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1A. Radio Tubes from Storage Battery Set to Eliminator/蓄電池式セットからエリミネータまでの球 | |||||||
UV-201, UV-201A, UX-201A, UX-01A -Multi-purpose Triode/汎用3極管 | |||||||
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W.L.CO RADIOTRON |
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Cunningham |
RCA Radiotron, Philco |
Tokyo Electric Cymotron |
CYMOTRON and Matsuda, Elevam, Best, K.O.Tron, DON, YKTron, Neo, Newtron, TOYO |
K.O.Tron |
JRC |
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[第2版にあたり] 日本の初期のラジオ球201Aは大正末期の蓄電池式ラジオの時代から昭和初期のエリミネータ時代に大活躍した球ですが,私はビンテージラジオには縁が無く,また初期のサンプルも持っていませんので,1998年に[第1版]を書いた時には,「AC Reflex Radio Tubes/交流レフレックスラジオ用の球」としてラジオの修理用に米国から輸入した201Aを紹介するに留めました。しかしその後,多くの方の御協力によりサンプルや写真資料などが集まりましたので,本文を改定し,電池式セットからエリミネータまでの球に分類し直して紹介すことにしました。また,UX-112Aは本文旧版では並四時代の球として紹介しましたが,蓄電池式ラジオの時代に生まれていますので,同様の取り扱いをすることにしました。
[おことわり]写真撮影は難しいもので,カメラの分解能も悪い(焦点距離50cmの安物を無理矢理使用しています)ことながら,私の腕前も相当悪いので,うまく写真が取れていません。特にナス管は内面が銀色で,しかも曲面ですから,全方向の鏡となって,どうやっても照明が反射してしまいます。ST管の場合は曲面が複雑ですから,2つの照明で4つ以上の光る点ができてしまいます。2つの照明の間には私の手とカメラも写っています。写真の背景は青いA4程度の紙ですが,それ以外の室内の背景も反射し,結果的にナス管の中央は青,左右はやや赤い白となってしまいました。赤みを帯びているのは照明の色でしょう。色補正はできますが,時間がかかるのでやめました。お粗末。
ラジオ放送は1920年に米国で行われたのが世界最初といわれています。真空管はそれまでにも商業通信や軍用に開発されていましたが,ラジオ放送の開始により,米国では同じ1920年からラジオ受信機用の真空管の製造販売が始まりました。前年の1919年に誕生したRadio Corporation of America (RCA)は,真空管を製造していたGeneral Electric (GE)とラジオグループを結成し,また1921年にはWesting House(WH)も同グループに加わり,各社が製造する真空管の販売を開始しました。1920年12月,最初にGEが開発した検波用の200, 増幅用の201が発表されました。これらの真空管の電源には蓄電池が利用されました。1922年12月にフィラメント材料をタングステンからトリウムラングステンに変えて省電力に改良した201Aが発表されました。これらは初期のラジオ受信機に使われ,爆発的に普及しました。
我が国でも当時,真空管は軍用,通信業務用に独自の開発研究が為されていましたが,ラジオ放送やラジオ受信機は主として米国からの技術導入によりスタートしました。ラジオ放送は米国に遅れること4年の1924年に開始され,また受信用真空管も米国GEと技術提携していた東京電気(現,東芝)により,梅田徳太郎氏の受信管製造の記録によれば,1923年米国型の200(アルゴンガス封入), 201(高真空)の国産化,次いで1924年,201A, 199型の国産化と販売から始まりました。201A以後,我が国で国産化された米国系のこの蓄電池用の真空管には,1927年にハイミュー管UX-240,1928年に出力管UX-112A, UX-171Aがあります。出力管は交流時代になってから活躍しました。
これまでに知られている201AのWeb-site
益田亮氏の「二桁ナンバー管名鑑-01の項」では,米国UV201Aでは真鍮トップチップのRadiotron U.V.201A,トップチップレスでベークライトベースのC-301-A(UV),ベークライト・ロングベースのRadiotron UX201A,我が国では宮田製作所(エレバム)のエレゴンブランドのベークライト・ロングベースのUX-201-A,サイモトロンの短いベースのUX-201-Aなどが紹介され,米国の201B, 201C(221)にも言及している。東京電気の初期の規格表も掲載されている。
