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2_Jmetal.Japanese Metal |
2_Hsola. N-series, H-series and Sola |
2_Rader. Receiving Tube for Rader |
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1.Metal/メタル管 |
1.1 American Type Japanese Metal Tube/米国互換の国産メタル管 | |
Table 1 TEC(Tokyo Electric Co./Matsuda, Toshiba) Metal Tubes, compatible for American Metal Tubes/東京電気(マツダ)の米国互換メタル管 | |
Table 2 Receiving Tubes manifactured by Nippon Electric Corp/日本電気が作った受信管 | |
2. Japanese Type Metal Tube/米国互換の国産メタル管 | |
Table 3 Japan Oriented Metal Tubes/日本独自のメタル管 | |
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Converter |
RCO RF Pentode |
SCO RF Pentode |
Detector Diode |
SCO RF Pentode, Diode |
Detector Diode and AF Triode |
Med mu Triode |
Power Pentode |
no sample |
|
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no sample US-6H6 |
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no sample US-6Q7 |
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no sample US-6F6 |
Converter Mixer |
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Med mu Twin Triode |
Med mu Triode |
Beam Power Tube |
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no sample US-6N7 |
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SCO RF Pentode |
RCO RF Pentode Triode |
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Here, Japanese Metal Tubes, US-6C5, US-6L7 and US-6V6, compatible with American type, are introduced.
Next, Japan Oriented US-6F7A is introduced.
ここでは,まず米国のメタル管と完全互換の国産管を御紹介しましょう。メタル管は米国のGEが基本技術を開発し,RCAが1935年に第1陣としてここに取り上げる6C5, 6J7, 6K7, 6L7を含む9品種(The Original Nine)を発表したのが始まりです。さらに,第2陣6品種を経て,1936年中期から1938年中期までに第3陣として,ここに取り上げた6B8, 6V6を含む10品種が発表されました。
米国のJ.W.Stokesによるレヴィユー70 Years of radio tubes and valvesには,メタル管として米国以外の欧州各国(英国,ドイツ,ロシア)のものを紹介していますが,日本球は含まれておらず,国際的には知名度は低いようです。その実体は,日本でも曖昧です。
日本電子工業会EIAJの電子管史研究会(プロの集団)が編纂した「電子管の歴史」によると,日本では東京電気(マツダ)が昭和13年(1938年)頃にはUS-6C5,US-6J7,US-6K7,US-6F6,KS-6H6,US-6L7,US-6V6などを国産化したそうです。さらに1940年8月の東京電気のカタログには,この他,US-6A8,US-6B8,US-6Q7が掲載されています。The JARL Museum展示室案内No.72(藤室氏1995.3)には合計10品種が紹介されています。さらに,マツダ51のマニュアルには新たに数品種掲載されています(表参照)ので,合計12品種を数えることができます。しかしメタル管の整流管がありません。相当するガラスオクタルもありません。つまり,用途は軍用の航空機などの蓄電池に限られていたのではないかと考えられます。これらのメタル管は,米国ではもともと民生用として生まれましたが,日本では歩留まりが悪く高価だったこともあって,軍用以外には作られませんでした。これらは主に海軍に納入されたようです。また,日本電気(戦時中,住友通信)も1939年から同じような品種を製造を開始,同社の銘々による品番で出荷しました。
