|
|
|
|
|
| ||||
| ||||
5.Japanese Early-Time 12V and Transformer-less Tubes |
1. Japan Radio Corporation JRC 12V GT/日本無線の12V GT管 | |||
2. Toshiba-Matsuda Transformer-less GT/東芝マツダのトランスレスGT管 | |||
3. Kobe Industry TEN Transformer-less GT/TENのトランスレスGT管 | |||
4. Matsushita-National Transformer-less GT/松下のトランスレスGT管 | |||
|
|
TEN (Kobe-Kogyo) |
National (Matsushita) |
12G-C4/N-361, 12G-V3/N-053, 12G-R4/N-051, 12G-DH4/N-231, 12G-P7/N-052, 12G-K10/N-021 Output Pentode/謎の5極出力管,RF Pentode/謎の高周波5極管, Twin Power Pentode N551/なぞの双5極出力管N551 |
12G-C5, 12G-R6, 12G-DH3, 30G-P9, 30G-K5 |
12G-V4, 12G-DH6, 30G-B1, 30G-K7
|
12SA7GT/M, 12SK7GT/M, 12SQ7GT/M, 35L6GT/M, 35Z5GT/M |
日本無線(JRC)が戦時中に開発したボタン・ステム型GT管(あるいはメタル・ガラス管/MG管とも呼ばれる)FM-2A-05Aの技術を民生転用し,1945年12月に開発した一連の5球スーパ用球(1)。始め自社独自の名称N-を付けたため「Nシリーズ」と呼ばれた。その後,1947年になって戦後の通信機械工業会CES名(後のJIS名)に登録した。
Contens of JRC N-Series/Nシリーズの内訳
Function/ 構造 |
Purpose/ 用途 |
Old Name/ 旧名称 |
New JIS Name/ 新名称 |
Heater/ ヒータ規格 |
Triode- Octode/ 3極6極管 |
Frequency Converter and Oscilator/ 周波数混合・発振 |
N-361 |
12G-C4 |
12.6V, 0.36A |
Pentode/ 5極管 |
RF Amp/ 高周波増幅 |
N-051 |
12G-R4 |
12.6V, 0.22A |
Pentode/ 5極管 |
RF Amp -vari-mu/ 高周波増幅バリミュー |
N-053 |
12G-V3 |
12.6V, 0.22A |
Dual Diode Triode/ 双2極3極管 |
Detector and Amp/ 検波・増幅 |
N-231 |
12G-DH4 |
12.6V, 0.22A |
Pentode/ 5極管 |
Power Amp/ 電力増幅 |
N-052 |
12G-P7 |
12.6V, 0.36A |
Full-wave Rectifier/ 双2極管 |
Full-wave rectifier/ 両波整流 |
N-021 |
12G-K10 |
12.6V, 0.36A |
Out-line of N-series described in Denpa-Kagaku, March, 1947./電波科学1947年3月に掲載された外形図。 外形は2種類で,頭がドーム型のガラス管と金属製キャップを被ったGT管(MG管)がある。右の図のMG管にはFM-2A-05Aの面影はなく,むしろメタル管のようだが,実際にはシールド頂部には穴があったので,まるで戦時中の東芝のH管のようなイメージである。
ところが,実際に掲載されたMG管のN-051/12G-R4の姿は,メタル・シールドはまさにFM-2A-05Aと同じものが使用され,トップ・グリッドが無いところだけが違う球であった。また,ドーム型GT管N-053/12G-P7は,1970年代に米国に現れた袴無しGT管のようなイメージでもあり,またドームが残っているので欧州管のようにも見えた。
同社は,戦後の短波解禁に合わせて1946年にはN-051/12G-R4を3本,他の球を1本づつ使用した7球オールウエーブ・スーパーR-103型を販売したが,CES名取得後は一般にも広告,販売された。球の製造状況は,1947年末でNシリーズは月産約2万個,内訳は12G-R4が1万個,12G-P7は3,000個,12G-K10は5,000個,他は各1000個生産しており,自社の7球スーパ換算で月産1000台の勘定だが,これ以外に一般ユーザの並3や高1用にN-051/12G-R4などを余分に製造したことが分る。Nシリーズの球の製造量を推定すると,1948,9年頃には製造を中止し,生産量は全体で数10万個にとどまったと思われる。
さらに1947年末にはラジオのスーパー化が必至となり,より廉価なトランスレス5球スーパー用GT管の開発競争に加わった。
Supprimental N-Series Tubes/追加されたNシリーズ管(試作管)
Function/ 構造 |
Purpose/ 用途 |
Old Name/ 旧名称 |
New Name/ 新名称 |
Others/ 備考 |
Pentode/ 5極管* 1) |
Power Amp/ 電力増幅 |
N-054 |
+ 30G-Px |
Pentode similar to 35L6GT/ 類似5極管* |
Pentode/ 5極管 1) |
RF Amp/高周波増幅 |
N-055 |
12G-Rx |
Equivalent to 12SJ7GT/ 相当 |
Diode/ 2極 1) |
Rectifier/ 整流 |
N-022 |
30G-Kx |
Equivalent to 35Z5GT/ 相当 |
Pentode/ 5極管* 2) |
Power Amp/ 電力増幅 |
N-056 |
+ 6G-Px |
similar to 6V6GT/ 類似* |
*ビーム管ではなく5極管。JRCによると,ビーム構造とすると「各格子の目を合わせるという現在の技術ではあまり適当でない方法を用いるので,われわれは何とかして普通の5極管でこれと同等の特性が得られないものかと,いろいろ苦心して」(5)と述べている。一方,川西機械(TEN)は同時代「量産上欠点の多い真空管であるがトランスレス用としては低電圧出力管は絶対必要であるので,特種の方法を講じて量産化を期している」としている。
+1998.8.12版に,「ひょっとしたら,5極出力管のP10,P11は欠番で30G-P10,6G-P11だったかもしれない」と書きましたが,これは早とちりで,良く考えたら6R-P10,19R-P11が存在していました。
