(ライセンス生産)された時代である。しかし,米国では新作球が2.5V系から6.3V系に切り替わり,またスーパー形式へ,より大出力型へと移行していったのに対して,日本では,混信が無いという電波事情ならびに高価なセットは買えないという経済的な事情から,国内ラジオの標準形は2.5V系のまま並4型から高1付き再生式に緩やかに移行していったに過ぎなかった。特にラジオ用球への要求は,少ない球数と消費電力で高感度のセットを作ることにあり,高周波増幅・検波管は,旧来のUY-24B,UX-26B,UX-27に代るUZ-57,UZ-58の誕生が歓迎されたのに対して,出力管UX-12Aに代るペントードUY-47はあまり歓迎されず,より高感度で低電力のUY-247B/UY-47B(3Y-P3の項参照)を自ら開発することになった。また,専用の低電流整流管もKX-12B,KX-12Fと独自の発展を遂げた。その結果,省電力型の三ペン(UZ-57,UY-47B,KX-12F)再生式ラジオあるいは高1(UZ-58)付き4球ラジオが標準になりつつあった。国内球メーカは,しかし,多くのヒータ規格を抱え,米国で標準になりつつあった6.3Vへの統一化を望んでいたが,これは戦後まで果たせなかった。

(参考)米国系38

(UY-38)6.3V,0.3A,5F,250V,250V,-25V,22mA,3.8mA,rp110k,gm=1.2mA/V,RL10k,2.5W

(各μ120) 180V,180V,-18V,14mA,2.4mA,rp115k,gm=1.05mA/V,RL11.6k,1W

100V,100V,-9V,7mA,1.2mA,rp145k,gm=.875mA/V,RL15k,0.27W

米国系38は,同時期に開発された4142に比べて最も消費電力の小さい傍熱型5極管である。41や42と比べると,プレートの規模や損失は1/3程度。グリッド構造もラフであり,gmは1/3,内部抵抗は3倍といったところ。さらにガラス管の形状も見逃せない。38は他の球と同様に開発当時はナス管(238)だったが,1932年頃に米国でガラス管の規格が変更された際に41や42は比較的大きなST-14管に納められたのに対して,38は国内に普及していた小型のST-12が採用されており,日本の国内事情に良くマッチしていた。ただし,ベースはUY型の5本足で,トップ・グリッド管だった。ちなみにRCAの38クラスの球はWEではヒータ電力を強化した293A(UZ型,6本足),294A(UY型,トップ・グリッド管)が開発されている。米国製38のプレートの形状は6V6と同じ楕円筒形(初期は金網,後に全金属)であり,後の41や42の円柱型とは異なる古い形式である。ヒータは6.3V,0.3A,またプレート,スクリーン電圧を180V印加した場合,負荷抵抗約12kΩで1Wの出力が得られるが,gmが約1mA/Vと低いため1Wを得るのに12.7Vrmsの入力を要する。これは国内標準のUY-47Bよりも出力がやや小さい他,感度が悪いことを意味する。ちなみに,UY-47Bは180V,6kΩで入力13.8Vrms時に出力1.4Wが得られた。したがって,従来のラジオセットに使用するには感度向上が必要であった。

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6Z-P1

 ラジオ用5極出力管。東京電気マツダ支社。1939年〜1946年。12Z-P1の6.3V管。

(原型・構造・特性)

6.3V,0.35A,ST38-3,6B,

180V,180V,-10V,15mA,2.5mA,rp130k,gm=1.75mA/V,RL12k,1.0W

(推定T)180V,-10V,17.5mA,μ8,gm=2.0mA/V,4k

レス用12Z-P1を6.3V化した球で,戦後英国で出版された世界真空管マニュアルにも記載された日本を代表する球として本家12Z-P1よりも有名。6.3V化された時期は定かでないが,戦争中使用された東京芝浦電気のロゴ(マツダではない)入りの球もあるから,戦時中軍用に作られた可能性もある。戦後すぐに(1945年に),管球メーカによりラジオ球の6.3V化が図られ,6Z-P1も生産開始された。6Z-P1はヒータ電力が原型の12Z-P1(12.0V,0.15A)よりもやや大きく(1.8から2.205W),6.3V,0.35Aになっている。ちなみに,商用電源の低下時にエミッションを確保するためにヒータが増強された12Z-P1Aが1947年に作られたが,これでさえ12.0V,0.175A(2.1W)であった。6Z-P1の大ヒータ電力の理由はヒータ効率の差にあったらしい。一般に電圧が低くなるとヒータ効率が悪くなることは知られている。そこで,6Z-P1はヒータ電力の増強の道を陽に取ったのである(ヒータ効率の項参照)。12Z-P1の原型である米国38は6.3V,0.3Aであったから,これと比較するとヒータ電力を16%増強(6.3V,0.35A)してgmを約1.7倍に改良したことになる。この結果自体は悪くないのだが,ヒータ電力の大きさが,後の新型管6G6-G6AK6(6.3V,0.15A)と比較され劣ると言われる原因の1つになってしまったのである。

(モデル)東芝マツダの例(1)足が鉄ピン,(2)足が真鍮ピン,(3)足がクロム・メッキ。

(その後)6Z-P1は,戦中には軍用に東芝マツダ支社で作られていた(と思われる)。戦後には,マツダを始めとする国内各社は一斉に球の傍熱6.3V化を図ったが,その際に各社も6Z-P1の製造に参入し,従来のUZ-42などとともに生産開始した。6Z-P1は十分大きな出力(1W),内部抵抗が高くハムに強い,UZ-41UZ-42より安価で消費電流が少なくパワー・トランスや整流管も安価になる,などの利点があり爆発的に普及した。

 戦時中長らく保守用球が跡切れており,さらに戦災で消失したセットの買い直しのために,戦後すぐに真空管需要が急騰したが,1947〜48年頃には大手真空管メーカは戦災の復旧を開始したばかりで生産量はまだ僅かであった(1品種月産数千本程度)。このため,ラジオ・セット・メーカは球なしセットを山積みにし,町工場的ベンチャー企業が竹の子のように数多くの現れた(1947年頃60社以上あった)。この状況は1948年頃に解消したそうである。戦時中ならびにこの時代の球は,資材不足,熟練工不足,規格検査のルーズさが原因して,品質の低下と外観の「バラエティー」が生じ後世に「粗製乱造」といわれた。6Z-P1はこの時代の申し子である。球が不足していた戦後の一時期,6Z-P1はオーディオ用(電蓄)から高周波の送信機終段管としてまで幅広く用いられ,水冷では10Wの出力が得られたという蛮勇も伝えられている。

 ラジオ・セットでは,「普及型」には6Z-P1が,「高級型」にはUZ-42が使用され,早くから住み分けが確立していた。UZ-426Z-P1が負けるということは決してなかったのである。ラジオ用ST管生産のピークは1952〜1953年頃(年2000万本)であるが,ラジオ用MT管の国産化が1950〜51年頃に行われ次第に普及し始めると,1954年には年1500万本,1955年には800万本と落込んだ。したがって,大手ラジオ・メーカが6Z-P1の採用を止めたのは1954〜1955年頃である。マツダなどはラジオ用ST管の製造は続けていたが,自ら作っていたラジオ・セットには1955年を最後にST管は止めてしまった。面白いことに1954〜55年になるとラジオ用パーツ・メーカが出そろい,データ・シートまで整備されて,ST管ラジオ・キットが各社で販売開始された。これが下火になるのが1958年の終わり頃で,各社ともST管セットを廃止したのが1959年であった。これにより,6Z-P1は名実ともに保守用としてのみ販売されることになった。この球は保守用として1960年代後半まで生産が続けられた。(最近の記事によると1983年頃まで生産されたという未確認情報もある)。今日残っている規格表のパラメータに大メーカ間の違いは若干見られるが,特性曲線にも曖昧な部分があり,東芝(マツダ),松下,NECなどにもメーカ間の特性の差が見られる。

(ヒータ電圧の違いとヒータ効率対策)

欧州系のメーカは,ヒータ電流だけが0.3A/0.45A/0.6Aと異なる同一品種は,ヒータ電圧の低下にともなう効率低下分を予め電圧を若干引き上げて補償し,規格にも明示する方針を取っている。例えば6EJ7/4EJ7/3EJ7,あるいは13CM5,25E5など。これに対して,米国系メーカは伝統的にヒータ電力は変えずに球の規格に若干差異を残す方法を取ることが多かった。例えば,米国系422A5はヒータ電圧だけが異なる同一品種と見られており,ヒータ電力の違いも,6.3V,0.7A=4.41W,2.5V,1.75A=4.375Wと1%もない。しかし,ヒータ効率は明らかに異なるため,国産化したUZ-42UZ-2A5の代表特性のパラメータには若干の違いが見られる。近代TV球でも米国メーカは同一品種では同一ヒータ電力を原則としていたため苦労話が残っており,例えば0.6A系3CB6と0.3A系6CB6では,3CB6だけを特別なエージング工程を通してエミッションを強化する等の対策を行っていたそうである。米国系でも明らかにヒータ電圧(電力)を変えている球がある。例えば,50C535C5。これは別の理由から電圧を変えたものを作ったのであり,名称は同じに見えても異品種と数えられている。しかし,原則は6BQ6GT,12BQ6GT,25BQ6GTというように,ヒータ電力は不変である。

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3Y-P1

2.5V級ラジオ用5極出力管。開発者東芝マツダ?。1947年頃。12Z-P1の2.5V管。保守用。

(原型・構造・特性)

(特性)2.5V,0.9A,ST38-3,5B,

180V,180V,-10V,15mA,2.5mA,rp130k,gm=1.7mA/V,RL12k,1.0W

100V,100V,-5.5V,7mA,1.0mA,rp160k,gm=1.4mA/V,RL16k,0.25W

(参考UY-47B)2.5V,0.5A,5B,180V,180V,-19V,20mA,4.8mA,rp45k,gm=2mA/V,RL6k,1.4W

戦前からラジオに使われてきた直熱管UY-47Bの代替品種として開発された。ヒータ電力は12Z-P1(1.8W),6Z-P1(2.205W)に対して,2.5Vx0.9A=2.25Wとやや大きい。UY-47Bと比べると,ヒータ電圧は2.5Vに合せてあるが,電流は0.5Aのところ0.9A必要で,電力としては1.25Wから2.25Wへと80%余計に必要である。また,もともと6Z-P1は6本足のUZベースであるが,5本足のUYベースに合せるため,カソードをヒータの中点に結んでいる。これにより,見掛け上は代替が可能であるが,バイアスが(-19Vから-10V),負荷抵抗が(6kから12k)と変るため,そのまま差し替えが可能だったかどうかは不明。

(その後)生産は各社で行われた。カソードは中点に結ぶのは難しいので,実はベース内部でヒータの片側に結んでいるものがある(NEC製)。東芝は1951年から保守品種として1960年まで掲載。

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12Z-P1A

トランスレス・ラジオ用5極出力管。東芝マツダ。1948年。12Z-P1の175mA版。

(原型・構造・特性)

