ANTIQUE JAPANESE RADIO/日本の古いラジオ

written by Koji HAYASHI, Ibaraki JAPAN

Mini-Museum of Japanese Radios/日本のラジオのミニ博物館

6. Transformer-less/トランスレス

Miniature Superhet/ミニアチュア管スーパー

Transformer-less/トランスレス

Short Wave/短波付き

6: MT Standard Trsless -Wooden
62: MT Standard Trsless -Plustic
61: Two Band -MT Standard Trsless -Wooden
62A::Two Band -MT Standard Trnless -Plustic

Short Wave/短波付き

AM Stereo and FM

62C::Two Band -MT Deluxe Trsless -Plustic
62B:: Two Band -MT Standard Trsless -Plustic -Dual Speaker
65: AM Stereo -Two Band -MT Trsless
63: FM Radios

Page 65. AM Stereo Two Band Miniature Superhet Radios (1956-1964)/AM ステレオ2バンドMT管スーパーラジオ

1st ed. (1998.3.20),(2002.9.1), (2004.4.27), 2nd ed. (2006.6.30)-(2010.5.3)

HomePageRadio/Radio_P65.html

H(5). Japan Columbia R-521R/L in 1960-/日本コロンビアR-521R/L, ('70.5.y) ['02.9.1]

H(191) Toshiba TAS-5 in 1961/東芝 ステレオラジオ 6S-5 ('04.3.14), ['04.4.7]


AM Stereo Radios/AMステレオラジオ

国内トランスレス・ミニアチュア管ラジオの歴史は1950年代中頃より始まった。まだST管全盛期で,ミニアチュア管ラジオはトランスレスといえども高価だった。


H(5) Japan Columbia/日本コロムビア R-521R/L in 1960, ('70.5.y) ['02.9.1]

これは日本コロムビア製の簡易型ステレオ電蓄なのだが,内実は木製キャビネット入りのラジオ2台だった。残された球が,2台のうち1号機は1960年5月製,2号機は1960年3月製で,このラジオの製造年代は1960年前期と推定される。

当時,周波数の異なる中波放送2局がステレオ放送を行った。NHKでは第1,第2,民放では文化放送とTBSといった塩梅である。2台のラジオがあれば受信できた。チューナ付きの高級なHi-Fiステレオ・アンプは独立2chのAMチューナが内蔵されたものが市販されたが,普及型や簡易型ではこのように5球スーパ2台が使われた。しかし,2chステレオ放送は時間帯の工面が面倒であったし,音質も良くないので,ほどなくFMステレオ放送にとって代わり,ユーザの手元には役に立たないBC帯ステレオ・セットだけが残った。

このセットは1970年代末に始まった粗大ゴミ収集の第1回に近所から出たものを譲り受けた。その時は2台の木製キャビネット入りの完璧なセットだったが,キャビネットは単なる箱型で大柄,色も茶色のペイントと泥臭く気に入らない,保管場所にも困るのでその場で廃棄し,ユニットのみ残した。

[訂正2002.9.1] 型番R-512R/LからR-521R/Lに訂正。「ステレオ・ラジオが聴ける2万円台のセット」として,プレーヤSTL-521を中央に,2台の5球スーパ付きスピーカボックスを左右に配置して,足をつけたもの。ラジオの型番はR-521だが,2台の5球スーパーのスピーカがそれぞれ外側にくるように,2台のキャビネットは左右対称のデザインだった。

シャーシ裏面と斜め上から見た正面。

シャーシ内部と正面

(状態)

約20年ダンボール箱に入れ室内で保存。良好。ダイヤル糸の張り具合,針など完璧。ツマミは各4個あり(8個中1個はオリジナルでない?),SPあり。しかし,ant-coilのmica-trimに黄色錆びあり

(欠品) 木製キャビ,ダイヤル窓枠(周波数目盛付き),ACコード,

シャーシ留めネジ(1本あり)

