ANTIQUE JAPANESE RADIO/日本の古いラジオ

Square of Homemade Tube Radios/自作管球ラジオの広場

Omni/Kato9/Kato2Tube.html


-工作簡単な真空管ラジオ-

Two Tube Radio Operated with DC 24V/

24Vで働く2球ラジオ

Takahiro KATO, Saitama Japan/埼玉県 加藤高広

(2000.2.13)+(2000.3.29)
(Takahiro KATO/加藤高広) c/o Radiomann
 

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24Vで働く2球ラジオについて

正面パネル兼シャーシ上面 (July 20 '99)

■はじめに

しばらく半導体ばかりいじっていたら、真空管でラジオを作りたくなった。 丁度ここの林さん主催のRadio-MLのオフ会が有るそうなので、手ぶらで参加も気が引けるので簡単な真空管ラジオを作ってみようかと思った。 実用回路では真空管と縁を切って既に30年以上が過ぎたので真空管は持っていても、部品が伴わなかった。 そこで、以下の目標で実験してみることにした。

(1)真空管用部品が最少で済むこと

部品は半導体回路で使う耐圧の低いものが使えるようにし、わざわざ真空管用の高価で入手困難な部品を探したり購入する必要がないようにする。 50V以下の耐圧のコンデンサ(半導体回路用)はどこでも入手できる。 またプレート電流も少ないからトランジスタ用の1/4W抵抗で十分まにあう。 ヒーターも含めた全電流は150mA少々なので、電源には小型トランスと整流器、そして24Vの3端子レギュレータを1個使えば十分。 ヒーターもDC点火になるからハムが出る心配もまったく無い。 真空管とソケットだけはやむを得ないが、このラジオに使える真空管は普通の人でもまだいくらでも手に入る。

(2)苦手なシャシ加工をしたくない

シャシ加工は面倒であるし、なにも四角い弁当箱スタイルのアルミシャシに真空管が乗っていなければ働かないわけでもない。 片面紙エポキシプリント基板がたくさん有ったのでこれに穴明けしてシャシ代用にする。 銅箔面を配線側に使う。 中波のラジオではあまり関係ないが、この方法は、どこでもバイパスコンデンサを接地できるから高周波回路向きの構造になる。 電圧が低いので耐圧や絶縁も気にならないからプリント基板の小片を瞬間接着剤で接着してラグ板の代わりに使えば部品がブラブラしないので安定する。

 

(3)感電しない回路

真空管の静特性をカーブトレーサで観測するとプレート電圧12Vでも動作しそう。 また、現に大昔のカーラジオには12Vで真空管を使っていた例がある。<図・1参照> しかし、できたらクリスタルスピーカーくらい鳴らしたいのでもう少し高い24V程度はどうか。 24Vなら感電しないし、半導体用の部品が使えるので目標(1)にも合致する。

(4)子供の夏休みの宿題に

ちょうど小学校6年生の夏休みの宿題の時期なので、見本を見ながらレプリカを製作させても良いかと思った。 しかし、実際にはもっとプリミティブなゲルマラジオを製作させた。 小学生が初めて作るラジオにはやや高級すぎたようだ。 大人でも楽しめると思う。

■回路説明

回路図はここ(GIF file)

 (1)プレート電圧を24Vに決めた理由

要素実験した結果、普通の真空管では性能低下せずに使えるプレート電圧は50V程度までのようだ。 しかしスピーカーを鳴らすとか、電力を取りだす必要がなければずっと低い電圧でも動作する。 再生作用に関係する、自励発振回路はプレート電圧6Vでも十分に発振できる。 スピーカーにクリスタル型を使うか、クリスタルイヤホンを使えば24Vというプレート電圧でもよく聞こえるラジオが作れそう。 24Vという低い電圧でどの程度の性能が得られるかが気になったので、単純な増幅回路や発振回路を実験用シャシに作って色々試した。

