ANTIQUE JAPANESE RADIO/日本の古いラジオ

written by Koji HAYASHI, Ibaraki JAPAN

Mini-Museum of Japanese Radios/日本のラジオのミニ博物館

Radio Tubes After WWII/戦後のラジオ球

Audio Tubes/オーディオ球

Direct Heat Audio Power Tubes

Direct Heat Audio Power Tubes Part-2


Page-DH. Direct Heated Audio Output Tubes/オーディオ球-直熱型出力管

2nd Edition (2006.11.23)-(2010.11.27)-(2013.5.4)

HomePageVT/Direct_heat.html


45/UX-45

2A3/UX-2A3

CH-2A3

DeMont 33

Tungsram 47

RCA 2E24

Ken Rad 307A

Unknown

Toshiba-Matsuda, TEN, Matsushita

Shunguang

Du Mont

Tungsram

RCA

Ken-Rad

直熱型の出力管は最近の真空管オーデイオ・ブームで人気を呼び,店頭価格は不動産価格の低迷にもかかわらず年毎に高値の記録を更新しています。私は貧乏性でしかも目は節穴ですから,ブーム前には見向きもしませんでしたし,また今日でも格式のある高額な古典球1本よりも廉価でバラエティに富むTV球の収集を選んでしまいます。しかし,こんな私でもラジオの修理のため,また偶には人並みにオーデイオ・アンプを作りたいという欲望にかられて,目に止まった球を購入することもあります。ここでは,そうして集まった極少量の直熱型出力管をご紹介しましょう。


45/UX-45

UX-245は米国のWH(Westing House)が開発,RCAが1928年に発表したオーデイオ用の直熱型3極出力管。そのST版45はRCAから1931年頃には発表されたようです。UX-245は国内では東京電気(TEC/Cymotron)が1929年に国産化,当時の価格は3円50銭だったそうです。同時にKX-280も国産化されました。そのST版UX-45は1932,3年頃のようです。1933,4年頃にはドン真空管から改良版のUX-超45も発表されました。

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RCA Cunningham 45, (F5) and (j10)/ともにRCA Cunnigham時代(1933-1935)の中古球。

ロットは左から(F5),(J10)と異なるが,電極や外形などの造りは同じ。すなわち,プレートは平角型で3リブ付き。フィラメントの張り型はM型,十字マイカ。J10はその片側が明るいので,ややエミッションのバランスが崩れている。そのうち切れるのだろうか?ロットは左(F5,gm=76)と右(J10,gm=77)でいずれも同じ造り。中古球を多量に米国から輸入するのが最近の流行で,MJ誌の交換欄を通じて分けてもらった3本のうちの2本。

最近のオーディオ・マニアなら何本もお持ちのことでしょう。245はかつて日本でも戦前にUX-245として製造され,当時のオーディオに使用されましたが,用途は限られており,東京電気(マツダ)などはUX-2A3と引き替えに1930年代のうちに廃止してしまったようです。1942年頃の推奨品種と廃止予定・代替管のリストには名前すら現れず,また1951年のマツダのマニュアルには廃止管として掲載されています。

戦後の混乱期には,戦前の残存球がラジオや無線機に使用されたことはありますが,世の中が安定してくると,オーディオ界では,戦前からの隠れファンは別として,出力が倍増する2A3の時代になり,45はやがて見向きもされなくなりました。端的な例では,1950年代末のラジオ技術誌に掲載されたNFBマニアの武末氏の記事などが,当時の45の価値を物語っています。5極管の「高性能アンプ」と比較されて記事が掲載され,45シングルも形無し,無用の長物と扱われました。結局,球の価値は使い方により決まるといったところでしょう。低能率スピーカとCR結合では性能が発揮できません。

