ANTIQUE JAPANESE RADIO/日本の古いラジオ

written by Koji HAYASHI, Ibaraki JAPAN

Mini-Museum of Japanese Radios/日本のラジオのミニ博物館

Radio Tubes After WWII/戦後のラジオ球

Audio Tubes/オーディオ球

Power Triode Japanese

Power Triode American

Power Beam Japanese (B Series)

Power Beam American(1) Large

Power Beam American(2) Small


Page-AusT. American Power Triode Tubes in Japan/日本の中の米国系3極出力管

Triode for Regulator/レギュレータ用3極管

2nd Edition (2006.11.22)-(2010.11.20)-(2013.5.2)

HomePageVT/Audio_US_Triode.html


Regulating Power Triodes

Twin 125 mADC
Twin 400 mADC

G

GT

GT

6AS7-G

6520

6AS7-GA

6080

6336A

Vertical Deflection Power Triodes, 6BX7, et al., were moved to TV tube page/垂直偏向出力管(6BX7GT他)はTV球のページに引っ越しました。


Series Regurating Power Tube/

直列型電源レギュレータ出力管

6AS7G

6AS7-Gは米国RCAが1947年頃に開発した電源レギュレータ用の大型双3極管です。パワー管でありながら,プレート構造は一風変わった球で,高周波用のHigh-gm小型受信管6J6に初めて採用されたコの字型断面のプレート構造を使っています。本来コの字型プレートは電極管距離を精密に工作でき,high-gmを実現しやすいと考えられますが,これをパワー管に採用した理由は,プレート・フィンを後ろに延ばせるのでプレート損失が稼げる,プレートのマイカ板への取り付け位置を後ろにずらせるので,絶縁対策が容易になるというメリットがあったと思われます。お陰で,Pb13Wが2ユニットも入った球を作ることができました。ただし,グリッドの放熱には工夫が必要で,電極上部に大型板状フィンを取り付け1/4円弧状に折り畳んだものとしました。

6.3V(+/-10%),2.5A,

(設計中心)Ebmax250V, Ibmax125mA, Pbmax=13W, Ehkmax300V,

(絶対最大)Ebmax275V, Ibmax125mA, Pbmax=14W, Ehkmax330V,

(A-class) 135V,Rk250Ω(-31.25V),125mA, μ2,0.280k,7mA/V

(A1pp) 250V,Rk2.5k(-125V), 50-53mA(each), RL5k, Po10W, 1.8%

我が国でも1950年代始めには東芝マツダによって国産化され,各種業務用機器や実験室用の電源に使用されました。さらに,オーデイオの分野では,浅野勇氏によれば,1950年代にはRCAはアンプの動作例を掲載していたとのことで,なかなかの優秀な特性を持っているとのことです。一時は内部抵抗の低さも手伝ってOTLアンプに多用されましたが,いかんせん感度が低いだけでなく,最大出力を得るための所要ドライブ電圧があまりにも大きく,トランス結合にでもしないと最大出力が得られないこと,高絶縁対策球特有のヒートアップに時間を要する,逆に中途半端に調整すると暴走する,など使い難さもあって一般には敬遠され,1950年代後半から秋葉原に出現したジャンク球も,1960年代には猫またぎになっていました。どこにでも転がっていた球ですが,TV-7/Uなどを持つとそこらへんのジャンクでも測定したくなる球でもあります。

[YiN]

American Chatham JAN-CAHG-6AS7G(547) in 1955

米国チャッタム社。1955年の箱入り。球はおそらく1954年製。同社のレギュレータ管は有名だったが,1958年にはTung-SolのChatham部門になる。同社の6AS7-Gは1954年1月に新型管63366394とともに広告に登場,その時には,プレート電流とgmが+/-10%に入り,低マイクロフォニック雑音,グリッド電流が心配なく,プレート電流差も低減していると謳っている。実物は,ガラスはいびつだが,確かに押さえるところはちゃんとできている。6AS7Gの一般的特徴はあとで出てくるから省略するが,グリッド巻き線が金メッキされており,ヒータもコイル型である。こんなものを昭和の29年に作っていたなどとは恐れ入る。軍用のスペシャル版なのだろうか?gm=[82,83]。

[YiN]

Toshiba-Matsuda 6AS7-Gs, Three samples are End of 1950s and One 1963.

