ANTIQUE JAPANESE RADIO/日本の古いラジオ

written by Koji HAYASHI, Ibaraki JAPAN

Mini-Museum of Japanese Radios/日本のラジオのミニ博物館

Radio Tubes After WWII/戦後のラジオ球

Audio Tubes/オーディオ球

Power Pentodes -Japanese (P Series)

Power Pentodes -American

Power Pentodes -European(1)GT

Power Pentodes -European(2)MT

Power Pentodes -European(3)MTtp


Page-A_EU_P. European Power Pentode in Japan/日本の中の欧州系5極出力管

Mullard/Philips Family - PART 3 Miniature Multiple Tubes/MT複合管

2nd Edition (2006.11.23)-(2010.7.30)+(2010.10.2)-(2013.5.3)-(2013.6.30)

HomePageVT/Audio_EU_Pentode3.html


ECL80/6AB8

ECL82/6BM8, XCL82/8B8, PCL82/16A8, LCL82/32A8, UCL86/50BM8

Not yet photo

Matsushita/ 松下

Toshiba/東芝

Hitachi/日立

NEC(新日電)

ELC84/6DX8,PCL84/15DQ8

ECL85/6GV8

ECL86/6GW8,PCL86/14GW8
Not yet

Not yet

Mullard


ECL80/6AB8


ECL80, Vertical Deflection Oscilator and Output Tube, developed by Duch Philips in early 1950s (1951). オランダPhilipsが1950年の初頭(1951年,,PhilipsのデータシートではECL80は(4-1-'51)まで遡ることができます*)に開発したTV用の垂直偏向発振・出力管。音声増幅にも使われた。国内では松下が1955年頃に国産化。内容は6AT6あるいは6AQ6の3極部と出力5極管6AK6を混ぜて作った3極5極複合管。特徴はヒータ電流が0.3Aと小さい省電力経済管であること,出力管のサプレッサグリッドがカソードと独立にベースピンに引き出されていること,1ピン足りないので3極5極部の両カソードの引き出しが共通ピンになっているため,一見使用しにくい。

松下の球は初期の頃,上部マイカに露出した電極のゲッタ物質による汚染を防ぐために,通常の馬蹄形や角型ゲッタを使用せず,ゲッタシールドを兼用した丸皿ゲッタを使用した。サンプルは1959年3月(D1/NC?),同年9月(9I),1960年3月(0C)までが,丸皿ゲッタである。その1年後の1961年3月にはフラッシュ方向をコントロールできるドーナツゲッタが採用され,ゲッタシールドは廃止された。

初期の松下のテレビには良く使われ,テレビの小型化,廉価化に大きく貢献した。1961年がピークでテレビに多用された他,アマチュアは1Wという手頃な出力を歓迎し,よく使った。しかし,6BM8系が廉価になり普及しだした1961年頃には人気は下火になった。

* J.Jager, Data and circuits of television receiving valves, Philips technical library, pp.108, 1953.


ECL82/6BM8 Family

(PCL82/8B8, LCL82/16A8, HCL82/32A8, UCL82/50BM8)


ECL82/ XCL82/ LCL82/ PCL82/ HCL82/ UCL82

6BM8/ 8B8/ 11BM8/ 16A8/ 32A8/ 50BM8

(6.3V) (0.6A) (0.45A) (0.3A) (0.15A) (0.1A)

PCL82 and ECL82 may be developed in 1955 and 1956 by Duch Philips, respectively. 誰がいつ開発したか確かでないが,おそらく1956年にオランダPhilipsが開発したものと思われます(PhilipsのデータシートにはPCL82は1955.04.04(7-4-'55)まで,とECL82は1956.11.11(17-2-'56))まで遡ることができます,FrankのWebサイトによる)。1960年代初頭の米国の資料(**)によれば,6.3V管6BM8,300mA管16A8,100mA管50BM8は外国企業が米国EIA名を登録した外来品種と分かります。当時,6.3V管と300mA管は,欧州名(Mullard/Philips系)のECL82PCL82はイギリス,ドイツ,オランダで,またイギリスではMazda系が6PL1230PL12の名称で,EIA名では6.3V管6BM8は未掲載ですが,300mA管16A8はカナダで生産されていました。100mA管はまずイギリスでMazda系が10PL12で,次いでEIA名50BM8でイギリスと日本が,最後に欧州名UCL82でイギリス,ドイツ,オランダが生産したようです。600mA管8B8と150mA管32A8が出てこないのは,多分初期の頃にはまだ名称が無かったからです。