45が再び注目され名誉回復を果たしたのは,1960年代末だったかもしれません。高度成長時代の反省期が訪れ,上杉氏らによるNFBの罪悪論とともに,浅野氏などによって古典管の名誉回復が図られ,復権を果たしました。しかし,時既に遅く,その頃は日本球は皆無,米国球も入手難でした。ところが,1980年代に入ってから真空管ブームが米国にも訪れたおかげで球の流通が好転し,1990年代には米国の中古球が格安で入手できる時代となりました。もっとも,米国の民生用管で今日でも再生産されている球は2A3に限られ,45はこの種の昔の球,112A171A/71A250/50とともに枯渇気味ですから,いずれ消えて無くなる運命にあると思われます。

今日的な視点から45の魅力を探るとすれば,出力が大きい割に直線性が良いことでしょう。出力の点では後年できた業務用のWEの300Bや民生用の2A3にはかないませんが,直線性は2A3よりも優れているといわれています。

当時の真空管製造技術は未熟で使用できるグリッド巻き線材料の径は太かったので,陰極とプレートの容量を決めてしまうと,出力を稼ごうとゼロ・バイアス電流を高めるには増幅率muを小さくせざるを得ませんでした。さらにNFBの無い時代でしたので,出力管には裸の特性の良さが要求されました。このため,gmを十分には稼げず感度が大変悪かったようです。また,内部抵抗が低く感度の悪い昔の球はグリッド電流が流れやすい欠点があり,低インピーダンスでドライブすることが条件付けられていました。今日では古典管の復興とあいまって,低インピーダンスでグリッドを正領域まで振らせる(グリッド電流を流す)A2級のドライブ法が種々提唱され確立しているので,45も他の古典管や送信管と同様に大いに活躍できる時代になりました。このような使い方ができるのは,太いグリッド巻き線のお陰です。

ちなみに,後年の近代傍熱3極管は,歪みの悪化はNFBで救えると信じられている時代に開発されましたので,大出力管は感度優先の設計が施され,直線性が犠牲になりました。それだけなら良いのですが,高gm化のためグリッド巻き線が細線化され,放熱対策が講じられているとしても動作はグリッド電流ゼロが想定されています。したがって,A2級動作をさせると,たちまちエミ減を促進してしまいます。

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2A3/UX-2A3

2A3は45系の後継品種として,RCAが1933年頃に発表したオーデイオ用の直熱型3極出力管。ガラス管は始めからST管でした。2A3は245の電極構造を2倍に大型化したような球(今日で言う1枚プレート型)で,特性も245を2本並列接続したような性格を持っています。電極構造はその後,45のプレート中央に放熱フィンを付けたものを2連結したような格好になりました。開発当時,米国の民生用管の名称は,数字2桁がいっぱいになり,新たに,(ヒータ電圧)+(アルファベット)+(ベースの引出線の数)風な名称制度を発足させました。2A3はそのような名称制度の最初期の球です。日本では,東京電気がUX-2A3として1934〜1935年頃に国産化しました。(3X-A2/UX-2A3の項を参照のこと)。

あまりにも有名な球で,多くの方が解説されていますので,ここでは私のコレクションだけを紹介しましょう。

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Toshiba Matsuda UX-2A3s, after WWII, until Begining of 1950s

いずれも東芝(マツダ)。ガラス面にマツダのロゴと管名UX-2A3を表示した戦後製造の球。フィラメントの形状はM型,スプリング吊り。左のサンプルは板に金網を貼ったゲッタ。これは戦前から1950年代初期まで使用されたやや古い形式。ガラス面横に(丸で囲ったY)の印あり。ステムには白紫で(マ)の字。1級マークは無いので球の製造時期は1950年代前半と推定される。残念ながら両ユニットともフィラメントは断線しており,上部マイカのスプリングの1つは転がっている。右のサンプルは,棒状ゲッタに四角の枠を付けた角型ゲッタ(1950年代半ばから1962年頃まで使用)で比較的新しい。ステムには(5)のガラス押印。各ユニットは生きている(gm=71)。

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Kobe-Kogyo TEN 2A3 in 1956 and Matsushita-National 2A3 in 1963?

