ANTIQUE JAPANESE RADIO/日本の古いラジオ

written by Koji HAYASHI, Ibaraki JAPAN

Mini-Museum of Japanese Radios/日本のラジオのミニ博物館

Special tubes -Japan before WWII/戦前の特殊管

VIII. Battery Tubes/電池管

Japanese Military Battery Tubes/日本の軍用電池管

2_Battery. Military 2V and 1.1V Series

2CJ. Early-time Miniature

2_BatZ. Radio Zonde


Page 2BatZ: Radiozonde Tubes/ラジオゾンデの球

2nd Edition (2006.11.18)-(2011.8.12)

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What is this?/何でしょう

Not yet

Unknown (KMS409)

VT15

SK-406? (ゾンデ30MC風)


What is this?/何でしょう


Japan Photo-Sound Industory Type Unknown Triode in 1941/日本光音工業 型番不明の3極管 (昭和16年)

たまたま入手した真空管。製造メーカは日本光音工業という戦時中に真空管を製造していた会社ですが,開戦前(昭和16年/1941.9.28)に製造したものです。ストレート・ガラス管に封入された3極管で,ソケットはありません。電極の中身はマツダのUN-30Mに似ています。

東京電気(マツダ)は軍用にUX-30のベースをはずしてT管としたUN-30Mを1933-1934年に開発したこと,理研など他社も製造したことは知られていますが,ここに紹介する真空管はトップ・プレート型です。さて,これは何でしょう?

abe[2f9]

Type Unknown Triode (KMS409) in 1941 (16.9.28)

Electrode is similar to UN-30M. Size: diameter 17.5mm, and 50 mm long, similar to 6AQ5/型番不明の3極管。ガラス管径17.5mm,長さ約50mm(突起部含まず)。ほぼミニアチュア管6AQ5の大きさです。排気はツマミステムの脇の突起から。ゲッターはU字型の板が紙ラベルの裏側にあります。

c[2f9]

Electrode of (KMS409)

Electrode is supported with Glass bead. Filament is mounted "M"-form. Plate size 10mmx18mm/ガラス・ビーズで電極を支持しています。フィラメントはM型です。プレートの幅約10mm x長さ18mm。

謎解き

私ははじめ,次の項の真空管の名称がVT-15でしたので,米国のVariable Time Fuse (Proximate Fuse/高射砲の近接信管),戦時中に作られたサブミニアチュア管の原型,を連想してしまいましたが,ラジオ・メーリング・リストの仲間,津田孝夫氏,橋本明洋氏,内田孝氏,岡村みち彦氏,酒井氏の各氏に見ていただいたところ,こんな形状では耐振動性能は持たない,ラジオ・ゾンデ用の真空管らしいということが分かりました。

電気通信学会1955年7月「展望」にサブ・ミニアチュア管の記事があり(1945年の米国の文献を引用して),近接信管の場合,発射時の加速度は3,000〜16,000gであって規格としては20,000gが要求され,飛行中の加速度はスピンによる直径方向の加速度が800〜3,000gでこの時はフィラメントが点火していて完全に動作していないといけないとあります。

また,藤室衛さんの本「真空管半代記」(2000)に「電波信管対有眼信管」と題して,日本の光電式有眼信管(航空機から投下する爆弾用)と米国の電波式信管(高射砲用)が取り上げられています。米国では信管用サブミニ管が戦時中に2200万個製造されたのに比べて,日本ではST管式のUY-6301x2とXB-767Aで,開発された1943年から終戦までに数100セット作られたに過ぎなかったそうです。さらに,日本では高射砲用の近接信管はついぞ開発されなかったらしいことが,メーリングリストのメンバー諸氏の協力で分かりました。

岡村さんのページにもラジオゾンデそのものが掲載されています。

  http://village.infoweb.ne.jp/~okamuray/rz.html

また同じ形状の真空管はインターネット上にもあり,メンバーの酒井さんから,松村さんの「古典グラフ」に品川電機(ブランド名トウ)のKMS-409が掲載されているのをお教えいただきました。本当にそっくりの外観をしています。

http://home4.highway.ne.jp/atg/batt1.htm

ご協力ありがとうございました。


Japan Photo-Sound Industory VT-15 in 1943/日本光音工業VT-15 (昭和18年)

同じく日本光音工業の製造で,先の型番不明よりもさらにコンパクト。東京電気(マツダ)は軍用にUZ-30Mの電極をコンパクトにして双3極管としたUN-30MCも1934-1935年に開発したことは知られていますが,ここに紹介する真空管はトップ・プレート,トップ・グリッド型です。型番はどうらやVT-15のようです。

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Japan Photo-Sound Industry VT-15/日本光音工業のVT-15。

ツマミステム。ガラスビーズ。フィラメントは逆V型。下側ピンチすてむには2本のリード線の他,2本のサポート線がありプレートとグリッドは上下で支持されています。振動に強い構造になっています。size=15.5mm diameter, 35.6mm long。ピーナツ管程の大きさです。

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1943.8.13, Pinch stem/昭和18年8月13日製造。小型のピンチステム下部。

足のリード線2本は折れて紛失しています。

ここに紹介するVT-15は,津田孝夫氏からラジオ技術1948年4月に「レーウインについて」という記事があり、発振器の回路図にVT-15が使われ,周波数は300MCとかいてあることをお教えいただきました。レーウインというのは気象観測用の気球で高層(15km程度まで)の風向風速を測定するものらしい。手元の資料を調べると,戦後の1947年12月の電気通信学会「電気通信界の展望」に真空管-各製造所の現況があり,久保田無線電機株式会社の項に,「高層気象観測用真空管30DK,ラジオゾンデ用真空管VT-15を毎月約3000個づつ製造している」という記事を見つけました。

VT-15は結局,戦時中に開発された300MHzまでのラジオゾンデ用真空管ということに決着。戦後も作られたことが分かります。このサイズからしますと他のミニアチュア管の製造能力からみて終戦までに数万個は作ったと見てもよいのではないかと思われます。

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1st edition (2002.6.9)+(2002.6.10), (2002.11.24)