(2)真空管

特に5極管を使うメリットを感じなかったので3極管で実験した。 双3極管12AT7相当のSQ管、6201(日本電気製)でほとんどの実験を行なった。 普通の12AT7でも差はない。 低いプレート電圧で少しでもプレート電流を流しやすい12AU7を実機には採用することにした。 但し、12AT7でも大差はないからどちらでも良い。 12AX7は内部抵抗が高く、24Vではプレート電流が必要なだけ流しにくいのであまり向いていない。 ヒーター電流が2倍になっても良ければTVでお馴染みの12BH7などを使うことも可能。 また、ヒーターとプレート電源が別系統になるが、TVのチューナ管、6R−HH2、6DJ8や6AQ8、GT管の6SN7GTなどでも良く、ほとんどの3極管が使える。 昨今オーディオに使える球は高いのでTV用の球の方が安価に仕上がるハズ。 6V管を使う場合、12Vの電源トランスを使い、2管直列でヒータを点火し、プレートには倍電圧整流で24Vを作れば良く、その方がトランスの入手も楽であろう。 また、やや性能が落ちるがプレート電源に12Vを使っても聞こえるラジオになる。(要回路定数変更) なお、出力段に内部抵抗の低い3極管、12B4Aを使いトランス結合にすれば、24Vでも少音量ながらダイナミックSPも鳴らせるはず。 

(3)回路定数

普通の回路定数ではこれだけ低いプレート電圧ではうまく働かない。 低いプレート電圧で、増幅度が高く、なおかつ大きな出力を取りだせるようにするのは難しいので、各段の動作点を変えながらうまく働く所を選んだ。 それでも、必ずしも再現性が良いとは思えないので、マネをしたい人は各自で多少の加減が必要。 少しでもプレート電圧を有効に使うために全てコンタクトポテンシャルバイアス(初速電子流によるバイアス)にした。 従ってあまり大きな信号では歪むが、ラジオなので心配は無用。 また、グリッドリーク抵抗と初速電流でバイアスを得ている関係で、この抵抗を任意に変えるとプレート電流が変化し、動作点が変化してしまう。 各段の信号レベルと、負荷抵抗、増幅度、前段への負荷などの影響を考えて決める必要がある。 球による加減が必要なので、再現性は必ずしも良いとはいえない。

(4)検波と再生

感度の高いグリッド検波を採用する。低い電圧で検波回路が十分な増幅度を持つことと、再生の度合いを加減することは両立しがたいので、再生は別の球を使い、再生度はこちらのプレート電圧を可変して加減することにした。 それぞれの動作に専念するので調整が容易で高性能が得やすい。 また、スムースに再生状態が加減できる。 この回路形式は短波ラジオに応用するための布石でもある。 再生回路は変形クラップ発振回路と等価の回路を使い、プレート電圧を加減してgmを変え、再生〜発振までの調整をする。 コイルにはタップやリンクが不要なのでどんなラジオにもコイルの改造なしに付加できる。 動作的には再生検波というよりも、アンテナ回路Qマルチプライヤ+グリッド検波と呼ぶべきかも知れない。 この再生回路はスーパ受信機のアンテナ回路に付加してもかなりの効果が期待できる。 再生をあまり強くすると発振状態になり、他のラジオに妨害を与えるので要注意。 但し、中波のラジオではAM放送なので発振状態まで再生は掛けないで使うから問題ない。

(5)低周波増幅

低B+ゆえ、負荷抵抗を高くして1段でハイゲインを得ることは困難なので、検波後に2段増幅する。 終段と前段との結合にトランスを用いると出力を得やすかったが、C−R結合で簡略化した。 クリスタルスピーカが入手できればスピーカーが鳴るラジオになるはずだったが、残念ながら入手できなかった。 代用品としてセラミフォンと称する薄型のセラミックスピーカーを付けてみたら、容量性が強いのでインピーダンスが低すぎて、大きな音を出すにはチョークコイル(AFC)負荷にしないとだめなようである。 端子間容量はクリスタルSPは数100pFであるのに対して、セラミフォンは数1000pFもあるから出力管には低い負荷インピーダンスで大きなプレート電流にする必要があるが、24Vでは十分なプレート電流が流せないのである。 50V掛ければ楽勝なのだが・・・。 従って、小さな音で我慢するか、クリスタル(セラミック)イヤフォンを使うことになった。 イヤフォンならクリスタルだろうがセラミックだろうが、ガンガン鳴る。

