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Power Pentodes -Japanese (P Series) |
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6M-P17 |
6M-P20/ 8M-P20/ 25M-P20 |
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8R-LP1 |
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35M-P14 |
15M-P19 |
45M-P21 |
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7M-P18A |
30M-P23 |
30M-P27 |
30M-P32 |
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8R-HP4 |
9C-PR1 |
6R-P28/ 50R-P28 |
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6R-HP3/ 8R-HP3/ 10R-HP3 |
6R-DDP1 |
11C-HP1 |
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Color Detector 6R-P22 |
Transmitting Amp 13R-PP1 |
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レスTV音声出力用5極管。東芝マツダ。1955(300mA系)。6AR5系改造球。レス(300mA)TV音声出力用5極管。東芝マツダ。1955年頃。米国6AR5の改造球第1弾。
(原型・構造・特性)
8.5V,0.3A,mT18-3(T18,69mm),6CC,
(CES松58/60)180V,180V,-6V,25mA,2.5mA,-,4.5mA/V,RL6k,1.8W
(T60) 180V,180V,-6V,28mA,5.0mA,-,5.5mA/V,RL6k,2.0W,10%(Thw11sに規定されてない)
(NEC56.4) 180V,180V,-6V,25mA,5.0mA,-,5.5mA/V,RL6k,2.0W,275V/9.4W,275V/2.75W
近代民生出力管の第1号。原型は米国41系のMT管6AR5。FM検波増幅管6BN6(6.3V,300mA)の音声出力最大5Vでフルにドライブできる米国のビーム管6BK5(6.3V,1.2A)を国産化すると同時に,そのローコスト・トランスレス版として開発。
改造点はヒータと感度である。
(1)ヒータ電流を300mA系にした,ヒータ電力は6AR5(6.3V,0.4A=2.52W)とほぼ同じ(8.5V,0.3A=2.55W)である。ただし,後の300mA系と異なり,ヒータ・ウォーム・アップ・タイムが規定されてない。
(2)gmを原型の約2倍にUPし,感度を改善した。なおピン配置,電極外観は6AR5に同じ。この球のもう1つの特徴はビーム管でないため製造が容易で価格が安い点である。ビーム管6BK5あるいは6AQ5の半分以下,原型の6AR5と同程度の価格である。
(その後)8M-P12はFM検波管6BN6(300mAシリーズ)に合せたトランスレス用管であるが,発売当時,国内では米国TV用300mAシリーズ球(水平偏向管25BQ6-GTやダンパ管25W4-GTなど)とトランスレスTV専用でない従来の300mA系のラジオ用やTV用等有り合わせの球を用いてトランスレスTVを作っており,商用電源電圧の違いから一部にヒータ・トランスが不可欠であった。さらにヒータ・ウォーム・アップ・タイムが規定されておらず,また300mA系TV球は確立されていなかったので,ヒータ事故が多かった。その後,国内では600mAシリーズが1955年に東芝により初めて完成され,600mAシリーズの4M-P12(改造が加えられている)の開発と同時に需要を譲り,すぐに保守種となった。東芝1957年,1960年保守品種。4M-P12の新規格の300mA管としては,後に9M-P12が開発された。
レスTV音声出力用5極管。東芝マツダ。1955(600mA系4M-P12)。他にNEC(新日電)の450mA系6M-P12,東芝300mA系の9M-P12がある。6AR5系改造球。
(原型・構造・特性)
4.7V,0.6A/6.3V,0.45A/9.4V,0.3A/,mT18-3,6CC,(G1,K-G3,H,H,P,G2,NC)
(T60)180V,180V,-6V,28mA,5mA,-,5.5mA/V,RL6k,2.0W,10%,