JRCは1948年頃には,他社が既に開発していた12G-C5(12SA7GT相当),12G-DH3(12SQ7GT相当)に加えて,独自に35L5GT相当のN-054,12SJ7GT相当のN-055,35Z5GT相当のN-022を試作した(5)。当時の商用電源は時間帯により数10V低くなることも珍しくなかったので,エミッション低下防止策としてヒータ電流を10%以上多くヒータ電流を流した175mA系で,これらは,CES/JIS名の登録の準備を進めている旨の記事が残されているが,その後の消息は定かでない。しかし,同時期,175mA系のGT管は川西機械(神戸工業)TEN(5')の30G-B1,12G-DH6,30G-K7が先行してJIS名登録されており,さらに大手のマツダによるシリーズが販売されたこともあり,日の目をみなかったようである。
[参考文献] (2008.6.30追記)
なお,Nシリーズについては,歴史が文献(1)に,製造状況が文献(2)に,製造の過程紹介写真記事とNシリーズを用いたラジオM101型の紹介記事が文献(3)にある。また,NシリーズがJIS名登録後の紹介記事が,文献(4,5)である。後になって,長真弓氏がMJ誌で紹介した記事は文献(7)である。
1) 田尾司六, 解説真空管, 日本放送出版協会, 1949, p.17, 3.日本無線株式会社に於ける真空管製造の歴史に「昭和20年12月 GT管型受信管Nシリーズ完成」とある。
2) 電気通信学会雑誌, Vol.30, No.12, 1947.12, p.49. ( 電気通信界の展望 2.製造機関の現況(内田英成), 2.5 真空管(松井正二), 2.5.3 各製造機関の現況, (h)日本無線株式会社(2)受信管 )
3) 国民科学, 1947, No.11, 科学社, -特集-真空管のはたらき,
4) 日本無線 赤木正典, 12G真空管(Nシリーズ)とその回路, 無線と実験(MJ誌), p.12-15, 1947, 3月.
5) 日本無線株式会社研究部, JRCの新製品-12V, 30V GT管について, 電波科学, p.6-8, 1948, 4-5月.
5') 川西機械製作所 巽武一, 足立正次, 川西製トランスレス・スーパー用新小型受信真空管, 電波科学, p.2-5, 1948, 4-5月.
6) 大井修三, ラジオ受信機調整修理法 スーパー, 誠文堂新光社, 1947. (日本無線製 R-103型オールウェーブ受信機回路図)
7) 長真弓; 日本の真空管Hシリーズ, Nシリーズの話, 無線と実験(MJ誌), 1993.4月, p.150-152.
周波数発振混合用3極6極管。JRC(日本無線)1945-47年。ボタン・ステム。欧州系のコンバータだが,そのルーツに関しては詳細不明。当時,製造技術上の問題(内部が複雑なので相当の熟練した技術が必要と1947年の文献に記載あり)から一度に製造できる量が限られていた(月産1000個)ため,JRCの受信機では高級なモデルにのみ採用され,普及モデルのコンバータ管には5極管12G-R4が代用された。このため,今日では残っているサンプル数は少ない。
|
Base |
Outline |
Eh V |
Ih A |
|
Eb V |
Esg V |
Eg V |
Ib mA |
Isg mA |
rp kohm |
gc mA/V |
|
(N-361) 12G-C4 (1) |
- |
|
12.6 |
0.36 |
(H) (t) |
250 150 |
100
|
-2 -6 |
4.0 4.0 |
1.5
|
- 115 |
0.400 mu=15 |
周波数変換 |
(N-361) 12G-C4 (2) |
1:g1t+g3, 2:h, 3;g2+g4, 4:pt, 5:S+k. 6:g1, 7;h, 8;p |
GT 30 mm φ, L=73 mm (85 mm) |
12.6 |
0.36 |
(H) (t) |
250 - |
100
|
-2 -6 |
4 4 |
1.5
|
-
|
0.400
|
(H)=Heptode |
JRC (N-051) 12G-R4 (3) |
Fig41 same above |
|
12.6 |
0.36 |
(H) (t) |
250 150 |
100
|
-2 -6 |
4 4 |
1.5
|
- |
0.400 |
|
12G-C4 (4) |
GC4 same above |
GT |
12.6 |
0.36 |
(H) (t) |
250 150 |
100
|
-2.0 -6.0 |
4.0 4.0 |
1.5
|
160 115 |
gm 1.000 1.300 |
|
上の太い筒が6極管のプレート、下の筒は3極管のプレート。3極管のグリッド支柱と6極管の第1グリッド支柱は共通。右写真では第2グリッドから第5グリッドまでの4本の支柱が左右に見える。
ラジオ用12V管。高周波増幅用5極管。日本無線(JRC)1945-7年。電気的特性はオリジナルで,同社が,戦前,戦中に開発した5極管FM2A-05Aをもとに,戦後になってラジオ受信機用にgmを半分以下に引き下げて,どちらかというと米国12SJ7類似とした設計である。ただし,ピン配置が独特。FM2A-05Aはトップグリッド型で米国6J7/12J7と互換性を持っていた。また米国で戦前に作られた後続のシングルエンド型(トップ金具を廃止した)のピン配置として12SJ7と12SH7があり,我が国でも戦時中にピン配置互換のUS-61, RH-2とUS-6305, RH-4, ソラとの2系統が作られている。しかし,JRCの12G-R4はシングルエンド型にしたのに,12SJ7と12SH7のいずれとも互換性が無く,不評だった。なお,後にJRCは12SJ7と完全互換のN-055を1948年に作った。
(原型・構造・特性)
|
Base |
Outline |
Eh V |
Ih A |
Eb V |
Esg V |
Eg V |
Ib mA |
Isg mA |
rp Mohm |
gm mA/V |
|
(N-051) 12G-R4 (1) |
- |
|
12.6 |
0.22 |
250 |
100 |
-2 |
2.0 |
0.6 |
1.900 |
1.600 |
高周波増幅 mu=3000 |
(N-051) 12G-R4 (2) |
1:g2, 2:h, 3;S, 4:k, 5:g1. 6:g3, 7;h, 8;p |
GT 26 mm φ, L=58 mm (70 mm) |
12.6 |
0.22 |
250 |
100 |
-2 |
2 |
0.6 |
1.900 |