(6)アンテナ回路

説明の順序が逆になったが、アンテナ回路にはトランジスタラジオ用のバーアンテナを使った。 秋葉原で1本100円で普通に売っている。 バリコンには適当なものが無かったのでトランジスタラジオ用の2連ポリバリコンを並列にして使った。 このバリコンはアンテナ側だけでは容量が不足し、並列だと大きすぎるようであるが、気にせず使うことにした。 容量が大きめなので高いほうの延びが悪くなるが、バーアンテナの巻線を端の方にずらすとインダクタンスが減少して一応BCバンド全部をカバーできる。 なお、バーアンテナの巻線は、コアの中央に近いほどインダクタンスが大きくなり、またQも高くなるのでコイルをずらせると、インピーダンスが変化し、再生の掛かり方が変化する。 再生回路の定数はアンテナコイルによって加減が必要である。 しかし、検波を兼ねないから調整はしやすい。 結合のC4(22pF)を加減するだけで良い所を見つけるのは比較的簡単だった。

■製作結果

ステップバイステップで作っていったので、全部の完成以前から鳴ることは十分わかっていたが、完成して通電する時は緊張の一瞬である。 この瞬間が自作していて一番楽しい。 ややバーアンテナだけでは感度不足で、昼間はNHK東京第1と東京第2放送、東京放送(TBS954KHz)がやっとなので、補助アンテナとして1mくらいのビニール線を付けた。 これなら在京のラジオやFEN(810KHz)がまずまず聞こえるレベルになる。 アースも付けると夜間は混信が激しほど良く聞こえる。 アンテナコイルへの結合を小さくしてやった方が良いようだ。 但し、さすがに再生の威力、再生度を高く、即ち同調回路のQが高くなるようにすると選択度が向上し、十分に分離するようになる。 周波数が低いNHK第1(594KHz)では、さらにQを高くすると共振が鋭くなり過ぎてAM放送に必要な帯域幅以下になってしまい、モガつくようになる。 昔Qマルチ付きの受信機9R59(C)のIF−Qマルチプライヤを使った時の感触にそっくりだ。 バーアンテナの無負荷Qは200〜400くらいだが、たぶん再生を強く掛けた状態で、実効Qは数1000に及んでいるのだろう。 夜間では、遠く関西や九州の放送、また韓国の放送など聞こえ、簡単なラジオだが、オーバーに言えばBCLができる性能を持っているようだ。 アンテナ次第というところだろうか。 もう一度作るとしたら同調機構はもう少し工夫し、チューニングしやすい配慮を行ない、大きなツマミとダイヤルを付ければ実用的で楽しいラジオになるだろう。 また、感度も十分あるから、アンテナコイルを自作して、短波BCL/SWLラジオに仕立てることもできるように思う。 なお、音質はなかなか良くて、クリスタルイヤフォンとは思えない豊かな音が楽しめる。 あまり再生を掛けるとハイカットされた音になってしまう。

■感想・反省・抱負など

ウン10年ぶりに作った真空管ラジオはとても楽しい時間をもたらしてくれた。 半導体で同じようなラジオを作っても少しも楽しくなかったに違いない。 どこにでもありふれた部品と安価な真空管、そして感電しない電圧で働くラジオは、半導体世代の人にも違和感無く受け入れられるものと思う。 高性能なICチップで製作されたスーパヘテロダインに比べれば電気は喰うし、性能も低いし、使い方にもコツがいるが、作って楽しく、使ってなお楽しいのは、合理性だけでは割りきれない、人間の遊び心に訴える何かがあるからだと思う。 真空管でラジオを作ってみたいが部品が何もないと嘆く前に、一つ作って見るのをお薦めしたい。 真空管は昔TVに使っていたものでも良く、少しの工夫で普通の3極管なら何でも使える。 今後の抱負として、BCバンドのラジオで感触をつかんだので短波帯のラジオにも挑戦したい。 その時には、まず、同調機構に十分な配慮を行なうことが課題であろう。 回路電圧が低いので、発振しても発振振幅は小さいから、同調回路にバリキャップを使うのも良い方法だと思う。 こうすれば入手が難しくなってきたバリコンのお世話にもならずに済み、部品配置の自由度も高くなる。 トロイダルコア(#2材)が2〜10MHzでQが高く良いコイルができるのを確認している。 反省すべきはやはり同調機構にある。 ツマミも小さく、バリコン直結では同調操作がやりにくい。 せめて50mm以上の径の大きなツマミを付けてやりたい。 回路的には、トランス結合など行ない、ゲインが得やすいように工夫すれば性能向上が図れそうだ。 しかし、簡単と言う意味では現状の構成も悪くはないと思っている。 なおずっと24Vと書いてきたが、正しくは12.6V×2=25.2Vを加えた方が正しいヒーター電圧になる。 念のため。 