W.L.CO RADIOTRON MODEL UV-201 PATTENTE LICENSED FOR AMATUER AND EXPERIMENTAL USE ONLY MANUFACTURED FOR RADIO CORPORATION OF AMERICA BY Westinghouse Lamp Co. U.S.A. 1920- 201型は米国の蓄電池を用いたラジオ受信用の3極管です。1920年に米国RCA(Radio Corporation of America)から発表されました。GE(General Electric)の開発製造によるもので,当時の電球と同じ頭の尖ったガラス管,短い4本足の真鍮ベース,内部には平型のプレートとタングステン陰極です。後にソケットの形式からUV-200となりました。同時期に販売した検波用のガス入り管200型をソフトヴァルブ,高真空の201型をハードヴァルブと呼びました。真空管のベース(UV)は,短い4本の足(PIN)をセラミック製円盤に立てて真鍮製のシェルにはめ込んだもので,ピンはどれも同じ太さ,シェルにはガイドピン1本が側面にたてられ,ピンの先端が板ばねのソケット金具に押し付けられて接触する方式で,ソケットの切り込みに差し込み廻してロックする構造でした。これは後にUV型と呼ばれました。
GE RAIOTRON MODEL UV-201-A pattented Licensed only for amature experimental and entertainmental use and only to extent indication on carton 1922- 201A型は,米国のUV201の改良型で,同じく蓄電池を用いたラジオ受信用の3極管です。これは1922年に同じRCAとGEのコンビにより発表されました。フィラメントに電子放射能力(エミッション)の大きいトリウム・タングステン(英語読みではトリエーテッド・タングステン)を用いて,消費電力を1/4に削減したものです。トリウム・タングステンが高いエミッションを維持するためには高い真空度が要求されるので,真空ポンプの排気後にさらに真空度を上げるためのゲッターポンプとして高温のマグネシウム蒸気をガラス内面にフラッシュするマグネシウム・ゲッタが採用されました。お陰でガラスの中は銀色となり中身が全く見えなくなりました。
短いベークライト製UXベース(1927-) [5e3] UV-201Aは1925年4月に真鍮ベースはベークライト製に変わりました。さらに,1925年9月にUX201Aが発表されました。ベースをUX型に改良したものです。UV型は4本足(4-PIN)の先端がソケット金具と接触する構造でソケットの板バネが弱ると接触不良事故が多発し,ピンを長くして側面で接触するように改良したものです。ピンの直径をフィラメント用に太い2本,他の電極に細い2本として向きを決め,位置決め兼ロック用のガイドピンを省略しました。4本足の摩擦だけですので多少抜けやすくなりました。旧型にはUV-201A,新型にはUX-201Aと表示され,一時期は両者とも販売されていました。
長いベークライトベースと短いベークライトベース;私が調べた限りでは,UX型のベークライトベースは始めはUVソケットと同じ長さでしたが1927年頃に短く改められました。
その後,米国では1932年頃に真空管の名称が3桁から2桁に変更され,RCAのUX201Aの他,各社の201A, 301A, 401A等は統一されて'01Aと呼ばれるようになり,電極の支持方法を改良しガラス管の形状をナス型(S管)からドームトップ型(ダルマ型,ST管)に変更しています。また同じ頃'01Aの電気的特性はgmを約10%アップする改定がなされましたが,製造上のバラツキやエミッションの経年劣化を考慮すると誤差の範囲内となっています(Stockes)。
以下,日本の事情をお話ししましょう
UV-201A 我が国では,東京電気(TEC-サイモトロン,後の東芝)が,米国GEと技術提携を結んでいた関係で,UV201を1923年(大正12年)に,UV201Aを1924年9月(大正13年)に国産化しました。キューピー頭(トップチップ)に短い4本足の真鍮のUVベース,TECマークで,1924年1月の定価は10円でした。池谷理氏の「受信管物語」によれば,当初は製造が間に合わず,輸入したGE製の201AにTECのスタンプを押したものが出荷されたこともあるそうです。このサンプルは現実に存在し,Radiotronの刻印のあるベークライト・ベースの時代ですが,TECの印が真横に押してありました。
長いベークライトベース