さらに,陸軍の要請を受けて両社は日本独自のUS-6F7A/MC-804Aを1939年に製造,東芝マツダはさらにシングルエンド型の米国6SJ7に相当する日本独自のUS-61を1939年-40年に製造し, さらに両社は6SH7に相当する日本独自のUS-6305/MB-850を1939-1940年から製造しました。
両社とも製造には苦労したようです。両社の作りは異なっており,特にステムと排気に関しては,マツダは旧来の金属板に引き出し線1本づつのガラスビーズを使用し,金属排気管を潰す方法だったのに対して,日本電気のものはガラス製の一体型ボタンステムを採用し,排気管もガラスでした。
また,戦後は,用途を失ったこと,米軍の保守用に本物が多量に日本に流れ込んだこともあり,生産設備に戦災を受けた東芝は2度と製造しなかったようです。日本電気は生産設備が戦災を免れたこともあって,戦後の一時期業務用にMB-850を製造したことが知られています。また,その後,1950年代にメタル管6SH7そのものも製造しました。これは6SH7類似のUS-6305/MC-850の生産設備を活かしてのことっだったかもしれません。これ以外の品種は作っていません。
Table 1 TEC(Tokyo Electric Co./Matsuda, Toshiba) Metal Tubes, compatible for American Metal Tubes/
東京電気(マツダ)の米国互換メタル管
Name/管名 |
USA |
JPN |
|
Prototype/ST互換管 |
12V Glass Octal |
US-6C5 |
1935 |
1938 |
Triode; Osc and Amp/3極管,発振・増幅 |
|
|
US-6J5** |
1937 |
1939-40 |
Triode; Osc and Amp/3極管,発振・増幅 |
|
|
US-6F6 |
1935 |
1938 |
Pentode; Audio Power Amp/5極管,電力増幅 |
UZ-42 |
|
KS-6H6* |
1935 |
1938 |
Dual Diode; Detector/双2極管,検波 |
|
DH-2 |
US-6V6 |
1938 |
1938 |
Beam Tetrode; Audio Power Amp/ビーム4極管,電力増幅 |
|
PH-1 |
US-6J7 |
1935 |
1938 |
Pentode; Det and Amp; 5極管,検波・増幅 |
UZ-6C6 |
|
US-6K7 |
1935 |
1938 |
Pentode; Variable mu; 5極管,可変増幅率 |
UZ-78 |
|
US-6L7 |
1935 |
1938 |
Pentagrid; Converter; 7極管,周波数混合 |
|
|
US-6N7** |
1936 |
1939-40 |
Twin Triode; B-class amp and Pararell A class amp/: 双3極,B級増幅,並列A級増幅 |
Ut-6A6 |
|
US-6Q7* |
1936 |
1939-40 |
Dual Diode and Triode; Det and Amp/双2極・3極管,検波・増幅 |
Ut-75? |
|
US-6A8 |
1935 |
1939-40 |
Pentagrid; Converter/7極管,周波数変換 |
Ut-6A7 |
|
US-6B8+ |
1936 |
1939-40 |
Dual Diode and Variable mu Pentode; Det and Amp/双2極・5極管,検波・増幅 |
Ut-6B7 |
|
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|
|
Japanese Origin |
|
|
US-6F7A |
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1938-39 |
Triode-Pentode/3極・5極管 |
Ut-6F7 |
|
US-61*** |
|
1939 |
Pentode; Det and Amp; 5極管,検波・増幅 |
6SJ7 |
RH-2 |
US-6305 |
|
1939-40 |
Pentode; Det and Amp; 5極管,検波・増幅 |
6SH7 |
RH-4 |
*)東京電気の総合型録1940年にあるが,マツダ受信用真空管ハンドブック1951年に未掲載,**)マツダ受信用真空管ハンドブックにのみ掲載,+)マツダ受信用真空管ハンドブックに廃品種となってない。誤植か?
