ANTIQUE JAPANESE RADIO/日本の古いラジオ

written by Koji HAYASHI, Ibaraki JAPAN

Mini-Museum of Japanese Radios/日本のラジオのミニ博物館

Radio Tubes After WWII/戦後のラジオ球

TV Tubes/テレビ球

Sweep Tubes/水平偏向出力管

Beginning Time

Japanese

American

European

Root of Sweep Tubes


Page-Hor4eu. Beam Deflection Power Tubes for TV Horizontal Amplifier/TV用水平偏向出力管

Part 4 European Type Sweep Tubes in Japan/ 日本の中の欧州系水平偏向出力管

2nd Edition (2006.11.26)-(2010.11.15)-(2011.9.24)

HomePageVT/TV_Hor4EU.html

Note: File name "Hor4EU" was changed to "TV_Hor4EU" at (2011.9.24).


1: Black and White Ages/白黒時代

PL81/21A6

PL36/25E5

EL36/6CM5

No photo

50JY6

2: Color Ages/カラー時代

PL136/35FV5

PL500/27GB5, 18GB5

PL521/29KQ6, LL521/21KQ6

29LE6

PL509/40KG6A

PL519

EL505

No photo


1: Black and White Ages/白黒時代

(1)PL81/21A6

欧州Philips/Mullardが1952年頃に真空管の容器に米国の9ピンMT管を選んで開発した小型TV用の水平偏向出力管。米国で開発されたミニュアチュア管(MT管)はもともと電力を要しない小型真空管のための形式で,本家米国では電力を扱う球の容器にはGT管以上の形式を用いるのが常識でした。ところが,欧州では経済性の観点から電力管のミニアチュア化が研究され,戦後生まれたPhilipsの欧州型MT管(リムロック管)にも幾つかの電力管が登場していました。Mullard/PhilipsがTV向けの球として開発した第1号は5極管UL44(100mA,45V)でした。ヒータ電力だけを見ると6.3V換算で0.72AですからEL84/6BQ5に匹敵する大きさです。

UL44; 45V,0.1A,175V,175V,-13.5V,28.5mA,4.7mA,7mA/V

PL81; 21V,0.3A,175V,175V,-22V,45mA,3.0mA,6.2mA/V,rp=10k,mu=5.3

次に開発したPL81/21A6はヒータ電力は6.3V換算で1.0Aと約40%増大させ,パービアンスを飛躍的に高めたものです。小型化はTVセットの小型化につながり経済性の向上に寄与する,さらに米国型の容器を採用すれば輸出もできるという一石二鳥をねらった球でした。中身は伝統ある高出力高感度管ですし,欧州と米国の考え方も異なりますから米国市場では競争相手は現れませんでした。小型化の工夫としては,プレート損失と耐圧を確保するためにトッププレート型とし,セラミックス製の大きな枠型スペーサを側面に2つつけました。スクリーン・グリッドの支持棒は上部に大型の板状フィンが2枚あります。このような無理な詰め込みは米国では想像もできないことですから,欧州メーカの独壇場となりました。それでも,ヒータ電力も大きいのでプレート損失は9Wとやや控えめになりました。この球でも14インチ,70度のブラウン管は十分にドライブできます。もう1つおまけに,この球は欧州トランスレス300mA系の初の水平偏向出力管でもあり,300mA系TVの普及に寄与しました。

日本では松下電器産業が1952年にPhilipsと技術提携/資本提携し松下電子工業を設立,これまでの真空管製造部門を新しい会社に移して再スタートしました。本社より資本の大きい会社を設立したことで松下幸之助の英断に人々は驚いたそうです。1954年にはPhilipsの技術で欧州管の製造を開始しました。その第1段がこの球で,松下製のTV製造を軌道に乗せました。特に国内ではトランスレス化によりTVの価格が下がり,しかも抜群の品質管理とうまい宣伝で松下の真空管はたちまちユーザーの信用を獲得しました。

[YaH]

左よりVALVO製PL81(SX6/D9E,1960年代,ValvoはPhilips傘下のドイツ企業),松下製21A6/PL81(qL?=1955.12),同(9K=1959.11),同1960年代。前3者はほぼ同じ造りで,天井に円形金属板がある。ゲッタはその上に寝かされており上にフラッシュしている。Valvoはリングゲッタだから製造は1960年代と思われる。松下の前2者のゲッタは見えないが,時代から考え角型ゲッタと思われる。残りの松下製は金属板がなくリング状の指向性を改善したドーナツ型ゲッタだけが付いている。