なおこのラジオの内容とこの解説は回路図を含めて著作権がありますから、無断転載や引用は禁止されております。 但し個人が製作を楽しまれる分には何の制約もありません。

 

本稿を掲載していただくにあたり、このサイトのオーナーである林さんに現物をお送りし、写真撮影をお願いするとともに、御自身で使っていただき感想などを加えていただくつもりです。 林さんの鋭い観察眼と、シビアな評価がこの後に続くハズなのでお楽しみに。 自画自賛でない評価はそちらでどうぞ。  埼玉県在住  加藤高広


[写真の解説 Koji HAYASHI]

もう一度正面パネルをみましょう。下の部品取り付け面と比較して下さい。ツマミを廻すのに真空管が邪魔になるので,できるだけ位置を離さねばなりません。イヤフォーンやDC電源ソケットは周辺に,部品配置はこうして決まったようです。

基板裏。シャーシはPCB。PCBといってもエッチング不要です。全面グランド電位。真空管ソケットは通常のハンダ付け端子用のものでPCB用ではありません。部品取り付け用の穴明けの加工は必要です。真空管ソケットの大穴2つ,DC電源ソケット穴。VRの穴,VCの穴,SW,EP,ANT端子など。紙エポキシですがドリルとヤスリ,カッターナイフが必要でしょう。配線は部品の端子をできるだけ利用しますが,間に合わない時は中継用にPCBを小さく切った端子板(ランド)を使用します(5箇所)。グランドはPCB直付け。これは80年頃からアマチュア無線の自作で流行りだした方法。ヒータ配線もDCなのでグランドをPCBにとり電流を流している。バーアンテナはグランドに近いことになるが鉄ではないのであまり影響ない?。なお,アンテナコイルの紙の筒は糊付けしてないので,コア上を動いてしまう。

基板横顔。足はPCBマウント用支柱金具を使用。35mmと意外と長い。PCBは厚み2mmあるが真空管を挿すと少し変形するのはやむを得ない。

記号

品名

規格

備考

個数

V1

真空管

12AU7

V2

(JVT)

Socket

MT-9pin

ステアタイト

2

VC

PVC

スーパー用2連

Sanesu Elec. Co.

(VCn)

ツマミ

小型バーニアダイアル用

1

L

Coil バーアンテナ

7CBL-0015

コア 10ファイ x139mm長

L=25, t=125

L=2, t=5

RFC

153KL

1

VR1

再生

1M B

Alps 220r

1

VR2

音量

B10k

Cosmos RV16YN BCM

1

(VRn)

ツマミ

7角型

2

J

ANT

1P

J

DC

2P(4P)

SW

EPJ

2P

EP

イヤフォーン

セラミックス・イヤフォーン(プラグ付き)

1

PCB

片面紙エポキシ

151x61x2mm

1

中継端子

PCB破片

5

PCB足

金属棒

6ファイ,35mm長

4

ネジ

部品取り付け用

10

ネジ

VC取り付け用

2

束線バンド

バーアンテナ取り付け用

2

真空管は手前がV2用のオランダHF Vlenda?製 ECC82(1960年代), 後ろがV1用の日立12AU7(1958年製)。ともにジャンク品らしい。HF Vlenda?製ECC82は防振対策した球。真空管のソケットの向きは同じなのに電極の向きが90度違う!

動作後の感想はまた後で(2000.3.29記)

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