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Vintage古典型の真空管は入手が容易ではないし,分不相応なので興味の対象外としているが,放送受信用のラジオ受信機用の真空管の歴史を語る上では,どうしても避けて通れない重要な球であるので,しかたなく書くことにした。
ここでは戦前のラジオ用電池管のうち,ラジオ放送の初期のものを紹介しましょう。ラジオ放送初期の頃の電池管といえば,皆電池管でしたが,電池には据え置き用蓄電池(2Vセル)とポータブル用の乾電池(1.5V)がありました。乾電池用の真空管には,米国RCAからUV-199/UX-199が売り出され,我が国でも広く使われました。しかし,それ以外にもいろいろと作られたようです。下の表にその名前と規格を示します。蓄電池用も含まれています。
Tube Name |
Fil (V/A) |
Purpose/ Info |
Eb/Ib |
Eg |
mu |
rp |
gm mA/V |
Rg/Cg |
Year/東芝の製造開始 |
Ref/出典 |
Audion UN-100 |
2.0V 1.0A |
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1919 |
梅田徳太郎 1976 |
UF-101 |
2.0V 0.75A |
French Type/フランス型 |
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1919 |
梅田徳太郎 1976 |
UV-102 |
2.0V 0.75A |
Navy Type/海軍型 |
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1920 |
梅田徳太郎 1976 |
UV-199 UX-199 |
3.0V 0.06A +F |
Amp Detector |
90V-2.5mA
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-4.5V
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6.25
|
15.0k
|
0.415
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2-9M 250pF |
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RCA 1925 |
V99 X99 |
3.0-3.3V 0.06-0.063A +F |
Amp Detector grid-register Detector biased |
90Vmax -2.5mA 45V 90V |
-4.5V - -10.5V |
6.6
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-
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0.425
|
0.25- 5M 250pF |
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RCA 1954 |
UV-199 UX-199 |
3.3V 0.06A |
Amp Detector |
90Vmax 2.5mA - |
-
|
6.6
|
15.5k
|
0.425
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1924 |
Matsuda/東京電気 1938 |
UV-199 UX-199 |
3.3V 0.063A +F |
Amp Detector |
90Vmax -2.5mA 22.5V |
-4.5V
|
6.5
|
15.5k
|
0.425
|
2-5M 250pF |
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Matsuda/東芝 1951 |
UX-120 |
3.3V 0.13A |
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1929 |
梅田徳太郎 1976 |
UX-120 |
3.0V 0.125A |
Final Amp |
135V 6.5mA |
Egsup -22.5V |
4.3 |
6.6k |
0.500 |
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無線と実験1926 |
UM-103 |
2.0V 0.75A |
Marconi Type/マルコニ型 |
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1926 |
梅田徳太郎 1976 |
UM-104 |
2.0V 0.75A |
Marconi Type/マルコニ型 |
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1926 |
梅田徳太郎 1976 |
R1 |
6.0V 0.6A |
日本無線 検波 |
40-80V |
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10.0 |
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通俗ラヂオ問答1924 |
C4 |
6.0V 0.6A |
日本無線 増幅 |
40-80V |
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- |
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通俗ラヂオ問答1924 |
TR1 |
6.0V 0.7A |
日本無線 送信 |
320V/ 10W |
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- |
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通俗ラヂオ問答1924 |
TV-8 |
4.0V 1.0A |
東京無線 |
80V |
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通俗ラヂオ問答1924 |
TV-2 |
4.0V 0.75A |
東京無線 |
80V |
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通俗ラヂオ問答1924 |
TV-3 |
6.0V 2.2A |
東京無線 |
600V以上 |