(特性)12.0V,0.175A,ST38-3,6B,

180V,180V,-10V,15mA,2.5mA,rp130k,gm=1.75mA/V,RL12k,1.0W

商用電源の安定供給ができなかった終戦直後,電源電圧が低い場合でもラジオが十分機能できるようにカソード温度を上げるために10%の電流を増強した175mAシリーズが誕生し,これに合わせて12Z-P1Aが生まれた。ヒータの断線を防ぐ意味で作った訳ではない。ホーム・スーパー・シリーズとして12W-C5,12Y-V1A,12Z-DH3A,12Z-P1A,30Z-K12が同時に発表された。電力事情の回復,鉄,銅の資材の流通とともに国産ST管トランスレス・ラジオは需要が無くなり,発表後数年でほとんど普及せずに終わった。なお,旧来のトランス付きラジオ用ST管は,米国系GT,MT球の国産化後もある程度の普及を見せた。

東芝60(廃品種)

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2Y-P2(UY-1F4)

電池用直熱型5極出力管。東芝マツダ。1942年。米国系ST管1F4の国産版UY-1F4の別名。

(原型・構造・特性)

(仕様)2.0V,0.12A,5K,135V,135V,-4.5V,9mA,2.2mA,gm=1.7mA/V,rp160k,RL=16k,0.36W,3.2Vrms

90V,90V,-3.0V,4.5mA,1.1mA,gm=1.4mA/V,rp230k,RL=20k,0.12W

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3Y-P3(UY-47B)

2.5V級ラジオ用直熱型5極出力管。東芝マツダ。登録1942年。国産UY-47Bの別名。

(原型・構造・特性)

(特性)2.5V,0.5A,5B,180V,180V,-19V,20mA,4.8mA,rp45k,gm=2mA/V,RL6k,1.4W

(参33)2.0V,0.26A,5K,180V,180V,-18V,22mA,5.0mA,rp55k,gm=1.7mA/V,μ90,RL6k,1.4W

135V,135V,-13.5V,14.5mA,3mA,rp50k,gm1.45mA/V,μ70,RL7k,0.7W

開発年代はUY-247Bが1932年。UY-47Bが1934年。この名称は1942年頃〜戦後の一時期一部で使用された。原型は米国の電池用直熱5極出力管33で,ヒータ電力を2.0Vx0.26A=0.52Wから2.5Vx0.5A=1.25Wに増強したもの。国産UY-33はヒータ材料の関係から断線事故が多く,これを2倍に太くしたものを使用したらしい。

(時代背景)

日本国内ではラジオの標準形は並4(24B-26B-12A-12B)であり,ラジオ用小型出力管には,並4時代には旧態然とした直熱型の3極出力管UX-112A(1928年国産化)/UX-12A(1934年国産化,フィラメント5.0V,0.25A,出力0.24W)が用いられていたが,米国では47が誕生しペントード時代を迎え,さらに6.3V傍熱管の41,42へと進んだのに対して,日本のペントード時代は独自の省電力の方向へ進んだ。すなわち,47では出力が大きすぎる,電源が大掛かりになってしまう。ペントードの良さを活かした小型出力管が欲しかった。そこで注目されたのが米国33であった。これを用いれば,省電力型の3球再生式ラジオが実現できる。

(その後)

UY-47Bの誕生により省電力型のペントード3球ラジオ(57-47B-12F)あるいは高1付き4球ラジオ(58付き)が標準になった。

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3Z-P4/6Z-P4(UZ-2A5,UZ-42)

ラジオ・オーディオ用5極出力管。東芝マツダ。1942年頃登録。米国2A5,42の国産版UZ-2A5,UZ-42の別名。

(原型・構造・特性)

(特性)2.5V,1.75A,6B,250V,250V,-16.5V,34mA,6.5mA,rp80k,gm=2.5mA/V,μ200,RL7k,3.0W

(特性)6.3V,0.7A,6B,250V,250V,-16.5V,34mA,6.7mA,rp100k,gm=2.2mA/V,μ220,RL7k,3.2W

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6Z-P5(UZ-6L6A)

オーディオ用ビーム4極出力管。東芝マツダ。1942年頃登録。UZ-6L6Aの別名?

(原型・構造・特性)

(仕様)6.3V,0.7A,6B,250V,250V,-14V,72mA,5mA,rp25k,gm=6mA/V,RL2.5k,6.5W

UZ-6L6Aは米国6L6-GのUSベースをUZベース(42などと同じ6B)に置き換えたもので,日本独自のもの。6Z-P5は各資料にIh=0.7Aと記されているが,他のパラメータは6L6Aと同じである。

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2Y-P6

電池用5極出力管。開発者年代不明。

(原型・構造・特性)

(仕様)2.0V,0.12A,5K,67.5V,67.5V,-6.0V,6.5mA,-mA,rp56.5k,1.15mA/V,μ65,RL7k,0.17W

(参考2Y-P2)90V,90V,-3.0V,4.5mA,1.1mA,gm=1.4mA/V,rp230k,RL=20k,0.12W

1F4/2Y-P2の低電圧動作時の出力アップを狙ったもの。2Y-P2の感度ならびに増幅率を犠牲にしてgmを維持しながらrpを1/4に低くしパービアンスを高め出力を倍増した球。

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12G-P7(N-052)

12Vラジオ用5極出力管。日本無線(JRC),1946〜1947年。Nシリーズ管。

(原型・構造・特性)

(仕様)12.6V,0.36A,GP7(G2,H,-,K,G1,G3,H,P)

250V,250V,-15V,35mA,8mA,rp60k,gm=3mA/V,μ180,RL6k(7k),3W,10%

(T) 250V,-20V,30mA,rp3k,gm=2.7mA/V,μ8,RL4k,0.88W

(参考42)6.3V,0.7A,6B,250V,250V,-16.5V,34mA,6.7mA,rp100k,gm=2.2mA/V,μ220,RL7k,3.2W

 ボタン・ステム型GT管。GTベース・シェルは後に国内で普及したズンドウ型8GBではなく,後に一部の米国型整流管に見られたT29バルブを下から丸く包み込むようなベース・シェルであった。またガラス頂部は偏平2段型で欧州形式のようである。代表特性は米国42類似で,ヒータ電力が同じであるが,gmがやや高く感度が少し良い。rpがやや低く負荷RLはやや低めで同程度の出力が得られる。

 戦時中に開発した一連の軍用球を民生用に転化したもの。日本無線の三鷹工場は戦災を受けなかったため,終戦とほぼ同時に生産が開始され,1947年末には月産3,000個程度を生産。同時発表に12G-C4(N-361),12G-R4(N-051),12G-V3(N-053),12G-DH4(N-231),12G-P7(N-052)があった。ヒータ電流は0.36A,0.22A,0.22A,0.22A,0.36A。ヒータ電圧が12.6Vに統一されているからバッテリー点火が可能で,メカニカル・バイブレータを用いて高圧を発生させれば移動無線用に使える。これが軍用に開発されたこのシリーズの本来の使用法である。

(その後)記録には自社生産のラジオに使用とあるが,広告も出しており,一般にも販売したらしい。ラジオ用とした場合には,ヒータ電圧が12.6Vに統一されているだけで,高圧は通常通りであるから,何等メリットはなかった。またボタン・ステムはオーバー・スペックであり,他のラジオ球の生産が回復すると,コストや仕様の点から市場に食い込むことができず,販売をやめたものと思われる。なお,日本無線はこのシリーズが民生用受信管の最初で最後の登録球となり,以降は受信管の直接的な開発,生産から撤退し,もっぱら真空管用部品(ゲッタ材)を国内で独占的に供給する会社として君臨した。

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2Y-P8(UY-1F4類似)

電池用5極出力管。品川電機。1947年。

(原型・構造・特性)

(仕様)2.0V,0.12A,5K,135V,135V,-4.5V,7.8mA,2.0mA,RL12k,0.31W

進中軍GHQの要請で製作。代表特性は米国1F4類似とあるが,東芝マツダの2Y-P2/UY-1F4に比べてややIbが少ない。

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30G-P9

トランスレス(175mA)・ラジオ用5極出力管。東芝マツダ。1948年。

(原型・構造・特性)

30.0V,0.175A,GT?,7AC,180V,90V,-7.0V,30mA,5.0mA,gm=4mA/V,RL=6k,1.5W

(UZ-42)

6.3V,0.7A,ST42-?,6B,

250V,250V,-16.5V,34mA,6.7mA,rp100k,gm=2.2mA/V,μ220,RL7k,3.2W

(35L6GT)200,110,-8,41,2,40k,5.9mA/V,RL4.5k,3.2W

175mAシリーズは戦後東芝により開発されたもの。ヒータ電力は(30V,0.175A=5.25W)であり,同じ175mA系の12Z-P1Aに比べて2.5倍,米国42系と比べてもやや大きく(6.3V,0.83A相当),米国ビーム管35L6-GTと同じ電力。また,gmは35L6-GTに比べるとやや低いが,42系の約2倍である。12Z-P1Aと比べると出力180V動作時に感度,出力とも50%アップしている。パラメータからすると12Z-P1の並列動作のような特性である。

(時代背景)12G-C5,12G-R6,12G-DH3,30G-P9,30G-K5同時発表。

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6R-P10

広帯域(ビデオ)電力増幅用5極管。ECL,NTT,NEC(日電)。1955年頃。通信用管。

JIS名5極出力管で初のMT管で,登録業務用管の第1号でもある。電信電話公社(現NTT)の電気通信研究所(ECL)で開発され,開発初期の名称はECL-1071,製造・開発はNEC(日電)が担当した。NECのマニュアルによると,電極容量が少なく,低陽極電力で高gmと低歪,長寿命の特徴を持つ通信管,ビデオ増幅器あるいは広帯域中間周波増幅器の電力増幅段に好適とある。

(原型・構造・特性)

6.3V,0.5A,mT21-3,Cin=10.5,Cout=2.7,Cgp=0.05

150V,150V,Rk60,36mA,8mA,13.5mA/V,RL1.8k,1.0W,(絶対最大)200V/6.5W,170V/1.7W

(設計最大推定)180V/6W,150V/1.5W,Ik50mA

(推定T) 150V,-2V,44mA,μ20,17mA/V,1.18k

 NTT通研は,戦後の国内通信網の整備計画の一貫として,1953年から広帯域増幅用の通信用MT管の開発を進め,6M-H1,6R-R8とともに6R-P10が誕生した。特に,6R-P10は超多重電話ならびにテレビ中継器に用いる周波数70MHzの中間周波増幅器に用いる増幅管として開発したもので,帯域幅が10MHzと広いため,特別に大きなFm(figure of merit,fm=gm/(2π(Cin+Cout))を持つように,高gm化と低容量化をはかった。この結果,このクラスの出力管ではトップのFm=162を達成した。

 我が国の通信用真空管の技術は,戦前戦後ともに米国WEに大きく依存している。戦前は,WEと技術提携関係にあったNEC(日電)が公衆回線用の通信事業を独占し,WEの通信用管の国産版をもっぱら製造していた。しかし,戦争により日米関係が悪化した時期には,通信管開発は日本独自に進めざるをえなくなり,結果的に日本固有のST管,CZシリーズが誕生した。しかし,戦時中,米国ではレーダ等の電波兵器の開発と多量生産が進み,結果的にVHFやUHFに必要な送受信管の技術開発や製造技術の確立が行われた。日本は通信管の分野でも大きな立ち後れ状態に陥り,新型管の開発の主流は再びWE管の後追い,国産化に終始せざるを得なかったわけである。