左は神戸工業TENの(FL2P,1956年12月,gm=72)。右は松下製(XI?=1963年)。電極構造はマツダとほぼ同じだが詳細は異なる。TENのサンプルはプレート材料は807などと同じやや明るい黒。フィラメントは規定値で点火してもほとんど明るくならないがgmは正常。材料が違うのか? 右の松下製はフィラメントは断線していないが,上下のマイカ板付近のガラス管壁は蒸発物が析出し黒くなっており,プレート電流はゼロ。フィラメント被覆陰極材料内部のバリウムがすっかり蒸発してしまい活性を失ってしまった模様。フィラメントの再加熱で活性化を試みたがダメだった。

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Top Structure of Kobe-Kogyo TEN 2A3 in 1956 and Matsushita-National 2A3 in 1963?

上部マイカ。左はTEN,右は松下。フィラメントの形状はともにM型で吊り方はスプリング。マイカ板の加工もほぼ同じだが,電極の留め方と使用金具が異なる。

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CH-2A3

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Recent Chinese 2A3s, Shunguang 2A3 and CH-2A3

最近の中国製。左はShunguang*のロゴとelectron tubeのプリント。右はCH-2A3。同社製の2A3を日本の会社で選別しベースにシールを貼ったもの。

[Updated at 1998.9.29](*中国湖南省の省都,長沙にある電器メーカー湖南曙光電子集団公司。私はShangGangとタイプミスをしていました,メルトーンの小田垣龍夫氏に感謝)

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Top Structure of Recent Chinese 2A3s

フィラメントの形状は一般のM型だが,吊り下げはマイカ板そのものを利用し,スプリングは使っていない。この構造は製造上安価であるが,熱膨張による張力の吸収は下部のバネだけだから,張力の不均衡の解消は摩擦によりステップ的になりやすく,オーディオ管では機械的ショックによる雑音が発生しやすい。またフィラメントを支持する部分のマイカは高熱にさらされ,マイカの高熱分解により生じた水分はガスの発生につながりやすいので注意。この構造を採用した球には整流管5Y3GTなどの後年の普及品に良く見られるが,RCAの2A3にも見られる。中国の2A3はこれをお手本としたのだろうか?今日のオーデイオでは,値段の安い普及型として楽しむには非常に良い球である。私は前者は@2000円,後者はペアで4500円と安価に入手しました。しかし,選別したからと言っても大金を払う訳にはいかない球であるのも確かです。

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Du Mont 33

この球はRCA系の最初期の5極出力管UY-233のST版です。もともと電池用ラジオの出力管で,フィラメント電力は2V,0.26Aと小型ですが,出力は1W以上取れます。

私は日本独自の5極出力管UY-47Bは,実は米国33を原型に開発したものと考えており,比較の意味と,また実用の意味,ラジオ修理用に購入したものです。33はフィラメント仕様と感度以外はUY-47Bと同等と考えられ,フィラメント回路に適当な抵抗を入れれば点灯できるし,gmの点でも新品の33は中古のUY-47Bを凌ぎますから,UY-47Bの代替用管として立派に働きます。(詳しくは日本の戦前のST管参照)

[YaQ][YaQ]

American 33 -DuMont A.B.D. in 1961?

サンプルはDuMont A.B.D.の33,ガラス管壁に33とともにK7M,ベースに赤字で(61 42 158)。ゲッタは皿型。DuMontはAllen B. DuMont Laboratories, Clifton, New Jersey, USA。1930年にできた会社で,戦後はTV用ブラウン管を精力的に開発販売していたようです。ベースの製造コード61-42は1961年42週といっているが,ひょっとしたらこの球は別会社の製造で,ガラス管のK7Mはもっと早い時期,1947年とか1957年を示しているかもしれない。

