ANTIQUE JAPANESE RADIO/日本の古いラジオ

Repair of H(18) National UA-360/H(18) ナショナルUA-360の修理

(1998.5.5)
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written by Koji HAYASHI, Ibaraki JAPAN

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1996年8月25日入手。

2台で@1.5kで入手。これは鳴るという話。下調べをした。

まず,キャビネット内部の左側面に回路図,右側面に性能仕様と糸かけ図,キャビネット底面に箱出し注意書があった。

  1. PL(パイロットランプ)を外すとシャーシが線付きで取り出せる。
  2. 正面パネルは透明なプラステイック製で,取り外しがきく構造。正面に2本のビス,裏側から3個のくさびで止まっている。2カ所はダイヤル針のカーソルの陰にある。
  3. 分解して,泥で汚れたキャビネット内部を水拭きで清掃した。正面パネル内部も清掃。
  4. SPはコーン紙がずたずたに切り裂かれ大穴が2個ある。ボイスコイルのカバーもない。少しボンドで張り合わせておいた。子どものいたずらだろうか?
  5. SPグリルはバッフル板上に緑の透けたサラシのよう。ずたずたに切り裂かれている。これは手元のぼろ布(縦縞付きの白のYシャツ地)に交換。
  6. ダイヤルの糸が切れている。誰かがシャーシをはずしたときに切れたのだろう。外す前には,カーソルのネジをゆるめて糸をはずす必要があるのだ。手持ちの糸(0.5mm)はオリジナルよりもやや細いがこれに交換。糸かけの図があり,その通りにやる。スプリングは1個でちゃんとテンションがかかる構造になっており,頭の良さに感心。
  7. PLの緑と黄色の拠り線はひび割れ酷く被覆材がボロボロ落ちる。

そこで,いきなり通電。

  1. 内部の状態は錆もなく,PLラインの風化,SP以外に破損個所もなかったのだ。これがいけない。PLラインは,たとえショートしてもPLの両端がバイパスするだけで,35W4のヒータの一部がショートしたってどこにも支障はないなどと勝手に考えて通電を強行。これは間違っていた!。
  2. 通電時に12BE6が異様に光る。これはウオームアップの問題。松下のラジオ球特有。
  3. 通電すると,いくらか音がしたから,SPは大丈夫。また感度も少しはある。ハム音はしなかった。
  4. しかし,1局も聞こえない。
  5. 感度が悪く,原因を探ろうと,がさごそ,ツマミやらダイヤルやらを動かしているうちに,ピカッと光って,ヒューズが切れてしまった。結局,PLの拠り線は互いにショートする前に,シャーシにショートしてしまったのであった。しょぼん。


1997年7月29日(火)

急遽思い立ってUA-360をもう1度みた。気を取り直すのに1年もかかった。

  1. 風化した線材を改めて調べてみると,PLライン1対のみだった。このラインはシャーシ上だけでなく,穴から内部に入り,OPTを回って100Vヒータ・ラインに繋がっていた。見えない部分で揺れによてショートする危険があったのだ。
  2. さらに,電源100Vac入力の紙コンデンサはワックスが融けてキャビネット底に落下,堆積していた。清掃後のことなので,通電によってできたもの。リークが大きかったのだろう。
  3. さらに,紙コンデンサをチェック,ナショナルPAPER CON-6という銘柄で,外見上は綺麗だが他のコンデンサにも表面のワックス(パラフィン)の割れが見える。使用している紙コンは全部で次のものがあった。
  1. AC100Vコードの入り口のプラステイック製ブッシュは縁が欠けて,シャーシからはずれている。
  2. 出力管カソード・バイパスのケミコンは液漏れを起こしている。
  3. 球はチェックの結果,12BE6,12BA6,12AV6,30A5の4本を交換する必要がある。
  4. 正面パネルを取り外して清掃した際に,ロック用のくさびを1個付け忘れている。
  5. スピーカの補修はグリル布の色とともに手直しする必要あり。
  6. 部品番号を新たに確認,IFTは57年12月製,OPT,VRは57年10月製であることから,本ラジオは1957年末から1958年はじめの製造であることが分かる。
  7. 球のチェック。以下はオリジナルの成績

 


1997年8月13日(水)

チェックを始める

 

  1. AC100Vコードの両端をテスタのオーム計で抵抗値を測る。
  2. コンデンサの容量をFETテスタに付属の簡易型容量計でチェック。オーデイオ用の小容量のみ対応。リード線はワニ口クリップでケーブルはシールド線で浮遊容量が大きいが,open時にMEASを押してゼロ点をADJで合わせると比較的ちゃんと容量が測れる。なお,R1はx10レンジ,R2はx100レンジの意味。回路中のコンデンサは他と接続したまま計測した。