Telefunken PL81 (U7109720 714), (U7109720 775),(U7109__-33),(--- -32), (Ugf06-- 500),(-- 471), (Ugf06 471),(-)

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(2)PL36/25E5

Philips?が1955年頃に発表した300mA系の第2段で,数少ないGT管の1つです。6.3V管はEL36(EIA名6CM5,ヒータ電流は1.25A),後に600mA系XL36(13CM5)も誕生。設計はかなり斬新で,このクラスでも米国とは路線を異にしました。米国で主流の6BQ6系は米国一流の保守的な設計で電力を得るために3接時の増幅率(mu)は4前後に設定しているのに対し,この球は感度を高めるために高gm化し,ミューは8付近です。こうなると通常は電力を得るのが難しいのですが,同時に高パービアンスとしゼロバイアス電流も増大させ,6BQ6よりも低電圧でも同じ出力が得られるように設計してあります。その秘密の1つはプレート2次電子の低減策にあり,何とプレート内面にフィンがあるのです。この技術は昔RCAの48に見られましたが忘れ去られていたものです。後に米国球にも使われました。

この球は米国球に少しは影響を与えたでしょうが,その後も米国メーカは表面的には我関せずの姿勢を貫きました。この球の出現で大喜びしたのは実は日本メーカでした。米国に比べて商用電源電圧の低い日本では+B電圧も低くなるため,米国系の球によるトランスレスTVでは性能が出ずに苦しんでいたからです。このため,Philipsと提携している松下(1956年に国産化)は勿論のこと,米国に依存する他のメーカもこぞって採用しました。ただし,300mA系は松下だけで,東芝はヒータを米国系の600mA系に合わせた改造球12G-B3を開発(1957年),これが日本標準になり爆発的に普及したのです。当時,XL36は未発表でした。

PL36/25E5は実はカラーTVにまで使われ,国内では真空管TV最後まで現役だった球です。2本パラレルで米国の6JS6Aあるいは6KD6相当の働きをします。高価な新型管を使うか否かはセットメーカの考え1つでした。

[YaH]

左よりValvo EL36(=6CM5,オランダ製,DI5/X1F1,箱はドイツ製),Telefunken PL36,(U 0209832,ベースには037)。ともに1960年代に輸入されたもの。EL36は松下の造りと同じ。天井マイカに2枚のドーナツゲッタ。マイカは切り込みあり。角型プレート。ベースはボタン・ステムでマイカノール。G1フィンは縁を僅かに折り返した板状。部品が日本から輸入されていたのだろうか?Telefunkenはプレートはサイドの角を少し折ってあり,8角型。プレートサイドに2つのリングゲッタ。マイカに切り込みはなく,代わりにプレート支柱はボタン型ステアタイトのスペーサを介して取り付けてある。G1フィンはへの字型。グリッド支柱の貫通孔はG1,G2ともに片側が丸で片側が四角。熱膨張を考慮して多少の緩みがあるが,これが災いしてヒータ点火だけで振動する。

[YaH]

松下製の25E5。KPL(1956年製,ベースにロゴ,天井金属円板),0E(1960年,角ゲッタ2個,天井マイカ),1JN(1961年,丸ゲッタ1個,腕型支持金具登場),2IN(1962年製)。

[YaH]

松下製の25E5/PL36,国際化版。4EE(1964年,ガラス印字,ロゴが三松葉に,天井マイカなし,プレート穴あり),9C(1969年製,プレート穴なしに戻る)。この他にもありますが,省略。

[YaH]

国内他社の25E5。東芝(1つ星の時代,1960年代中頃,フィンなし,丸ゲッタ),NEC(白文字,420 97=1969年7月,丸ゲッタ,U字型フィンあり),双葉(1960年代,コの字型フィンあり,丸ゲッタ)。東芝の球は内部も綺麗で新品同様だが不幸な事故球。ヒータが暖まると突然にプレート電流がゼロになる。トップ・キャップの半田不良ではなく内部のリード線(溶接部)が接触不良のようだ。TV屋さんは原因を探すのに苦労したに違いない。

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(2) EL36/6CM5

EL36(6CM5)は有名な25E5/PL36の6.3V版で,ヒータ電流は米国系の6BQ6GTB6DQ6Aの1.2Aと規格が異なり1.25Aとなっています。日本の6GB3Aは互換性があります。パービアンスが高いので,低電圧使用の場合には米国系6BQ6GTB6DQ6Aよりも大きな出力が得られるとあります。