UX-201A 東京電気はその後ベースを変更したUX201Aを1925〜26年頃に国産化しました。また,ラジオ放送開始時から1930年代半ばまで,東京電気の特許権の下で大会社は排除され中小会社だけが製造を許されてこの真空管を製造販売しました。その後製造と利用が進み普及するにつれて1929年には1円まで値下がりし,その後の5年間は同じ値段でした。1927年11月の広告,RCA Radiotron 201A, 4.80円,サイモトロン201A, 2.45円。エレバムUX-201A特価。NDK2.00円, TVV2.00円, NVV2.50円, ベスト特価,エレックス1.50円,など。ここでUXという記号が現れている。いつのまにかUVがUXに変わりました。1923年から1928年までは無風時代?新しい真空管は現れなかったように見えます。でも実際は,多くの球が現れました。それらが消えた後,1932年3月の卸価格,RCA Radiotron1.20円,サイモトロン0.72円,エレバム0.46円,ネオ真空管0.40円,ポープ0.45円,ドン真空管0.39円,ベスト0.32円,キングトロン0.40円。米国で始まった交流電源の利用は,UX-201Aを用いたラジオにも及びましたが,検波段だけはハムが多くて鉱石検波にたよったりしました。その後,UX-201Aは他の真空管が発売され活躍しはじめると新規需要は無くなりましたが,初期のラジオは全てこの球でしたので保守の需要が多くあり,1940年頃まで長く製造されました。東京電気の後継である東京芝浦電気でのUX-201Aの廃止は1941年7月で,代替管としてUX-12Aを指定しました。その後,戦時中の1944年にもUX-201Aは特殊製品(受信用真空管准標準製品扱い)として受注製品リストに挙がっていましたが,戦後は2度と作られることは無かったようです。
UX-01A 米国で真空管の電極の支持方法を改良しガラス管の形状をナス型(S管)からドームトップ型(ダルマ型,ST管)に変更したのを受けて,我が国でも東京電気を始めとする真空管製造各社は,各真空管の形状を1933年頃からST管に切り替えました。しかし,東京電気は今後主流となる真空管のST化を優先して実施し,201Aを含む将来需要の見込めない品種は後回しにしてしまったようです。真空管製造の大手のエレバムを始めとして多くの会社も同じ考えだったようですが,K.O.トロンだけは1935-36年頃に201AをST化してUX-01Aとして製造販売しました。さらに,K.O.トロンの流れを汲むホリゾン真空管も1939年頃に製造販売しました。一方,東京電気はUX-201Aだけはナス管のまま販売を続行し,ついに廃止までST管とはしなかったようです。東京芝浦電気は戦後1951年のマニュアルにUX-01Aを掲載し,これはUX-201Aの改良型と紹介していますが,それまでの経緯を考えると,東京芝浦電気がUX-01Aを作ったという事実はなさそうです。
[ラジオの修理に] UX-201Aは戦前の我が国で最も長く使われた真空管ですから,今日でも骨董市やYahooオークションで中古から新品箱入りまで様々なメーカーのものを良く見かけます。しかし,米国に比べると残っている数は遥かに少ないので,比較的高価です。(ですから,私はほとんど持っていません!)。ラジオの修理には米国からの輸入品が最も廉価で簡単でしょう。代替品として指定されたUX-12Aも代用できますが,バイアス調整は必要になります。
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Base |
Out-line |
Eh V |
Ih A |
Eb V |
Eg V |
Ib mA |
mu |
rp kohm |
gm mA/V |
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Cymotron Type 201 1924.3.12 |
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5.0 |
1.0 |
60 80 100 |
-1.5 -3.0 -4.5 |
- |
6.5 |
- - 10 |
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RCA UV-201A UX-201A 1925 |
Navy base RCA Large standard UX |
D=1-13/16", L=4-5/16" D=1-13/16", L=4-7/16" |
5.0 |
0.25 |
90 135 |
-4.5 -9 |
3 4 |
8 |
12 11 |
0.675 0.725 |
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RCA UX-201-A RC-10 1933 |
Medium 4-pin |
D=1-12/16", L=4-11/16" S-14 |
5.0 |
0.25 |
90 135 max |
-4.5 -9 |
2.5 3.0 |
8 |
11 10 |
0.725 0.800 |
Cin 3.1pF Cout 2.2pF Cgp 8.1pF |
RCA 01-A RC-16 1950 |
1f, 2p, 3g, 4f |