 米国WEは,戦時中に高周波増幅用の5極MT管6AK5,グリッド接地型3極MT管6J4,送信管に登録した小型双3極MT管2C51などを開発したが,戦争遂行のために技術公開し米国各社が同じものを多量に生産している。例えば,TungSolは6AK5を月産100万本作っている。このため,これらの球はWE名でなくRETM(RETMA,EIA)の受信管や送信管の名称を持っている。さらに,戦時体制が解除された1945年以降,開発した通信管には再びWEの名称(400番代)が付けられ,WE-404A,WE-407Aなどが登場した。

 一方,国内ではこの頃MT管の国産化を始めたばかりで,通信用管と言えば旧態然とした戦前に開発したST管のCZシリーズしか無かった。NTT通研による通信管の開発は2つの方向に進み,1つはCZシリーズのMT管化,他方は通信のマイクロ波技術に必要な球の開発にあった。いずれも,国内の製造設備で製造できる実用管に向けられ,WEの適当なMT管を改良する形で進められた。後者の目的で開発されたもののうち,6M-H1は6J4,6R-R8はWE-404A,19R-LL1は2C51(WE-407A)に範を取ったものであった。

 ところが,6R-P10だけはWEに原型が見当たらない。このクラスのMT出力管は,WEが相当管を開発していたかどうか判らないが,実は民生管の分野ではTV用のビデオ管として各社が開発に凌ぎを削っていたのである。当時,米国では,広帯域増幅に使用できる民生用管としては,戦前にRCAが開発した6AG7,戦後はRaytheonの6AH6(1949?),RCA?の6AU6(1949?)が知られており,TV受像機の開発競争が始ると,さらに新しい球としてビーム構造を取入れたRCAの6CB6(1952?),6AG7をMT管に置き換えたRCAの6CL6(1952年),さらに戦後のビデオ管を決定付けたCBS-Hytronの12BY7(1952?)が出現した。ところが,日本では,戦前に開発された東京電気(東芝)のUZ-6302,6304(1939)やNECの()などがあるだけ,戦争により中断後はTV放送計画が復活するこの時期まで日の目を見なかったのである。

 

6AH6(6.3V,0.45A) Cin=,Cout=,Cgp=300V,150V,160Ω(-2V),10mA,2.5mA,9mA/V,500k

6AU6(6.3V,0.3A) 250V,150V,68Ω(-1V),10.6mA,4.3mA,5.2mA/V,1M

6CB6(6.3V,0.3A) 200V,150V,180Ω,9.5mA,2.8mA,6.2mA/V,600k

6CL6(6.3V,0.65A) 250V,150V,-3V,30mA,7mA,11mA/V,150k,2.8W

12BY7A(6.3V,0.6A) 250V,180V,100Ω(-3.1V),26mA,5.75mA,11mA/V,93k

6R-P10(6.3V,0.5A) 150V,150V,60Ω(-2.64V),36mA,8mA,13.5mA/V

 

fm=gm/(2π(Cin+Cout))

6AH6(6.3V,0.45A) 9.0mA/V,Cin=10.0,Cout=3.6,Cgp=0.02, fm=105.4

6AU6(6.3V,0.3A) 5.2mA/V,Cin= 5.5,Cout=5.0,Cgp=0.0035,fm= 78.9

6CB6(6.3V,0.3A) 6.2mA/V,Cin= 6.5,Cout=2.0,Cgp=0.025, fm=113.5

6CL6(6.3V,0.65A) 11.0mA/V,Cin=11.0,Cout=5.5,Cgp=0.12, fm=106.2

12BY7A(6.3V,0.6A) 11.0mA/V,Cin=10.2,Cout=3.5,Cgp=0.063, fm=127.9

6R-P10(6.3V,0.5A) 13.5mA/V,Cin=10.5,Cout=2.7,Cgp=0.05, fm=162.9

 

 6R-P10の原型は,どうも12BY7(CBS-Hytron,1952年頃,6.3V,0.6A)と推定される。

12BY7Aと比較して,ヒータ電力が17%小さいが,IKを38%増加させ,gmが22%大きい。3接時の増幅率μ20で同程度,rpは1.2K程度である。その代り,最大定格は設計最大換算(推定)で180V/6W,150V/1.5W,Ik50mAとなり,やや小型管に属する。

また電力管というよりは電圧増幅に重点を置いており,増幅率μ(g1-g2間)は約20と比較的大きい(民生管では12BY7Aクラス)。3極管接続時の仕様は,推定で下記のようになる。

 電極外観は,米国6AH6を縦に延ばした形をしており,シールド用箱型フレームの中に,カソードに対面する2枚の板状プレートがあり,その間に各グリッドがある。本球の構造的特徴は,g1に国産出力管として初めてフレーム・グリッドを採用した点,ならびにg3に4本の支柱で代用させた点である。

 高gm化にはカソード・エミッションの強化とg1-k間距離の短縮の2つの方法があるが,前者はヒータ電力の増加をもたらし,後者は島効果による歪率の悪化をもたらす。6R-P10は高ゲインの小型管を狙っておりヒータ電力は余り大きくできないので,歪率悪化を犠牲にして,フレーム・グリッドにより巻線の細径化と密巻化を図り,高gm化したものである。このため,特にスクリーン電圧の最大定格が低い。また,電極間容量を小さくする要求から,プレートの形状は小さい。ヒータ電力が比較的小さいことから,プレート・サイズも最小限になっている。

 歪を抑えるために,Eg<0Vが必要である。Eb-Ib特性図には,ゼロバイアス電流は記載されておらず,Eg=-1V以下が表示されている。プレート損失も関係しよう。

 

(その後)NECの他,通信御三家(NEC,TEN,日立)の各社,東芝も製造した。東芝と日立は1962年頃参入。

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19R-P11

搬送波電力増幅用5極管。ECL,NTT,NEC(日電)。1952(試作)〜1955年。通信用管。

(原型・構造・特性)

19.0V,0.2A(3.8W=6.3V/0.6A),mT21-3,Cin=9.5,Cout=5.5,Cgp=0.15

120V,120V,-7V,35mA,7.5mA,25k,5.5mA/V,RL4k,25dB(約3W?),

275V/8.2W,165V/1.9W

(推定)120V,-7V,42.5mA,μ7.5,6.7mA/V,1.1k

業務用第2号である。原型は12BY7Aあたり(6.3V0.6A)?。ECL-1070。NTT通研の電話用搬送装置小型化のために計画された戦前のCZ管などST型通信管のミニュアチュア管化の実用化研究により誕生。この球は戦前に開発され現用のCZ-504D(UZ-42相当の通信管)の後継管として開発された。短距離搬送装置,多重マイクロ波通信回線端局装置,電力線搬送装置などに利用された。

(同時に)他に,CZ-501-D相当の電圧増幅用5極管19M-R9(ECL-1069),米民生管6CB6相当の通信用電圧増幅用5極管19M-R10(ECL-1135),米WE407A/2C51相当の電圧増幅用双3極管19R-LL1が同時に開発された。この新しいシリーズはヒータ電圧を戦後最も普及した6.3Vではなく19Vを採用している点が珍しい。19V採用の理由は多量に用いる通信管のヒータ用トランスの効率化にあると思われる。ちなみに,戦前の逓信省の依頼でNECが1939年頃に開発したCZシリーズの主な電話用業務管にはヒータ電流が1Aに統一され,ヒータ電圧は3.5V(CZ-501D,502D)と5V(CZ-503D,504D)が使われていた。それより後の1940年頃に開発された同軸ケーブル用5極管CZ-511,CZ-514はヒータ電圧が後に標準となる6.3Vを採用し,ヒータ電流を0.6A,0.7Aと違えていた。

(その後)通信御三家(NEC,TEN,日立)が製造。

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8M-P12

レス(300mA)TV音声出力用5極管。東芝マツダ。1955年頃。米国6AR5の改造球第1弾。

(原型・構造・特性)

8.5V,0.3A,mT18-3(T18,69mm),6CC,

(CES松58/60)180V,180V,-6V,25mA,2.5mA,-,4.5mA/V,RL6k,1.8W

(T60) 180V,180V,-6V,28mA,5.0mA,-,5.5mA/V,RL6k,2.0W,10%(Thw11sに規定されてない)

(NEC56.4) 180V,180V,-6V,25mA,5.0mA,-,5.5mA/V,RL6k,2.0W,275V/9.4W,275V/2.75W

 近代民生出力管の第1号。原型は米国41系のMT管6AR5。FM検波増幅管6BN6(6.3V,300mA)の音声出力最大5Vでフルにドライブできる米国のビーム管6BK5(6.3V,1.2A)を国産化すると同時に,そのローコスト・トランスレス版として開発。

 改造点はヒータと感度である。

(1)ヒータ電流を300mA系にした,ヒータ電力は6AR5(6.3V,0.4A=2.52W)とほぼ同じ(8.5V,0.3A=2.55W)である。ただし,後の300mA系と異なり,ヒータ・ウォーム・アップ・タイムが規定されてない。

(2)gmを原型の約2倍にUPし,感度を改善した。なおピン配置,電極外観は6AR5に同じ。この球のもう1つの特徴はビーム管でないため製造が容易で価格が安い点である。ビーム管6BK5あるいは6AQ5の半分以下,原型の6AR5と同程度の価格である。

(その後)8M-P12はFM検波管6BN6(300mAシリーズ)に合せたトランスレス用管であるが,発売当時,国内では米国TV用300mAシリーズ球(水平偏向管25BQ6-GTやダンパ管25W4-GTなど)とトランスレスTV専用でない従来の300mA系のラジオ用やTV用等有り合わせの球を用いてトランスレスTVを作っており,商用電源電圧の違いから一部にヒータ・トランスが不可欠であった。さらにヒータ・ウォーム・アップ・タイムが規定されておらず,また300mA系TV球は確立されていなかったので,ヒータ事故が多かった。その後,国内では600mAシリーズが1955年に東芝により初めて完成され,600mAシリーズの4M-P12(改造が加えられている)の開発と同時に需要を譲り,すぐに保守種となった。東芝1957年,1960年保守品種。4M-P12の新規格の300mA管としては,後に9M-P12が開発された。

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4M-P12/6M-P12/9M-P12

レスTV音声出力用5極管。東芝マツダ。1955(600mA系4M-P12)。他にNEC(新日電)の450mA系6M-P12,東芝300mA系の9M-P12がある。6AR5系改造球。

(原型・構造・特性)

4.7V,0.6A/6.3V,0.45A/9.4V,0.3A/,mT18-3,6CC,(G1,K-G3,H,H,P,G2,NC)