1.600 |
3格子検波増幅管 |
JRC (N-051) 12G-R4 (3) |
Fig42 1:g2, 2:h, 3;S, 4:k, 5:g1. 6:g3, 7;h, 8;p |
|
12.6 |
0.18 |
250 |
100 |
-2.0 |
2.0 |
0.6 |
1.9M |
1.600 |
高周波増幅用5極管 mu=3000 |
12G-R4 (4) |
GR4 1:g2, 2:h, 3;nc, 4:k, 5:g1. 6:g3, 7;h, 8;p |
GT |
12.6 |
0.18 |
250 |
100 |
-2.0 |
2.0 |
0.6 |
1.9M |
1.6 |
検波増幅 mu=3000 |
Front and Back of JRC 12G-R4/正面と裏面。正面の下部には社名と管名が黒インクで。裏面左側には1級マーク。
Top and Buttom of JRC 12G-R4/管頭と底部。管頭はガラス部が露出している。頭をゆらすとぐらぐら。底部のキーは破損して紛失。シールドケースはアルミ製で,下部はネジ止め。しかし,シールドの配線は鳩目を介してハンダ付けしてある。gm=47>40でまだ活きているが,khショートを示した。絶縁が悪化している。
ラジオ用12V管。リモートカットオフ(バリミュー)の高周波増幅用5極管。日本無線(JRC)1945-7年。電気的特性はオリジナルで,同社が,開発した12G-R4/N-051のバリミュー版である。製造料は少なく1947年末にN-051の1/10, 高級受信機にのみ用いられた。
(原型・構造・特性)
|
Base |
Outline |
Eh V |
Ih A |
Eb V |
Esg V |
Eg V |
Ib mA |
Isg mA |
rp Mohm |
gm mA/V |
|
(N-053) 12G-V3 (1) |
- |
|
12.6 |
0.22 |
250 |
100 |
-2 |
6.0 |
1.7 |
1.500 |
1.600 |
高周波増幅 mu=2400 |
(N-053) 12G-V3(2) |
1:g2, 2:h, 3;S, 4:k, 5:g1. 6:g3, 7;h, 8;p |
GT 26 mm φ, L=58 mm (70 mm) |
12.6 |
0.22 |
250 |
100 |
-2 |
4.2 |
0.6* |
2.000 |
1.600* |
3格子可変増幅管 *Ib, rp以外N-051に同じとある |
JRC (N-053) 12G-V3 (3) |
Fig42 1:g2, 2:h, 3;S, 4:k, 5:g1. 6:g3, 7;h, 8;p |
|
12.6 |
0.18 |
250 |
100 |
-2.0 |
6.0 |
1.8 |
1.500 |
1.600 |
可変増幅用5極管 mu=2400 |
12G-V3 (4) |
GR4 1:g2, 2:h, 3;nc, 4:k, 5:g1. 6:g3, 7;h, 8;p |
GT |
12.6 |
0.18 |
250 |
100 |
-2.0 |
2.0 |
0.6 |
1.9 |
1.600 |
検波増幅 mu=2400 |
ラジオ用12V管。検波・増幅用双2極3極管。日本無線(JRC)1945-47年。
3極部は日本独自の仕様?で,特性は6SQ7-GTに類似しているが,感度(gm)を高めており,増幅率(mu)はやや低く,rpも2/3程度と低い。ピン配置も独自で,米国型と互換性が無い。開発当初(MJ誌1947年3月),2極部が2ユニットあったらしいが,その後流通したものは単ユニットになっている。なお,公表されている規格表のピン配置はどれも2ユニット型のもの。
この球はコンバータ管12G-C4とともに,製造技術上の問題(内部が複雑なので相当の熟練した技術が必要と1947年の文献に記載あり)から一度に製造できる量が限られていた(月産1000個)ため,JRCの受信機では高級なモデルにのみ採用され,普及モデルの検波増幅管には5極管12G-R4を用いたプレート検波で代用された。このため,今日では残っているサンプル数は少ない。
(原型・構造・特性)
|
Base |
Outline |
Eh V |
Ih A |
|
Eb V |
Eg V |
Ib mA |
rp kohm |
gm mA/V |
mu |
|
(N-231) 12G-DH4 (1) |
- |
|
12.6 |
0.22 |
(t) (d) |
250 3 |
-2 - |
1.5 1.0 |
60 - |
1.500 - |
90 - |
第2検波低周波増幅 |
12G-DH4 (2) |
1:g, 2:h, 3:S, 4:k, 5:dp1, 6:dp2, 7:h, 8:p |
GT 26 mm φ, L=58 mm (70 mm) |
12.6 |
0.22 |
(t) (d) |
250 3 |
-2
|
1.5 1.5 |
-
|
1.500
|
90
|
双2極高増幅率3極管 (Note; pin 6= nc) |
JRC (N-231) 12G-DH4 (3) |
Fig44 (誤り) 1:S, 2:g, 3;k, 4:pd, 5:nc. 6:p, 7;h, 8;h |
|
12.6 |
0.18 |
(t) |
250 |
-2.0 |
1.5 |
6.0 (誤り) |
1.500 |
90 |
双2極高増幅率3極管 A級増幅 |
12G-DH4 (4) |
DH4 1:g, 2:h, 3;nc, 4:k, 5:pd. 6:pd, 7;h, 8;p |
GT |
12.6 |
0.22 |
(t) |
250 |
-2.0 |
2.0 |
60 |
1.500 |
90 |
検波増幅 (Note; pin 6= nc) |
(参考) 12SQ7-GT |
|
|
12.6 |
0.15 |
(t) |
250 |
-2.0 |
0.9 |
91 |
1.100 |
100 |
|
Front and Buttom of JRC 12G-DH4/正面と底部。外観はまるで東芝マツダの戦時中のRHシリーズに良く似ているが,シールドケースはアルミ製。JRCは凸文字。管名は黒インク。側面に「2級」の印。2級が存在していたのを初めて確認できた!実に貴重なサンプル。チェックの結果,3極部はgm安定せず,ルースベースが原因と分かり,これを正すとOK(gm=37>19)。2極部はユニット1はOK(em=116>20)だが,ユニット2はIb=0。接触不良が原因かと,ベースを揺らしていたらシールド・ケースがずっぽりと抜けた!な,何と!2極部が1個しか無いではないか!さすが2級だけある?規格に載っていない球を製造していたのか?あるいは規格を変更したのか?