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Tungsram 47

米国247は1929年にRCAから発売された直熱型の5極出力管で,RCA系の中では直熱型5極出力管といえば,電池用の233に次いで2番目,また交流点火用の球としては初めての球でした。47はそのST版で1931年頃にダルマ型となりました。47系はどちらかというと高級ラジオに多く用いられ,オーデイオ用としては傍熱型の後継管422A5が良く用いられたという話です(浅野勇氏)。今日でも事情は変わることなく,マニアにはあまり見向きもされないので,比較的安価に購入できます。

ここに紹介する47は,米国47と同等の欧州Tungsram(ハンガリー?)製で,さらに安価ですから,オーデイオや気軽な実験にもってこいの球と言えましょう。

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Hungarian? Tungsram 47 (NO)

Tungsramの47(NO)。ガラス管はスートされていて内部が良く見えないが,マイカ板の代わりに,セラミックスが使われている点が面白い。

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RCA 2E24

直熱管は古いというイメージが先行するが,一方で自動車などの移動用無線では,無駄なヒータ電力による蓄電池の消耗を防ぐ目的で,待機時間にはヒータを断にしておき,通話時にクイック・スタートを可能にする球として,直熱管が利用され続けた。この2E24はそんな目的の小型送信球で,兄弟分には2E26が知られている。

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RCA JAN CRC-2E24, 1963

RCAの1963年4月製。この球は最近の直熱管ブームで安価に輸入された球(@300円)で,かねてより,憧れていた球なので,ついつい手が出た。非常に造りがよい。

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Ken Rad 307A/VT-225

米国307AはWestern Electricが開発した送信管でC級増幅用5極出力管。「開発年代は1937年頃と思われる」と以前書いたが,その後前年の1936年以前と判明した。1936年のWestern Electricのアマチュア無線家向けの広告(QST, Jun 1936)によると,307A- Ideal for suppressor modulated applications- とある。$13.65-。ビーム管6L6が発表された年であって,翌年には送信管で有名な807が誕生している。似たような球である。しかし,807は$3.90-だったのだから如何に307Aが高価だったかが分かろうというもの。どうりで,その後の知名度が低かった訳だ。[追記2000.1.23]。

C-class RF Amp

Ef5.5V, If1.0A, Ebmax500V, Ibmax60mA, Pbmax15W, freq=40MHz,

Eb250V, Ib50mA, mu=120, gm=4mA/V, (rp=30k ohm?), Po=6W

同時期にできたWE306Aは,フィラメント電力は同じで電圧が1/2のヴァージョンで,Ebmax300V,freq50MHzという点が異なるが,外観や電極仕様は良く似ているようである。306Aと307Aは兄弟だが,前者はが50MHz,後者はそれより低い周波数の球といった感じ。

私は,最近までこんな球があることも知らなかったが,1996年11月に藤井秀夫氏がラジオ技術誌で307Appを発表,その時の記事が面白く,印象に残ったのが購入のきっかけ。入手できた球はKenRad製で307A/VT-225。規格からのずれが大きく,秋葉原の店で投げ売り状態だったものを,電極構造の観察のために購入。オーデイオ・アンプを作る訳でもなし,フィラメント点火とgmテストで遊ぶのだから,この手の球が一番嬉しい。

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Ken-Rad 307A/VT-225

Ken Rad製307A/VT-225。完全な5極管で作りは見事。プレートは扁平で左右に丸みが付いたもの。各グリッドも同じ形状。フィラメントはダブルM型。上部マイカでは釣り竿式のバネ4本,下部のマイカは2段式で上側でフィラメントを固定,下側でフィラメント電極を折り返している。ベースは807などと同じUY型。ゲッタは下部に付いている。

サンプル(SC961A)ゲッタは皿型1個,gm=84>64,@1.4k,販売店の測定値:Eb250V,Esg250V,Ec1=-20V,Ib46mA,Isg=5.4mA

サンプル(X2)ゲッタはゲッタ棒2本付いた角型,gm=108>64,@1.4k,販売店の測定値:Eb250V,Esg250V,Ec1=-20V,Ib64mA,Isg=5.3mA

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1st edition (1998.3.10)+(1998.9.29)+(2000.1.23)+(2000.10.7)