サンプルは松下の6CM5です。白黒TVが始まった頃の1956年頃,PL36/25E5に次いで国産化されました(松下カラーブレテンNo.27, 1958.1)。世はトランスレス時代でPL36/25E5の需要が多かったのですが,6.3V管も多少使われたようです。他社は米国系の6BQ6GTB/6CU6の時代,電源トランス付きなら十分な出力が期待できたし,国内では6BQ6-GTB系の6G-B6がかなり使われたので,それに相当するクラスのTVに松下だけが6CM5を使ってもおかしくありません。他社は互換管6G-B3Aが使いましたので,松下の6CM5の出番は余りありませんでした。

松下はオーディオ出力管としての使用例も発表しており,B級PPでEb300V, Esg150VのときPo44.5Wを得ています。

 

Matsushita 6CM5 (A25, NHK32 1957), 1957年製。天井マイカ,角ゲッタ2個。プレート穴なし。ボタンステム。岡田章さん寄贈。

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(3)50JY6

25E5/PL36の後継管。1965年頃に米国?で開発されたもの。EIA名だけで欧州名がありません。50E5相当(150mA系)ですが,スニベッツ対策にベース・ピン接続を変更し,G3をKから分離したもの。

[YaI]

松下製50JY6(ナショナル,BG-O,1960年代末)。

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European Color Ages/欧州のカラーTV管

(1)PL136/35FV5

1960年頃にPhilips(?)が開発した初代カラーTV用球。今日では忘れ去られた球ですが,斬新な設計で,特性はずば抜け,構造も堅牢,しかも美しい球でした。特にプレートに初めてキャビトラップ・プレートが使わたのが特徴です。国内では松下が1961年頃,まずトランス付きTV用の6FV5/EL136を国産化しました。当時のカラーTVはまだトランスレスはできなかったのです。この頃から米国では次々とカラー用の新品種が誕生しましたが,欧州ではTVのカラー化が遅れたため,Philipsはしばらくの間,次品種の開発を行いませんでした。松下は,1968年までこの球1本槍で通しました。

[YaI]

松下の35FV5(PL136),モデルは左がDK-o(69),右2つがFE-p(5C/63)。ともに1960年代末の保守用球。プレートは初のキャビトラップ・プレートで2枚のプレート内部フィンがサンドウィッチされている。プレート表面はマイカ付近の数ミリを残して灰色のコーテイングがなされている。写真では気が付かないが,ガラス管は太管で,それを上回る大型のGTシェルが使われている。電極上部には大型の板状G1フィン,その上には天井マイカがありドーナツゲッタ2個が置かれている。天井マイカはゲッタ膜の飛散を防ぐ。この球は驚くことに,何と下部マイカ板の下に大型のG2用の板状フィンがある。

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EL136/6FV5は,日本の中の欧州水平偏向出力管のページ(Hor4EU)で先に紹介したように,国内では1962年頃に現れたカラーTV用の水平偏向出力管です。その後,トランスレス300mA版のPL136/35FV5が作られました。国内で6.3V版が流通したのは僅かな期間で1962-1965年位ではないかと思われます。

Matsushita 6FV6(6G K, 1966),天井のグリッドフィンは黒に近い濃い灰色です。\2250.

PL136/35FV5は大好きな球で,その後も細々と入手していました。サンプルは松下電器産業/松下通信工業の35FV5です。以下のサンプルは単発的に入手したもの。最近になって25本箱を入手しました(AR, AU, 1969年製?など)。市場では人気がありません。

[1hN]

Matsushita 35FV5(PL136) CFo(1966?) and FGh(1963?)

電極の作りは良いのですがマイカ処理が悪く爪の粉が内部に散乱しています。

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(2)EL500/6GB5-(2)PL500/27GB5

Philipsが開発したマグノーバル管初の水平偏向出力管。1961年頃。これまた斬新な設計。キャビトラップ・プレートを初めて採用。高パービアンスで,低電圧大電流型。低+B領域の性能は後の米国の6JS6Aクラスに匹敵する。EIA名6GB5は日本のJIS名に似ているが,日本では5番は欠番。

[AhT]

EL500 (6GB5), National Electronics/Amperex -Holland

[AhT]

[AhT]

National Electronics/Amperex -Holland EL500 (6GB5)

[YaI]

左よりNEC18GB5(298/11,1971年1月),NEC/東芝18GB5(2Z,1972年12月),東芝27GB5(赤文字,1963年頃),松下27GB5/PL500(ナショナル3H-H)。1番目のNEC製は角形プレートで,天井マイカがないがG1フィンはある。クロム・リングもない。2番目はNECブランドだが東芝製造のバーター製品で,天井マイカがあり,G1フィンは省略されている。3番目の東芝のモデルは初期のもので,天井マイカはないがG1フィンがあり,マイカ上でグリッドを囲む上部シールド枠もある。4番目の松下製は天井マイカ,フィン付き。リングもある。