Inside View of JRC 12G-DH4/中身。下部の2極部が1組しかないのが確認できた。しかし,電極の構造,組立は何とできばえの見事なことよ。使っている材料はまるで米国の軍用のように精密だ。民生用にここまでつぎ込んでは商売が成り立たない?サイド・マイカなどは贅沢だし,上下のマイカ板に濁りはない。上部マイカ板にはマグネシア塗布?ガラス管の頭は普通より尖っている。3極部のグリッドには黒色放熱フィンがある。ゲッタは板を切り抜き四角の枠にしたものを使用。ヒータは驚くことにコイル型である。
Low Part of JRC 12G-DH4/ベース部。ボタン・ステム(この写真でみえるかどうか?)で有名な球なのだが,足はルースで接触不良が起きている。ジュメット線/引き出し線が細く,しかもハンダも悪いのが原因だろう。後世のボタン・ステムはルース・ベース知らずで有名である。このため,2級の烙印を押されたのだろうか?
12Vラジオ用5極出力管。日本無線(JRC),1945〜1947年。Nシリーズ管。オリジナル設計で,電気的特性は米国42/6F6に類似しているが,gmがやや高く,内部抵抗も低い。
その後,JRCはUZ-42Aというものを発売した。外観は電極やガラスの形状が12G-P7そのままであることから,おそらくオクタルベースをST6ピンに変え,ヒータ電圧を6.3V, としたものと思われる。
(原型・構造・特性)
|
Base |
Outline |
Eh V |
Ih A |
|
Eb V |
Esg V |
Eg V |
Ib mA |
Isg mA |
rp kohm |
gm mA/V |
RL kohm |
Po W |
|
(N-052) 12G-P7(1) |
- |
|
12.6 |
0.36 |
|
250 |
250 |
-15 |
35.0 |
8.0 |
60 |
3.000 |
7.0 |
3.0 |
出力管 mu=180 D=10% |
(N-052) 12G-P7 (2) |
1:g2, 2:h, 3;S, 4:k, 5:g1. 6:g3, 7;h, 8;p |
GT 30 mm φ, L=73 mm (85 mm) |
12.6 |
0.36 |
|
250 |
250 |
-15 |
35 |
8 |
60 |
3.000 |
6 |
3 |
5極出力管 mu=180 |
JRC (N-052) 12G-P7 (3) |
Fig43 1:g2, 2:h, 3:-, 4:k, 5:g1. 6:g3, 7;h, 8;p |
|
12.6 |
0.36 |
|
250 |
250 |
-15 rk= 350 ohm |
35 |
8 |
60 |
3.000 |
6. |
3 |
電力増幅5極管 mu=180 |
12G-P7 (4) |
GP7 1:g2, 2:h, 3;nc, 4:k, 5:g1. 6:g3, 7;h, 8;p |
GT |
12.6 |
0.36 |
(p (t |
250 250 |
250 - |
-15 -20 |
35 30 |
8.0 - |
60 3 |
3.000 2.700 |
6.0 4.0 |
3.0 0.88 |
5極管 mu=160 mu=8 |
(参考) UZ-42 |
|
|
6.3 |
0.7 |
|
250 |
250 |
-16.5 |
34 |
6.7 |
100 |
2.200 |
7 |
3.2 |
mu=220 |
12G-P7はデビューの頃は,上に挙げた1947年の広告の図にあるように,ベース・シェルが短く,プレートは2つ穴だったが,新型はベース・シェルが長くなり逆さ徳利のようになるとともに,プレートは1つ穴になっている。
ラジオ用傍熱型両波整流管。JRC(日本無線)1945-47年。ボタン・ステムを用いたGT管。ヒータ電圧が12.6Vであるがトランスレス用ではない。オリジナルの設計であるが,米国6X5-GTを12V点火にしたような整流管。ヒータ電力は4.536W(5.0V換算,0.9A)。
(原型・構造・特性)
|
Base |
Outline |
Eh V |
Ih A |
Eb AC V |
Io mA |
|
(N-021) 12G-K10(1) |
- |
|
12.6 |
0.36 |
400 x2 |
90 max |
出力管 mu=180 D=10% |
(N-021) 12G-K10 (2) |
1:nc, 2:p, 3;nc, 4:h, 5:k. 6:h, 7;nc, 8;p |
GT 30 mm φ, L=73 mm (85 mm) |
12.6 |
0.36 |
350 x2 |
70 |
全波整流管 |
(N-021) 12G-K10 (3) |
Fig45 1:-, 2:p1, 3;-, 4:h, 5:k. 6:h, 7;-, 8;p2 |
|
12.6 |
0.36 |
350 |
70 |
全波整流管 |
12G-K10 (4) |
GK 1:nc, 2:p, 3;nc, 4:h, 5:k. 6:h, 7;nc, 8;p |
GT |
12.6 |
0.36 |
350 |
70 |
両波 |
(参考) 6X5-GT |
|
|
6.3 |
0.6 |
325 |
70 |
|
N-051/12G-R4はデビューの頃は,FM2A-05Aと同様にパンチ穴付きアルミシールドケースに納まっていたが,新型は米国の高周波用GT管のようにパンチ板による内部シールド筒とベース部の金属シールド付きシェルに代わった。米国型と異なるのはベース底のガイドピンが金属製で穴が空いていることだろうか。(米国製はガイドピンは樹脂モールド製だが内部にシールド金具が入っている)
謎の5極出力管。試作品。35L6GTのような出力用5極管。JRCは1948年にトランスレス出力管(試作管) N-054を発表した。これは,米国35L6-GTをモデルにした5極管。入手の謎の5極管は,N-054とも若干の相違が見られ,g3が独立引出しとなっている。
|
Base |
Outline |
Eh V |
Ih A |
Eb V |
Esg V |
Eg V |
Ib mA |
Isg mA |
rp kohm |
gm mA/V |
RL kohm |
Po W |
|
(N-054) (1) |
1:nc, 2:h, 3;p, 4:g2, 5:g1. 6:-, 7;h, 8;k+g3 |
GT |
30 |
0.175 |
200 max 200 100 |
130 max 100 100 |