(T60)180V,180V,-6V,28mA,5mA,-,5.5mA/V,RL6k,2.0W,10%,

{設計中心}200V/8.5W,200V/2.5W,Ehk+/-200Vac,Ehk<+100Vdc

(T62)180V,180V,-6V,25mA,5mA,-,4.5mA/V,RL6k,1.8W,10%,{最大定格は同じ}

(CES松58/60)180V,180V,-6V,25mA,5mA,100k,5.5mA/V,RL6k,2.0W

(RAD/NEC)180V,180V,-6V,28mA,5mA,-,5.5mA/V,RL6k,1.8W,10%,

{設計中心}250V/8.5W,250V/2.5W,Ehk+/-200Vac,Ehk<+100Vdc

4M-P128M-P12の600mA版であるが,原型の8M-P12とは構造や特性がやや異なり,改造が行われている。

(1)ヒータ電力の増強,すなわち,8M-P12の(8.5V,0.3A=2.55W)から(4.7V0.6A=2.82W)と約12%UPしている。

(2)代表特性のパラメータに関しては8M-P124M-P12に違いが見られる資料があるが,詳細は不明。(180V動作例では,Isgが2.5mAから5mAへ,出力が1.8Wから2.0Wへと変った)。東芝は1962年頃に,Ib,gm,Poを下方修正し,各社ともこれに習っている。

(3)最大定格も資料により違いが見られる。東芝は一貫して200V/8.5W,200V/2.5Wとしている。NECは8M-P12(1956年)では250V/8.5W+10%(設計最大)と発表し,後に下方修正を加えている。

一方,球の造りであるが,東芝の例を挙げると,初期の8M-P124M-P12を比較するとプレートの電極材料が変り長さも5mm長くなっている。この理由は部品調達の問題に深く関係している。東芝は8M-P12の開発では6AR5と共通の電極材料を使っていたが,1955年にTV用600mAシリーズを国内で初めて完成させ,FM検波管3BN6,ビーム出力管6AQ5の600mA版5AQ5の国産化と同時に,8M-P12の600mA版4M-P12を開発した。この際,4M-P12の電極材料として6AR5のヒータの600mA化版(4.2V,600mA)を新たに開発するよりも,同時に開発した5AQ5用の部品(ヒータ,カソードとプレート)を流用する方がコスト的に有利だったのである。(ちなみに,600mA版の5AR5は国内ではNEC(新日電)が後に発表した)。したがって,4M-P12は新たに設計しなおす必要を生じ,8M-P12と特性がやや異なることになったのである。したがって,後に6.3V版の6M-P12がNECにより製造されたがヒータは6AQ5と同じ450mAである。また300mA系は東芝により製造されたが,従来の8M-P12(8.5V)に対して9.5Vとなり,9M-P12と登録されたのである。このため,8M-P12は早くから保守品種になった。

(その後)開発後,NEC(新日電)1956年を初めに国内各社が参入し爆発的に普及,国内白黒TVの標準管となった。各社とも電気的特性は東芝が登録したCES規格に従っているが,電極材料は自社製造の6AR5あるいは6AQ5と共通化しているので,プレート電極の外形や寸法などはマチマチである。1967年頃の定価(4M-P12東芝と松下@350,NECと日立@340,9M-P12東芝@350)。ヒータ電圧が半端,出力も小さい,歪が多い(NECのマニュアルにはオーディオには向かないと明記されている)などの理由で,TV以外には用途が無い。大量生産されたはずだが,残った球は1960年代後半以降廃棄または投げ売り状態で米国に輸出された模様。今日,4M-P129M-P12などのまとまったストックは米国だけに見られ,国内では幅広く分散している。しかし,入手は比較的容易である。

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13欠番


35M-P14

レス・ラジオ(150mA)出力用5極管。NEC(日電)。1956年(10月)。欧州HL94/30A5(Philips)の35V管。

(原型・構造・特性)

35V,0.15A,mT18-3,7CV,

100V,100V,-6.7V,43mA,3mA,22k,9.2mA/V,RL2.4k,2.1W,10%,

150V/7.5W,150V/1.5W

欧州HL94/30A5の改造球第1弾。米国系35C5を用いたレス・ラジオの出力UPを目的に,HL94/30A5のヒータ電圧規格を30Vから35Vに変更しただけもので,電気的特性はHL94/30A5と完全互換。35C5と差し替えるだけで出力が上がる。

 ヒータ電力は,原型4.5Wに対し5.25Wだから,17%のパービアンスUPになるはずだが,発表されている代表特性パラメータ,最大定格は同じであり,矛盾がある。ヒータ電力が無駄に消費されるだけとすれば,カソード温度が高い分だけ短寿命となる。現存する唯一の中古サンプルは,ガラス管内が銀化,黒化し,エミ減球である。小型キャビネットのレス・ラジオはただでさえ高熱化するが,無効ヒータ電力がこれに拍車をかけ,短寿命だったことを物語っている。その後,国内メーカは多数のHL94/30A5の改造球を作ったが,パラメータが異なり,完全互換管はこの球と後年開発された100mA系の45M-P21だけである。

(その後)35M-P14は代替品種であるが,レス5球スーパのヒータ電圧合計は,35C5で107.8V,30A5で102.8Vだから,国内では差し替えも原型のHL94/30A5で十分であり,35M-P14の積極的な存在価値は見出せない。したがって,極少量生産されただけで,早くから保守品種・廃品種になった。今日ではほとんど見つけることのできない球。

(時代背景)トランス・レスMT管5球スーパーは,米国系の12BE6,12BA6,12AV6,35W4とビーム5極管35C5の組み合わせが国内用として,50C5に変えたものが輸出用として1952年頃から生産された。ところが,商用AC電圧は米国117Vに対し国内は100Vだったことから,ヒータ電圧不足(合計107.8V)とB電圧不足(110V前後)となり,感度と出力不足に悩まされた。この解決策として,東芝は1953年頃に,整流管35W4を改造しヒータ電圧35Vを25Vに抑え合計97.8Vにする25M-K15を開発した。国内レス・ラジオは,なお低いB電圧で十分な出力をえる問題が残ったが,1954年頃に欧州Philipsが能率の優れた低電圧大電流型のMT5極管HL94/30A5を発表したお陰で他力本願的に解決した。HL94/30A5によりヒータ電圧は何の工夫もせず合計102.8Vとなり,また出力も得られることになった。松下は1955年,東芝は1956年に国産化し,国内で爆発的に流行,12BE6,12BA6,12AV6,35W4,30A5のラインが国内レス・ラジオのベスト・コンビネーションになった。なお,松下は同時に整流管も25M-K15よりも省電力型の19A3を発表している。

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6R-P15

オーディオ出力用5極管。東芝。1957年。6BQ5類似管。

(原型・構造・特性)

6.3V,0.75A,mT21-4/9BL,

250V,250V,-8V,54mA,6.8mA,32k,11mA/V,RL4k,6.8W,

300V/13.5W,300V/2.5W,μ17

原型はMullard/Philipsが発表したEL84/6BQ5(1955年あたり)。6R-P15は原型と比較して主要パラメータに若干の違いが見られほんの僅かに出力が大きが,特性の差は統計的誤差の範囲にあり,類似管というよりは完全な互換管である。EL84/6BQ5は,旧式の42系や6V6系に代る近代5極出力管で,米国や日本でもすぐに発売され人気を得た。米国EIA(RETMA)名は6BQ5で,国内ではフィリップスと提携していた松下が生産した。東芝はこの人気に便乗する形で代替品種を発表した。米国の7189,7189Aの発表よりも前である。

 6R-P15と原型との仕様上の違いを見出すのは難しい。ヒータ電流は僅かに少ない(0.76Aと0.75A)が,高々1%で誤差範囲である。ところが,パービアンスが4.7%程低く,3極接続時の増幅率も19から17へと低くなっている。この違いのお陰で,3極接続時にはゼロ・バイアス電流がやや大きく取れ出力も大きい。また,5極接続時にも出力が大きいと発表されている。しかし,公表されている5極接続時のEb-Ib曲線(Esg250Vのケースのみ)では,同一条件ではEL84/6BQ5の方がゼロ・バイアス電流が大きく感度も良いという結果になってしまうから,グラフの精度が悪いと思われる。

 構造の違いであるが,外観上フィリップス系(松下,Sylvania-NEC)はプレートが8角円柱型でカソードは楕円型であるからカソード対抗面は三角形になっているが,本球はRCA系の6BQ5などと同じ長方円柱型プレートとやや細いカソードを用いており,カソード対抗面は平面である。この構造は後に東芝の6BQ56GK6系にも採用されており,有意な違いとは考えられない。グリッド構造に改造点があるのだろうか?。

 ベース・ピンの仕様にはpin1にだけ違いが見られる。6R-P15の定義はG1,EL84/6BQ5はICである。しかし,ICの定義は内部接続することがあるという意味であり,実際手持ちのEL84/6BQ5を調べてみると,松下,Telefunken,東芝,東芝系シャープのpin1(IC)は全てG1に配線され,6R-P157189,7189Aと互換である。唯一,ロシア製6P14P(6BQ5互換管)がオープンであった。

 モデル:初期モデルは,上下に開口部があるプレート,角ゲッタ,G1フィン付きである。後期モデルは,開口部なし,丸ゲッタ,G1フィンは省略され切りっぱなしの長い棒だけが放熱のために残されている。各棒の材質はG1は銅色,G2はくすんだ銅色,G3は銀色でG1とG2に放熱が考慮された材料が使われている。マイカは2重で防振対策と考えられる。なお,フィリップス系6BQ5ではG3リング金属板が見られるが,6R-P15では3回程グリッド線を巻付けたもので代用されている。これは後の7189,7189Aでも同様である。

 さて,特性パラメータの違いを3極管接続時の例で詳しく比較してみよう。

(6R-P15)μ17=12.4mA/Vx1.37k at250V,-8V (グラフでは)μ17.5=14.5mA/Vx1.21k

グラフよりIb0(100V,0V)= 51mA,..G=3.57

Ib0(150V,0V)= 95mA,..G=3.62

Ib0(200V,0V)=145mA,..G=3.59

Ib0(250V,-8V)=70mA,代表例では60.8mAで違いが大きい。

G=3.60と置くと, Ib=3.6(-8.0+250/17)3/2=62.5mAで代表例に近い。すなわち,東芝発表のグラフ-8Vラインの250V付近はおかしく,自社の公表値と矛盾する。少し上を通り過ぎているようだ。精度が悪いと思われる。

(6BQ5)μ19=12mA/Vx1.58k at250V,-8V

(250V,-7.3V)μ19=12.6mA/Vx1.51k

(250V,-8.4V)μ19=11.1mA/Vx1.71k

松下のグラフよりIb0(100V,0V)= 45mA,..G=3.73

Ib0(150V,0V)= 84mA,..G=3.78

Ib0(200V,0V)=129mA,..G=3.77

Ib0(250V,-8V)=44mA,代表例は-7.3Vで53.5mA,-8.4Vで40.1mA。

G=3.77と置くと, Ib=3.77(-8.0+250/19)3/2=44.2mAで代表例に近い。すなわち,松下発表のグラフ-8Vラインの250V付近は正確だ。一方,6BQ5は東芝も発表している。数値パラメータは松下のものと同一であるが,グラフがやや異なる。

