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1A. Radio Tubes from Storage Battery Set to Eliminator/蓄電池式セットからエリミネータまでの球 | |||||||||||
UX-112 and UX-112A -Power Triode/出力3極管 | |||||||||||
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[第2版にあたり] 日本の初期のラジオ球201Aは大正末期の蓄電池式ラジオの時代から昭和初期のエリミネータ時代に大活躍した球ですが,私はビンテージラジオには縁が無く,また初期のサンプルも持っていませんので,1998年に[第1版]を書いた時には,「AC Reflex Radio Tubes/交流レフレックスラジオ用の球」としてラジオの修理用に米国から輸入した201Aを紹介するに留めました。しかしその後,多くの方の御協力によりサンプルや写真資料などが集まりましたので,本文を改定し,電池式セットからエリミネータまでの球に分類し直して紹介すことにしました。また,UX-112Aは本文旧版では並四時代の球として紹介しましたが,蓄電池式ラジオの時代に生まれていますので,同様の取り扱いをすることにしました。
[おことわり]写真撮影は難しいもので,カメラの分解能も悪い(焦点距離50cmの安物を無理矢理使用しています)ことながら,私の腕前も相当悪いので,うまく写真が取れていません。特にナス管は内面が銀色で,しかも曲面ですから,全方向の鏡となって,どうやっても照明が反射してしまいます。ST管の場合は曲面が複雑ですから,2つの照明で4つ以上の光る点ができてしまいます。2つの照明の間には私の手とカメラも写っています。写真の背景は青いA4程度の紙ですが,それ以外の室内の背景も反射し,結果的にナス管の中央は青,左右はやや赤い白となってしまいました。赤みを帯びているのは照明の色でしょう。色補正はできますが,時間がかかるのでやめました。お粗末。
ラジオ放送は1920年に米国で行われたのが世界最初といわれています。真空管はそれまでにも商業通信や軍用に開発されていましたが,ラジオ放送の開始により,米国では同じ1920年からラジオ受信機用の真空管の製造販売が始まりました。前年の1919年に誕生したRadio Corporation of America (RCA)は,真空管を製造していたGeneral Electric (GE)とラジオグループを結成し,また1921年にはWesting House(WH)も同グループに加わり,各社が製造する真空管の販売を開始しました。1920年12月,最初にGEが開発した検波用の200, 増幅用の201が発表されました。これらの真空管の電源には蓄電池が利用されました。1922年12月にフィラメント材料をタングステンからトリウムラングステンに変えて省電力に改良した201Aが発表されました。これらは初期のラジオ受信機に使われ,爆発的に普及しました。
我が国でも当時,真空管は軍用,通信業務用に独自の開発研究が為されていましたが,ラジオ放送やラジオ受信機は主として米国からの技術導入によりスタートしました。ラジオ放送は米国に遅れること4年の1924年に開始され,また受信用真空管も米国GEと技術提携していた東京電気(現,東芝)により,梅田徳太郎氏の受信管製造の記録によれば,1923年米国型の200(アルゴンガス封入), 201(高真空)の国産化,次いで1924年,201A, 199型の国産化と販売から始まりました。201A以後,我が国で国産化された米国系のこの蓄電池用の真空管には,1927年にハイミュー管UX-240,1928年に出力管UX-112A, UX-171Aがあります。出力管は交流時代になってから活躍しました。
UX-112は,直流(蓄電池)ラジオの直熱3極管で,米国WestingHouseが開発し,RCAが1925年に発表しました。当初フィラメントにはトリウムタングステン(英語でトリエーテド・タングステン)が使われました。(Tyne1977, Stokes1982)。後に酸化物被覆陰極のものも作られたといわれています(大塚1994)。
我が国では米国112は東京電気をはじめとするメジャーな会社は国産化しなかった,正確には「できなかった」ようです。トリウムタングステンならばUX-201Aでも製作実績はあるのですが,1925年から1927年頃にはUX-201Aの製造が間に合わぬ,製造設備の拡充と増産という課題があり,四苦八苦していた時期という事情があったようです。それが過ぎるとぱたりと売れなくなり過剰在庫を抱えて1927年から1928年には人員整理という時代だったようです。
しかし,マイナーなメーカーではUX-112と表示した球も製造したようです。橋本さんの歴品館にチカラのUX-112が紹介されています。規格表を見ると分かりますが,トリウムタングステンのフィラメント電力はUX-201Aの2倍で,エミッションも稼がねばなりませんでした。