{設計中心}200V/8.5W,200V/2.5W,Ehk+/-200Vac,Ehk<+100Vdc
(T62)180V,180V,-6V,25mA,5mA,-,4.5mA/V,RL6k,1.8W,10%,{最大定格は同じ}
(CES松58/60)180V,180V,-6V,25mA,5mA,100k,5.5mA/V,RL6k,2.0W
(RAD/NEC)180V,180V,-6V,28mA,5mA,-,5.5mA/V,RL6k,1.8W,10%,
{設計中心}250V/8.5W,250V/2.5W,Ehk+/-200Vac,Ehk<+100Vdc
4M-P12は8M-P12の600mA版であるが,原型の8M-P12とは構造や特性がやや異なり,改造が行われている。
(1)ヒータ電力の増強,すなわち,8M-P12の(8.5V,0.3A=2.55W)から(4.7V0.6A=2.82W)と約12%UPしている。
(2)代表特性のパラメータに関しては8M-P12と4M-P12に違いが見られる資料があるが,詳細は不明。(180V動作例では,Isgが2.5mAから5mAへ,出力が1.8Wから2.0Wへと変った)。東芝は1962年頃に,Ib,gm,Poを下方修正し,各社ともこれに習っている。
(3)最大定格も資料により違いが見られる。東芝は一貫して200V/8.5W,200V/2.5Wとしている。NECは8M-P12(1956年)では250V/8.5W+10%(設計最大)と発表し,後に下方修正を加えている。
一方,球の造りであるが,東芝の例を挙げると,初期の8M-P12と4M-P12を比較するとプレートの電極材料が変り長さも5mm長くなっている。この理由は部品調達の問題に深く関係している。東芝は8M-P12の開発では6AR5と共通の電極材料を使っていたが,1955年にTV用600mAシリーズを国内で初めて完成させ,FM検波管3BN6,ビーム出力管6AQ5の600mA版5AQ5の国産化と同時に,8M-P12の600mA版4M-P12を開発した。この際,4M-P12の電極材料として6AR5のヒータの600mA化版(4.2V,600mA)を新たに開発するよりも,同時に開発した5AQ5用の部品(ヒータ,カソードとプレート)を流用する方がコスト的に有利だったのである。(ちなみに,600mA版の5AR5は国内ではNEC(新日電)が後に発表した)。したがって,4M-P12は新たに設計しなおす必要を生じ,8M-P12と特性がやや異なることになったのである。したがって,後に6.3V版の6M-P12がNECにより製造されたがヒータは6AQ5と同じ450mAである。また300mA系は東芝により製造されたが,従来の8M-P12(8.5V)に対して9.5Vとなり,9M-P12と登録されたのである。このため,8M-P12は早くから保守品種になった。
(その後)開発後,NEC(新日電)1956年を初めに国内各社が参入し爆発的に普及,国内白黒TVの標準管となった。各社とも電気的特性は東芝が登録したCES規格に従っているが,電極材料は自社製造の6AR5あるいは6AQ5と共通化しているので,プレート電極の外形や寸法などはマチマチである。1967年頃の定価(4M-P12東芝と松下@350,NECと日立@340,9M-P12東芝@350)。ヒータ電圧が半端,出力も小さい,歪が多い(NECのマニュアルにはオーディオには向かないと明記されている)などの理由で,TV以外には用途が無い。大量生産されたはずだが,残った球は1960年代後半以降廃棄または投げ売り状態で米国に輸出された模様。今日,4M-P12や9M-P12などのまとまったストックは米国だけに見られ,国内では幅広く分散している。しかし,入手は比較的容易である。
レス・ラジオ(150mA)出力用5極管。NEC(日電)。1956年(10月)。欧州HL94/30A5(Philips)の35V管。
(原型・構造・特性)
35V,0.15A,mT18-3,7CV,
100V,100V,-6.7V,43mA,3mA,22k,9.2mA/V,RL2.4k,2.1W,10%,
150V/7.5W,150V/1.5W
欧州HL94/30A5の改造球第1弾。米国系35C5を用いたレス・ラジオの出力UPを目的に,HL94/30A5のヒータ電圧規格を30Vから35Vに変更しただけもので,電気的特性はHL94/30A5と完全互換。35C5と差し替えるだけで出力が上がる。
ヒータ電力は,原型4.5Wに対し5.25Wだから,17%のパービアンスUPになるはずだが,発表されている代表特性パラメータ,最大定格は同じであり,矛盾がある。ヒータ電力が無駄に消費されるだけとすれば,カソード温度が高い分だけ短寿命となる。現存する唯一の中古サンプルは,ガラス管内が銀化,黒化し,エミ減球である。小型キャビネットのレス・ラジオはただでさえ高熱化するが,無効ヒータ電力がこれに拍車をかけ,短寿命だったことを物語っている。その後,国内メーカは多数のHL94/30A5の改造球を作ったが,パラメータが異なり,完全互換管はこの球と後年開発された100mA系の45M-P21だけである。