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通俗ラヂオ問答1924 |
NVV-6 |
6.0V 0.6A |
日本真空管 増幅 |
45-100V |
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1924 |
通俗ラヂオ問答1924 |
NVV-6A |
6.0V 0.2A 3.5-4V 0.2A 4.5V |
日本真空管 検波増幅 |
20-100V 20-90V 90V |
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9.0 - 6.6 |
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1924 |
通俗ラヂオ問答1924 池谷理; 受信管物語(5) 山川正光,世界の真空管カタログ |
NVV-7 |
6.0V 1.0A |
日本真空管 送信 |
350V |
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1924 |
通俗ラヂオ問答1924 |
NVV-199 |
3.0V 0.06 |
Amp Detector |
90V 2.5mA 20V |
-4.5V
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無線と実験1926 |
LE-244 |
1.25V 0.08A |
Amp Detector |
100V 5.0mA 40V |
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8.0
|
25k
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無線と実験1926 |
LE-344 |
1.25V 0.08A |
Amp Detector |
90V 9.0mA 20V |
|
4.0
|
11k
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無線と実験1926 |
UL-550 |
1.1V 0.45A |
Final Amp Detector |
60V 5.0mA |
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6.7k |
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無線と実験1926 |
UL-220 |
1.2V 0.2A |
Amp Detector |
60V 3.5mA |
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9.5k |
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無線と実験1926 |
UX-222 |
3.3V 0.13A |
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1929 |
梅田徳太郎 1976 |
米国のUV-199/UX-199のは初期の乾電池式ラジオ用の直熱型3極管です。米国のRadio Corporation of America(RCA)を中心とするラジオグループが開発し1923年に販売したもので,その歴史については,G.F.J.Tyne氏のSaga of the vacuum tube(1977)と大塚久氏の「クラシック・ヴァルブ」(1992)等に詳しく書かれています。
RCAという会社は1919年に米国で誕生,グループの1社General Electric(GE)が蓄電池式ラジオ用のUV-200とUV-201を開発し,RCAがその販売を1920年にアナウンスしました。米国Cunninghamもラジオグループ傘下に入って1920年に自社真空管製造を中止し,CunninghamブランドでGE製の201をC-301と表示して販売したとのことです。さらに従来フィラメントの材料として用いていたタングステンより少ない電力で同等の電子放射能力を持つ材料,トリウム.タングステン(英語読みでトリエーテッド・タングステン)合金が発見され,従来製品UV201を省電力に改良したUV-201Aが作られた他,省電力を活かして新たに乾電池式ポータブルラジオ用にUV-199が1922年末にRCAから発表され,翌1923年に本格的に発売されました。
UV-199はGEの(後にRCAの)ハリソン工場で1922年に開発が行われ,試作時フィラメント電力は3.0V/0.135Aだったものを3.3V/0.06Aまで半減して1922年末の発表にこぎつけたそうで,1923年以降大量に出荷しました。初期モデルの形状は当時の電球そのもので,ガラスの頭に排気口のあるトップチップ(キューピー)型でしたが,1924年3月以降,下側から排気するよう改善され丸頭になりました。さらに引き出し線の電極があるベースは真鍮製のシェルとセラミック製の絶縁板を使用した4つ足(小型のUV)で,後にUV-199と呼ばれました。1924年10月以降真鍮はベークライトに変更され,1925年8月にヒーターピンを太くしたUXベースに変更され,UX-199が誕生しました。1932年頃から2桁の名称,V99,X99と呼ばれるようになりました。この199はラジオグループだけでなく,米国や欧州の真空管会社が互換品を製造販売しました。なお,同じラジオグループのWestingHouse(WH)は,UV-199が発表された同じ年の1922年にすでに乾電池用の真空管WD-11(1.5V/0.25A)を発表していました。これは形式的にはトリエーテッドタングステンよりもさらに進んだ酸化物皮膜フィラメントを用いたものでしたが,当時の酸化物皮膜はまだ開発段階で電子放射能力はトリエーテッドタングステンよりも低く,省電力とはならなかったようです。ですから,市場の人気はUV-199に集中しました。