-8 -7.5 |
41 40 |
8.0 8.5 |
35 25 |
6.000 5.800 |
4.5 2.5 |
2.5 1.1 |
5極出力管 |
(参考) 35L6 |
|
|
35 |
0.15 |
200 110 |
110 110 |
-8 -7.5 |
43 40 |
2 3 |
34 14 |
5.900 5.800 |
4.5 2.5 |
3.3 1.5 |
ビーム管 |
TV7/Uでの実測では,ヒータ25Vレンジ(実測27.6V)で点灯し,米国ST管43の測定条件でgm=2.6mA/V, 米国35L6-GTの条件で gm=3.5mA/Vで,生きていることが確かめられた。
謎の5極管。試作品。6AG7のような高周波用5極管。
下記の球は12G-DH4のベースとシールドケースを利用して作った試作品と思われます。ベースピン接続は
(本球)BasePins=( 1:IS-G3, 2;h, 3;IS-G3-OS, 4;G1, 5;k, 6;g2, 7;h, 8;p ); IS=Inter Shield, OS=Outer Shield
となっており,g3が2箇所引出されているがmこれは支柱に直接金属シールドを接触させているからである。
頭のゲッター膜の内側には金網が見える。これは,がーさんによると,「全般的な構造,分割陽極,グリッドシールド,サプレッサーグリッドの上下の処理などから高周波増幅に配慮した広帯域増幅管であると考えられ,さらにプレートがやや大きく外部にシールドがないことなどからは映像増幅用などの出力管的な要素が感じられます。..細かいパンチングのグリッドシールド,丸みを帯びた分割シールド,上下のマイカ部のシールドなどはドイツ系の構造が強く感じられます」として,ドイツテレフンケンの戦争中の航空機用5極管LV1, LV3の写真を見せていただきました。(2005年5月)
双5極管出力管
50V, 0.15A, 100V, 100V, -4V, 12mA, 3mA, 3.500mA/V (Web)
下のサンプルは,文字が無いがおそらくN-551なのだろう。
東芝は1947年に高級全波受信機用として,戦前の米国150mA系トランスレスGT管に習ってトランスレスGT管(本当はオートトランス用)も開発した。国内商用電源事情を考慮しヒータ電力10%Upを図り175mA系とした。試作番号は#3001から#3005の5品種で(1),CES登録後,表に挙げた名称になった。東芝のラジオ製造部門はこれらの球を用いて全波スーパーZS-1007を販売している。日本独自のGT管は当初「高級」受信機用に位置付けられていたため製造量は少なく普及しなかったが,さらに1950年末には東芝は米国完全互換のトランスレスGT管(6)を発売し,国産GT管は米国系GT管に製造品種が統合されたこと,さらにMT管が早く普及したこともあって,製造量は少ないまま,Nシリーズと同様に廃止になった。1951年マツダ受信用真空管ハンドブックでは,12G-C5, 12G-R6, 30G-K5, 30G-P9が保守用品種に指定されており,生きていたのは12G-DH3のみであった(誤植か?)。12G-DH3も1953年のハンドブックでは指定されていた。
同じ年に東芝は普及型スーパーの球として,戦前の150mA系トランスレスST管をベースに,ヒータ電力10%Upを図った175mA系トランスレスST管(#3013から#3017,12W-C5 他)を開発している。
このシリーズの特徴は出力管が5極管であって,出力を得るためには高い+B電圧を必要とするので,オートトランス式としたこと。したがって,整流管も高い電圧対応となった。また,中間周波数IF増幅管が米国で主流のリモートカットオフ管でなかったこと。戦前にST管では58, 77, 6D6, 12Y-V1と様々に作ってきたし,メタル管でさえも6K7を製造しているが,いずれも比較的gmの低い球であった。本来,GT管も12SK7程度ではグリッド巻き線技術はそれほど難しくないと思われるのに,何故かバリミューを作らなかった。他社ではJRCがN-052/12G-V3, TENが12G-V4を作っているのにである。同時期に作ったST版では12Y-V1Aを開発している。
検波増幅管は当初双2極5極管が計画されていたようで,1947年8月に発表された12G-DH9(2)はその後名称を正式に付与され12G-DH5になったことが1948年に発表されている(2')が,1948年4月に発売された検波増幅管は単2極3極管の12G-DH3であった(3,4)。単2極3極管ST管6Z-DH3が1947年に先行して発売され好評であった?(我が国では双2極管は不要との認識ができた?)こと,これを受けてトランスレスST管12Z-DH3Aが開発されたことから,同時に開発されていたGT管も廉価な12G-DH3の発売に踏み切ったらしい。お陰で12G-DH5は発売されなくなった模様。1951年に発行されたマツダの真空管ハンドブック(5)には12G-DH5の名称は掲載されていなかった。
(追記2008.6.22) なお,開発初期の頃は,日本無線のNシリーズと同様に,試作番号のみを表示した製品が僅かであるが市場に出荷された模様。現に試作番号のみの製品が他の球に混じって当時のラジオに残っている。
List of Toshiba-Matsuda GTs(175 mA series)/東芝マツダ175mA系GT管の内訳 (注) 試作番号#3001から3004は,文献(1)及び文献(7)による。
Function/ 構造 Purpose/ 用途 Name/ 管名 Prototype/ 原型 Similar American GT
Penta-grid/ 5格子
Frequency Converter/ 周波数変換
12G-C5 #3003
175mA version of 12SA7/
12SA7の175mA版
12SA7
Pentode/ 5極
RF Amp/ 高周波増幅
12G-R6 #3002
GT version of Sora/RH-2/
ソラ-RH-2のGT版
12SJ7
Diode Triode/ 2極3極
Detector and Amp/ 検波・増幅
12G-DH3 #3004
GT and 12.6V version of 6Z-DH3/
6Z-DH3の12.6V GT版
12SQ7
Pentode/ 5極
Power Amp/ 電力増幅
30G-P9 #3001
UZ-42/6F6?