東芝のグラフよりIb0(100V,0V)= 40mA,..G=3.31

Ib0(150V,0V)= 80mA,..G=3.60

Ib0(200V,0V)=128mA,..G=3.74

東芝の6BQ5は,低電圧領域ではややパービアンスが低くなるという結果になる。これはグラフの精度の問題か,それともプレートの形状(松下は三角型,東芝は平板)に原因する?。

 (その後)東芝の他にTENが生産した。東芝は特性の優位性を強調して市場への食い込みを図ったが,ユーザの目を暗まし続けることはできず,結局1960年頃に自ら6BQ5の発売に踏み切った。6R-P15は,東芝が1961年頃に発表したHi-Fiシリーズ出力管にリストアップされているが推奨品にはなっていない。東芝が後に発売した6BQ5/8BQ571897189Aの電極外形は,カソードの大きさを含めて6R-P15と全く同じであり,初期の頃強調した特性の違いは消し飛んでしまったように見える。見えないグリッド部分に謎が残っているのだろうか?6R-P15の販売は60年代後半まで続けられ,米国にも輸出された。今日Reytheon,Sylvania,WestingHouse,の名がプリントされた6RP15(Made in Japan)が入手できる。

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6B-P16

超広帯域電力増幅用4極管。ECL,NTT,NEC(日電)。1957年(試作)〜1960年。通信用管。

(原型・構造・特性)

6.3V,0.6A,T29?-,150V,150V,Rk27,50mA,20mA,18k,26.5mA/V

業務用第3号である。マグノーバル管。NEC;6GHzのマイクロ波中継装置の中間周波電力増幅用に開発。FM206MHz。電気的特性はWE418Aに相当。ベース接続も同じ。冷却に十分注意。ECL-1179の開発名を持つ。原型は米国WE418Aで,電気的特性,ベース・ピン接続が同じ互換球。ベースは今日のマグノーバル。6GHzのマイクロ波中継装置の中間周波増幅。フィギア・オブ・メリットは206MHz。通信用管の互換球は米Bell研究所で開発されたWEシリーズを原型に,単なるコピーではなく各国で独自に開発が進められており,電気的特性が同じでも詳細が異なることから,それぞれ独自の名前を名乗るのが流儀となっていたらしい。民生用管の場合は,世界の主要メーカが米国球を中心に互換球を生産したことから米RETMA(EIA)名が世界標準となり互換球も同名を名乗ったのとは対象的である。同時期に,電圧増幅用5極管6R-R21(ECL-1084,WE435A(1951)類似),6B-R22(ECL-1144EWE448A同特性),グリッド接地型電圧増幅用3極管6R-H2(ECL-1175WE417A同特性)があり,やや遅れて6B-R23がある。マグノーバルの規格はオランダ・フィリップスが1961年に作った(NECの資料)とされるが,これらのシリーズ管には既に使用されている。6B-P16は開発の最終段階で,米国RETMA(現EIA)に登録されたばかりのこの最新のベースに設計変更したとされている。したがって,マグノーバルの発表は1950年代の終わりでなければならない。

(その後)NEC,日立などで生産された。また,6B-R23の開発時に,電極から出た電子が外囲器のガラスに衝突する際に放出するガスを防止することで長寿命管の寿命を改善できることが分り,衝突電子を吸収する緑色の塗料を外囲器内面に塗装する技術が開発され,以後6B-P16にもこれが採用された。したがって,開発初期モデルはクリア・ガラスであるが,6B-R23の開発された1960年頃から緑帯で内部が見えなくなった(はず)。

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6M-P17

トランス付(6.3V)TV用音声出力用5極管。東芝。1960年。4M-P12に続く6AR5改造球第2弾。

(原型・構造・特性)

6.3V,0.5A,mT18-3,6CC,

250V,250V,-8V,32mA,5.5mA,90k,5.2mA/V,RL7.6k,3.4W,250V/8W,250V/2.5W

4M-P12の改良版。ヒータ電力(4.7V0.6A=2.82W)を10%増強(6.3V0.5A=3.15W)し,ガラス管を若干長くしたもの。4M-P12と電極の外観,ピン配置は同じで,最大定格やgmもほぼ同じ。4M-P12の代表特性は180V動作が発表されているのに対し,6R-P176AR5と同じ250V動作のものが発表されている。東芝のマニュアル(62年)に出ているプレート特性曲線にはプレート損失が12Wと書き込まれているが,7.5Wの誤りらしい。

4M-P12とどこに違いがあるのか定かでないが,1つはトランス付きの高圧+B動作管であること,また1つは歪みがやや低く抑えられているという点らしい。もう1つは販売戦略。4M-P12の6.3V管6M-P12はNECが販売していた。4M-P12系は180V動作例のみが発表されているが,ヒータUPして高gm化しているため高圧をかけて3W以上の出力を得るには無理があったものと思われる。

(その後)東芝だけが生産し,自社のTVに盛んに用いた。今日でも一部入手できる。

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6M-P18/7M-P18

6.3V系およびレス(600mA)TV用音声出力用5極管。東芝1960年。HL94/30A5系改良第1弾。

(原型・構造・特性)

7.5V,0.6A,mT18-3,7BZ,

200V,180V,-5V,35mA,5.5mA,24k,11mA/V,RL5k,3.2W,

250V/7.5W,200V/2.0W

低電圧大電流型の欧州管HL94/30A5を原型に新しく作られた改良球第1弾。ヒータは(30V0.15A=4.5W)から(7.5V0.6A=4.5W)と同じ。概観も同じ。原型は低電圧大電流型であったが,これを200V動作可能にしたもので,パラメータや特性は異なる。最大定格は(Eb150V7.5W,Esg150V1.5W)が(Eb250V7.5W,Esg200V2W)に引き上げられた。ピン配置は6AQ5と同じ。

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7M-P18A

レス(600mA)TV用音声出力用5極管。NEC(新日電)。1961年(8)。7M-P18の改良球。

(原型・構造・特性)

7.5V,0.6A,mT18-3,7BZ,

200V,180V,-5V,35mA,5.5mA,24k,11mA/V,RL5k,3.2W,

275V/8.25W,220V/2.2W(設計最大)

最大中心の旧規格のデータもあり,原型の7M-P18と全く同じ仕様と最大定格。原型とどこに差があるのか不明。

 電極構造の外観上の差は,原型(東芝製の7M-P18)がプレート・フィンを持っているのに対して,NEC製では省略されている点で,プレート損失はむしろ不利である。ただし,フィンの有無はプレート材料の放熱特性や経済性などとのバランスで決まり,プレートの形状やフィンの有無は表に現れる性能仕様とは直結していない。これらはメーカの選択事項であり,本質的な差とはならない。フィンの省略はNEC製の30M-P27などにも見られる。

 7M-P18Aは,Aが付くからには東芝の6M-P18の改良型でなければならない。代表特性が同じで最大定格も同じだ。考えられる差異はヒータウォームアップタイムの規定である。NECはこれを明記するくせがあった。一方,東芝はAを付けずに済ます習性があった。これが真相ではないか。したがって,東芝の7M-P18とNECの7M-P18Aは完全互換と考えられる。

(その後)NECだけが製造した。それほど普及せずに終わった。

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15M-P19

レス(300mA)TV用OTL音声出力5極管。松下。1960〜61年。HL94/30A5の300mA管。

(原型・構造・特性)

15.0V,0.3A,mT18-3,7CV,(K-G3,G1,H,H,G1,G2,P),12.5pF,8.0pF,3pF,Cgh0.4pF

100V,100V,-6.7V,43-43mA,3-13.5mA,22k,9.2mA/V,RL2.4k,2.1W,12%,μ7.8

絶対最大165V/8.25W,165V/1.65W,Ik110mA,Eg0-50V,Rg0.5/1M,Ek+150/385V,Ek-100/385V

低電圧大電流型の欧州管30A5のコンパチ管第2弾で,ヒータ(30V0.15A)を(15V0.3A)とした。ピン配置,最大定格は同じ。かつて,松下はNHKと共同で15CW5を用いたOTL垂直偏向出力回路とTV音声回路の研究を行っていた。この球は,その廉価版である。

(その後)松下だけが製造。松下のTVには,音声出力回路に15M-P19を2本使用したOTLアンプが使われた。

(参考HL94/30A5)

30.0V,0.15A,mT18-3,7CV,(K-G3,G1,H,H,G1,G2,P),

100V,100V,-6.7V,43-43mA,3-11mA,22k,9.2mA/V,RL2.4k,1.9W,10%(4.3Vrms(6.0V))

設計中心150V/7.5W,150V/1.5W(peak2.5W),Ik100mA,Ek150V

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6M-P20/8M-P20/25M-P20

6.3V(600mA)/450mA系レスTV音声出力用5極管。日立1961年。レス(150mA)ラジオ出力用5極管。日立1964年。4M-P12,6M-P17に続く高圧動作用の第3弾。

(原型・構造・特性)

6.3V,0.6A/8.4,0.45A/25.0V,0.15A,mT18-3,6CC

185V,185V,-6V,42mA,9mA,27k,10.5mA/V,RL4k,3.6W,

275/10W,275V/2W(設計最大)

原型は米国の高感度出力管6EH5/25EH5/50EH5系と思われる。原型は簡易機器の出力用に大ヒータ電力(6.3V,1.2A)の下でgmを20mA/V近くまで引き上げて高感度を狙った出力管だが,自己発熱のためPb,Psgは5W,1.75Wに,またEb,Esgは(設計中心)135V,117V,(設計最大)150V,130Vに制限されている。

 6M-P20は,50EH5のヒータ電力を1/2に削減し,パービアンスを1/2として,高圧動作用に改造したものと考えられる。50EH56M-P20の3極管接続は次のように推定される。

50EH5の3極管接続(推定);Eb115V,-3.3V,53mA,18.4mA/V,μ=15.3,rp=0.83k

6M-P20の3極管接続(推定);Eb185V,-6V,51mA,12.75mA/V,μ=15.4,rp=1.2k

両者の増幅度μはほぼ同じである。また,Eb-Ib曲線を描くと6M-P20のゼロ・バイアス電流は50EH5の丁度半分になっている。これは,6M-P20のヒータ電力が1/2に削減され,パービアンスGが半減していることに符丁する。パービアンスは50EH5がEb115V,Eg-3.3VでG=6.1,一方6M-P20は185V,-6VでG=3.47であり,同一動作条件なら3.0近くとなろう。ヒータ電力の削減は,最大定格の引き上げにも繋がっており,Eb,EsgならびにPb,Psgは原型と比べて倍増している。このように6M-P20は,ヒータ電力を改造しただけで,他のパラメータをいじることなく高圧動作管に生まれ変わったことが判る。

 旧型の4M-P126M-P17と性能比較すると,ヒータ電力は4M-P12(4.7V0.6A=2.82W),6M-P17(6.3V0.5A=3.15W)に比べ,(6.3V0.6A=3.78W)とやや増加したが,gmは4M-P126M-P17のほぼ2倍で感度がUPされたことが判る。また,最大定格の面では,プレート電圧は旧型の2者が250V(設計中心),6M-P20は275V(設計最大)と同じだが,旧型管の電極設計は古い6AR5を原型としているためプレート損失は4M-P12(7W),6M-P17(8W)とやや低いのにに比べ,6M-P20はやや大きい10WにUPされているのが判ろう。