東芝マツダの6AS7-G。左よりマツダ(1950年代末),東芝(94 1959年4月製),東芝(9Y,1959年12月)。右写真は東芝Hi-S(38.6,1963年6月)。左3つは電極の造りはほぼ同じ。電極はプレートが黒化艶消し,グリッド放熱フィンは着炭黒化。マイカ板はマグネシア塗布。他社と異なる点は,グリッド・フィンが電極下部にもあること。ステムはピンチ型で,引き出し線は前2者は黒の被覆で絶縁されている。3番目からは白のガラス繊維入り?と変わる。写真では白っぽく写っている。ゲッタは角型。他の特徴は他社6080参照。マツダのロゴは,1959年に東芝の途中から変更され,マツダのロゴは並記された。始めは裏面に,次いで正面のベースに,そして消えた。また,ガラス管の形状は民生用ラジオ管は1950年代始めに厳つい肩がなで肩になったが,ST50の大型管も,1959年の中頃になで肩に切り替わった(左から3番目)。1960年代になると,プレートやグリッド・フィンは灰色(アルミ被覆鉄?)に変わった。

マツダ/東芝のサンプルでは,それぞれ記号が残っている。左よりマツダ(ステム押印2 ユ,筆書 メ),gm=[81,77],2番目東芝94(ステム押印5 ヌ,ガラス裏面[マツダ,通信用]),gm=[83,78],3番目東芝9Y(なし),gm=[79,78],4番目(ベース金文字,ガラス面は通信用Hi-S 38.6 009)。gm=[67,67]。

[YiN]

Toshiba-Matsuda Box/東芝マツダの箱。SB-303-2DB 09ほとある。

[YiN]

NEC 6AS7-G, 1959s

NECの6AS7-G。左も右も同一ロット(通信用1959-1,I1)だが,造りは全く違う。左が古く右は新しい。過渡期のもの。どちらも管頭にはSの文字があり,ヒータはコイル型,グリッド巻き線は金メッキでエミッション対策されており,その点ではマツダ東芝よりも良い。プレートやグリッド・フィンはニッケル板を艶消しにしたようなものだが,黒くはない。ステムはともにピンチ型。新しいモデルではゲッタが天井から昔風の下に移った。グリッド放熱フィンがマイカ板下部のものが無くなった。まるで時代錯誤のように見える。が,おそらく,輸出を考慮して,米国Chathamと同様の作りにしたに違いない。異なる点は電極サポート。捻り式から鳩目式に代わり,丈夫そうに見える。左はgm=[69,73],右はgm=[83,83],他に1958-11製(HN)はgm=[76,75]。

[YiN]

Kobe-Kogyo 6AS7-G in 1958? for Communications/神戸工業TENの6AS7G(HA5, 1958年?通信用)。

他社に比べてガラス管長が10mm程度短い。何故なら,ボタン・ステムを採用しているからだ。角ゲッタ。gm=[68,64]。

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6080

6080は,航空機用の6082(26.5V)とともに,米国RCAが1952年頃に開発した6AS7-Gの小型堅牢GT管で,構造が耐震(衝撃と振動)になっている点以外,電気的特性のばらつきなどを除けば,他の電気的特性はほぼ同じです。後に軍用規格の球6080WAも作られました。ちなみに,6AS7-Gをそのまま高信頼管化した球としてはST型の6520があります。

6.3V(+/-10%),2.5A,

(絶対最大)Ebmax250V, Ibmax125mA, Pbmax=13W, Ehkmax300V,ヴァルブ温度260度C

(A-class) 135V,Rk250Ω(-31.25V),125mA, μ2,0.280k,7mA/V

6080は日本では東芝が1960年に通信用レギュレータ管として国産化したのを皮切りに,NEC(日電)が1961年頃に6520とともに高信頼管として国産化,また日立が1963年に国産化しています。神戸工業TENの記録が手元にありませんが,同時期に国産化していると思われます。

[YiN]

RCA 6080 in 1962/RCAの6080(6213 1962年製)の側面と正面。

ゲッタはドーナツ型1つ。マイカは上下2枚の他,天井にもゲッタ遮蔽用がある。上下マイカは透明。プレートは黒艶消し。グリッド放熱板は着炭黒化。グリッド支柱は銀色。ボタン・ステム。電極構造は耐震構造になっている。ベースはジャンボ・シェルで,太いガラス管がそのまま挿入されています。新品未測定。