|
Purpose |
Base |
Eh |
Ih |
Eb V |
Esg V |
Eg V |
Ib mA |
mu |
rp |
gm mA/V |
Po W |
MC-804A (Metal) (1939) |
Triode Pentode =US6F7A* |
|
6.3 |
0.3 |
250 100 |
100
|
-3 -3 |
6.5 3.5 |
8 |
850k 16k |
1.1 0.5 |
|
MC-810A* |
=US6J7 |
|
|
|
|
|
|
|
|
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|
MC-811A* |
=US6K7 |
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|
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|
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|
|
|
MC-812A* |
=US6A8 |
|
|
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|
|
MC-813A* |
=US6Q7 |
|
|
|
|
|
|
|
|
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MB-816A |
=US6F6 |
|
|
|
|
|
|
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|
|
|
|
DB-817A |
=KS6H6 |
|
|
|
|
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|
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|
|
|
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TB-818A |
=US6C5 |
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
DB-837A |
Twin UHF Diode |
|
6.3 |
0.18 |
|
|
|
6 |
|
|
|
|
MB-850 (Metal) |
IF Amp =US6305* |
|
6.3 |
0.5 |
250 |
100 |
-3 |
5.2 |
|
1M |
4.0 |
|
6SH7 |
|
|
|
|
|
|
|
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6C5は米国の最初のメタル管シリーズ(1935年)で初めて発表された新しい品種の3極管でした。中身は同時期に発表されたメタル管6J7の3接で,内容は中増幅率(m20),当時としては高gm(2mA/V)の球でした。東京電気(東芝)は1938年から1939年にかけて,6C5を国産化し,US-6C5としました。マツダのマニュアルによれば,検波,低周波増幅ならびに発振に使用されるとありました。
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Base |
Outline |
Ef V |
If A |
Eb V |
Eg V |
Ib mA |
mu |
rp kohm |
gm mA/V |
c pF |
RCA-6C5, New All-Metal Tubes, 1936 |
1:s, 2;h, 3:p, 5:g, 6;-, 7;h, 8;k |
3 D=1-5/16 inch, L=2-5/8 inch |
6.3 |
0.3 |
250 |
-8 |
8 |
20 |
10 |
2.000 |
Ci4 Co13, Cgp1.8 |
US-6C5 (1938.12.10, 実用通信工業叢書, 基礎編 真空管, 電気通信学会) |
|
D=33.2 mm, L=67 mm |
6.3 |
0.3 |
250 |
-8 |
8 |
20 |
10 |
2.000 |
|
US-6C5 (Matsuda'51) |
1:s, 2;h, 3:p, 5:g, 6;-, 7;h, 8;k |
11, 8SB D=33.2 mm, L=67+0/-5 mm |