ST-14, D=1-13/16", L=4-11/16" |
5.0 |
0.25 |
135 |
-9 |
- |
- |
- |
- |
|
GE 01-A ETRM-15P 1973 |
4D same above |
14-1 same above |
5.0 dc |
0.25 |
135 max |
-9 |
3.0 |
8 |
10 |
0.800 |
Cin 3.1pF Cout 2.2pF Cgp 8.1pF |
UX-201A Matsuda 1937.3 |
1g, 2P, 3f, 4f |
S-45/ D=45+/-1, L=112+/-5 |
5.0 |
0.25 |
90 135 |
-4.5 -9 |
2.5 3 |
8 |
11 10 |
0.725 0.800 |
|
UX-201A Matsuda MJ43.1 |
- |
- |
5.0 |
0.25 |
135 |
-9 |
3 |
8 |
10 |
0.800 |
|
UX-01A Matsuda 1951.8 |
1f, 2p, 3g, 4f |
ST-45/ D=45, L=112 |
5.0 |
0.25 |
135 |
-9 |
3 |
8 |
- |
0.800 |
|
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Class |
Eb V |
Eg V |
Ib mA |
RCA UV-201A 1925 UX-201A 1925 |
Plate Det Grid Det |
45 |
250pF 2-9 Mohm Detector grid return +F |
- - |
GE 01-A |
Grid-registor detector |
45 |
250pF 2-3 Mohm grid return filament +F |
bias of approx. -13.5 V |
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UV-201は米国ウェスティングハウス・ランプ会社(W.L.CO)とあり,現在のウェスティングハウスの前身が製造しRCAが販売したものです。1921年以降の製品でしょうか。(W.L.CO)と(RCA)のロゴがガラス側面にあります。フィラメントは蒸発してしまってありません。ゲッターが無いので内部が良く見えます。
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次にUV-201Aの初期のサンプルを御紹介しましょう。これも不動の飾り球です。
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以下紹介する米国製201Aはラジオの修理用に1997年に米国の通版で求めた中古球です。201AはACレフレックスの整流管(2極管接続)用です。
ともにCunninghamのCX-301A(RCA UX201A同等管)。左は1929年(昭和4年)頃,右は1932年(昭和7年)頃のもの。いずれもガラス管頂部にCunninghamのロゴが黒くプリントされている。この頃の球はガラス管の中はゲッタ膜で見えないが,張り紙がある。UXベースはベークライト製で,UVソケットにも使用できるように横にバヨネット・ピンが付いている。 |
左のサンプル Base; CUNNINGHAM/CX301-A, 1929年頃 GE製を販売していた時代のCunningham。ベースにはメーカ名(アンダーライン付き)と管名だけが刻印されている。ベース・ピンは真鍮の地肌である。左のサンプルには2枚のラベル。1枚は赤い枠のメモ用。鉛筆書きで,「3.1/2-6 May 10 29」とあり,1929年5月10日に書き入れたことが分かる。もう1枚は緑色の印刷でSylvania set-tested radio tubeの文字があり,その上に「This tube proved WEAK io testing. For better reception, we recommend it be replaced at once with a similar type」「この管はテストして、弱いioを証明した。一層良い受信のために,私たちは、それを同じタイプとすぐに取り替えられることを勧める。 」とあった。しかし,gmはほぼ正常で,回復しているようだ(gm=29.5)。ガラス管の銀色の一部に青白く変色した部分(ゲッタを炙った跡と見られる)が残っている。($14.95) |
右のサンプル Base; (C-logo)CUNNINGHAM/CX301-A, 1932年頃 RCA傘下に入った時代のCunningham製。ベースにはメーカ名(アンダーラインなし)と管名が小さい文字で刻印され,Cunninghamのロゴが刻印が追加されている。ベース・ピンはニッケル・メッキされている。管壁にはCunninghamのラベル。内容はSold by: European Phonograph Co. Louis A. TITEFSKY, Prop, Date: Jun 01 1932とタイプしてある。この球はまあまあの特性(gm=32)。フィラメントを点火すると頭部から内部が透けて見え,プレートは2重円形リブ,マイカはV字型を使用しているのが分かる。($14.95) |