(Parallel of 12Z-P1?/
12Z-P1の並列球?)
(35L6)
Diode/ 2極
Half-wave Rectifier/ 半波整流
30G-K5 #3005
(30V,175mA version of KX-80BK/KX-80HK/
KX-80BK/KX-80HK相当の175mA管)
(35Z5)
[参考文献]
1) 電気通信学会雑誌, Vol.30, No.12, 1947.12, p.49. ( 電気通信界の展望 2.製造機関の現況(内田英成), 2.5 真空管(松井正二), 2.5.3 各製造機関の現況, (e)東京芝浦電気株式会社(1)受信管 )
2) 新型真空管, 12G-C9, ..., 30G-K9, 電波科学, 1947.8
2') 新型真空管(2), 12G-C5, 12G-R6, 12G-DH5, 30G-P9, 30G-K5, 電波科学, 1948.2
3) 国民型スーパーえの転換-新規格真空管, MJ1948.4, p.13
4) 高野正夫, 新規格GT管を使用した五球全波スーパー, MJ1948.5, p.15-17.
5) 東京芝浦電気, マツダ受信用真空管ハンドブック1951, 誠文堂新光社, 1951.8.
6) 新製品登場-マツダ新型GT管, 電波科学, 1950.12, p.6
7) 樋口千代造,他,実用ラジオサービスブック,理工学舎,1948-49の「SC-XXV.最新受信用真空管の規格一覧表第8-21表,他」
12G-C5は周波数変換用5格子管で,米国12SA7-GT相当の球であるが,ヒータ電流が175mAと定義された日本独自の球である。ちなみに,米国相当管6SA7-GTの試作管は#3018である。
(原型・構造・特性)
(マツダ51) 12.0V,0.175A,GT,(7-1) pin=(1:nc, 2:h, 3:p, 4:g2-g4, 5;g1, 6:k+g5, 7;h, 8:g3)
(6SA7と同じ)Ep:250V,Eg2+4:100V,Eg3:0V,Eg1:0V,Ip3.2mA,Ig2+4;8.0mA, Ik11.7mA, rp1M, gc0.45mA/V,
Rg20k,Ig1:0.5mA
Ehkmax=150V, gc=0.002mA/V at Eg=-35V
(Triode) gm=4.5mA/V, Esg=Ep=100V, Eg1=0V
眉唾ものの12G-C5。骨董市で入手。メーカがプリントしたと思われる文字はベースにもガラス面にも無い。12G-C5であることを証明すべき文字は唯一,ベースに刻まれた前所有者のカナ釘流の文字だけである。スートの色からすると1940年代末から1950年代初頭の東芝マツダ製のようにも思える。たしかにその時代を髣髴させるような粗雑な作りの電極構造ではある。TV7/Uで測定を試みたところほぼエミ減といった感じ。生きているには違いない。
12G-R6は高周波増幅用シャープ・カットオフ5極管で,原型は戦時中に開発されたRH-2/ソラである。電気的特性並びにピン接続はRH-2に同じ。(したがってベースピン接続は米国6SJ7/6SK7と同じ。)
(マツダ51) 12.0V,0.175A,GT,(7-1) pin=(1:nc, 2:h, 3:g3, 4:g1, 5;k, 6:g2, 7;h, 8:p)
Cgpmax=0.015pF, Cin=7pF, Cout=10pF
Ep:250V, Eg2:250V, Rg2=125kohm, Rk=330ohm (Eg=-2V), Ib=5mA, Isg=1.2mA, gm=2.0mA/V, rp=1Mohm
12G-R6はシャープカットオフ管であるにもかかわらず,スーパー受信機の中間周波増幅に用いら,AGC(AVC)もかけられた。カットオフ特性は急峻でなく,丁度良かったようである。
Toshiba-Matsuda 12G-R6/東芝マツダの12G-R6。戦時中東芝マツダで開発された万能管「ソラ」に良く似ている。それもそのはず,この球は後継管なのです。ソラを有名にしたピンチ・ステムのシールドもちゃんとある。ピンチ・ステムの下部全面にグラファイトが塗布され,電極引き出し線の並びの最右端に位置する上部円筒シールドの支持棒の根本にまで塗布されている。つまり,円筒シールド,ステム部の皿型ゲッタとグラファイト面は電気的に同電位となっており,ゲッタ膜の浮遊容量が悪さしないようシールドを形成している。gm=71。
Toshiba-Matsuda 12G-R6(new)/東芝マツダの12G-R6(新型)。これは以前紹介した12G-R6の新型である。RH-2/ソラの構造を一新してしまった。三重県津田孝夫氏撮影。上記の旧型と比較されたい。
12G-DH3は検波・増幅用の2極3極管で,米国12SQ7-GT相当の球である。ヒータ電流が175mAと定義された日本独自の球で,先行して作られたST管6Z-DH3の12VGT版として作られた。Ehkmax=150Vを除き,特性は6Z-DH3/6Z-DH3Aと同じ。
(マツダ51) 12.0V,0.175A,GT,(7-1) pin=(1:nc, 2:g, 3:k, 4:pd, 5;nc, 6:p, 7;h, 8:h)