(その後)35M-P14は代替品種であるが,レス5球スーパのヒータ電圧合計は,35C5で107.8V,30A5で102.8Vだから,国内では差し替えも原型のHL94/30A5で十分であり,35M-P14の積極的な存在価値は見出せない。したがって,極少量生産されただけで,早くから保守品種・廃品種になった。今日ではほとんど見つけることのできない球。
(時代背景)トランス・レスMT管5球スーパーは,米国系の12BE6,12BA6,12AV6,35W4とビーム5極管35C5の組み合わせが国内用として,50C5に変えたものが輸出用として1952年頃から生産された。ところが,商用AC電圧は米国117Vに対し国内は100Vだったことから,ヒータ電圧不足(合計107.8V)とB電圧不足(110V前後)となり,感度と出力不足に悩まされた。この解決策として,東芝は1953年頃に,整流管35W4を改造しヒータ電圧35Vを25Vに抑え合計97.8Vにする25M-K15を開発した。国内レス・ラジオは,なお低いB電圧で十分な出力をえる問題が残ったが,1954年頃に欧州Philipsが能率の優れた低電圧大電流型のMT5極管HL94/30A5を発表したお陰で他力本願的に解決した。HL94/30A5によりヒータ電圧は何の工夫もせず合計102.8Vとなり,また出力も得られることになった。松下は1955年,東芝は1956年に国産化し,国内で爆発的に流行,12BE6,12BA6,12AV6,35W4,30A5のラインが国内レス・ラジオのベスト・コンビネーションになった。なお,松下は同時に整流管も25M-K15よりも省電力型の19A3を発表している。
オーディオ出力用5極管。東芝。1957年。6BQ5類似管。
(原型・構造・特性)
6.3V,0.75A,mT21-4/9BL,
250V,250V,-8V,54mA,6.8mA,32k,11mA/V,RL4k,6.8W,
300V/13.5W,300V/2.5W,μ17
原型はMullard/Philipsが発表したEL84/6BQ5(1955年あたり)。6R-P15は原型と比較して主要パラメータに若干の違いが見られほんの僅かに出力が大きが,特性の差は統計的誤差の範囲にあり,類似管というよりは完全な互換管である。EL84/6BQ5は,旧式の42系や6V6系に代る近代5極出力管で,米国や日本でもすぐに発売され人気を得た。米国EIA(RETMA)名は6BQ5で,国内ではフィリップスと提携していた松下が生産した。東芝はこの人気に便乗する形で代替品種を発表した。米国の7189,7189Aの発表よりも前である。
6R-P15と原型との仕様上の違いを見出すのは難しい。ヒータ電流は僅かに少ない(0.76Aと0.75A)が,高々1%で誤差範囲である。ところが,パービアンスが4.7%程低く,3極接続時の増幅率も19から17へと低くなっている。この違いのお陰で,3極接続時にはゼロ・バイアス電流がやや大きく取れ出力も大きい。また,5極接続時にも出力が大きいと発表されている。しかし,公表されている5極接続時のEb-Ib曲線(Esg250Vのケースのみ)では,同一条件ではEL84/6BQ5の方がゼロ・バイアス電流が大きく感度も良いという結果になってしまうから,グラフの精度が悪いと思われる。
構造の違いであるが,外観上フィリップス系(松下,Sylvania-NEC)はプレートが8角円柱型でカソードは楕円型であるからカソード対抗面は三角形になっているが,本球はRCA系の6BQ5などと同じ長方円柱型プレートとやや細いカソードを用いており,カソード対抗面は平面である。この構造は後に東芝の6BQ5,6GK6系にも採用されており,有意な違いとは考えられない。グリッド構造に改造点があるのだろうか?。
ベース・ピンの仕様にはpin1にだけ違いが見られる。6R-P15の定義はG1,EL84/6BQ5はICである。しかし,ICの定義は内部接続することがあるという意味であり,実際手持ちのEL84/6BQ5を調べてみると,松下,Telefunken,東芝,東芝系シャープのpin1(IC)は全てG1に配線され,6R-P15や7189,7189Aと互換である。唯一,ロシア製6P14P(6BQ5互換管)がオープンであった。
モデル:初期モデルは,上下に開口部があるプレート,角ゲッタ,G1フィン付きである。後期モデルは,開口部なし,丸ゲッタ,G1フィンは省略され切りっぱなしの長い棒だけが放熱のために残されている。各棒の材質はG1は銅色,G2はくすんだ銅色,G3は銀色でG1とG2に放熱が考慮された材料が使われている。マイカは2重で防振対策と考えられる。なお,フィリップス系6BQ5ではG3リング金属板が見られるが,6R-P15では3回程グリッド線を巻付けたもので代用されている。これは後の7189,7189Aでも同様である。