最後に紹介する米国製01Aは,ラジオの修理用にYahooオークションで求めた中古球です。
From Left, American RCA Radiotron 01A (Z5) and Philco 01A (4A) [5e2] 左はRCA Radiotronで,ベースに赤色で印字されたものですが,ほとんど禿げています。ガラス面の01Aの印字も禿げて全く見えません。売り主が01Aと言っているのを信じるだけですが,測定してみると生は良い(gm=38>18)。ベースに刻印(Z5)がありますので1945年製でしょうか。Base底何も印字なし。全面が銀で内部が見えませんが,フィラメントを点火すると内部構造が見えます。
右はPhilicoブランドでベースに刻印(4A), ガラス管壁には丸に01Aが見えます。Base底にはLicense only to extent, indicated on cartonの他,フィラメントピンには錨のようなマーク,細いピンにはBマークがあり古いものです。1934年製かもしれない。全面が銀で内部が見えません。生は悪くgm=17-20-24-と徐々に上がっていきます。
Top electodes of RCA Radiotron 01A (Z5) [5e2]
RCAの01Aはフィラメントを点火するとマグネシウムゲッタを透過して内部構造が見える。箱型プレートに逆Vフィラメント。そしてグリッドである。上部マイカ板は四角の切り欠きがある。
日本の201Aの中で,本当の初期のサンプルを紹介しましょう。
東京電気(現,東芝)の初期のUV-201A。1924年9月(大正13年)に製造開始し,東京放送局が1925年3月から放送開始しましたが,まさにその頃のサンプルです。ブランド名はCYMOTRON(サイモトロン),型番にUVという前置詞は無く単にModel 201-Aと表示されています。形状はガラス頭が尖っているトップチップの付いた真鍮ベースのUV-201Aなのです。梅田徳太郎氏の受信管製造の記録によれば,内部構造は,ピンチステム上に3本のリブ付き平型プレート(少なくともトップチップが無くなったモデルでは)が立てられ,プレート上部側面にガラスピラー(タイビーズ)があり2本のグリッド支柱と1本のフィラメント吊り具を支持しています。フィラメントはトリウムタングステン線で,逆V時型に張られています。ゲッターは当初よりマグネシウムリボンを使用,プレート側部の支柱下部にマグネシウムゲッタを貼り付け,排気時に加熱されガラス管内面にフラッシュし,排気後,ガラス管頭の排気管は閉じられキューピー頭になります。この後のモデルでは排気は電極下部に変わりました。
(1) Tokyo Electric Long-base model
東京電気サイモトロン時代のベークライトベースはロングベースモデル(1925-1927年頃)のUX-201Aの電極構造です。マグネシウムゲッターが半面何とか見えます。平型プレート,中央にある1本のリブ(当時の言葉ではビード,突出部分)は排気の際の加熱時に変形を防ぐためのもの。フィラメントは逆V1本。裏側に吊り具1本。この形状は初期の頃からほとんど変わっていない。ショートベースモデルになっても電極構造はほとんど変わらなかった。相違点はプレート角が斜に切り落としてあるだけ。ステムに2
Top-Tip less model, from left, (1) Long-base CYMOTRON during 1925-1927, (2) Short-base CYMOTRON during 1927-1932, (3) Matsuda with twice Logos during 1932-1935 and (4) Matsuda after 1935, [5eL][2eL][5e3] チップの無いモデル,左より,(1)サイモトロン(長ベース) 1925-1927,(2)サイモトロン(短ベース) 1927-1932,(4)マツダ 1935年以降,(3)マツダ 丸ロゴ2つ付き1932-1935年 ((1)は東京都,志田文夫氏寄贈,(3)は写真提供(岡山県安田富亘氏) ) (1)ベークライト製ベースが現れたのは米国では1925年,ロングベースは米国では1925-1927年頃まで使用されたと考えられる。我が国でも右へ習えである。ロングベースの刻印も米国RCAに習って表示した。ブランド名サイモトロンの使用は201の製品化とともに1923年に始まった。1924年3月のサイモトロン真空管の広告には「マツダランプの無線用真空管サイモトロン」というキャッチフレーズがある。サイモトロンの由来は別稿に譲るとして,一般向けには電球のマツダの方が知名度が高かったようである。ロングベースのモデルでは,ガラス頭には東京電気の英字略語ロゴTECを,またベース底にも浮き出し文字でTECを表示している。これらは全て米国製品に習った結果である。(このサンプルは志田文夫氏寄贈)