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(3)PL521/29KQ6

PL500/27GB5の後継管。パービアンスが40%程度向上し,より低電圧で出力が得られるようになるとともに,スベニッツ振動対策のためG3に正電位を掛けられるようにベース・ピン接続を変更し,KとG3を分離している。29KQ6(C)は松下だけが出した特別仕様管らしい。

[YaI]

松下21KQ6/LL521(国際版,三松葉ロゴ0D-N),プレートはキャビトラップ型。写真ではプレートの右側のフィンの部分がそれ。

[YaI]

全て松下製で1966年から1970年代始めのもの。左3つは29KQ6(ナショナル6J-p/中古,7D-o/中古,FN-p/新品),次は29KQ6(C)(ナショナルVO-H/新品)と21KQ6/LL521(三松葉ロゴ0D-N/中古)。前3者はステム底に金属シールド板があるが,後者にはない。また上部のシールド板の形状も前3者と後者はやや異なる。29KQ6(C)だけにプレートに放熱孔が3つある。左端と右端の2本は中古。29KQ6モデル6J-pは管壁に茶色の染みが酷いが,エミッションは良好。gm=68,70,70,70,64/75。

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(4)29LE6

PL521/29KQ6(C)の後継管。この球は欧州名が見あたらず米国EIA名のみが知られています。EIAに誰がいつ登録したか不明ですが,1970年頃に米国で開発された球とすれば恐らくはPhilips系のAmperexと思われます。その仕様は米国のRCA最後のマニュアル(RC-30)やGEのEssential Characteristics(ETRM-15P)に簡単に紹介されていますが,この頃のRCAやGEは商社化しており,自社製品以外の球(輸入球も)マニュアルに載せていたので,本当の出所は分かりません。静特性はPL521/29KQ6と同じで,プレート最大損失Pbが17Wから20Wへ増加し,スクリーン損失がPsg6Wから5Wへ減少したので,プレート材料の改善がなされたものと思われます。この球は国内では松下が製造しました。

[YaJ]

ともに松下製29LE6。右より8C-N,8C-Oで製造年月は同じ1968年3月。前者は中古,後者は新品でTVメーカの保守球用白箱入り。上蓋に青字でカラーTVT-29LE6,\1900,底蓋に01-10と印刷されている。

[YaJ]

同じ年月の製造なのに,上部マイカのグリッド支持棒の周辺のシールド用金属枠の有無が異なる。

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EL505/6KG6

EL505/6KG6は1966年に登場したと以前紹介しましたが,サンプルを入手しました。米国Amperexブランドでオランダ製のEL505/6KG6です。製造はPhilips製と思われます。後のPL509/40KG6Aとの違いはキャビトラップ・プレートのフィンでしょうか。プレート内部の電子集電極たる内部フィンがPL509/40KG6Aでは2枚サンドウィッチされ内部と外部に翼状に開いてX型の放熱フィンとしているのに対し,PL505/40KG6は内部フィンはサンドウィッチではなくキャビトラップ凹みプレート内部に別のコの字型のフレームを立てた構造になっており,外部には引き出していないのが特長です。内部フィンを立てるためにマイカ板上下に堅固な金属板が溶接されて,トップ・プレート金具はその板がアングルとなっています。その点では先のPL136の構造を踏襲しているといえましょう。他にゲッタが天井にある点も40KG6Aとの違いです。

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(5)PL509/40KG6A

モノクロ用の球はPL500/27GB5以降,比較的短期間で改良が行われましたが,カラー管はPL136/35FV5の誕生以降しばらく沈黙が続きました。そして1965年に米国でPhilips系のAmperexから華々しくデヴユーしたのが6KG6(EL505?),ダンパー管6EC4(EY500),高圧整流管3BH2(GY501)のシリーズでした。当時,欧州名は付いておらず,後にEL505と銘々されたようです。マグノーバルの太管が使用され,Pb34W(設計最大,絶対最大は40W),米国系の強豪6KD6を凌ぐ性能を持っていました。この球の歌い文句は低+B電圧用でしたが,商用電源電圧の十分高い米国ではメリットは発揮できず,あまり注目を集めませんでした。この球が活躍できるのはやはり欧州でしたが,カラー化が遅れており普及には時間がかかったようです。国内の松下は生産に踏み切らず,35FV5/PL136で通しました。