Ep:250V, Eg:-2V, mu=100, rp=91kohm, gm1.1mA/V, Ib=0.9mA
Ep:100V, Eg:-1V, mu=100, rp=110kohm, gm0.9mA/V, Ib=0.4mA
30G-P9は「オートトランス付きスーパー受信機の出力用」5極管で,ヒータ電流が175mAと定義された日本独自の球。米国に相当管が無い。原形は不明であるが,プレート形状や特性からUZ-42/6F6と推定される。ヒーターを150mAから175mAに増強したのでgmが大きくなっている。その分,動作領域を180Vまでに制限し,プレート/スクリーン損失はUZ-42/6F6の11W/1.1Wに比べ,5.5W,0.9Wと低く抑えている。
1947年当時,米国ではトランスレスビーム出力管35L6-GTが主流であったが,敗戦と占領下にあって特許権の行使に必要な契約が結べないため,各社はビーム管の国産化が困難だったとされている。我が国では戦前にビーム出力管US-6V6を製造していたし,また戦時中に開発した6V6の12Vガラス管PH-1も1947年当時製造されていた。したがって,新たな品種のビーム管には契約が必要だったのか?不明である。
いずれにしても,5極管で代用しようとしたため,十分な出力を得ようとすると+B電圧が不足し,商用電源電圧のオートトランスによる昇圧が不可欠となってしまった。
(マツダ51) 30.0V,0.175A, pin=(1:nc, 2:h, 3:p, 4:g2, 5;g1, 6:-, 7;h, 8:k+g3)
Ep:180V, Esg:90V, Eg=-7V, Ib=30mA/32mA, Isg=5mA/10mA, rp=40kohm, gm=4mA/V, RL=6kohm, Po=1.5W/8%
30G-K5は「オートトランス付きスーパー受信機」の半波整流管で,ヒータ電流が175mAと定義された日本独自の球。米国に相当管が無い。原形は不明である。プレート形状や特性は後に開発されたST管のKX-80BK/KX-80HKと同じ。
出力管30G-P9に高圧電源が必要なため,「オートトランス」を用いて100Vを昇圧したAC200V程度の整流管が新たに必要になった。1947年当時,米国ではトランスレスラジオ用には半波整流管35Z5-GTが主流であったが,高圧向きではない。高圧といえば,ひと昔前のトランスレスでは倍電圧整流管KZ-25Z5や24Z-K2が使われたが,半波整流管とするには各ユニットの容量は小型である。また,トランス付きの傍熱型半波整流管には戦前KX-1Vがあり国産化されたが小容量であった。米国のラジオでは両波整流用の傍熱型整流管6X5-GTが主流であったがこれも片ユニットは小容量で用を為さない。このため,独自に適度な電流容量を持つ半波整流管を開発したようである。30G-K5は電極の形からすれば,KH-2の片ユニットに似ている。KH-2のヒータ電力を50%アップさせたような定格を持っている。
(原型・構造・特性)
(マツダ51) 30V/0.175A, pin=(1:nc, 2:h, 3:nc, 4:nc, 5:p, 6:nc, 7:h, 8:k)
200V/70mA
Ehkmax=300V, Zpmin=100ohm
Toshiba-Matsuda 30G-K5/東芝マツダの30G-K5。1940年代末から50年代初頭。球としては新しい年代の製造なのだが,イメージは何とも古めかしい。良くぞ生き残ったという感じがする。ベースは薄型で当時の物とは考えにくい。後に履き変えたかもしれない。古さを物語るのは,プレート材料。写真では分かり難いが,亜鉛トタンのようなブリキでできているようなイメージ。皿ゲッタ,em=54。実に活きている。
Box of Toshiba-Matsuda GT tube/東芝マツダのGT管専用の箱。1950年代の箱と思われる。30G-K5は後から入れたもので,オリジナルは違う球が入っていた?箱の記号はSB-308DA。
1級マークの箱入り球を入手できた。やはり、ベースの長いものがオリジナルの姿だった。
川西機械(神戸工業)TENは1947年頃(1948.3-4年に掲載)に175mA系のトランスレスGT管を開発した(1)。周波数変換管12G-C5と高周波増幅管12G-R6は東芝と同じ規格に統一されているが,他の球はTENオリジナルである。また,1948年頃,日本独自の仕様の6.3V管も通信用に開発した。それが6G-R7である。なお米国型を国産化した1949年には6G-K14も作っている。なお,このTENのトランスレスシリーズは1951年5月の電波科学にも製作記事が登場するので,その頃まで市販されていたらしい(3)。
List of Kawanishi/Kobe Industry (TEN) 175 mA series GTs/川西機械(神戸工業)TENの175mA系GT管の内訳 *相当管だが,ヒータ電流は10%UPしているので特性は若干異なる。出典) 川西機械製作所 巽武一, 足立正次, 川西製トランスレス・スーパー用新小型受信真空管, 電波科学, p.2-5, 1948, 4-5月.