さて,特性パラメータの違いを3極管接続時の例で詳しく比較してみよう。
(6R-P15)μ17=12.4mA/Vx1.37k at250V,-8V (グラフでは)μ17.5=14.5mA/Vx1.21k
グラフよりIb0(100V,0V)= 51mA,..G=3.57
Ib0(150V,0V)= 95mA,..G=3.62
Ib0(200V,0V)=145mA,..G=3.59
Ib0(250V,-8V)=70mA,代表例では60.8mAで違いが大きい。
G=3.60と置くと, Ib=3.6(-8.0+250/17)3/2=62.5mAで代表例に近い。すなわち,東芝発表のグラフ-8Vラインの250V付近はおかしく,自社の公表値と矛盾する。少し上を通り過ぎているようだ。精度が悪いと思われる。
(6BQ5)μ19=12mA/Vx1.58k at250V,-8V
(250V,-7.3V)μ19=12.6mA/Vx1.51k
(250V,-8.4V)μ19=11.1mA/Vx1.71k
松下のグラフよりIb0(100V,0V)= 45mA,..G=3.73
Ib0(150V,0V)= 84mA,..G=3.78
Ib0(200V,0V)=129mA,..G=3.77
Ib0(250V,-8V)=44mA,代表例は-7.3Vで53.5mA,-8.4Vで40.1mA。
G=3.77と置くと, Ib=3.77(-8.0+250/19)3/2=44.2mAで代表例に近い。すなわち,松下発表のグラフ-8Vラインの250V付近は正確だ。一方,6BQ5は東芝も発表している。数値パラメータは松下のものと同一であるが,グラフがやや異なる。
東芝のグラフよりIb0(100V,0V)= 40mA,..G=3.31
Ib0(150V,0V)= 80mA,..G=3.60
Ib0(200V,0V)=128mA,..G=3.74
東芝の6BQ5は,低電圧領域ではややパービアンスが低くなるという結果になる。これはグラフの精度の問題か,それともプレートの形状(松下は三角型,東芝は平板)に原因する?。
(その後)東芝の他にTENが生産した。東芝は特性の優位性を強調して市場への食い込みを図ったが,ユーザの目を暗まし続けることはできず,結局1960年頃に自ら6BQ5の発売に踏み切った。6R-P15は,東芝が1961年頃に発表したHi-Fiシリーズ出力管にリストアップされているが推奨品にはなっていない。東芝が後に発売した6BQ5/8BQ5,7189,7189Aの電極外形は,カソードの大きさを含めて6R-P15と全く同じであり,初期の頃強調した特性の違いは消し飛んでしまったように見える。見えないグリッド部分に謎が残っているのだろうか?6R-P15の販売は60年代後半まで続けられ,米国にも輸出された。今日Reytheon,Sylvania,WestingHouse,の名がプリントされた6RP15(Made in Japan)が入手できる。
Toshiba-Matsuda 6R-P15 Hi-Fi, for Audio/東芝6R-P15(マツダ/02, Hi-Fi用,1960年2月)の正面と側面。
この頃までグリッドに黒化フィンが付いていた。1959年からマツダ・ロゴを廃止したため,ちょうど過渡期にあたり,正面ロゴは銀文字でToshiba,側面に黄文字でマツダのスタンプがある。この頃は製造年月も表示していた。電極構造は6BQ5の東芝の項参照。プレートは上下に開口部あり。g1支柱は銅,g2支柱は銀色だが黒化,g3は銀色で支柱が長い。角ゲッタ。コイル・ヒータ。ガラス側面に[Hi-Fi]のスタンプあり。
Pair Box of Toshiba-Matsuda 6R-P15 Hi-Fi, for Audio/東芝-マツダ6R-P15のペア箱。
1本680円。各小箱には特性表が付いている。中身はToshiba/黄色文字でマツダのスタンプがあるが,箱はまだ旧時代のまま。
トランス付(6.3V)TV用音声出力用5極管。東芝。1960年。4M-P12に続く6AR5改造球第2弾。
(原型・構造・特性)
6.3V,0.5A,mT18-3,6CC,
250V,250V,-8V,32mA,5.5mA,90k,5.2mA/V,RL7.6k,3.4W,250V/8W,250V/2.5W
4M-P12の改良版。ヒータ電力(4.7V0.6A=2.82W)を10%増強(6.3V0.5A=3.15W)し,ガラス管を若干長くしたもの。4M-P12と電極の外観,ピン配置は同じで,最大定格やgmもほぼ同じ。4M-P12の代表特性は180V動作が発表されているのに対し,6R-P17は6AR5と同じ250V動作のものが発表されている。東芝のマニュアル(62年)に出ているプレート特性曲線にはプレート損失が12Wと書き込まれているが,7.5Wの誤りらしい。