UX-112Aは,米国WestingHouseの開発,RCAの販売のコンビで,1927年に発表されました。UX-112の改良型,酸化物陰極を用いた直熱3極出力管です。フィラメント電力が(5V/0.5Aから5V/0.25Aに)半減しています。米国では1932年頃に3桁名称の真空管を2桁に変更し12Aと呼ぶようになり,また形状はST-14になりました。(Tyne1977, Stokes1982, 大塚1994)。ただ,RCAは200番代の真空管は一律に名称変更したものの,100番代の112Aは変えなかったらしく,戦後のマニュアルにも12Aではなく112Aとして掲載しています。当初は電力増幅用としてデビューし,確かにUX-201Aより大きな出力が得られましたが,UX-171が実際に販売されて受信機の出力段でどしどし使われる頃には,UX-112Aはいつ頃か分からないけれども高周波増幅,検波にも使用できるとマニュアルには書かれており,実際にはそのような用途にも使用されたようです。
我が国では米国112Aを東京電気(TEC-サイモトロン)が1928年(昭和3年)末にUX-112Aとして国産化しました。フィラメントに始めから酸化物陰極が用いられました。宮田エレバムも同じ年に製造を開始しました。また国内各社も製造しました。国内では交流ラジオ時代が到来した時期にあたり,蓄電池よりはむしろ交流電源でピーカを鳴らすための出力管として価値が認められ,専用の整流管が出るのを待って並四時代に普及しました。1934年(昭和9年)頃に形状をナス管からST管(ST-12)に変更したUX-12Aが発売され,戦後まで使用されました。
[ラジオの修理に] オーディオに使用できる真空管なので米国112Aや12Aは価格の面で入手難です。国内ではオークションでナス型のUX-112Aが出ることはありますが,同様に高騰気味で,よっぽどの覚悟がないかぎり入手できません。修理には国産のST管を使うのが早道。UX-12Aの項参照。
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Base |
Outline |
Ef V |
If A |
Eb V |
Eg V |
Ib mA |
mu |
rp kohm |
gm mA/V |
RL kohm |
Po W |
C pF |
UX-112 RCA 1925 |
- |
D=1-13/16, L=4-11/16 |
5 |
0.5 |
157.5 135 112.5 90 |
-10.5 -9 -7.5 -6 |
7.9 5.8 2.5 2.4 |
8.0 7.9 7.9 7.9 |
4.8 5.5 8.4 8.8 |
1.67 1.435 0.94 0.89 |
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112A RCA RC-16 in 1950 |
1:f, 2:p, 3:g, 4:f |
36 ST-14/D=1-13/16. L= 4-11/16 inch, |
5 dc |
0.25 |
180 max |
-13.5 |
7.7 |
8.5 |
- |
1.8 |
10.65 |
0.825 |
- |
12A GE ETRM-15P 1973 |
4D |
14-1 ST-14/D=45.3 mm max, L=117.2 mm max |
5 dc |
0.25 |
180 |
-13.5 |
7.7 |
8.5 |
4.7 |
1.8 |
10.65 |
0.285 |
Ci= 4.0, Co= 2.0, Cgp= 8.5 |
UX-112A (Matsuda'51)
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JES-4B 1:f, 2:p, 3:g, 4:f |
Fig.41 (Fig.47?) S-45/ D=45+/-1 mm, L=112+/-5 mm |
5.0 |
0.25 |
180 |
-13.5 |
7.7 |
8.5 |
- |
1.8 |
- |
0.285 |
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UX-12A (Matsuda'37.3) |
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ST-38/ D=38 mm, L=105 mm |
5.0 dc |
0.25 |
90 135 180 |
-5 -10 -15 |
5.0 6.5 8.5 |
7.5 |
5 4.7 4.15 |
1.5 1.6 1.8 |
6 8.5 9.65 |
0.031 0.12 0.27 |
