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1) SANSUI HF-V60 |
2) SANSUI SM-12A |
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4) Original 6Z-P1 Single |
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わが家では1960年代に山水のAMステレオ・レシーバが活躍していた。ステレオだが,当時はAM放送のステレオははや終わっていた時期だったと思う。FM放送はモノラルだった。レコードを聞くのに使っていた。プレーヤはコロンビアだったか?プラスチック箱にセラミック・カートリッジのおまけのようなものである。始めはスピーカが1つしかなく,そのうち,もう1個買ってきてステレオになった。始めはパイオニアのメカニカル2wayフルレンジPIM-20Aを1個購入して,箱はベニヤ板を切って工作したものだったが,後に同じユニットを購入し箱も箱屋が作ったバスレフ箱に入れた。良い音とはいえない。私は小学生だったから全ては親父が作ったのだ。
SANSUI Stereo Amplifier SM-12A, from the Instruction book, in 1963?/山水のステレオ・アンプリファイアーSM-12A。当時の取扱説明書より。1963年頃。
現金正価28,500円,月賦正価30,100円。最大出力6W+6W。FM(mono),AM-MW(2ch),AM-SW,プリアンプはX-talとAUX入力。12球6石。6BE6x1, 6BA6x3, 6AJ8x1, 6AQ8x4, 6BQ5x2, 6G-E12A, 0A81x4, SE-05ax2
Original Circuit Diagram of Amplifier Unit of SANSUI SM-12A/アンプ部の原型。6AQ8のプリアンプとトーンコントロール兼ドライブ,6BQ5の出力。NFB付き。電源はAC105Vの倍電圧整流。
このシステムは1970年代になり,アンプが火を吹く代わりに,6BQ5の片側がプシュっと音をたてて真空漏れを起こし,あえなく昇天して終わった。今から考えてると,私がいたずらをしていて6BQ5を熱いうち抜くときに,あちち,と手をはなしたため,数メートル飛んで落下させるなど,機械的なショックを与えたことも原因していよう。もう1つは設計の悪さである。当時のテレビやステレオ・レシーバは電熱器よろしく,特に放熱に配慮が足りなかった。6BQ5の熱で炙られたカバーなしの出力トランスからワックスが融けだし,6BQ5のソケット・ピンに達していたのである。分解したくて壊れることを望んでいた私は,すぐさま,SM-12Aを3枚におろしてしまった。現在残っている2つの出力トランスの直流抵抗はワックスの量が違うはずだ。スピーカは16オームだったが,片側は直流抵抗が60オーム以上になり,いかれてしまった。こちらは分解して磁石だけを取り出し,残りは捨ててしまった。
Decision of the Restration/復活を決める
ところが,SM-12Aを粉々にした後,主要部品だけは引っ越しの度に持ち歩いていた。倍電圧整流用のパワートランスと例の出力トランスである。HF-V60の成果に気を良くして,昔の音を聞いてみようという気になった。そこで作ったのが,このアンプ。6BQ5はオリジナルの松下製1本,他は送信機の変調器用に購入したNEC製の7189Aペア1組しかなかったが,うまい具合にTelefunkenのEL-84箱入り6本をゴミ箱から拾ったので,これを利用して復元することにした。ついでに,ドライバー部は6AQ8(1/2)だったものを,6AU6に変更し設計したが,途中で気が変わり松下の6267/EF86に変えてしまった。整流は倍電圧だからシリコン・ダイオードである。当時はオリジン電気のSE-05Aというやつだったが,ここでは後世に一般的になった日本インターの10D10とした。
さて,トランス類のうち,パワートランスと出力トランスはオリジナル。どちらもカバーなしであるが,これでは恥ずかしいので,パワー・トランスはポラロイド・フィルムの黒いブリキを切ってはめ込み,出力トランスは紅茶缶を利用した。電源のフィルタ・チョークは元々無いが,ここではテレビのジャンクを使用し,紅茶缶に入れた。実際には紅茶缶は思わぬところで欠点が出た。ブリキが薄すぎて共振してしまうのである。
さて,倍電圧は簡単なように見えても思ったより複雑だ。シャーシ裏の写真をごらんあれ。部品点数が多すぎるのである。高がシングルなのにこの有り様だ。ケミコンが多いのには別の理由もある。電源部を改良しようとして増えてしまったのだ。改良と言いたいが,良くはならなかった。
このアンプは出力の直線性や周波数応答の測定はやりました。最大出力は無歪み4Wというところでした。歪みの測定はしていません。スペクトル・アナライザで周波数応答を測定してみると高帰還アンプなので可聴周波数の特性はフラットです。
当時の指定寸法の小型箱入りコーラルのFLAT-8で聞いてみました。高音は良い音がした。しかし,低音はまるっきり出ない。周波数特性で言う限り,低域でもフラットでHF-V60と比較して遜色無いのにどうして低音が出ないのか理解できなかった。後に,それはパワーバンドというやつのせいに違いないと思うようになりました。
5極管シングルが高音で良い音がするのは,昔から周波数特性が高域で盛り上がっているからだという説明を受けますが,これは今日でも納得できません。強度のNFBをかけて強引にフラットにした場合でも,5極シングル・アンプは良い音がします。
高域ではスピーカのインピーダンスが上昇するため,5極管ではダンピングファクタは良くなる方向にあるというのは事実ですが,それ以外に球の電極間容量も影響しているように思えます。
Modification and Measurement/改造と測定
低音が出ないのは,電源の弱さもあろうかと,ケミコンの容量を増加してみました。でも余り改善されません。
1つの電源でステレオを作るのはセパレーションに影響が出るはずで,スペクトル・アナライザで得意の雑音解析をやってみました。片チャンネルに白色雑音を入れ,他のチャンネルは接地。この状態で漏れ信号の出力を測るのです。その結果は面白いことがわかりました。
他チャンネルからの漏洩信号の出力は,何と電源回路のインピーダンスと同じ形状のスペクトルを持っていたのです。電源回路のフィルタ・コンデンサは周波数とともに+B回路インピーダンスを減少させます(1/f)が,ある周波数点からインダクタンス分が利いて増加に転じます。したがって,インピーダンスの周波数特性はV型の形状です。今ケミコンを2倍に増加させると,V型の極小周波数点が低い周波数に移動する,左にシフトする役目を担っているだけです。このお陰で低域のセパレーションは改善できるかもしれませんが,高域は悪化します。シーソーゲームなのです。そのうち,図をお見せしましょう。