6.3 |
0.3 |
250 |
-8 |
8 |
20 |
10 |
2.000 |
Cgk4.0, Cpk13, Cgp2.0 |
正面には朱色の管名,その下に昭和18年(1943年)11月製造の文字,裏面にはマツダのロゴ,上には錨マークの痕跡が残っていました。オクタルベースに目をやると,ガイドピン頭には白色で東という字が見えます。どうやら海軍に納められた球のようです。黒のペイントは一部剥離しているものの,艶があり錆も僅かですから,保存状態が比較的良かったと思われます。
メタル管は外観で中身の善し悪しを判断できないのが欠点です。そこで,真空管試験器TV7/Uを用いてこの球をチェックしてみました。ヒータ点灯は触ると暖かくなるので確認できます。確かに点灯しているようです。ところが,プレート電流が流れてくれません。真空管試験器TV7/Uを用いた電極間のショートテストでは,正常な球でも電極切り替え時にはネオンランプが一瞬光るのですが,逆にこれが光らない球は何らかの異常が考えられます。
(1)内部でガスが発生している,
(2)真空漏れ(空気漏れ)が起きている,あるいは
(3)プレートのリード線の断線
のいずれかです。ガラス管の場合,管内にゲッタ鏡面が見えれば(1)か(3),陰極の皮膜が禿げ落ちて管内が白い粉だらけなら(2)と判断できますが,メタル管では頼れるのは音だけです。(2)は軽く球を叩くと真空の場合はキンキンと音がしますが空気漏れの場合はプラステイックのように鈍い音になります。この球はどうやら真空漏れのようです。
6J5は米国で1937年に発表された発振増幅用の3極管です。内容は中増幅率(m20)で初期の6C5の改良版と見られます。電極構造が専用の3極管となっています。東京電気(東芝)は1938年から1939年にかけて,6J5を国産化し,US-6J5としました。マツダのマニュアルによれば,検波,低周波増幅ならびに発振に使用されるとありました。(何故,東京電気は類似な特性の球US-6C5とUS-6J5をわざわざ同時期に国産化したのかは疑問に残るところです。)
|
Base |
Outline |
Ef V |
If A |
Eb V |
Eg V |
Ib mA |
mu |
rp kohm |
gm mA/V |
c pF |
6J5, RCA RC-16,1950
|
1:s, 2;h, 3:p, 5:g, 6;-, 7;h, 8;k |
3 D=39.67 mm max, L=106.4 mm max |
6.3 |
0.3 |
250 90 |
-8 0 |
9 10 |
20 20 |
7.7 6.7 |
2.600 3.000 |
Ci3.4, Co3.6, Cgp3.4 |
US-6J5 (1938.12.10, 実用通信工業叢書, 基礎編 真空管, 電気通信学会) |
|
D=33.2 mm, L=67 mm |
6.3 |
0.3 |
250 |
-8 |
9 |
20 |
6.7 |
2.6 |
|
US-6J5 (Matsuda'51) |
1:s, 2;h, 3:p, 5:g, 6;-, 7;h, 8;k |
11, 8SB D=33.2 mm, L=67+0/-5 mm |
6.3 |
0.3 |
250 90 |
-8 0 |
9 10 |
20 20 |
7.7 6.7 |
2.600 3.000 |
Cgk3.4, Cpk3.6, Cgp3.4 |
6V6は米国のメタル管シリーズ第3弾(1938年)で初めて発表された新しい品種の小型ビーム出力管でした。我が国では東京電気(東芝)は1938年から1939年にかけて,6V6を国産化し,US-6V6としました。米国ではその後,このGT版6V6GTを1939年に発表しました。我が国では民生用としての6V6GT管は製造のメリットが認められず,戦前には生産されませんでしたが,軍用としては後に12Vの相当管PH1が1941-42年に開発,製造され,軍用無線機に使用されました。
正面に管名,その上に見える丸は唯の擦り痕。裏面にはマツダのロゴ,その上に錨マークがある。マツダのロゴとその上部に海軍のいかりマークが残っており,昭和19年10月製造の文字もありますので,戦時中末期の製造と分かります。また,文字やロゴの朱色はすっかり退色し,また球の頭部を中心に黒のペイントが大きく禿げ,禿げた部分はうっすらと錆を生じており,ペイントには艶が無いので,何度も人の手に触れ,長年空気中にさらされた完全な中古球とおもわれます。