H4 5 1970 @F 日本コロンビア R-521R/L 60- WB MT-5SL 2B ■■--□▲○

キャビネット:木製箱型。茶色のペイント(廃棄した)

周波数:2Band MW 535-1605,SW 3.9-12,

消費電力: 20VA, Size; 300 x200 x260 mm, 3kg

ダイヤル:横スライド

ツマミ:4点式

真空管:東芝(12BE6-12BA6-12AV6-30A5-35W4)

(部品:1ST UNIT)

Tubes Toshiba<0E>12BE6,<0E>12BA6,<0D>12AV6,<0E>30A5,<0E>35W4,

VC Colombia<132419>,IFT RT-221-B <450308>,

OUTPUT Trans <450363, LT..233j..>,SP6.5"

CHEM TOWA EP-772 <200407> ..60年4月

(部品:2ND UNIT)

Tubes Toshiba<0D>12BE6,<0D>12BA6,<0C>12AV6,<0D>30A5,<0E>35W4,

VC Colombia<132419>,IFT RT-221-B <450308>,

OUTPUT Trans <450363, LT..233j..>,SP6.5"

CHEM TOWA EP-772 <191211> ..59年12月

(condition) FuseHolder損傷

SP: OS-66 PDS

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H(191) Toshiba Stereo Radio Receiver TAS-5 in 1961/東芝 ステレオ・ラジオ 6S-5 ('04.3.14), ['04.4.7]

東芝が1961年に発売したステレオ・ラジオ6S-5です。単なる2スピーカー・ラジオと違って,本当にアンプが2系統あり,レコードプレーヤーを繋げば立派なステレオ再生装置です。それだけでなく,AMチューナーだって2系統ある!その頃放送されていた中波帯のAM2波によるステレオ放送に対応したラジオでした。さらに特筆すべきは使用している真空管がヒーター電流100mAの新型トランスレス管18FX6, 45M-P2128R-HV2を採用していることです。

100mA系トランスレス管は欧州で普及していましたが,米国では1959年にSylvaniaが従来の150mA系(12BE6, 12BA6, 12AV6, 35C5, 35W4, 50C5)を新たに100mA系に焼き直したシリーズ18FX6, 18FW6, 18FY6, 32ET5, 36AM3, 60FX5を発表しています。32ET5はヒータ電力2/3の省エネ管,60FX5は高感度管です。日本では1960年頃に輸出用に国産化しましたが,国内では従来の150mA系でさえ電圧不足だったので米国にない球(30A5)を作って苦境をしのいでいたのですから,このままでは使えません。そこで東芝は1961年に30A5の100mA版45M-P21を開発しました。出力は米国系だと1Wなのに2Wが稼げます。これと18FX6, 18FW6, 18FY6の4球で合計100V,検波にゲルマニュウム1N60,電源整流にシリコンダイオード1S93を使えば4球スーパーとなります。ただし,パイロットランプは点灯できません。東芝は何故か10%のヒーター電圧の余裕を作るために,18FW6(12BA6)と18FY6(12AV6)を複合させ省電力とした28R-HV2をわざわざ開発しました。合計91Vでこれに直列抵抗を入れて100V,ウオームアップ時間は20秒です。

私は文献に出ていた東芝のステレオ・ラジオ6S-5を探し求めていましたが,中々見つかりませんでした。見つからないはずです。別名のTAS-5やTSS-5の名称で世に出ていたのですから。実は,このラジオ,2つのスピーカーはキャビネットが独立していて,まん中にあるのは後の言葉でいう「ステレオ・レシーバー」でした。このステレオ・レシーバーは「ステレオ・アンプリファイヤーTAS-5形」,またスピーカーは「TSS-5形」という型番でした。スピーカラジオにしてラジオにあらず?