4M-P12とどこに違いがあるのか定かでないが,1つはトランス付きの高圧+B動作管であること,また1つは歪みがやや低く抑えられているという点らしい。もう1つは販売戦略。4M-P12の6.3V管6M-P12はNECが販売していた。4M-P12系は180V動作例のみが発表されているが,ヒータUPして高gm化しているため高圧をかけて3W以上の出力を得るには無理があったものと思われる。
(その後)東芝だけが生産し,自社のTVに盛んに用いた。今日でも一部入手できる。
6.3V系およびレス(600mA)TV用音声出力用5極管。東芝1960年。HL94/30A5系改良第1弾。
(原型・構造・特性)
7.5V,0.6A,mT18-3,7BZ,
200V,180V,-5V,35mA,5.5mA,24k,11mA/V,RL5k,3.2W,
250V/7.5W,200V/2.0W
低電圧大電流型の欧州管HL94/30A5を原型に新しく作られた改良球第1弾。ヒータは(30V0.15A=4.5W)から(7.5V0.6A=4.5W)と同じ。概観も同じ。原型は低電圧大電流型であったが,これを200V動作可能にしたもので,パラメータや特性は異なる。最大定格は(Eb150V7.5W,Esg150V1.5W)が(Eb250V7.5W,Esg200V2W)に引き上げられた。ピン配置は6AQ5と同じ。
レス(600mA)TV用音声出力用5極管。NEC(新日電)。1961年(8)。7M-P18の改良球。
(原型・構造・特性)
7.5V,0.6A,mT18-3,7BZ,
200V,180V,-5V,35mA,5.5mA,24k,11mA/V,RL5k,3.2W,
275V/8.25W,220V/2.2W(設計最大)
最大中心の旧規格のデータもあり,原型の7M-P18と全く同じ仕様と最大定格。原型とどこに差があるのか不明。
電極構造の外観上の差は,原型(東芝製の7M-P18)がプレート・フィンを持っているのに対して,NEC製では省略されている点で,プレート損失はむしろ不利である。ただし,フィンの有無はプレート材料の放熱特性や経済性などとのバランスで決まり,プレートの形状やフィンの有無は表に現れる性能仕様とは直結していない。これらはメーカの選択事項であり,本質的な差とはならない。フィンの省略はNEC製の30M-P27などにも見られる。
7M-P18Aは,Aが付くからには東芝の6M-P18の改良型でなければならない。代表特性が同じで最大定格も同じだ。考えられる差異はヒータウォームアップタイムの規定である。NECはこれを明記するくせがあった。一方,東芝はAを付けずに済ます習性があった。これが真相ではないか。したがって,東芝の7M-P18とNECの7M-P18Aは完全互換と考えられる。
(その後)NECだけが製造した。それほど普及せずに終わった。
レス(300mA)TV用OTL音声出力5極管。松下。1960〜61年。HL94/30A5の300mA管。
(原型・構造・特性)
15.0V,0.3A,mT18-3,7CV,(K-G3,G1,H,H,G1,G2,P),12.5pF,8.0pF,3pF,Cgh0.4pF
100V,100V,-6.7V,43-43mA,3-13.5mA,22k,9.2mA/V,RL2.4k,2.1W,12%,μ7.8
絶対最大165V/8.25W,165V/1.65W,Ik110mA,Eg0-50V,Rg0.5/1M,Ek+150/385V,Ek-100/385V
低電圧大電流型の欧州管30A5のコンパチ管第2弾で,ヒータ(30V0.15A)を(15V0.3A)とした。ピン配置,最大定格は同じ。かつて,松下はNHKと共同で15CW5を用いたOTL垂直偏向出力回路とTV音声回路の研究を行っていた。この球は,その廉価版である。
(その後)松下だけが製造。松下のTVには,音声出力回路に15M-P19を2本使用したOTLアンプが使われた。
(参考HL94/30A5)
30.0V,0.15A,mT18-3,7CV,(K-G3,G1,H,H,G1,G2,P),
100V,100V,-6.7V,43-43mA,3-11mA,22k,9.2mA/V,RL2.4k,1.9W,10%(4.3Vrms(6.0V))
設計中心150V/7.5W,150V/1.5W(peak2.5W),Ik100mA,Ek150V
6.3V(600mA)/450mA系レスTV音声出力用5極管。日立1961年。レス(150mA)ラジオ出力用5極管。日立1964年。4M-P12,6M-P17に続く高圧動作用の第3弾。
(原型・構造・特性)
6.3V,0.6A/8.4,0.45A/25.0V,0.15A,mT18-3,6CC
185V,185V,-6V,42mA,9mA,27k,10.5mA/V,RL4k,3.6W,
275/10W,275V/2W(設計最大)