ところが,gmに関する限り成績優秀でした。まず,ヒータを点灯して第1番目に行うショートテストでは,リークが規定値以上になるとネオンランプが点灯するのですが,US-6V6は全電極間で点灯しました。長らく使用していなかった球はガスを発生したりグリッド巻き線やマイカ板に陰極の蒸発物が付着し,絶縁が悪化することが良くあります。でも,中にはヒータの加熱が進むと付着物が再び蒸発し,またマグネシウム・ゲッタを用いた古い球ではゲッタが活性化して真空度が高まるので,絶縁が向上する球もときどき見られます。この球もそうで,10数分の加熱でショートテストに合格するまでに回復しました。さらに,意外や意外,gm(任意スケール)は新品と同じ位(88~90>棄却値は46)ありました。
6J7は米国のメタル管シリーズ第1弾(1935年)で発表された検波増幅用の5極管です。後のRCAのマニュアルには「シャープ・カットオフ5極管」とあり,ラジオ受信機のバイアス型検波または高利得音声周波増幅に使用される,とあります。ST管の6C6と同じ電気的特性を持ちます。東京電気(東芝)は1938年から1939年にかけて,6J7を国産化し,US-6J7としました。
(東京電気-受信用真空管資料RG-20001, 金属真空管, ラヂオトロン RCA-6J7より)
6.3V, 0.3A, 250V, 100V, -3V, 2mA, 0.5mA, 1.5Mohm, mu1500, 1.225mA/V
6J7は米国のメタル管シリーズ第1弾(1935年)で発表された高周波増幅用可変増幅5極管です。後のRCAのマニュアルには「リモート・カットオフ5極管」とあり,ラジオ受信機,特にAVCを使用する場合の無線周波段および中間周波段に用いられる,とあります。ST管のUZ-78と同じ電気的特性を持ちます。東京電気(東芝)は1938年から1939年にかけて,6K7を国産化し,US-6K7としました。
(東京電気-受信用真空管資料RG-20001, 金属真空管, ラヂオトロン RCA-6K7より)
6.3V, 0.3A, 250V, 125V, -3V, 10.5mA, 2.6mA, 0.6Mohm, mu990, 1.65mA/V
中古。TV7/Uの測定の結果は,gm=51>36で合格。まだ生きている。以前に(1944.7)版も入手してみたが,gm=3-4<36で完全なエミ減球であった。
[AfP][AfP]
6L7は米国の最初のメタル管シリーズ(1935年)で初めて発表された周波数混合用の7極管です。周波数変換には外部発振器を必要とします。東京電気(東芝)は1938年から1939年にかけて,6L7を国産化し,US-6L7としました。米国ではその後,G管の6L7G,GT管の6L7GTも作られましたが,国内ではオクタル・ベースでは製造ラインに乗りにくいためUtベースを用てUt-6L7Gという変な名前のST管(オクタル・ベースではないのにGが付く)が作られました。
US-6L7は,球の正面に管名,裏面にマツダのロゴだけがあり,製造年月や海軍のいかりマークは痕跡すら見あたらないので,海軍向けではなく一般用として1938年から1940年頃に製造されたものと推定されます。とすれば,民生用の普通の箱に入っていたとしても不思議ではありません。すると,先の箱と中身の球は時代がマッチするようで,球は元箱入りの新品だったと思われます。現に,球の黒のペイントには新品同様の艶がありますから,錆は箱に入ったまま進んだものと思われます。
この球は5格子管7極管ですが,TV7/Uによるテストでは5極管と見立てて,第1グリッド(トップグリッド)を入力とした場合と第3グリッドを入力とした場合の2通りのgmを測ります。後者は測定値38>棄却値16と難なく合格しましたが,前者は測定値4<棄却値16と,棄却値をはるかに下回りました。何か異常があるようです。トップグリッドのリード線を振り回すと誘導により?値が上がりますが,6L7Gの場合はこんなことをせずともちゃんとした値になりますから,やはりどこかおかしいのでしょう。
箱も時代を探るうえで貴重な資料になります。今回の箱は汎用型で,真空管の名称やヒータ電圧,電流,プレート電圧が空白欄になっていますが,青インクのスタンプでUS-6L7と明示されていますから,メタル管も民生用球と同じ箱に入れられていたことが分かります。
また,箱のデザインの変遷。空白欄を持つこの汎用型の箱は,1941年以前の東京電気から1941年以降の東京芝浦電気時代にもUX-1B4,UZ-6302,UZ-6304などに使用されていました。