[YiO][YiN]

Crose-up of RCA 6080 and Box/(6213 1962年製)を斜め上から見た図。

写真では見にくいが,マイカ板上にはカソードとグリッド支柱間に切り込みがある。プレートはかなり離れているので切り込みは必要ない。右は箱。

[YiN]

RCA 6080 in 1959(59-17) and NEC 6080 in 1963? for Communications / RCAの6080(59-17 1959年製)とNECの6080(通信用MO 1963年10月?)。

RCAは1950年代はロゴは黒字印刷だった。ゲッタは角型1個。gm=[82,80]。NECは支柱の作りは同社の新型の6AS7Gに準じている。支柱は鳩目でマイカに留めてある。ヒータはコイル型。グリッド支柱は太い銅製。ゲッタは角型。gm=[76,78]。

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6AS7-GA

6AS7GAは,6AS7-GをGT管にしたような球で,工業用の高信頼管6080に対して規格がラフな民生用管です。外形を除けば電気的特性は6AS7-Gとほぼ同じです。日本では作られなかったようです。下の球は機器の保守用に輸入された球です。

[YiN]

US GE 6AS7-GA in 1961/米国GEの6AS7-GA(188-4 61-35 1961年製)。

さすが民生用,天井マイカはありませんが,電極上部のカソード・スリーブ開口部には,箱形のグリッド放熱フィンがあり,ゲッタ遮蔽を兼ねています。ゲッタは角型2個で,それぞれ充填棒を2本付けていますので都合4本あります。プレートは艶無し黒化,グリッド放熱フィンは着炭黒化です。6080と比べると造りは雑で,マイカ板は傾いていますし,ガラス管もやや曲がっています。ボタン・ステムですが,ベースは中型シェルで,ガラス管下部には絞り込みがあります。

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6336A

6336Aは米国Tung-Solが1959年頃に開発した電源レギュレータ用の大型双3極管です。原型の6336は26.5V管の6394とともに米国のChathamが1953年頃に開発したものです。その後,Tung-Solは1958年にChathamを吸収したので,6336Aは本家が改造版を出したことになります。1959年頃にはRaytheonもCK6336ACK6528(6336Aのμ=9とした版)を製造しました。

6.3V, 5.0A*,

Ebmax400V, Egmax0V, Egmin-300V, Ikmax400mA, Pbmax30W, 250'C

(A-class) 190V,Rk200Ω(-37V),185mA, μ2.7, 0.200k,13.5mA/V

*NECマニュアルによれば,少なくとも30secヒータでウオームアップした後,他電極の電圧を印加しなさいとある。

国内では6336Aは日立が1962年に,またNEC(日電)も1963年頃に国産化しました。当時,日立は暫定版の規格表を配布し,NECは1964-65マニュアルに初めて掲載しました。日立は送信管として,NECは業務用の一般管として製造しました。

私見ですが,6336Aは暴れ馬ですから作るのが大変,黒鉛プレートなんて変なものに加えて,ユーザーも少ないし高価ですから少量の受注生産に終始し,これでは安定した信頼に足る製品を作る経験が得られず,製造メーカは苦しんだと思われます。軌道に乗ったのは1960年代後半のことだったのではないでしょうか。

6336Aは大プレート損失の3極管だったため,早くからオーデイオにも注目され,国内では,1964年の秋に武末数馬氏がラジオ技術誌にOTLアンプの記事を掲載,1966年にはオーデイオ・アンプの老舗ラックスが,6336A2本パラのOTLアンプMQ36を発売しました。これらには,NEC(日電)製の6336Aが使われたようです。しかし,Hi-Fiアンプにしては,電流計が付けられパネルからバイアス調整しなければならないなど,まるで測定器のように面倒くさい不安定なアンプでした。これは6336Aの暴れ馬的性格に由来しています。黒鉛プレートの熱容量が大きいためにヒータ点火後安定するまでの時定数が遥かに大きく,調整を誤ると熱暴走を引き起こす難しい球だったのです。そこで,調整の要らないアンプとして,後から武末数馬氏によってトランス付きの普通のプッシュプル・アンプも試みられ,ラックスも600オーム負荷のプッシュプル・アンプKMQ80を製品化しました。ちなみに,1981年には「56ラックス・キットの全て」という小雑誌が発行され,MQ36も紹介されていますが,そこには何故か後年製造のRaytheon製の球が刺さっています。