Function/構造 Purpose/ 用途 Name/管名 Prototype/ 原型 Similar American GT/ 米国相当管*
Penta-grid/ 5格子
Frequency Converter/ 周波数変換
12G-C5
same as Toshiba/ 東芝に同じ
12SA7
Pentode/ 5極
RF Amp/ 高周波増幅
12G-R6
same as Toshiba/ 東芝に同じ
12SJ7
Pentode- Vari-mu/ 5極バリミュー
RF Amp/ 高周波増幅
12G-V4
12SK7
Dual Diode Triode/ 双2極3極
Detector Amp/ 検波・増幅
12G-DH6
12SQ7
Pentode - Beam Power/ 5極ビーム
Power Amp/ 電力増幅
30G-B1
35L6
Diode/ 2極
Half-wave Rectifier/ 半波整流
30G-K7
35Z5
|
|
出典 |
Pins |
Eh/Ih V A |
Eb V |
Esg V |
Eg V |
Ib mA |
Isg mA |
rp |
gm mA/V |
|
12G-C5 |
same as Toshiba/ 東芝に同じ |
1 |
|
12 0.175 |
300 max |
Eg2+g4= 100 |
- |
2.8 |
Ig2+g4= 8 |
1M ohm |
gc= 0.450 |
Ig1=0.5mA, gm=5.0mA/V |
12G-R6 |
same as Toshiba/ 東芝に同じ |
1 |
|
12 0.175 |
300 max 250 100 |
125 max 100 100 |
-3 -3 |
3.0 2.9 |
0.8 0.9 |
0.7M 0.7M |
1.700 1.600 |
|
12G-V4 |
12SK7 |
1 |
|
12 0.175 |
300 max 250 100 |
125 max 100 100 |
-3 -1 |
9.5 13 |
1.8 2.4 |
0.8M 1.2M |
2.000 2.100 |
|
12G-V4 |
|
2 |
6N |
|
250 100 |
100 100 |
-3.0 -1.0 |
9.5 13 |
1.8 2.4 |
0.8M 1.2M |
2.000 2.100 |
|
12G-DH6 |
12SQ7 |
1 |
|
12 0.175 |
300 max 250 100 |
|
-2 -1 |
1.0 0.5 |
|
91k 110k |
1.100 0.900 |
mu=100 mu=100 |
12G-DH6 |
|
2 |
8Q |
12 0.175 |
250 100 |
|
-2.0 -1.0 |
1.0 0.5 |
|
91k 110k |
1.100 0.900 |
mu=100 mu=100 |
30G-B1 |
35L6 |
1 |
|
30 0.175 |
200 max 200 100 90 80 |
117 max 100 100 90 80 |
-8 -7.5 - - |
38 36 - - |
3 2 - - |
RL= 4.5k 3.0k 3.0k 3.0k |
5.600 5.500 - - |
Po= 3W Po= 1.1W Po=0.8-0.9W Po=0.65-0.75W |
30G-B1 |
|
2 |
7AC |
30 0.175 |
200 100 |
100 100 |
-8.0 -7.5 |
38 36 |
3.0 2.0 |
450k 300k |
5.600 5.000 |
RL=3k Po=3.0W Po=1.1W |
30G-K7 |
35Z5 |
1 |
|
30 0.175 |
250 V rms |
|
|
100 mA |
|
|
|
|
30G-K7 |
|
2 |
6AD |
30 0.17 |
250 |
|
|
100 |
|
|
|
最大尖頭値逆電圧 700V |
[参考文献]
1) 川西機械製作所 巽武一, 足立正次, 川西製トランスレス・スーパー用新小型受信真空管, 電波科学, p.2-5, 1948, 4-5月.
2) ニューラジオ編集部編, 受信・送信用真空管ポケットブック, 大盛社, 1952
3) 井上春雄(井上商会技術部), 市販部品だけで誰でも必ず成功するミゼット4球スーパー, 電波科学, p.16-18, 1951年5月
松下電器産業は1952年頃にトランスレスGT管を採用したラジオを販売しましたが,その真空管は自社製造でした。松下電器は戦前より真空管は他社の供給を受けてきましたが,戦後は製造部門を持ち,さらに1950年頃にはラジオの性能を追求するためについに真空管の開発まではじめた時期でした。ST管ラジオにおいては自社開発の6W-C5Aを採用しています。そして,1952年,ついに独自のライン・ナップを作り上げました。それが,トランスレスGT/M管です。
Name |
Proto-type |
Function |
Feature |
6SA7-GT/M |
6SA7-GT |
Pentagrid Conv |
No Sweat |
6SK7-GT/M |
6SK7-GT |
RCO-Pentode |
Spray Sheild |
6SQ7-GT/M |
6SQ7-GT |
Single Diode-Triode |
Single Diode |
35L6-GT/M |
35L6-GT |
Beam Power |
? |
35Z5-GT/M |
35Z5-GT |
Half wave Rec |
Eh=27V, no pilot lamp |
以前,35Z5-GT/Mを単独で入手し,私のページ「戦後のラジオ用GT管」に紹介しましたが,記事をみて津田孝夫さんが資料を下さいました。その後,松下のラジオを2台入手して,その全貌を知ることになりました。松下は自社製造のラジオにせっせと使用しましたが,一方において業界団体のCESに登録してJIS名(日本名)をもらうような事はしませんでした。そのため,忘れ去られるのも早かったようです。松下にとっては登録どころではなかったかもしれませんが。
GT/M管には以上の他にもバラエティーがあり,例えば赤いベースの12SK7-GT/Mが知られています。要は欧州Philipsとの技術提携が始まった辺りのできごとでした。6CD7/EM34の国産化ではスプレーシールドが使われています。
何が違うのでしょうね。
米国35Z5GTの相当管なのだが,米国に無い球で日本独自?。ベース・ピン配置が異なる。ヒータは3pin-7pinで,パイロット・ランプ用のセンター・タップ(2pin)が無いのである。何のため作られた球か不明。
Mastushita-National 35Z5-GT/M (1953)/松下ナショナルの35Z5-GT/M(SC, 1953年3月)。プレートの作りも変わっている。斜めにフィンを付けたニッケル板を2枚合わせたもの。マイカ板も下部はヒータが貫通する部分に円盤型のマイカ板があり,さらに左側のプレート支柱下部からヒータ付近までの短い片支持マイカ板が付けられている。何のためか理解に苦しむ。角ゲッタ。