US-6A8は,米国RCAが開発した有名な5格子周波数変換管6A7(日本ではUt-6A7)の仲間で,まずRCAがオクタル・ベースのメタル管6A8に焼き直し,その後,各社がガラス管版の6A8-G(1935年),6A8-GT(1938年),ならびに6A8-GT/Gを作りました。後にトランスレス管12A8-GTも作られました。我が国では東京電気(東芝)は1938年から1939年にかけて,6A8を国産化し,US-6A8としました。戦前から戦時中にかけて軍用並びに業務用の無線機にのみ使用されました。
|
Base |
Outline |
Ef V |
If A |
Eb V |
Esg g3-5 V |
Eg2 V |
Eg V |
Rg1 ohm |
Ib mA |
Isg g3-5 mA |
Ig2 mA |
Ig1 mA |
Rk ohm |
rp Mohm |
gc mA/V |
RCA-6A8, New All-Metal Tubes, 1936 |
1;S, 2;h, 3;p, 4:g3-5, 5;g1, 6;g2, 7;h, 8;k, TOP=g4 |
Metal D=1-1/16 inch, L=3-1/8 inch |
6.3 |
0.3 |
250 100 |
100 50 |
250* (20 k ohm) 100 |
-3 -1.5 |
50k 50k |
3.3 1.2 |
3.2 1.5 |
4.0 1.6 |
0.5 0.25 |
- - |
- - |
0.5 0.35 |
US-6A8 (matsuda '51) |
same above |
13, D=26 +0/-1 mm, L=80+0/-6 mm |
6.3 |
0.3 |
250 100 |
100 50 |
250* 100 |
-3 -1.5 |
50k 50k |
3.1 1.0 |
3.4 1.6 |
3.1 1.5 |
0.5 0.25 |
- |
0.4 0.6 |
0.55 0.3 |
6B8は米国のメタル管シリーズ第3弾(1936年)で発表された双2極5極管です。RCAのマニュアル(RC-17)には「検波・増幅およびAVC用の複合金属管」とあり,5極部は高周波増幅ならびに中間周波増幅に使用するためリモートカットオフ特性となっています。マツダのマニュアル(51)によれば,2極管部は普通スーパー受信機の第2検波ならびに自動音量調整用,5極管部は電圧増幅用として使用するとあります。 ST管の6B7の電気的特性を改良したもので,5極部はgmが1mA/Vから1.325mA/Vへと大きくなっています。
東京電気(東芝)は1938年から1939年にかけて,6B8を国産化し,US-6B8としました。戦前には同じ目的のST管,2B7や6B7が先行して国産化され,検波と低周波増幅用の複合管UZ-55, UZ-75などと同様に,国内ではスーパー受信機はほとんど普及しなかったこともあってどちらが主流になるでもなく少しづつ使われたと思われますが,戦後にあっては検波後増幅する複合管UZ-75/6Q7系の球6Z-DH3Aが主に普及したため,我が国では6B8の系譜は使い勝手の良くない球となりました。
(マツダ51)
6.3V, 0.3A,
(P) 250V, 100V, -3V, 10mA, 2.45mA, 0.6Mohm, mu990, 1.325mA/V
(D) 50V, 240uA, 250kohm
どちらも中古。右のサンプルは塗装がやや痛んでいる。TV7/Uによる5極部のgmと2極部のエミッションの測定の結果(gm, em1, em2)>(29, 40, 40),どちらのサンプルも長年通電していなかったので,初めのうちはメータがあまり振れず,時間とともに上昇した。左のサンプル(1944.6)は(44, 12, 11)で5極部は良いが2極部はどちらも弱っている。右のサンプル(1942.7)は(24, 24, 54)で,5極部はややエミ減,2極部の1つはエミションが良すぎ,他方は悪い。おそらく2極部には機械的な偏りがある。どちらのサンプルもエージング不足であって,もう少し手をかけてやればもっとましな値になるかもしれない。使おうと思えば使える状態だと判断される。
一方,陸軍からの要請で,日本独自のメタル管が1938-1939年にかけて作られました。それがUS-6F7Aです。これには住友通信(現NEC)も製造に参加しました。東京電気は海軍からの要請もあり,専用の製造設備を導入したそうです。一方のNECは,藤室氏によると,玉川向工場の製造設備は戦災を免れたため,MB-850を戦中から戦後まで生産を継続できた,とあります。しかし,NECニュースの記事によれば,真空漏れによる歩留まりが悪く,最後まで解決しなかったそうです。