国内ではPhilipsと提携していた松下(TVは300mA系)が先行して16A86BM81956年頃に国産化しました。これに着目した東芝(TVは600mA系)はまず1959年にまだ規格化されて無かった8B88R-HP1として国産化,また日立はFM用にまだ無い32A832R-HP1として国産化したようです。しかし,これらの品種は翌年にはEIA名に統合されたようです。また東芝は1959年に6BM8の製造開始。日立,NECの記録はありませんが同時期でしょう。NECは1961年には32A8を発表しています。ですから6BM8系の多くの品種は同時期に造られたようです。ところが,50MB8はやや遅れ1964年に東芝が,1965年になって松下が発表しました。

また5極部はA級シングルでPo3.5Wが得られますが,同じ出力の米国球6AR5に比べるとプレート損失は10Wに対して7Wしか無かったのですから,正しく使うには大変な技術を要し,逆に一般ユーザからは弱い球と言われました。そこで,国内メーカは,1960年代初頭には規格はそのままにしてプレート損失だけを10%程高めた改良球を作り出荷したそうです。

(2010.7.30修正)

*Philipsのデータシート, FrankのWebサイト

**C.P.Marden, et al."Electron tube interchangeability chart", C54, Electronic industries, June 1962.

Toshiba ECL82/6BM8 Family

[YkG][YkE]

Toshiba-Matsuda ECL82/6BM8 Family (1) Early Time Model, 8B8/PCL82 in 1960?/東芝マツダの最初期型のECL82/6BM8系(サンプルは8B8(PCL82),1960年?ここではモデル1と呼ぶ)の5極部と3極部。

5極部。プレートを切り開いた図。プレートは横にリブが2本あり断面が8角形の短いもの。こんなに小さくて3W出るのだから大したもの。カソードは平角型で古典的な6AR56AQ5よりも強力に見る。g1,g2巻き線はカソードに極めて近接した近代設計。g3は何とビーム管のビーム形成翼(ビーム・プレートBP)と同じ構造を採用。ビーム管ならg1,g2の目合わせが不可欠だが,目視では確認できない。ガラス管を壊してから時間が立ちすぎた(10年)ため,グリッド巻き線は錆が進んでボロボロに風化,グリッド支柱も錆で黒化してしまった。しかし,目合わせの金具やベルト,突起がグリッド支柱やマイカ板に見えないから,やはり5極管であろう。g1支柱上部の放熱フィンは2枚の灰色小型板状フィン。さらに5極部上部には金属製の天井(g3-Kと同電位)があり,電気的シールドの他,ゲッタ・シールドにもなっている。その上に角型のゲッタが2個付いている。角型は製造年が1961年以前であることを物語っている。

5極部と3極部のプレート間には同サイズの3リブ付き金属シールド板があり,5極部のg3-Kと同電位である。

3極部。プレート横幅は後期モデルに比べ狭い。プレート正面には上下のマイカ板に接触する付近に2つの開口部があり,太いグリッド巻き線が見える。

ステム部。電極下部には3極部のグリッド・リード線を覆うシールド板がある。また,トランスレス管8B8の特有の構造であるが,5極部と3極部のヒータは直列に繋がれており,連結にL型金属板を使用している。連結部はベース・ピンからの配線が無いため空中配線となり機械的強度が問題になるが,これを避けるため,L型の一端をマイカ板に留めて支持している。

[YkG][YkG]

Toshiba-Matsuda ECL82/6BM8 Family (2), 6BM8(ECL82) in 1961?/東芝のECL82/6BM8系(サンプルは6BM8,1961年頃,モデル2)の5極部と3極部。サンプルは中古で,字は消えている。ゲッタがドーナツ型に変わった。3極部のプレートの横幅がまだ狭い。写真では印字が薄く見えないが,6BM8の管名表示枠の位置が他よりも低いところにある。5極部はモデル1からモデル3(1950年代後半から1960年代後半)まで電極構造に変更は無い。