 電極構造を見ると,日立の6M-P20のサンプルでは,プレート外観は,カソード対抗面だけを平坦にした円柱型プレートを採用しており,これは将に50EH5と同じ構造である。また,日立のサンプルでは放熱フィンも取り付けられている。おそらくプレート材料も旧型管に比べると放熱の面で改良されていると思われる。なお,ピン配置は50EH5系ではなく,旧型の前2者と同じく6AR5型が採用されており,旧型管の保守用としても使用できるよう考えられていることが判る。

(その後)NEC(新日電)は1966年に参入。450mAシリーズの8M-P20はNECによって作られた?また,三菱もNECのOEM製品を用いた。

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45M-P21

レス(100mA)ラジオ出力用5極管。東芝1961年。HL94/30A5の100mA管。

(原型・構造・特性)

45V,0.1A,mT18-3,7CV,

100V,100V,-6.7V,43mA,3mA,22k,9.2mA/V,RL2.4k,2.1W,10%,

150V/7.5W,150V/1.5W

ヒータ(30V0.15A)を(45V0.1A)とした。当然,ピン配置は30A5と同じ。トランスレス・ラジオ用100mAシリーズは,従来の150mAシリーズ(12BE6,12BA6,12AV6,50C5,35W5)に代る省エネルギーの5球スーパ用新型管(18FX6,18FW6,18FY6,35GD5,32AM3)として米国に誕生したが,日本国内では商用電圧が低いため使えなかった。このため,国内メーカは,周波数変換だけ米国型の18FX6を使うが,整流管はヒータのいらないシリコン・ダイオードとし,さらに検波用2極管に相当する部分にゲルマニューム・ダイオードを当ててヒータ電圧を節約することで,100mAシリーズの活路を見出そうとした。出力管35GD535C5の類似球であり,AC100Vの半波整流した+Bでは十分機能しないことから35C5に対して欧州系の30A5が使われたように,35GD5に対して30A5の100mA版である本45M-P21が誕生したのである。また,検波用2極・低周波増幅3極管18FY6の2極部を取り除き,中間周波増幅5極管18FW6を複合化した新型管28R-HV2も開発した。これにより,ようやく100mAのトランスレス3球スーパが誕生したのである。

(その後)国内主要球メーカは輸出用に100mAシリーズを生産したが,国内需要に限って言えば,150mAシリーズを新しい100mAシリーズに変えるメリットは全く無く,さらに国内は既にトランジスタ時代に入っていたため,全く普及せずに終わった。

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6R-P22/7R-P22/9R-P22

カラーTV色信号検波・増幅用5極管。東芝。6R-P22(6.3V管)は1961年。7R-P22(レス600mA)/9R-P22(レス450mA)は1963年。

(原型・構造・特性)

6.3V,0.65A/6.7V,0.6A/9.0V,0.45A/,mT21-3,9BV

250V,150V,-3V,Eg3=0,22mA,8.5mA,55k,8.5mA/V,gm(g3-p)0.35mA/V,

300V/7.5W,300V/1.7W

(参考6CL6)250V,150V,-3V,30mA,7mA,150k,11mA/V,RL7.5k,2.8W

原型は6CL6で外観は類似し見分けがつかない。ピン配置も6CL6に同じ。カラー復調用の第1と第3グリッドによる2重制御管。通常の電圧増幅管による色信号検波と異なり電力感度を持たせており,TVセットのコスト低減ができる。電力管であるためJIS/CESのPシリーズに登録された異色の出力管。サプレッサには基準信号(3.58MHz,22Vpp)を加え,グリッドに色信号(8Vpp)を加えてサプレッサのgmを制御,同期検波する。プレートには50Vppの復調出力が得られる。この球を使用すると水平ブランキングがカラー受像管のグリッドに掛けられないので,第2映像増幅回路のグリッド側へ水平負パルスを加えて間接的に行う。カラーTVは3色あるため3本1組みで使われた。G3を正に設定すれば肩特性が良くなりおもしろい出力管になる。米国RCAのマニュアル等にも見られる。

(その後)初期の国産TVは21インチと17インチが開発されたが,価格が高く重量が大という欠点のため,1960年の正式放送開始後普及が鈍った。小型化とローコスト化の努力を進め,東芝は20万円を切る14インチ版を1961年末に発表した。6R-P22はこの時に開発され,以後普及型のカラーTVにもっぱら使用されたが,数年後に使命を終えた。

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30M-P23

オーディオ用OTLおよびラジオ出力用5極管。松下1961〜62。HL94/30A5の改良球第2弾。

(原型・構造・特性)

30V,0.15A,mT18-3,7CV,

110V,110V,-7.5V,50-50mA,3.3-13mA,25k,10mA/V,RL2k,2.6W,10%,

設計中心150V/7.5W,150V/1.5W,

絶対最大165V/8.25W,165V/1.65W,Ik110mA,Eg0-50V,Rg0.5/1M,Ek+180/385V,Ek-150/385V

(参考30A5)30V,0.15A,100V,100V,-6.7V,43mA,3mA,22k,9.2mA/V,RL2.4k,2.1W,10%,μ7.8

最大定格はOTL用にヒータの耐圧を強化した以外30A5と同じ。15M-P19に比べてもdc重畳時のヒータ耐圧が+30V,-50VUPしている。ピン配置は30A5に同じ。東芝によるとこの球は高出力化とある。確かに多少パラメータが異なる。ゼロ・バイアス電流が7%UPし,+Bを10%UPした動作では出力が20%UPした。

(その後)東芝1962。NEC(新日電)は1966年に参入。

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24欠番


12R-P25/50R-P25

レス・オーディオ用OTL出力5極(ビーム)管。東芝1963年。EL86/6CW5の改良球で,HL94/30A5系の改良第3弾。50R-P25は2本直列点火用,12R-P25は8本直列点火用。

(原型・構造・特性)

12.6V,0.6A/50V,0.15A,mT21-4,9CV,

110V,110V,-6.7V,75mA,6.5mA,8.6k,14.5mA/V,RL1.5k,3.2W,10%,150V/11W,120V/2W

120V,120V,-8.0V,80mA,6.5mA, RL1.5k,4.3W,10%

 EL86/6CW5系のパービアンスを高め,より低い+B電圧で大きな出力が得られる高感度のOTL出力管とした改良球で,HL94/30A5系の改良球第3弾と言える。原型と同じT21-3型のガラス管を使用したMT9pinのミニアチュア管で,ベースピン配置も同じだが,プレートの形が原型とやや異なり,内部構造もビーム管となっている。

 主な改造点はヒータ電力の変更であり,HL84/30CW5の(30V,0.15A,4.5W)から50V,0.15A,7.5Wに強化している。またヒータの耐圧がOTL動作を考慮して強化されている。他の主要パラメータには変更はない。トランス・レスのラジオ用出力管には,同族ながらヒータ電力が異なり性能仕様も異なる球のあることは有名で,例えば35C5に対する50C535EH5に対する50EH5などが知られている。もし50R-P25に米国EIA名が与えられたなら,50CW5と命名するところである。さて,ヒータの改造により,3接時のパラメータがどのように変ったか比較してみよう。

50R-P25(T) 110V,-6.7V,81.5mA,15.8mA/V,μ8.6,rp=0.54k,G=5.42

EL86/6CW5(T) 200V,-17.3V,64.1mA,9.4mA/V,μ8,rp=0.85k,G=3.0

このように,パービアンスは67%UPし,ゼロ・バイアス電流が増大した他,gmも原型の9.2mA/Vから14.5mA/Vに約50%UPしているのが判る。また,この改造にともない,最大定格(設計最大)は下方修正され,プレートとスクリーン・グリッドの最大電圧,最大損失はそれぞれ(275V,14W)から(150V,11W)へ,(220V,2W)から(120V,2W)へ変更された。

 ヒータは,商用電源100Vで直接点火できるように,50V,150mAの簡易点火版50R-P25が作られたが,一方で,多数の球を並列動作させるというOTLアンプの事情を考慮して,8本直列点火版の12R-P25も作られた。ただし,ドライバー管の点火は考慮されていない。

(サンプル)

50R-P25のサンプルは東芝製とNEC(新日電)製の2種類ある。50R-P25の電極外観(プレート外観)は一見原型のEL86/6CW5系と全く別者に見える。しかし,詳細に検討すると,類似している部分を見つけ出すことができる。

 東芝製を比較すると,原型はプレート横断面がやや偏平した6角形で側部ではK-P間距離が縮まるのに対し,50R-P25は平坦なカソード対抗面を広く取り側面だけを丸型にした箱型に近い偏平丸型プレートを採用している。これは,カソード面積を67%大きくした対策と考えられ,また縦寸法も原型29mmに対し3mm長い32mmであるが,基本性能を決めるK-P間距離は原型の最大距離に等しい。なお,プレート構造は1枚の板を折曲げて繋ぎ目を畳み込んだ一体成形の簡易型で,3本のリブと側面に排気穴が1つあるが,

放熱用フィンは省略されている。また,G1支柱頂部には菱形に囲んだ黒化フィン板が取り付けられている。G3はビーム翼である。EL86/6CW5系は5極管として知られているが,松下の後期の製品には既存のプレート内にビーム翼を詰込んだビーム構造の球も存在し,ビーム翼の有無が直ちに改造に繋がる訳ではないらしい。G1の支柱頂部には放熱用の馬蹄形黒化フィンが付けられている。

 一方,NEC(日電)のサンプルは,東芝と同様に偏平丸型プレートを採用しているが,カソード対抗面の平坦部で2枚の成形板をスポット溶接した構造となっており,繋ぎ目が僅かな放熱フィンを形成しているので,やや原型に近い外観をしている。G1の支柱頂部には放熱用の馬蹄形黒化フィンが付けられている。G3は東芝同様にビーム翼である。

(その後)

東芝が発表後,NEC(新日電)は1964年(8)に参入。一部の簡易ステレオに使われたが,OTLアンプの需要はそれほど無く,生産数は少なかったと思われる。今日,市場のストックは完全に底を尽いており,中古球が僅かに入手できる程度である。

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3M-P26/4M-P26/6M-P26

レス(450mA,300mA),6.3V系TV音声出力用5極ビーム管。東芝1963。HL94/30A5の改良第4弾。

(原型・構造・特性)

3.5V,0.6A/4.5V,0.45A/6.3V,0.3A,mT18-2,6CC

110V,110V,-10V,32mA,1.8mA,16k,4.25mA/V,RL2.8k,1.8W,10%,

165V/4.2W,165V/0.6W

30A5のプレートを半分にした形をしており,ヒータ電力は(30V0.15A=4.5W)から(3.5V0.6A=2.1W)と半分以下にし,最大損失もほぼ半分である。ただし,プレート,スクリーン電圧は新規格の165Vに引き上げられている。ピン配置は6AR5と同じ。米国の豆粒のような出力管6AK6は6.3V0.15Aで1Wが得られるのに,日本の代表的な出力管6Z-P1は出力が1Wのときに6.3V0.35Aも食っていると後年国内マニアから散々たたかれたが,この球の開発はある意味で日本の真空管技術の汚名を挽回したものとなっている。ヒータ電力こそ6AK6の2倍あり6Z-P1よりやや少ない程度であるが,何よりも100V前後の低電圧動作で1W出るのである。