一方のUS-61は,米国で1938年に発表されたシングルエンド型メタル管6SJ7を国産化した球の様に見受けられます。第1世代はなんとか1939年までに開発し終わりました。ついで6SJ7に進みましたが,何故か同じものができません?あえて同じ仕様にしなかったという積極的な理由は無いので,やはり失敗作なのではないかと思われます。需要も無いので?,周波数変換管6SA7,バリミュー管6SK7,検波増幅管6SQ7も作られませんでした。6SA7だけは後になってガラス管とした12V管がCH-1として作られたくらいです。1941年にはgm2倍の6SH7が登場し,これだけは同じ頃US-6305として国産化されました。
Name/管名 |
Develop |
Function/構造・用途 |
Prototype 備考 |
Manifacturer/ メーカー |
US-6F7A MC-804-A |
1938-39 |
Triode and Pentode; Amp, Osc and Converter/ 3極・5極管,増幅・発振・周波数変換 |
Electrodes are compatible with US 6F7G/ 電極は米国6F7G相当 |
TEC/Toshiba 東京電気(東芝) Sumitomo/NEC 住友通信(NEC) |
US-61 |
1939 |
RF Pentode; Detection and Amplifier |
6SJ7 |
TEC/Toshiba 東京電気(東芝) |
US-6305 MB-850 |
1941-42 |
Pentode; High gm Amp/5極管,高gm増幅 |
Japan Original 日本独自 6SH7 |
TEC/Toshiba 東京電気(東芝) Sumitomo/NEC 住友通信(NEC) |
日本独自のメタル管も3品種だけありました。その1つが東京電気のUS-6F7A,あるいは住友通信(現NEC)のMC-804-Aでした。東京電気が1939年頃に開発しました。これは米国仕様のUt-6F7をメタル化したもので,検波増幅ならびに周波数変換用3極5極複合管です。陸軍は万能管として,この球を採用したかったようです。
マツダ51のデータ:
US-6F7A 6.3V,0.3A
Base=1:IS,2:h,3:Pp,4:G2p,5:G1t,6:Pt,7:h,8:k+G3p,Top=G1p
(マニュアル掲載のベースピン接続は6P7Gの図と入れ替わっており誤り)
(T)100V,-3V,3.7mA,14.4k,0.8mA/V,(mu=11.5)
(P)(Amp)250V,100V,-3V,8.0mA,1.75mA,850k,1.2mA/V
(P)(Mixer)250V,100V,-10V,2.8mA,0.6mA
Front and Back Views of Matsuda US-6F7A(1944.2, Japan Oriented)/日本独自の球US-6F7Aの正面と裏面。
正面に昭和19年(1944年)2月,裏面にはマツダのロゴ。保存状態は良く,gm(P)=51>28, gm(T)=28>13と新品同様の成績。
住友通信工業(現日本電気)は,軍の要請を受け東京電気マツダUS-6F7Aの互換管を作りました。US-6F7Aは米国のガラス管6F7を日本独自にメタル化した球で,NECは独自の名称制度を持っていたので,わざわざMC-804Aと名付け,そのまま納めました。最近Yahooオークションで名無しで売り出されていたものを入手。5本のサンプルは皆塗装が禿ていて,黒ペイントで塗りつぶしてありました。唯一文字が見えたサンプルが1本ありました。
中古とは言っても状態は悪いので,gmを測定してみました。gmは棄却値[28, 13]に対して(1)[40-32, 32], (2)[14,30]5極部G-Kショート, (3)[真空漏れ], (4)[36, 26-20], (5)[10,14]でした。ヒータ加熱により修理を試みたところ,(サンプル2)は回復し[38,30]となりましたが,(サンプル5)は逆に悪化しダメになりました。3本は何とか大丈夫ですがマツダに比べると相当くたびれています。真空漏れの1本は下図のように開いてみました。
Inside View -Upper part is Pentode, and Lower Triode./内部は上部の5極管と下部の3極管です。