[YkG][YkG]

Toshiba-Matsuda ECL82/6BM8 Family (3), 6BM8(ECL82), White Printing, in last half of 1960s/東芝のECL82/6BM8系(サンプルは6BM8,1960年代後半,モデル3)の5極部と3極部。サンプルは新品(箱の写真参照),白の時代のHi-Fi。3極部プレート横幅が拡大した。またステム部の3極部g1シールドは省略された。5極部は電極構造に変更は無い。

[YkE]

Toshiba-Matsuda ECL82/6BM8 Family (3) continued, 8B8s(PCL82s), from the left, October 1970, Midle of 1960s and End of 1960s/東芝のECL82/6BM8系(サンプルはいずれも8B8(PCL82),モデル3)の横顔。左から((F)0A,1970年10月),(1つ星赤の時代,1960年代中頃),(1つ星白の時代,1960年代後半)。印字の特徴や製造年は異なるが全てモデル3。5極部のg1支柱は銅,g2支柱は銅に炭粉を塗布してスクリーン損失を改善しているのが分かる。これは東芝の6BM8系の共通仕様である。

[YkE]

Box/東芝のECL82/6BM8系のモデル3の箱。写真左のサンプルは8B8(1つ星白の時代,1960年代中頃から1970年代にかけて)の箱(4CF201 P1 ん09)。写真右のサンプルは6BM8(白の時代Hi-Fi,1960年代)の箱(4CF200R2 み26)。

[YkI][YkI]

Toshiba-Matsuda ECL82/6BM8 Family (3'), 50BM8(UCL82) with bottom shield/ 東芝のECL82/6BM8系(サンプルは50BM8(UCL82),モデル3ダッシュ,9A, 1969年1月)。電極構造はモデル3と同じだが,3極部の下側にg1用のシールド板がシールド板から出ている。5極と3極ユニットのヒータの付け根に白いマグネシアが塗布してあり,ラッシュ・カレントによる加熱に起因する事故を防止している。

[YkG][YkG]

Toshiba ECL82/6BM8 Family (4), 6BM8(ECL82)/ 東芝のECL82/6BM8系(モデル4,サンプルは6BM8,1960年代末?あるいは1970年代)の5極部と3極部。サンプルは中古,白の時代,字ほとんど消え。3極部プレートの開口部が正面から側面に移った。5極部は少し改造された。5極部g1の板状フィンが大くなり,放熱が促進された。また,5極ユニットのヒータの付け根に白いマグネシアが塗布してある。

Back to TOP

Matsushita ELC82/6BM8 Family

松下は1956年には16A8を既に生産していたようです。手元には1957年6月(ベース底ON/OF)のサンプルがあります。角型ゲッタ(充填棒2本),3極部グリッド付近シールド板有り。上部金具の立ち上がり部分は東芝と同じ逆三角形でした。これは1959年8月(9H)まで続きます。1960年3月(0C)には3極部プレートのリブが付いていました。1961年頃まで続きますが,まず金具は長方形に変わり,さらに1961年3月(1C)にはゲッタがドーナツ型に変わっています。1963年4月(3D)も同じです。[99.5.18記]

[YkG][YkG]

松下の6BM8系の5極部と3極部。左より6BM8(ナショナル5K T,工業用,1965年11月), 6BM8/ECL82(国際版の三松葉ロゴ6G H,(W),1966年7月)。ともに中古。この頃は構造は同じ。東芝と比べて,マイカ上部の金属シールド金具の形,5極部のg2支柱の材質が通常の金属色である,3極部のプレートがリブがない,ヒータがコイル巻きなどの点が異なる。

[YkH][YkH]

松下の16A8の5極部と3極部。左はモデル(CM K, 1969年?),右はモデル(XN H, 1970年代)。ヒータはともに並列点火。特に右のモデルになると,電極上部の金属シールド金具が省略され,g1フィンが独立2枚から共通の1枚の板になる。またゲッタは斜めに取り付けられる。