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30M-P27

オーディオ用OTL出力5極管。松下,東芝,日立1964年。HL94/30A5改良球第5弾。

(原型・構造・特性)

30V,0.15A,mT18-3,7CV,

130V,110V,-9V,64mA,2.5mA,20k,10mA/V,RL1.6k,4.0W,12%,μ6.35

設計最大165V/10W,165V/1.65W,Ik110mA,Eg0-50V,Rg0.5/1M,Ek+180/385V,Ek-150/385V

(参考30M-P23)

絶対最大165V/8.25W,165V/1.65W,Ik110mA,Eg0-50V,Rg0.5/1M,Ek+180/385V,Ek-150/385V

ピン配置は30A5に同じ。ヒータの耐圧は30A5に比べて強化され30M-P23と同等。最大定格はプレート損失が30A5,30M-P23に比べて20%UP(8.25Wから10W),μがやや低くなり,ゼロ・バイアス電流が30A5より30%UPし,130V/110V動作時に出力が2倍となった。これにより50R-P25と対抗できるようになった。

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6R-P28/50R-P28

6.3Vおよびレス・オーディオ用ビーム出力管。東芝1964年。1968年には廃品種。

(原型・構造・特性)

50V,0.15A,9T29-?,-,

210V,210V,-11V,65mA,6mA,25k,11mA/V,RL2.5k,8.0W,10%,

265V/18W,265V/2W

簡易ステレオ用の9T9型出力管。JIS/CESの5極出力管Pシリーズでは初の9T9管で,また外形,最大定格,出力ともに最大の球である。JIS/CES登録球で9T9を採用した球は,この他に東芝の3極複合管6R-AL2があるのみである。最大定格は7M-P18の約2倍で,ヒータ電力は(50V0.15A=7.5W),プレート損失は(265V18W),スクリーンは(265V2W)である。ピン配置は6CW56BQ5と同じ。

 この球の特徴は,AC100Vを倍電圧整流した経済的な+B電源で,シングルで8W,プッシュ・プルでは6BQ5並みの17Wが得られる点にある。従来のオーディオ用出力管は,250Vから300Vの+B電圧を要し,完全トランスレス化すると動作中心点が低い+B電圧で制限され,十分な出力が得られないという欠点があった。これを解決するには,高いゼロ・バイアス電流を持つ球が必要である。AC220V前後の欧州では1950年代にEL86/6CW5などが開発され十分目的をはたしていたが,日本のAC100Vに適した球は外国から現れる訳がなく,自ら開発しなければならなかった。

 原型はゼロ・バイアス電流が大きく,高圧動作可能な米国のTV垂直偏向管21LU8系の5極部と思われる。まず,計算した3接特性を比較しよう。同じ9T9の6GC5(=6W6GT)も同時に示す。

6W6GT/6GC5(T) 110V,-7.5V,53mA,8.7mA/V,μ5.6,rp0.64k,G=1.25

21LU8(T) 120V,-10V,55.5mA,9.9mA/V,μ6.5,rp0.66k,G=2.25

50R-P28(T) 210V,-11V,71mA,12.0mA/V,μ12.0,rp1.0k,G=4.28

改造点は,倍電圧整流で得られるB電圧210V付近で手頃なプレート電流値と感度を持たせることにある。単に増幅率μを大きくすると,感度が高まるだけでなく,プレート電流が減少し,プレート損失も減ずるから,低電圧大電流型の球の場合は動作範囲を高電圧領域に拡大できる。しかし,μを過大にするとゼロ・バイアス電流も減少し,肝心の出力が得られなくなってしまう。そこで,パービアンスGも同時に増大させれば,ゼロ・バイアス電流を再び大きくすることができる。このバランスをうまく取ったのが,50R-P28である。増幅率μを約1.8倍大きく,パービアンスGも約1.9倍に引き上げることにより,5結時のゼロ・バイアス電流は,6W6GT/6GC5の65%,21LU8の50%程度になり,B電圧210V付近で最大出力が得られる高感度の球を作ることができた。しかし,高感度管の常として,歪率の悪化が避けられないということも忘れてはならない。当時は,歪率の悪化はNFBで救われると信じられていた。

さて,具体的にどう増幅率μとパービアンスGを調整したかであるが,3接の場合,パービアンスに関しては,これはヒータ電力とK-g2間ギャップにより決まる因子であるが,上の3者は全てヒータ電力は同じだから,新型管はK-g2間ギャップを狭くしていることが判る。

21LU86W6GTに対して,ギャップを25%減少すればGは1.8倍になるが,μは2.24に減少する。実際にはμは6.5だから,g1のピッチを0.60に減少する(蜜に巻く)あるいは線径を増加させるなどの方法でμを2.9倍していると思われる。なお,gmはGの増大では増加,μの増加では減少するが,トータルでわずかに増大する。50R-P28の場合も同様で,21LU8に対してK-g2間ギャップを28%減少させると,Gは1.9倍になるがμは4.7に減少する。グリッド線径を不変のままピッチを約0.64にすれば,μ12が得られる。結果的にgmは20%UPした他,高μ化のために5結時のゼロ・バイアス電流は小さく抑えられているが,3接時のゼロ・バイアス電流は21LU8に比べ約50%UPしている。

最大定格で見ると,一般にゼロ・バイアス電流が大きい球は電極損失の制限により,最大電極電圧は低くなる。21LU8が他のユニットで熱せられる複合管であるにもかかわらず,6W6GT/6GC5よりも遥かに高い電圧と損失が許されるのは,幾何学的な電極構造より,むしろ電極材料の進歩,耐高損失化によるものと考えられる。一方,50R-P28の最大定格(設計最大)は,21LU8系の400V/14W,Esg300V/2.75Wから265V/18W,265V,2Wとなり,印加電圧が引き下げられた一方でプレート損失だけは増加しているのが判る。電極材料は21LU8と同時代であるから同じと考えられるが,3接時のゼロ・バイアス電流が大きいことから判るように電極電圧は引き下げられた。またプレート損失が増加した理由は,21LU8にある他のユニットからの放熱が無くなったためである。スクリーン損失がやや低いのは,高gm化にともなう副産物であろう?

(オーディオ動作例)

 与えられた最大定格内で3接PP動作を考えると,50R-P28はμが21LU8の約2倍であるにもかかわらず,ゼロ・バイアス電流は50%UPである。しかし,同時にプレート電圧の制限を受け,動作は250Vまでに限定される。一方の21LU8は300Vまでの高圧動作が許されるので,より大きな出力が得られる。負荷を内部抵抗の2倍に取った簡略計算では,

21LU8 300V,RL1.5k,Po=15W

50R-P28 250V,RL2.0k,Po=10W

となり,高μ化した50R-P28は3接にやや不利であることが判る。

 しかし,一方で,最大定格におけるスクリーン最大電圧は,プレート電流で決められていると思われる。3極管接続で高負荷抵抗時にはピーク・カソード電流は100mA以下に制限できること,高圧領域では電流は流れないことを考慮すると,。。。

(サンプル)東芝製のみ。プレート外観は原型の21LU8の5極部と同一サイズで良く似ている。原型は平坦部分を広く取った偏平箱型プレートで,TV用に大量生産されたため1枚の板を成形し折曲げて綴じ込んでとした簡易型を採用している。50R-P28は側面に放熱フィンを持たせており,2枚の成形板をフィン部分で繋ぎ合せた構造をしている。プレート板には3本のリブがあり,各側面に排気用の丸穴が1つある。2本のG1支柱頂部にはそれぞれ十字型の黒化フィン板が独立に取り付けられている。G3はビーム翼である。

(その後)NEC(新日電)1965年(11)も作った。50R-P28はユーザにわずかにストックがある。

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5M-P29

レス(450mA)TV音声出力用5極管。NEC(新日電)。1965〜66年(2)。HL94/30A5 改良球第6弾。

(原型・構造・特性)

5.0V,0.45A,mT18-2,7CV,

110V,110V,-7V,45mA,2.5mA,22k,7mA/V,RL2.5k,1.7W,10%,

165V/6.0W,165V/1.0W

3/4/6M-P26系と同様に30A5をさらに小型化したもので,プレート・サイズは2/3程度,ヒータ電力は30A5(30V0.15A=4.5W)に対して(5.0V0.45A=2.25W)と半分であるが,最大定格は(Eb150V7.5W,Esg150V1.5W)から(Eb165V6W,Esg165V1W(1.8W))となり,プレート損失では20%減に留り,また最大電圧は新規格の165Vに引き上げられ,効率の良い球となっている。ピン配置は30A5に同じ。

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5M-P30

レス(450mA)TV音声出力用5極管。NEC(新日電)。1966年(4)。HL94/30A5 改良球第7弾。5M-P29のベースピン改良型。

(原型・構造・特性)

5.0V,0.45A,mT18-2,7BZ,

110V,110V,-7V,45mA,2.5mA,22k,7mA/V,RL2.5k,1.7W,10%,

165V/6.0W,165V/1.0W

5M-P29と双子で,ピン配置だけが異なり,7M-P186AQ5と同じベースを採用している。5M-P29より後に作られた。

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31欠番


30M-P32

レス・オーディオ用OTL出力5極管。不明。年代不明。HL94/30A5改良球第8弾。

(原型・構造・特性)

30V,0.15A,mT18-3,7CV,

110V,110V,-9V,64mA,2.5mA,20k,10mA/V,RL1.0k,2.65W,-%,

設計最大165V/8.25W,165V/1.65W

ピン接続,最大定格は30A5と同等だが,ヒータの耐圧は強化されている。ゼロ・バイアス電流が30M-P27よりやや高く,低+B電圧(110V)で30M-P27(130V)と同じ電流が得られる。30M-P23と比べると同じ110V動作では,バイアスをよけいにかけて(-6.7Vから-9V)も大電流型になっており,出力は同じだが最適負荷が低い。したがって,よりOTLに向いた特性となっている。

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JIS/CES登録されてない出力管

3041

マツダ東芝1955, ('07.2.3補足)

補聴器用SCO-2極5極サブミニ管。#3040とともに開発。

Ef01.25V, If10mA, Eb22.5V, Esg22.5V, -1V, Ib0.2mA, Isg0.06mA, rp-, gm0.3mA/V, mu10, po1.6mW

3S4-SF

マツダ

3W4/3S4-SF TEN,NEC

 