変わっている点は最下部にある網で,ゲッタフラッシュ用なのですが,内部には加熱用の電気加熱コイルがあります。第2グリッド支柱は3極管のプレート付近で下部の引き出し線に溶接していますが,プレートに近接しており,危ない引き回しです。電極支柱は左右の2本の支持棒を使っています。
Lead wires from Button Stem are not used for electrode support/ステムはボタン型なのですが,電極支持には使っていません。上部には箱型のプレートと第3グリッドの巻き線が見えます。
US-61は米国の第2世代のメタル管(1939年)で発表されたシングル・エンド型の検波増幅用の5極管6SJ7類似の国産球で,互換性を強調せず独自の名称を付けたのだから,きっと日本独自の球なのでしょう。東京電気(東芝)が1939年頃に開発したと思われます。後の1941年頃にUS-61からバンタムステムを採用した12Vガラス・メタル管RH-2が作られました。
1) ニューラジオ編集部編, 最新 受信送信用真空管ポケットブック, 大盛社 (1952.8)
2) 社団法人日本電波協会編纂(梶井剛), 11.各種真空管特性一覧表, p.1131-p.1177, 無線工学ポケットブック(1941.7, 1947.3)
(US61)6.3V, 0.3A, (8N) 250V, 100V, -2V, 5mA, 1.2mA, 1Mohm, mu-, 2mA/V
(6SJ7)6.3V, 0.3A, (8N) 250V, 100V, -3V, 3mA, 0.8mA, 1.5Mohm, mu1650, 2.5mA/V
(6J7)6.3V, 0.3A, 250V, 100V, -3V, 2mA, 0.5mA, 1.5Mohm, mu1500, 1.225mA/V
代表特性を見ると米国6SJ7よりもgmが20%低く,しかし大電流,低内部抵抗なのですが,バイアス条件が30%低いので,-3Vで見ると電流は同じだがgmがもっと低いという形になりましょう。つまり,互換管を開発しようとしたが,gmを高くするのは容易ではないので,有り合わせのグリッド巻き線でできるものを作ったという風に見えます。
US-61の開発年代は,梅田徳太郎氏の文献にも記載漏れのようで,曖昧なのですが,東京電気の6000番台の特殊管・業務管(戦前の特殊管/Radio_tube_22参照)の開発が1939年に始まっているところを見ると,61という番号はそれ以前と推定され,しかし,米国のシングル・エンド型の開発も1939年ですから,1939年そのものと見るのが矛盾の無い見解です。同じメタル管でシングル・エンド型のUS-6305は1941-1942年と推定できます。US-6305は6SH7類似の国産管ですが,同等のgmを得るのにヒータ電力を60%UPせざるを得ませんでした。
日本独自のメタル管のもう1つが,東京電気のUS-6305,住友通信ではMC-850でした。米国で1941年に登場した6SH7(後の6AU6)をモデルに作ったオリジナルの仕様のようです。1941-42年頃に開発されました。VHF受信機の中間周波増幅用に設計されたもので特に高gmにできている,と説明されています。なお,同時期にUS-6305と同じ電気的仕様でバンラムステムを採用した12Vガラス・メタル管RH-4が作られました。
マツダ51のデータ:
6.3V,0.5A, Base=1:shel,2:h,3:g3,4:g1,5:k,6:g2,7:h,8:p
Cgp=0.02pF, Cgk=11.5pF, Cpk=6pF
250V,100V,-3V,5.2mA,1.5mA,1M,4mA/V
大成52のデータ:
6.3V,0.3A, Base=1:-,2:h,3:k+g3,4:g1,5:k,6:g2,7:h,8:p
250V,100V,-2V,5.2mA,1.5mA,1M,4mA/V
データに少し違いが見られますが,どちらも大差ありません。
Front and Back Views of Matsuda US-6305(1943.10, Japan Oriented)/日本独自の球US-6305の正面と裏面。
この球は昭和18年(1943年10月),マツダのロゴ。外観は綺麗。VT7/Uによるgmテストは米国相当管が無いので,6SJ7, 6SH7, 6AC7の条件を試した。その結果,gmは高いことが分かったが,いかんせん,プレート・スクリーン間のショートテストで引っかかった。絶縁抵抗がやや低いようである。