Hitachi/日立

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Hitachi 6336A in 1964/日立製6336A(E3213, 4-5, 1964年5月製)。

比較的初期のモデル。特大丸ゲッタ1個。中古。未テスト。この球は米国製アナログ計算機の電源に使用されたもので,Tung-Sol製の保守管として納入されたうちの1本。試験成績表も残っている。ベース・リングには筆書きで1968.3.25と記されており,そのころ挿入されたか,抜き出されたらしい。今となってはガラスの茶化と陰極物質の粉落ちが激しい。ゲッタ膜も退化しているようだ。手元に残っているNEC製と日立製を比較すると,どうも日立製は劣化が著しかったようだ。しかし,完全に劣化してしまった球は廃棄されているから何ともいえない。

構造は,プレートは黒鉛製で,断面はT型というよりは茸の傘型で杖の部分はくり貫いてあり,その中にカソードとグリッドが入っている。カソードは平角型を2枚横に並べてある。その頭は防振対策として潰してある。グリッドは高熱によるエミッション増加を防ぐため金メッキが施され,グリッド支柱は太い銅。2本のグリッド支柱のうち1本は茸の杖の外にはみ出ている。傘に相当する部分に太い金属棒が押し込まれ,ステアタイト製のスペーサ・リングを通じてマイカ板に取り付けられている。マイカは透明。

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Top of Hitachi 6336A/日立製6336A。上部。

特大のドーナツ・ゲッタ1個が見える。

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Bottom of Hitachi 6336A/日立製6336A

ヒータはコイル型で各ユニットとも2系統並列である。NECと比べるとコイルの径が細く,絶縁材の厚みも薄いようだ。下部マイカは上部と同じものを使用している。

NEC/日電

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NEC 6336A in Early 1960s/NEC(日本電気)製の6336A(TG0002)。1960年代初頭。

ガラス管表面のNECロゴと管名は黄色文字。角ゲッタ2個のモデル。構造は日立製とほぼ同じ。平角型カソードの頭は防振対策として潰してある。マイカは透明。サンプルは中古で,未テストのため活きているかどうか不明。

[YiF]

Top of NEC 6336A/NEC(日本電気)製の6336A(TG0002)の電極上部。

マイカは2枚でゲッタ・フラッシュの遮蔽用天井マイカは透明。その上に角型ゲッタが見える。上段,下段ともマイカ板周方向に3カ所,計6カ所押さえ用金属板バネを用いている。

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Mica of NEC 6336A/NEC(日本電気)製の6336A(TG0002)のマイカ。

カソードとグリッド間には細い横長の溝が切ってある。また,写真に見えるように各ユニットのカソード脇には大きな径と小さな径の孔が左右2つづつある。写真中央の支柱は,マイカ板に鳩目で固定され,電極上部マイカ板と下部マイカ板をつなぎ合わせ機械的構造を堅牢にしている。支柱は電気的には下部ではカソードに結ばれ,上部ではゲッタに結ばれている。

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Bottom of NEC 6336A/NEC(日本電気)製の6336A(TG0002)の電極下部。

下部マイカ板は,上部と異なり金属バネを取り付けないから突起をもたない円盤状。カソード・スリーブは各ユニット毎に平角型が2つ横並び,ヒータもパラに入っている。コイル型。まるで水平偏向出力管のカソード(6.3V, 1.25A)が4つ並んでいるように見える。

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Different Size of NEC 6336As, producted in same ages/NEC(日本電気)製の2種類の6336A

左は黄色の文字の球(TG0002)で右はやや後期の白字の球(QF0310)。白字の球はガラス管長が異なるが,実は同じロットでもこの球だけ異様に短い。ステムのガラス封止に失敗してやりなおしたのではないか?なにしろ,手作りの球だから。右の写真は白字時代の箱。

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NEC 6336A, New Type, Four Getter/(日本電気)製の6336A

白字の球(QF0310)の上部。ゲッタはドーナツ型4つになった。また,マイカ板はマグネシア処理され,小さな穴も無くなった。

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1st edition (1998.8.21)+(1998.9.21)+(1998.10.3)