(刻,長ベース,Base番号無し,Releaf-(TEC) cymotron 201-AX patented,頭印TEC,上部支持無,pin真鍮, 横1本リブP)-1932.3 (Ib=0.5 em) shida 0408
(2)ショートベースへの切り替えは米国に習えば1927-29年頃で,この時,ガラス頭にはカタカナのマツダの周囲にマツダランプ工場製品と表示したロゴを,またベース底にはTECのロゴとTokyo Electric Co. Cymotron Pattentedと表示したと思われる。1929年に東京電気がUX-112Aを売り出した時の元箱のデザインは波をあしらったもので,これはRCAが1925年に販売した時の箱のコピーである。この箱にも「マツダランプ工場製品」のロゴがある。これらは1932年3月頃まで続いたと考えられる。
刻,Base番号無し,Releaf=(TEC), Cymotoron patented Tokyo Electric Co., 頭印マツダランプ工場製品-マツダ,全面銀,上部支持無, 横1本リブP)-1932.3 (38>18) 041103
(3)ブランド名マツダがサイモトロンに代わって現れたのは1932年4月以降とされ,ベース刻印にはカタカナでマツダ,それに丸にマツダのロゴを左右に配置し,ガラス頭には丸にマツダのロゴ,ベース底には「マツダランプ工場製品」を表示した。この時のベークライトベースは茶色だったかもしれない。1933年頃に「マツダランプ工場製品」という表示は消えた。その後黒色ベークライトになった。
(4)さらにマツダがシンプルになったのは1935年以降,ベース側面には単にカタカナのマツダに,ガラス頭にはマツダロゴ,そしてベース底にはカタカナの大きなマツダの浮き文字が表示され,1936年以降,ベース底の浮き文字は無くなった。
(刻マツダ Releaf=マツダ,Base番号1234, 頭印マツダ,全面銀),(29>18) 040410
Bottom releaf, (1) Long-base moel; (TEC) cymotron 201-AX patented, (2) Short-base Cymotron moel; (TEC), Tokyo Electric CO. Cymotoron patented and (4) Matsuda model; ("Matsuda"). [5dO] ベース底の浮き彫り,(1)中央に(TEC),周囲にcymotron 201-AX patented, (2)中央に(TEC),周囲にTokyo Electric CO. Cymotoron patented, (4) マツダ ピンは(1)のみが真鍮で,他はニッケルメッキが施されています。ここに写真は無いが(3)のマツダに丸2つのロゴ入りのベースのベース底の浮き彫りには(2)の(TEC)に代わって(マツダランプ工場製品)のロゴが使用されました。 (1.5) Cymotron UX201-A, Long-base CYMOTRON -1927, (長田/中島氏寄贈) [7cV] Top Logos, "Matsuda-lamp factory product", Bottom releaf, (1) Long-base moel, (TEC) cymotron 201-AX patented, このモデルはベースは長く,さりとて,ガラス頭の印字はマツダランプであり,先の(1)と(2)の間に製造と見られる。['10.12.18]
説明書には日本放送協会の認定品マーク(1934年頃まで)が入っています Matsuda UX-201A with top window for Millitary Use in 1935 [7a7] /マツダの軍用UX-201A 写真提供(京都府 辻野泰忠氏) フィラメント点火確認用にのぞき穴がある軍用の四号検波電球(昭和10年3月)。 (2) Elevam Top tip model of UX-201A
次に宮田製作所のElevam UX-201Aトップチップ付きです。
トップチップ付きですが,ベークライト製ベース(茶)です。Base=Elevam/UX-201-A, 真鍮ピン。このサンプルには有ろうことか?ガラス面に東京電気TECのマークが印字されています。これは一体何?(1)エレバム製の201Aを東京電気ブランドで出荷した,(2)サイモトロン製の201Aをエレバムが購入してUXベースを付けて出荷した?,(3)後年誰かがUV型真鍮ベースを外してElevamのUXベースに履き替えさせた,なのでしょうかね。
(2') Elevam tip-less model of UX-201A
プレートが後期型の円形リブ(1927-)です。ベースはロング(1925-1929)で真鍮ですが,初期の赤ベーク。すると製造は1927年から1929年(S2-S4)頃までか。Base番号GPFF, 刻Elevam/UX-201-A,4p,Releaf Miyata seisakujo tokyo japan, MSE, pin真鍮, 頭印MSE, 2重円P, 上部支持無),(34>18) 040410