原型は米国の高感度出力管6EH5/25EH5/50EH5系と思われる。原型は簡易機器の出力用に大ヒータ電力(6.3V,1.2A)の下でgmを20mA/V近くまで引き上げて高感度を狙った出力管だが,自己発熱のためPb,Psgは5W,1.75Wに,またEb,Esgは(設計中心)135V,117V,(設計最大)150V,130Vに制限されている。
6M-P20は,50EH5のヒータ電力を1/2に削減し,パービアンスを1/2として,高圧動作用に改造したものと考えられる。50EH5と6M-P20の3極管接続は次のように推定される。
50EH5の3極管接続(推定);Eb115V,-3.3V,53mA,18.4mA/V,μ=15.3,rp=0.83k
6M-P20の3極管接続(推定);Eb185V,-6V,51mA,12.75mA/V,μ=15.4,rp=1.2k
両者の増幅度μはほぼ同じである。また,Eb-Ib曲線を描くと6M-P20のゼロ・バイアス電流は50EH5の丁度半分になっている。これは,6M-P20のヒータ電力が1/2に削減され,パービアンスGが半減していることに符丁する。パービアンスは50EH5がEb115V,Eg-3.3VでG=6.1,一方6M-P20は185V,-6VでG=3.47であり,同一動作条件なら3.0近くとなろう。ヒータ電力の削減は,最大定格の引き上げにも繋がっており,Eb,EsgならびにPb,Psgは原型と比べて倍増している。このように6M-P20は,ヒータ電力を改造しただけで,他のパラメータをいじることなく高圧動作管に生まれ変わったことが判る。
旧型の4M-P12,6M-P17と性能比較すると,ヒータ電力は4M-P12(4.7V0.6A=2.82W),6M-P17(6.3V0.5A=3.15W)に比べ,(6.3V0.6A=3.78W)とやや増加したが,gmは4M-P12,6M-P17のほぼ2倍で感度がUPされたことが判る。また,最大定格の面では,プレート電圧は旧型の2者が250V(設計中心),6M-P20は275V(設計最大)と同じだが,旧型管の電極設計は古い6AR5を原型としているためプレート損失は4M-P12(7W),6M-P17(8W)とやや低いのにに比べ,6M-P20はやや大きい10WにUPされているのが判ろう。
電極構造を見ると,日立の6M-P20のサンプルでは,プレート外観は,カソード対抗面だけを平坦にした円柱型プレートを採用しており,これは将に50EH5と同じ構造である。また,日立のサンプルでは放熱フィンも取り付けられている。おそらくプレート材料も旧型管に比べると放熱の面で改良されていると思われる。なお,ピン配置は50EH5系ではなく,旧型の前2者と同じく6AR5型が採用されており,旧型管の保守用としても使用できるよう考えられていることが判る。
(その後)NEC(新日電)は1966年に参入。450mAシリーズの8M-P20はNECによって作られた?また,三菱もNECのOEM製品を用いた。
レス(100mA)ラジオ出力用5極管。東芝1961年。HL94/30A5の100mA管。
(原型・構造・特性)
45V,0.1A,mT18-3,7CV,
100V,100V,-6.7V,43mA,3mA,22k,9.2mA/V,RL2.4k,2.1W,10%,
150V/7.5W,150V/1.5W
ヒータ(30V0.15A)を(45V0.1A)とした。当然,ピン配置は30A5と同じ。トランスレス・ラジオ用100mAシリーズは,従来の150mAシリーズ(12BE6,12BA6,12AV6,50C5,35W5)に代る省エネルギーの5球スーパ用新型管(18FX6,18FW6,18FY6,35GD5,32AM3)として米国に誕生したが,日本国内では商用電圧が低いため使えなかった。このため,国内メーカは,周波数変換だけ米国型の18FX6を使うが,整流管はヒータのいらないシリコン・ダイオードとし,さらに検波用2極管に相当する部分にゲルマニューム・ダイオードを当ててヒータ電圧を節約することで,100mAシリーズの活路を見出そうとした。出力管35GD5は35C5の類似球であり,AC100Vの半波整流した+Bでは十分機能しないことから35C5に対して欧州系の30A5が使われたように,35GD5に対して30A5の100mA版である本45M-P21が誕生したのである。また,検波用2極・低周波増幅3極管18FY6の2極部を取り除き,中間周波増幅5極管18FW6を複合化した新型管28R-HV2も開発した。これにより,ようやく100mAのトランスレス3球スーパが誕生したのである。
(その後)国内主要球メーカは輸出用に100mAシリーズを生産したが,国内需要に限って言えば,150mAシリーズを新しい100mAシリーズに変えるメリットは全く無く,さらに国内は既にトランジスタ時代に入っていたため,全く普及せずに終わった。
カラーTV色信号検波・増幅用5極管。東芝。6R-P22(6.3V管)は1961年。7R-P22(レス600mA)/9R-P22(レス450mA)は1963年。