やがて,欧州のカラー化がようやく進んだ頃,これを改良したPL509/40KG6Aが登場して世界的に有名になりました。日本でも1968年に華々しく登場しました。改良点は,プレート損失を40W(設計最大,設計中心最大では30W)に引き上げたことにあるようです。最近,PL509=40KG6,PL519=40KG6Aと信じている方が多いのですが,これは間違いでしょう。

[YaJ]

ともに松下製。左は40KG6A/PL509(国際版三松葉ロゴ9K-O,1969年11月製で初期のもの,中古のためガラス内面は黒化),右は40KG6A(ナショナルKV-p,1970年代,新品)。この他にも種々のロットがありますが似たようなものです。特徴はキャビトラップ・プレートの構造で,2枚の分厚い金属板がサンドウィッチされています。ガラス上部は十字型の継ぎ目。下部表面には銀色のリング状コーティング。プレートサイドに大型のドーナツリングゲッタ2つ。G1の支持棒に超大型のL字型フィン。また初期のものはステム底にシールド用の金属板がありましたが,後に省略されたようです。トップ・プレートへのリード線は細い針金が左右から2本でて中央で結ばれていますが,一時期(1970年頃)銅線1本のこともありました。当時の箱は写真の通り。

この球は,電気屋さんを廃業した方から保守球や中古球を譲り受けたのがきっかけで,眺めているうちに好きになり,あちこちで見かけては国産球の残りを1本づつ集めました。手持ちの松下製の中古4本のうち2本はヒータ事故球で,ヒータがステムまで垂れ下がっています。1本はどこかでショートし,点灯時には電球のように煌々と光ります。もう1本は垂れ下がったまま「正常動作」します。この球のカソード・スリーブは大型なので開口面積が大きく,また内面は鏡面仕上げなので引っかかりがなく,ヒータの熱膨張による脱落が起きやすいようです。熱いうちに機械的ショックを与えてはいけません。

[YaH]

6KG6A/EL509,右よりLindal(米国の商社,中身はmade in Japan/多分松下,78年8月),CGE(カナダのGE,中身はPanasonic/松下,)。両者とも全く同じ造りで,ともに70年代後半に北米に輸出されたものを90年代に逆輸入。それを譲り受けました。gm=55,64

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- Matsushita

以前にも松下製を紹介しましたが,松下の40KG6Aは球が重く硬質ガラスを使った立派な作りです。今度は最初期の1967年製と1969年製のものです。

[1hN]

Matsushita 40KG6A/PL509 (8KN=1969) and (7HI=1967)

-Toshiba

次は何と東芝製です。東芝は1972年頃に北米向けにPL509を作った記録がありますが,まさか入手できるとは思いませんでした。国内で流通していたとは驚きです。

[1hN]

Toshiba 40KG6A/PL509(1970s)

東芝の40KG6A/PL509は外形が同社の6KD6系に似ています。さらに左のサンプルにはプレート側面に6JS6B6JS6Cに見られた放熱フィン兼ブースターフィンが付いています。定格を満たすために努力が続けられたのでしょうか?

[1hN]

Top of Toshiba 40KG6A/PL509 (1970s)。東芝製の電極上部拡大図です。

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(6)PL519

1972年以降,さらに改良したPL519も登場しましたが,今度はEIA名がありません。PL519はプレート損失が絶対最大で5W増加し45Wに改善されました。ただし,国内ではTVのカラー化が早かっただけでなく1972年頃にはトランジスタ化も終えてしまったので,製品としてのTVはPL509/40KG6A採用のものが最後となり,PL519は輸出向けだけに作られました。したがって,日本製のサンプルは手元にありません。面白いことに,この球は松下だけでなく,東芝も作ったのですよ。

今日ではTungsramハンガリー産のPL519が安く入手できます(@950)。私も買い込みました。なかなか良いできばえのようです。同じ店に同じTungsramのPL509もありましたが,ガラス管がオリジナルとは違う細身のT8で,内部の造りも雑,見劣りしました。

[YaJ]

PL519。Tungsram(made in Hungary),8540-82。基本的な改良点はプレート材料の変更にある。熱伝導を稼ぐため銅を内張りしたものを使用。その他細かい点はメーカの差(趣味の問題)であろう。キャビトラッププレートは松下のサンドウィッチ型ではなく,コの字型の角材を内面に溶接し,一部は上部マイカに突き出して放熱している。しかしマイカ割れが見られる。また,天井マイカがあり,その上にドーナツゲッタ2つ。ステム部にはシールド用金属板あり。

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(c)1998-2001-2002, 2006-2010, 2011 Koji HAYASHI All rights are reserved.
1st edition (1998.3.16)+(1998.4.19)+(2001.9.9), 2nd edition (2001.11.23), (2002.11.24)