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UX-12A (Matsuda'51) |
JES-4B 1:f, 2:p, 3:g, 4:f |
Fig.34, ST-38/ D=38+/-1 mm, L=103+/-5 mm |
5.0 dc +/-10% |
0.25 |
90+ 135+ 180+ |
-5* -10* -15* |
5.0 6.5 8.5 |
7.5 |
5 4.7 4.15 |
1.5 1.6 1.8 |
(6) 8.5 (9.65) |
0.031 0.12 0.27 |
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Class |
Eb V |
Eg V |
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RCA 112A |
Plate Det |
135 |
-21 |
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UX-12A (Matsuda) |
Det |
90 135 |
-11 -18 |
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UX-112 RCA (刻)Radiotron ベース長型,底=Licensed..Releaf=(RCA),真鍮ピン,, 頭ロゴ, 紙Corolado tested, 二重円リブプレート, ガラスピラー6p, ゲッタ幕小, (69)>good
以下紹介する112Aは,カセドラル・ラジオ(日本ではミゼット型,特に頭が丸いダルマ型ラジオ)用に米国から1997年に通販で輸入したものです。112Aだけはオーデイオ管のため中古でも高価で良い出物に巡り会えませんでした。
左はRADIOTRON UX-112A,右はCunningham CX112-A。プレートはともに2重同心円のリブの付いた平型。ベースには刻印。ともにバヨネット・ピンがある。
左のRCAのサンプルは新品に近い中古として求めたもの。刻印した表面がゲッタで見えないので裏面を見ている。刻印はRADIOTRON,アンダーライン,-UX-12-A-とある。ステムに3とDの文字がある。gm=69.5とやや低い。ショート・テストも始めはややアンダー気味だったが,暖気運転とともに解消した。管内のガスはgas=1.5>1で少し発生している。($29.95)
UX-112-A RCA Radiotron (刻RADIOTRON/UX-112-A, 天(RCA), 底Licensed only to extent, indicated on carton, 2重円リブP, P側面板ゲッタ, ガラスピラー,ステム逆D) 69.5>42 (gas3) (970808)
右はCunninghamは,正面の図。ステムには5の裏文字がある。管内はかなり黒化している。gm=80と高いが,Gas=6>1とかなり発生しており,普通なら不合格の球である。ラジオに使うためにはゲッタを炙る必要があるかもしれない。($22.95)
CX-112A Cunningham (刻(ロゴ)Cunningham/CX112-A, 天(ロゴ), 底Licensed only to extent, indicated on carton, 2重円リブP, 三角マイカ, 黒ガラスピラー, P側面ゲッタ,80>42 (gas12) (970808)
フィラメントの形状はM型。左のRCAのサンプルはマイカ板がなく電極支持は長いガラス・ビーズで行っている。右のCunninghamはV型のマイカ板を使用しているが,フィラメントの吊り用にだけ黒いビーズ(ガラスピラー)が残っている。
日本の112Aを紹介しましょう。
1930年頃のものでしょうか?ガラス頭には丸の中に(KO)の文字があります。プレートのリブは2重丸で,車のブレーキのマークみたいなのはRCA/Cunninghamと同じです。フィラメント吊り用の2本の支柱はガラス・ピラーが使われており,マイカ無しです。ベースの刻印は本当に刻んだ文字です。ステムには青でnとかいてある。このサンプルは残念ながらフィラメントが断線しています。グリッドはプレートにタッチし,M型フィラメントの片側1本が切れているようです。
UX-240は,米国GEが開発しRCAが1927年2月に発表した201Aの改造球で,mu30のハイミュー管です。国内では東京電気(TEC-サイモトロン)が,同じ1927年に国産化しました。直熱型,5V管,低能率,高価でしたので,一般ラジオ用には売れませんでした。それでも少しは使用者がいたらしくST管UX-40が東京電気,エレバムで作られたようです。1939年にもエレバムは卸2.80円をカタログに載せていました。UX-40の東京電気の廃止は1941年7月で,代替管にはUX-12Aが指定されていました。
サンプルはありません。