(原型・構造・特性)
6.3V,0.65A/6.7V,0.6A/9.0V,0.45A/,mT21-3,9BV
250V,150V,-3V,Eg3=0,22mA,8.5mA,55k,8.5mA/V,gm(g3-p)0.35mA/V,
300V/7.5W,300V/1.7W
(参考6CL6)250V,150V,-3V,30mA,7mA,150k,11mA/V,RL7.5k,2.8W
原型は6CL6で外観は類似し見分けがつかない。ピン配置も6CL6に同じ。カラー復調用の第1と第3グリッドによる2重制御管。通常の電圧増幅管による色信号検波と異なり電力感度を持たせており,TVセットのコスト低減ができる。電力管であるためJIS/CESのPシリーズに登録された異色の出力管。サプレッサには基準信号(3.58MHz,22Vpp)を加え,グリッドに色信号(8Vpp)を加えてサプレッサのgmを制御,同期検波する。プレートには50Vppの復調出力が得られる。この球を使用すると水平ブランキングがカラー受像管のグリッドに掛けられないので,第2映像増幅回路のグリッド側へ水平負パルスを加えて間接的に行う。カラーTVは3色あるため3本1組みで使われた。G3を正に設定すれば肩特性が良くなりおもしろい出力管になる。米国RCAのマニュアル等にも見られる。
(その後)初期の国産TVは21インチと17インチが開発されたが,価格が高く重量が大という欠点のため,1960年の正式放送開始後普及が鈍った。小型化とローコスト化の努力を進め,東芝は20万円を切る14インチ版を1961年末に発表した。6R-P22はこの時に開発され,以後普及型のカラーTVにもっぱら使用されたが,数年後に使命を終えた。
オーディオ用OTLおよびラジオ出力用5極管。松下1961〜62。HL94/30A5の改良球第2弾。
(原型・構造・特性)
30V,0.15A,mT18-3,7CV,
110V,110V,-7.5V,50-50mA,3.3-13mA,25k,10mA/V,RL2k,2.6W,10%,
設計中心150V/7.5W,150V/1.5W,
絶対最大165V/8.25W,165V/1.65W,Ik110mA,Eg0-50V,Rg0.5/1M,Ek+180/385V,Ek-150/385V
(参考30A5)30V,0.15A,100V,100V,-6.7V,43mA,3mA,22k,9.2mA/V,RL2.4k,2.1W,10%,μ7.8
最大定格はOTL用にヒータの耐圧を強化した以外30A5と同じ。15M-P19に比べてもdc重畳時のヒータ耐圧が+30V,-50VUPしている。ピン配置は30A5に同じ。東芝によるとこの球は高出力化とある。確かに多少パラメータが異なる。ゼロ・バイアス電流が7%UPし,+Bを10%UPした動作では出力が20%UPした。
(その後)東芝1962。NEC(新日電)は1966年に参入。
レス・オーディオ用OTL出力5極(ビーム)管。東芝1963年。EL86/6CW5の改良球で,HL94/30A5系の改良第3弾。50R-P25は2本直列点火用,12R-P25は8本直列点火用。
(原型・構造・特性)
12.6V,0.6A/50V,0.15A,mT21-4,9CV,
110V,110V,-6.7V,75mA,6.5mA,8.6k,14.5mA/V,RL1.5k,3.2W,10%,150V/11W,120V/2W
120V,120V,-8.0V,80mA,6.5mA, RL1.5k,4.3W,10%
EL86/6CW5系のパービアンスを高め,より低い+B電圧で大きな出力が得られる高感度のOTL出力管とした改良球で,HL94/30A5系の改良球第3弾と言える。原型と同じT21-3型のガラス管を使用したMT9pinのミニアチュア管で,ベースピン配置も同じだが,プレートの形が原型とやや異なり,内部構造もビーム管となっている。
主な改造点はヒータ電力の変更であり,HL84/30CW5の(30V,0.15A,4.5W)から50V,0.15A,7.5Wに強化している。またヒータの耐圧がOTL動作を考慮して強化されている。他の主要パラメータには変更はない。トランス・レスのラジオ用出力管には,同族ながらヒータ電力が異なり性能仕様も異なる球のあることは有名で,例えば35C5に対する50C5,35EH5に対する50EH5などが知られている。もし50R-P25に米国EIA名が与えられたなら,50CW5と命名するところである。さて,ヒータの改造により,3接時のパラメータがどのように変ったか比較してみよう。
50R-P25(T) 110V,-6.7V,81.5mA,15.8mA/V,μ8.6,rp=0.54k,G=5.42
EL86/6CW5(T) 200V,-17.3V,64.1mA,9.4mA/V,μ8,rp=0.85k,G=3.0