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5極複合管:LP

8R-LP1

レス(600mA)TV垂直偏向発振・出力用3極・5極複合管。日立1962年。8B8(6BM8系)の5極部と7AU7の片ユニットの複合管。

(原型・構造・特性)設計最大

8.0V,0.6A,mT21-4,-,

(P)150V,150V,-10V,50mA,10.5mA,-,7.9mA/V,RL3k,3.5W,12%,

設計最大250V/8W,250V/2.2W

(L)220V,-7.7V,10mA,-,3.4mA/V,-,250V/1W

150V,(1k),6mA,6.8k,2.5mA/V,μ17

原型は,5極部は欧州系8B8/XCL82(6BM8の600mA管),3極部は米国12AU7の片ユニットの最大定格を小さくしたもの(静特性は同じ)と思われる。8B8/XCL82は国内TVで便利な垂直偏向用出力管として使われていたが,同封の3極部は高μで垂直発振管には向いてない。一方,米国12AU7系の600mA管7AU7は初期の頃垂直発振・出力管として小型TVに用いられた実績があり発振には向いている。そこで,両者を組み合わせたのがこの球である。6BM8系はオーディオ出力管としても使われており,動作例が公表されている。日立のデータは両ユニットともオリジナルとは異なる電圧の例で紛らわしいが,ほぼ同特性と考えてよい。ただし,電極構造はECL82/6BM8系とは異なりその後継管6GV8/ECL85で初めて採用された構造,すなわち,3極部の縦サイズを1/3程度に縮めて下部に配置し,5極部の放熱を改善する方法を模倣している。このおかげで,5極部のプレート最大定格は1W程良くなったが,3極部の最大定格は1/3程度に下がり使用が難しくなった。8R-LP1の中古球を見ると分るが,3極部周辺のガラス黒化が激しくまたエミ減も多い。

(その後)松下は,68年にTV保守用真空管シリーズとして,新たに製作した。

[参考8B8/XCL82]8.0V,0.6A,mT21-4

(P)170V,170V,-11.5V,41mA,8mA,16k,7.5mA/V,μ9.5,RL3.9k,3.3W,10%,250V/7W,250V/1.8W

100V,100V,-6.0V,26mA,5mA,15k,6.8mA/V,μ10,RL3.9k,1.05W,10%

(H)100V,0V,3.5mA,2.5mA/V,μ70,250V/1W

100V,-1V,1mA,37k,1.9mA/V,μ70

(参考12AU7)250V,-8.5V,10.5mA,7.7k,2.2mA/V,μ17,300V/2.75W

100V,0V,11.8mA,6.5k,3.1mA/V,μ20

欧州6BM8/ECL82系は,日本国内では,TV用にまず16A8/PCL82(16.0V,300mA)と6BM8/ECL82(6.3V,0.78A)が,次いで8B8/XCL82(8.0V,600mA)が国産化され爆発的に普及した。またラジオ,オーディオ用に32A8/HCL82(32.0V,150mA),50BM8/UCL82(50.0V,0.10A)が,TV用では後に11BM8/LCL82(11V,450mA)が国産化された。さらに後継管として垂直偏向用には6GV8/ECL85(6.3V,0.9A)系,9/10GV8/XCL85(9.5V,450mA),18GV8/LCL86(18V,300mA)が誕生し,音声用には6GW8/ECL86(6.3V,0.7A)系,14GW8/PCL86(14.5V,0.3A)が誕生している。

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5極複合管:HP

8R-HP1/32R-HP1

レス(600mA)TV音声,レス(150mA)ラジオ用電圧増幅・出力用3極・5極複合管。東芝1959年。日立1959年。ECL82/6BM8系の600mA管8B8/XCL82,150mA管32A8/HCL82の同等管。

(原型・構造・特性)

8.0V,0.6A/32.0V,0.15A,mT21-4

(P)170V,170V,-11.5V,41mA,8mA,16k,7.5mA/V,RL3.8k,3.3W

(H)100V,(1k),1.9mA/V,μ70

原型は欧州8B8/XCL8232A8/HCL82で,全くの同等管。発表当時,国内では6BM8/ECL8216A8/PCL82だけが知られており,600mA管と150mA管は欧州や米国で発表されていなかった。そこで,国内で独自に開発し,JIS/CES登録したものと考えられる。

(その後)東芝は6BM8HiFiの他,8B832A8を1960年に発表し,8R-HP1の形跡を抹消している。また日立も同様と思われる。

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6R-HP2/8R-HP2/32R-HP2

オーディオ,レスTV(600mA)音声,レス(150mA)ラジオ用電圧増幅・出力用3極・5極複合管。NEC(新日電)。1960年(9)。欧州6BM8系の改良球。

(原型・構造・特性)

6.3V,0.78A/8.0V,0.6A/32.0V,0.15A,mT21-4

(P)250V,250V,-6.7V,30-31mA,7-14mA,-,8.8mA/V,RL6k,3.8W,300V/8W,300V/2W

(H)原型に同じ

欧州6BM8/ECL82系の改良。3極部は同じであるが,5極出力部のgmを70%UPし,感度を(6AV6-6AQ5)より25%UPしたもの。最大定格もUPしEsgmax250Vとなっている。初期の頃NEC(新日電)などが国内生産した6BM8/ECL82系は最大定格の低さとヒータ・ハムでユーザからのクレームが多く,NECでは製造途中から出力部のプレート材料を変更しPbを7Wよりもやや高めに強化にし,ハム対策も講じた規格外の球を出荷していたが,これでは歯痒いため自ら高規格の球を設計した。

(その後)各社とも6BM8/ECL82系の改良を実施し,しかも他の球に比べてコストが格段に安かったことなどから,6/8/32R-HP2はほとんど普及せずに終わった。

 なお,6R-HP2のシングル動作時の最適負荷に関して,武末氏(ラ技誌,63.12)は,NEC発表のRL6kは低すぎて十分な出力が得られない,実際には7〜10kが適当としている。この理由について,同氏は,NECはこの球の最適負荷をグリッド・インピーダンスが変化しない理想的な場合について示しており,現実とはギャップがある,フィリップス系の出力管は動作時にグリッド・バイアス変動が深めになるのを考慮して最適負荷を高めた実際的な値が示されている,として暗に国内メーカを批判している。

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6R-HP3/8R-HP3/10R-HP3

6.3V,600mA,450mA系TV同期分離・映像出力用3極・5極複合管。NEC(新日電)。1965年(2)。

米国系6U8Aの3極部と6EB8の5極部を複合管にしたもの。

(原型・構造・特性)

6.3V,0.75A/8.0V,0.6A/10.5V,0.45A,mT21-3

(P)200V,125V,(68Ω),25mA,7mA,75k,12.5mA/V,330V/5W,330V/1W

45V,125V,0V,40mA,15mA

(H)125V,-1V,13.5mA,6.4mA/V,μ33,330V/2W

3極部は6U8A(T)に同じ。5極部は米国6EB8(P)に同じ。映像出力管は一般に5極管が用いられるが,映像出力管は米国系では時代とともにパービアンスが上昇し,6AW8A(P),12BY7A,6EB8(P),12GN7に代表される4つの世代の球が使われた。この球の5極部はこの第3世代のグループに属している。また同期分離は,方式により2極,3極,5極管が使用されるが,一般に6U8のような小型3極・5極管複合管では3極部で同期増幅,5極部で同期分離を行っていたようである。また,映像出力管を複合化したやや大きい3極・5極複合管では,3極部は同期分離に徹していたようである。6EB8(P)の世代には,特性の類似した6GN8(P)や,5極部は6EB8(P)6AW8Aの3極部を用いた6HF8がある。JIS/CES登録された6/8/10R-HP3は,国内TVセット・メーカの都合でできた球と見ることができよう。

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8R-HP4

レス(450mA)TV音声用電圧増幅・出力用3極・5極複合管。三菱1965年。12AX7の片ユニットと5M-P29/5M-P30を複合管にしたもの。

(原型・構造・特性)

8.4V,0.45A,mT21-4

(P)110V,110V,-7V,45mA,2.5mA,22k,7mA/V,RL2.5k,1.7W,165V/6W,165V/1.8W

(H)100V,-1V,(0.5mA),1.35mA/V,μ100,330V/1.1W

原型は,5極部は5M-P29/30,3極部は12AX7の片ユニットで,特性は同等。従来の音声出力複号管は,旧時代の高圧用のものばかりで,省ヒータ電力型の低電圧動作出力管が無かった。そこで,450mAシリーズ用に開発された5M-P29/30と旧来の電圧増幅管を組み合わせた新しい複合管を開発したのである。開発の狙いはTVセットのコスト低減である。

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5極複合管:DDP

6R-DDP1

TV同期分離・映像出力用双2極・5極複合管。不明。1965年頃?。6AV6の双2極部と6EB8の5極部を複合管にしたもの。

(原型・構造・特性)

6.3V,0.75A,mT21-3,

(P)200V,125V,(68),25mA,7mA,75k,12.5mA/V,330V/5W,330V/1.1W

(D)10V,2.2mA,Ibmax=5mA

2極部は6AV6の双2極部に相当(特性が類似かどうか不明)。5極部は米国6EB8(P)に同じ。開発のコンセプトは6/8/10R-HP3に同じで,第3世代の映像出力管に同期分離用の2極管を組み合わせたもの。国内TVセット・メーカの都合で開発され,JIS/CES登録された球と見ることができよう。

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5極複合管:PR

9C-PR1

レス(450mA)TV音声検波・電圧増幅・出力用5極・5極複合管。NEC(新日電)。1966年〜1968年。4DT6A5M-P29を複合管にしたもの。

(原型・構造・特性)

(P)110V,110V,-7V,45mA,2.5mA,22k,7mA/V,RL2.5k,1.7W,165V/6W,165V/1.8W

(R)6DT6Aに同じ。

450mAシリーズ管4DT6A+5M-P29をコンパクトロン化したもので,各ユニットの特性は原型に全く同じ。音声検波・増幅・出力が1本で行える。開発の狙いはTVセットのコスト低減である。国産化された米国系の同目的の複合管には

6AL11(6.3V,0.9)/10AL11(9.8V,0.6A),250V,250V,6.5mA/V,RL5k,4.2W,10%

6BF11(6.3V,1.2A)/17BF11(16.8V,0.45A),145V,110V,8.6mA/V,RL3k,2.4W,10%

6T10(6.3V,0.95A)/12T10(12.6V,0.45A),(6AL11に同じ)

13V10(13.2V,0.45A),145V,125V,6.4mA/V,1.5W,7%

がある。検波部は全て同じで出力部のみが異なる。低電圧型は6BF11系と13V10系で,省電力型は13V10のみ。9R-PR1の方が優れているように見える。

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5極複合管:PP

13R-PP1

自動車無線用VHF出力増幅用双ビーム出力管。日立1964年。6360相当。

自動車電源に交流発電方式が普及し電源電圧が高めになったため,信頼性の観点からこれに対応させたもの

同時期に自動車用としてUHF電力増幅用双4極管8547(6369相当),5極管7M-R29(6BH6相当),4極管7N-R30(7587相当)が発表された。

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5極複合管:HHP

11C-HHP1

レス(600mA)TV一般増幅,同期分離・映像出力用双3極・5極複合管。不明。1965年頃?。米国6BD11の600mA管。

(原型・構造・特性)

11.0V,0.6A,C29-58,

(P)135V,135V,(100),17mA,4mA,45k,10.4mA/V,330V/4W,330V/1.1W

35V,135V,0V,34mA,13mA,

(H1)200V,-2.0V,7mA,12.4k,5.5mA/V,μ68,330V/1.5W

(H2)200V,(220),9.2mA,9.4k,4.0mA/V,μ41,330V/2.0W

米国6BD11(6.3V,1.2A)の600mA管。この6BD11には他に15BD11(14.7,0.45A)があるが,600mA管がなく,日本で開発してJIS/CES登録したもの。

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