Stereo Radio Receiver using Japanese 100mA Series Transformer-less Tubes

Toshiba stereo amplifier TAS-5

ラジオは1950年代後半になるとHi-Fiがブームになり大形のスピーカと大形の箱に入った出力の大きなシングルアンプ搭載のHi-Fiラジオが良く売れた。レコード盤はすでにステレオ録音のものも出ていたが,まだまだモノラルも多い時代であった。そんな折り,1950年代末から1960年代初頭にかけて我が国ではAM2波によるステレオ放送が行われた。はじめはラジオ2台を集めて聞くこともあったろうが,ラジオメーカーはこれに合わせて,ステレオ電蓄に力を入れて,6V6GTプッシュプルや6BM8プッシュプルのステレオ・アンプを搭載した本格派から,簡易なものでは5球トランスレス・スーパーを2組み搭載したものを販売した。私のコレクションH(5)日本コロンビアの521形(STL-521) in 1960の2台のラジオがそれである。これらは多かれ少なかれ,レコードプレーヤーとセットになって販売されるので,デザイン的にも電蓄に分類されるのだが,中にはラジオと呼べるものもあった。例えば,オンキョーはOS-175L, OS-175Rという左右対象のデザインのラジオ2台を販売している。

一方,同時代,卓上ラジオはプラスティック・キャビネットに入り小型化されただけでなく1950年代末から60年代始めにモノラル・アンプなのにもかかわらず2スピーカーのデザインが流行っていた。ステレオアンプなど積んだものは皆無であった。こんな時に,2スピーカー・デザインの普通の5球スーパーをステレオ化したものが登場した。その中で,東芝のTAS-5/6S-5は究極の小型ステレオ・ラジオであった。

どうやって,そんなに小型化ができたのだろう?実はこのラジオ,5球スーパーを2組詰め込んだのに6球しかない!のである。ゲルマやシリコン・ダイオードを用いて検波,整流管を省けば8球になる。さらに低周波アンプに6BM8などの複合管を使えば6BE6+6BA6+6BM8で6球になる!トランスレスではどうか?12BE6+12BA6+32A8では国内では電圧不足でオートトランスが必要である。さらに,その時代にはまだ6BM8の150mA管32A8は登場していなかった。こうして東芝は米国の流れを受けて100mAトランスレス管の国産化に着手した。米国系のそのものを使えば18FX6, 18FW6, 18FY6, 32ET5でヒータ電圧86Vであるから十分なトランスレス4球スーパーができる。しかし,コストを考えればアンプの出力は国内で普及しているものは2Wあるのに1Wしかないし,1球省けるけれどもゲルマとシリコンを使って,さらに新しいシリーズの球を投入したのではコストの点でも不合格。できあがるものが従来より劣ったラジオでは価値が無い。東芝は100mA管の利用価値を,省エネ,コンパクトのステレオに絞った。トランスレスで定評のあった出力管30A5を100mA化した45M-P21を作り出力を確保,さらにIF-AF Ampの複合管6R-HV1を100mA化した28R-HV2を開発して全体を3球にコンパクト化,その結果,ゲルマやシリコン・ダイオードを使っても,小型ステレオとしてなら価値がある,と判断したのだろう。こうして,省エネの5球スーパーラインが誕生し,それを2組み入れた本機ができあがったのである。しかし,先に書いたように1960年頃に6BM8のトランスレス版,8B8, 32A8, 50BM8が開発されると,高価な100mAシリーズを使わずに済むので,あっという間に東芝の新開発の球,28R-HV2と45M-P21は存在価値が無くなり,やがて消え失せてしまった。したがって,本機は幻の一品なのである。

Front View of the Dual AM Tuner and Stereo Amplifier Unit/2つのチューナーがある。右は短波付き。

Back panel with a little damege/裏板は少し欠けている。

Symmetric parts location/左右対象の部品配置。

Radio Receiver for Left channel uses IF 455 kc/左のラジオ, 中間周波455kc

Radio Receiver for Right channel uses IF 475 kc/右のラジオ, 中間周波475kc

Each Chanel consists of three tubes, 18FX6, 28R-HV2 and 45M-P21.

Speaker box

Toshiba stereo speaker system, 8 ohm, input 2W, 10cm.

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