[YkF]

松下の16A8の箱,(CM K),(XN H)。左は定価\490も表示。上蓋のナショナルのロゴの大きさが,後になると小さくなる。

Back to TOP

日立のECL82/6BM8系

[YkH]

日立6BM8(B2,1?-2C,1961年?)。日立製は5極部のg1フィンは灰色U字型,g2支柱は金属色。コイル・ヒータ。

NEC(新日電)のECL82/6BM8系

[YkH]

NEC6BM8(A20/23,1962年3月)。5極部のg1,g2支柱とも銅製,g1フィンは灰色U字型。NECのロゴは白字で,小さい菱形にNECと大きな文字のNECの両方ある。ヘアピン・ヒータ。

[AfKr] [AfKr]

NEC 6BM8 (270, 3Z) in 1963

[AfKr]

Box of NEC 6BM8 (270, 3Z) in 1963

NEC6BM8(270/3Z,1963年12月)。5極部のプレートは黒色。

[YkH][YkH]

NECの8B8(850/5Z,1965年12月)とNECの32A8(410/28,1972年8月)。

左のモデルは,文字は黄色。5極部のプレートは炭粉を被覆し,プレート損失の増強をはかる(記録にある)。ヒータは並列点火。ヘアピン・ヒータ。

しかし,右のモデルになるとプレートは元の灰色(アルミ被覆鉄)に戻る。g1フィンは黒色U字型。ヒータはL型金具を使用し直列点火。ヘアピン・ヒータ。(230/28)というモデルもある。

[YbF]

箱,NECの8B8(850/5Z,1965年12月)とNECの32A8(410/28,1972年8月)。ともに\490。

シャープ(テン)のECL82/6BM8系

[AfKr] [AfKr]

Sharp/TEN 6BM8

シャープ(テン)の6BM8


Yugoslavia EIのECL82/6BM8系

[Af5r]

Box of Ei ECL82

[Af5] [Af5r]

Top and Bottom View of Ei ECL82

Ei ECL82

Back to TOP


ECL86/6GW8 Family

(PCL86/14GW8)


ECL86/ PCL86

6GW8/ 14GW8

(6.3V) (0.3A)

6GW8 was registrated in EIA name by U.S. Amperex in 1960-1961.

6GW8は、6BM8の改造球で、1960-61年に米国アンペレックスがEIA名に登録した3極5極管です。欧州名はECL86です。開発者はオランダPhilips系のどこかの会社でしょう。当時のアンペレックスはオランダPhilipsの傘下にあり、北米ではアンペレックスが、欧州では英国MullardやオランダPhilipsがECL86として販売しました。6GW8は、オーディオ向けに開発した球で、5極部はA級シングルでPo4.0W(6BM8は3.5W)が得られます。gmが10mA/V(6BM8は7.5mA/V)、プレート損失は,6BM8が7Wに対し9W、最大スクリーン電圧も、6BM8が200Vに対し300Vと、大いに使いやすくなっています。また、3極部も12AX7と同じユニットを採用し6BM8のmu70からmu100となり、ハム対策としてシールドを施すなど、1本でHi-Fiアンプが組めるようになりました。

ちなみに、6BM8の改造球といえば、もうひとつEIA名連番の6GV8、欧州名ECL85があります。どちらもPhilips系で、6BM8の後継管として、垂直偏向出力管としては低内部抵抗の5極管が入った6GV8/ECL85、オーディオ管には6GW8/ECL86と、二手に分かれて開発されました。

国内メーカは,6GW8を新型オーディオ管として1964年頃から国産化しました。松下1964-65、東芝1964頃など。東芝はHi-Fiシリーズにこの球を追加しています。

[Af5r] [Af5r]

Box of Mullard PCL86

[Af5] [Af5r] [Af5r]

Top and Bottom View of Mullard PCL86

Back to TOP

(c)1998-2002, 2006, 2013 Koji HAYASHI All rights are reserved.
1st edition (1998.4.19)+(1998.4.24)+(1998.11.17)+(1999.5.18)+(/2001.3.1/), 2002.11.25