番号

容量

種類

用途

測定値

容量変化

C25A

50m150WV

Chem

+B平滑

0.3-0.5m/R1

5-10m/R2*振動

x0.2

C25B

50m150WV

Chem

+B平滑

0.3-0.5m/R1

5-10m/R2*振動

x0.2

C25C

30m150WV

Chem

+B平滑

20m/R2

x0.666

C26

50m150WV

Chem

30A5-K

0.3-0.5m/R1*

0m/R2*

*並列に150wWあり

計測不能

C18

0.1m

Paper

PU入力回路

0.5m

X5

C9

0.05m

AGC

0.18m

X3.6

C24

0.05m

AC100V

0.1m*

*並列に10MwWあり

X2

C10

0.03m

AC100V

0.1m

X3.3

C12

0.01m

12BE6sg

無限大*

*1kを通じて50mに接続

計測不能

 

C23

0.01m

OPT2次

無限大*

*並列にOPTのCoil

計測不能

 

C8

0.005m

AntCoil E

0.041m

X8

C19

0.005m

Tone

0.04m

X8

C7

0.001m

AntCoil in

0.0085m

X8

もともとケミコンの測定は無理だが,C25は生きていることだけは分かる。

紙コンデンサはいずれも2-8倍に増加している。これはワックスが蒸発し,電極間が縮まり,増加したもの。別の絶縁試験をすると使用に耐えないことが分かる。ラジオでは,

UA-360の場合,結合コンデンサ(C17,0.01m)は運良くセラミックス・モールド複合部品CR-60が使用されており,経年変化の恐れはない。


97.8.13

  1. 多芯線は柿色(アンテナ),黄色(シャーシ内アンテナ回路)とPLラインの黄色,緑など。このうち,PLラインの黄色と緑の線材を寄り合わせたものは被覆がひび割れ脱落している。松下製の同時代のラジオは皆そう。これだけ交換。材質が違うのだろうか?古河ビーメックス線に交換。
  2. 30A5のカソードのケミコンはチューブラ型のナショナルCT-02520(20mF25V)で製造は32.10.Xとある。57年10月製だ。液が析出し塩をふいている。最近のトランジスタ用の縦型16V22mFに交換。耐圧はやや低いが問題ないだろう。
  3. 電源100Vac入力の紙コンデンサ(ナショナルJIS PAPER CON-G WV500VDC, WT-5502)は,チューブラ型でリード線の付いた片側のキャップが取れかかり,ワックスがはみ出ている。ショート事故により。これを1958年製のNipponChemのオイルコンデンサに交換。融けてキャビネット底に落下,堆積していた。清掃後のことなので,通電によってできたもの。リークが大きかったのだろう。
  4. ヒューズは1Aか0.5Aだが,手持ちの3Aを入れた。
  5. 球は交換。
  6. ACコードのブシュはセメダインでシャーシに貼り付けた。

以上で通電したが,その成果は?

  1. BC帯ではほとんど受信できず,バリバリ,ぶりぶりとやけに大きい音
  2. SW帯ではかろうじて1局聞こえた。生きていることを確認。
  3. BC帯では周波数の高い方で静かになり,感度が悪い。発振が弱くなる?トラッキングのせい?深夜なので放送がない。
  4. 電源スイッチはうるさい。がさがさ,ぶちぶちの原因。Off,Med,Full,Low
  5. VRは絞った位置で接触不良の傾向
  6. 感度が悪い,アンテナはせいぜい50cm。トリマC2を締め付けてみると感度が幾分上がる。まず注意深くチューニングするとBC帯も聞こえた。結局,アンテナのせいか?
  7. IFTのコア,OSCコイルのトリマはほぼ出荷時のまま
  8. いちおう聞こえたので,感度UPは次回に期待。


1997.8.14

  1. 翌日,放送のある朝に確認。地元IBSも大きく受信できた。NHK第2は大きい音で受かる,しかし,他はダメ。NHK第1は小さい音。ナショナル・スーパースター(完全動作品として購入したものだが,自宅に持ち帰ったら聞こえが悪い,後に修理したが,これは修理前の話)よりは大きい音であることが分かった。
  2. その後,アンテナを2m程にしたら,他も良く受かることが分かった。何と,5球スーパにはアンテナ線が必要なことを初めて実感した。また私の住んでいるところでは,東京の民放TBS,文化放送,ニッポン放送は小さくしか受信できない。

問題点として,

  1. トランスレス・ラジオの修理はめんどう。
  2. キャビネットからシャーシをはずそうとすると,イヤーフォーン線とPL線が短いため邪魔をする。シャーシが自由な姿勢にならない。キャビネットの上に載せて修理する。通電すると感電がこわいのだ。何かレス用のベンチを作ると良い。
  3. UA-360のアンテナ・コイルのコアはVCを高い周波数側に回すとネジの頭にドライバが届かない。ドライバも超薄型でないとネジ山に入らない。
  4. アンテナは専用の線を準備して置くべき。トランジスタ・ラジオに感度が負けるのはアンテナのゲインだ。指向性のあるワイヤーアンテナが欲しい。わが家は周囲に送電線があり,雑音が酷い。

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