(3) BEST UX-201A
次にベスト真空管(安田電球製作所)のUX-201Aで,逓信省電気試験所の型式証明付きです。No.87-2。この制度は1927年頃に廃止されているので,ちょうどその頃の製造でしょう。当時の広告によるとベークライト製ロングベース,プレートは2重円リブ付きだったようです。このモデルはショートベースに変わっています。
(4) K.O.TRON UX-201A
K.O.真空管のUX-201Aです。付属のデータシートには,ロングベースモデルのUX-201Aの写真があり,日本放送協会の認定品の印がありますので1928年以降,1930年頃までのものでしょう。
プレートが円形にKO文字のリブ,自立型でマイカもガラスビーズも使用していない。フィラメント切れの飾り球。この球,内部が見えるのはガラスを加熱してゲッタを飛ばしたからであり,その結果,ガラスステムが銀色になる程蒸着している。ひょっとしたら,エミッションを回復させるのに失敗して内部を汚染したのかもしれない。刻,茶ベース,Base番号GPFF, バヨネット, 頭印KO,プレート円KO印,上部支持無) (f-dan) sakai=030125
(5) DON UX-201A
(6) Y.K.TRON UX-201A
(7) Neo UX-201A
(8) NEWTRON? UX-201-A with Long base
(9) TOYO UX-201-A
東洋真空工業所?トーヨーのUX-201A。プレートは2重円リブ(1927-)で,上部に三角マイカ板を使用(1929-)しているので1929年以降と踏んだ。ガラス管面に紙がり,「イ12.8」とある。Base底GPFF, バヨネットピン, ゲッタひげ2本,Ib=0 gas?) 020525。このサンプルは点灯するがIb=0。
日本無線(JRC)は,ラジオ放送が始まる1925年頃には,船舶通信機の大手で,送信管や受信管などの真空管製造にも参入し大いに活躍していました。しかし,当時米国GEの外資系会社だった東京電気マツダから特許権行使を認められず,受信管製造から撤退してしまいました。その後,1935年頃に真空管の基本特性に関するランブミュアの特許が無効との判決が出て中小会社が多く誕生しましたが,JRCは受信管の製造は戦後まで再開しなかったようです。ところで,初期の頃,製造した受信管の中に,UX-201Aをもとに改造したUX-201Bを製造していたようです。
謎のUX-201B,規格が不明でしたが,三重県橋本洋明氏から教えていただきました。それによると,フィラメント電流が0.1Aで201Aの酸化物フィラメント版0.25Aよりも小さく2/5となっていること,ゼロバイアス動作例でプレート電流が半減していること,gmと増幅度がやや大きいことが分かります。この性質から,UX-201Bは電力増幅には向かないが,フィラメント電流,プレート電流が少なくても同じ電圧ゲインを得ることができる省電力型の201Aということができると思います。
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Base |
Out-line |
Eh V |
Ih A |
Eb V |
Eg V |
Ib mA |
mu |
rp kohm |
gm mA/V |
|
UX-201B (JRC) |
1f, 2p, 3g, 4f |
L=112, D=45 |
5.0 |
0.1 |
50 |
0 |
1.8 |
10.8 |
12 |
0.900 |
|
Cymotron Type 201 1924.3.12 |
|
|
5.0 |
1.0 |
60 80 100 |
-1.5 -3.0 -4.5 |
- |
6.5 |
- - 10 |
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RCA UV-201A UX-201A 1925 |
Navy base RCA Large standard UX |
D=1-13/16", L=4-5/16" D=1-13/16", L=4-7/16" |
5.0 |
0.25 |
90 135 |
-4.5 -9 |
3 4 |
8 |
12 11 |
0.675 0.725 |
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UX-01A Matsuda 1951.8 |
1f, 2p, 3g, 4f |
ST-45/ D=45, L=112 |
5.0 |
0.25 |
135 |
-9 |
3 |
8 |
- |
0.800 |
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日本無線(JRC)。(1926-30年頃?)。これは,まず,サンプルが現れました。群馬県大田原市の中島さんの仲介で長田さんから数々の貴重な真空管を寄贈いただきましたが,本サンプルはその1つです。