我が国では東京電気(当時ブランド名はサイモトロン,後にマツダ,現東芝)がGEと技術提携を結び,東京放送局(NHK)より大正14年(1925年)にラジオ放送が開始されるのに合わせて,前年の1924年にUV-199を国産化し,販売しました。時期的にキューピー頭の真鍮ベース,丸頭の真鍮ベースの切り替えの頃のUV-199が誕生した訳です。東京電気は当時TECというブランド名を表示し,199型と称しました。UXベースがデビューして,UVとUXをともに販売する段になってUVベースの199型はUV-199となったようです。UV-199の構造ですが,1924年3月以降に排気口は頭からステム下部に変更され,ガラス管の頭はトップチップから丸頭になった頃の図説が梅田徳太郎氏の受信管製造の記録に掲載されています。これによると,プレートはNi筒,グリッド支柱はNiワイヤー,グリッド巻き線はモリブデン,カソードは細い1本のワイヤーでMg/200mm=0.75〜0.80(何のことだ?),これらがガラスステム上に立ち,上部にはガラスビーズが使われた。プレート側部に張り付けたマグネシウムゲッタが使われた。また,当時の製造ではフィラメントが細いのでハイフィラメントエージング中に断線する事故が続出したと書かれています。この真空管のフィラメント電力は,僅かの3V x0.06A=0.18W。乾電池管最後の時代の省電力型(SFタイプ)ミニアチュア電池管,例えば1R5-SFが1.5Vx0.025A=0.0375Wであるから,昔とはいえ恐ろしく省電力型でした。フィラメントの陰極物質は,SF型mT管が酸化物陰極であったのに対し,最初期型のUV-199はトリエーテッド・タングステンフィラメントですから,エミッションは1/10以下?なのに2.5mAを流すのだから,大変な球でした。いかんせん,寿命は100時間程度だったといいます。
国内では,各社がUV-199,UX-199の製造に参入しました。1927年11月のラジオ商報では,ラジオトロン時価(4.80円),サイモトロン2.45円,NDK;3.00円,TVV2.00円,エレバム特価,NVV2.50円となっています。しかし並四時代になるとしばらく東京電気以外の199は市場から姿を消すようです。1932年3月サイモトロンUX-199が1.44円,1932年9月サイモトロンUV,UX-1991.39円,1933年7月サイモトロンUX-199,1.386円。1935年以降,ドン真空管,K.O.真空管等が充実しますが199は過去の球として製造しなかったようです。マツダは継続して製造し,他に老舗のエレバムだけが199の製造を復活させたようです。1935年7月,マツダUV,UX-199各1.17円。エレバム同1.00円,1937年9月の商報には,エレバムUV,UX-199が1.00円と掲載されているが,1934年には姿を消しています。しかし,1941年頃までは製造した模様です。マツダUV-199, UX-199は1941年7月に廃止され,代替管として2.0Vの「UX-1B4またはUX-30」と指定されました。1943年1月に書かれた記事では「16,17年前に販売された初期時代の真空管UX-201やUX-199が,今日未だに注文されておる現状である」と書かれているのは面白いことです。
国内ではUV-199,UX-199は,果たしてどのように使われたのでしょうか?資料がほとんど手許にありませんが,放送開始初期1924年からメーカー製の交流式並四受信機が普及しだす1932年頃までの約10年間がその活躍の時期だったでしょう。1932年頃にはようやく乾電池用の新しい電池管UX-230シリーズ(米国で1930年に登場)が国産化され,また欧州PhilipsのA109を基にしてUX-109が開発された時期でもありました。酸化物皮膜のカソードを持つ省電力の乾電池用真空管は欧州では1925年に実用化されていましたが,米国では5年以上遅れたと,大塚久氏のクラシックヴァルブに触れられています。ですから,米国依存の日本は199だけで過ごしてきた訳です。放送初期には,米国から199を用いたスーパーヘテロダイン受信機が輸入され,また国内の大手通信機メーカーもラジオ受信機の製造に乗り出し,199を用いたポータブルラジオも製造されて役所の形式認定を受けたことは,田口達也氏の「ヴィンテージラジオ物語り」に登場します。しかし,通信機メーカーが製造した放送用受信機は高価すぎて売れず,やがて多くのメーカーは民生用ラジオ製造から撤退しました。代わって,通信機メーカーのラジオ部品を製造していたメーカーが,部品の販売とともに,放送用ラジオ受信機を販売しはじめたのが1930年頃からで,メーカー製のラジオが登場するようになりました。それまでの時期は,小さなラジオ店が部品を集めて組み立てて販売するという手作りラジオや,素人が雑誌や本を読みながらラジオ店から部品を購入して自作するというアマチュアのラジオが主でした。日本国内の199を用いたラジオはほとんどが自作という時代だったのです。しかし,乾電池は不経済ですから,一般には充電式の蓄電池用UV-201Aを用いたラジオが普及し,乾電池はせいぜい単球位で,何本も使用した高級セットはずっと少なかったと思われます。
NU '99 (Die-stamped "National Union (K)" , ○ Base番号表示なし,底Licenced only to extent, indicate on carton, 頭印99, ガラスビーズ, 桶ゲッタ) (22>11), 041012 [5e5]
このサンプルは名称が2桁になった1932年以降の製造で,ゲッタも新型のケメットゲッタ,フィラメントは酸化物なのだろうと思われる。[5e5]
2007年にオークションで東京電気サイモトロンの国産初期のサンプルを入手しました。高額でしたが,フィラメント切れでした。
その他,橋本さんの歴品館に,当時の東京電気サイモトロン,マツダの貴重な姿があります。ぜひ御覧ください。
http://rekihinkan.fc2web.com/honnkan/UV199.htm
国内では日本真空管製作所が,大正14年(1924年頃),独自の規格の電池管としてNVV-6Aを製造しました。実物を調べてみると,電極構造はRCAのUV/UX-199相当で,入れ物が作りやすい太い外囲器に変更したもののようです。ただし,フィラメントは大電流型のようで「蓄電池を使用する」と週間朝日編纂,通俗ラヂオ問答(1925)にありました。東京電気サイモトロン201Aが8円に対してNVV-6Aは6円とありました。
検波,増幅用
Ef 3.5-4V, If 0.2A, Eb 20-90V (池谷理氏の受信管物語(5), 昭和2年頃の規格より,本資料は岡田章さんから提供いただきました)
Ef 4.5V, Eb 90V, mu6.6 (山川正光氏の世界の真空管カタログ)
下記のサンプルは,Yahooオークションで入手した昔の1球ラジオから出てきたものです。実物はNVV TYPE 6Aと表示されています。
真空管の形はどれにも似ていません。ガラスは太いのですがナスではなく,直管で頭にチップがついています。ベース直径35mm,ガラス管も35mm。ベースは縦34mm,ベース底からガラス頭(チップを除く)まで90mmという大きさです。足はUVです。
内部はほとんど銀色ですが下の方が薄く,内部がわずかに見えます。普通のピンチステムで,電極形状はUX-199のような感じです。
私は普通の電池管199すら持っていない変なコレクターです。ここで,疑問が生じました。いつもなら,真空管試験器TV7/Uでテストするのですが,このような古典管をTV7/Uでためして大丈夫なのでしょうか?近代電池管はEbmax90V程度の球でも平気で150V印加してテストするのですが。TV7/Uは150V固定なのです。また,TV7/Uにも99の項はあり,UX-199はテストできるはずなのですが,心配です。どなたかご存じの方,経験者はおられますか?