このように,パービアンスは67%UPし,ゼロ・バイアス電流が増大した他,gmも原型の9.2mA/Vから14.5mA/Vに約50%UPしているのが判る。また,この改造にともない,最大定格(設計最大)は下方修正され,プレートとスクリーン・グリッドの最大電圧,最大損失はそれぞれ(275V,14W)から(150V,11W)へ,(220V,2W)から(120V,2W)へ変更された。
ヒータは,商用電源100Vで直接点火できるように,50V,150mAの簡易点火版50R-P25が作られたが,一方で,多数の球を並列動作させるというOTLアンプの事情を考慮して,8本直列点火版の12R-P25も作られた。ただし,ドライバー管の点火は考慮されていない。
(サンプル)
50R-P25のサンプルは東芝製とNEC(新日電)製の2種類ある。50R-P25の電極外観(プレート外観)は一見原型のEL86/6CW5系と全く別者に見える。しかし,詳細に検討すると,類似している部分を見つけ出すことができる。
東芝製を比較すると,原型はプレート横断面がやや偏平した6角形で側部ではK-P間距離が縮まるのに対し,50R-P25は平坦なカソード対抗面を広く取り側面だけを丸型にした箱型に近い偏平丸型プレートを採用している。これは,カソード面積を67%大きくした対策と考えられ,また縦寸法も原型29mmに対し3mm長い32mmであるが,基本性能を決めるK-P間距離は原型の最大距離に等しい。なお,プレート構造は1枚の板を折曲げて繋ぎ目を畳み込んだ一体成形の簡易型で,3本のリブと側面に排気穴が1つあるが,
放熱用フィンは省略されている。また,G1支柱頂部には菱形に囲んだ黒化フィン板が取り付けられている。G3はビーム翼である。EL86/6CW5系は5極管として知られているが,松下の後期の製品には既存のプレート内にビーム翼を詰込んだビーム構造の球も存在し,ビーム翼の有無が直ちに改造に繋がる訳ではないらしい。G1の支柱頂部には放熱用の馬蹄形黒化フィンが付けられている。
一方,NEC(日電)のサンプルは,東芝と同様に偏平丸型プレートを採用しているが,カソード対抗面の平坦部で2枚の成形板をスポット溶接した構造となっており,繋ぎ目が僅かな放熱フィンを形成しているので,やや原型に近い外観をしている。G1の支柱頂部には放熱用の馬蹄形黒化フィンが付けられている。G3は東芝同様にビーム翼である。
(その後)
東芝が発表後,NEC(新日電)は1964年(8)に参入。一部の簡易ステレオに使われたが,OTLアンプの需要はそれほど無く,生産数は少なかったと思われる。今日,市場のストックは完全に底を尽いており,中古球が僅かに入手できる程度である。
レス(450mA,300mA),6.3V系TV音声出力用5極ビーム管。東芝1963。HL94/30A5の改良第4弾。
(原型・構造・特性)
3.5V,0.6A/4.5V,0.45A/6.3V,0.3A,mT18-2,6CC
110V,110V,-10V,32mA,1.8mA,16k,4.25mA/V,RL2.8k,1.8W,10%,
165V/4.2W,165V/0.6W
30A5のプレートを半分にした形をしており,ヒータ電力は(30V0.15A=4.5W)から(3.5V0.6A=2.1W)と半分以下にし,最大損失もほぼ半分である。ただし,プレート,スクリーン電圧は新規格の165Vに引き上げられている。ピン配置は6AR5と同じ。米国の豆粒のような出力管6AK6は6.3V0.15Aで1Wが得られるのに,日本の代表的な出力管6Z-P1は出力が1Wのときに6.3V0.35Aも食っていると後年国内マニアから散々たたかれたが,この球の開発はある意味で日本の真空管技術の汚名を挽回したものとなっている。ヒータ電力こそ6AK6の2倍あり6Z-P1よりやや少ない程度であるが,何よりも100V前後の低電圧動作で1W出るのである。
オーディオ用OTL出力5極管。松下,東芝,日立1964年。HL94/30A5改良球第5弾。
(原型・構造・特性)
30V,0.15A,mT18-3,7CV,
130V,110V,-9V,64mA,2.5mA,20k,10mA/V,RL1.6k,4.0W,12%,μ6.35
設計最大165V/10W,165V/1.65W,Ik110mA,Eg0-50V,Rg0.5/1M,Ek+180/385V,Ek-150/385V
(参考30M-P23)
絶対最大165V/8.25W,165V/1.65W,Ik110mA,Eg0-50V,Rg0.5/1M,Ek+180/385V,Ek-150/385V
ピン配置は30A5に同じ。ヒータの耐圧は30A5に比べて強化され30M-P23と同等。最大定格はプレート損失が30A5,30M-P23に比べて20%UP(8.25Wから10W),μがやや低くなり,ゼロ・バイアス電流が30A5より30%UPし,130V/110V動作時に出力が2倍となった。これにより50R-P25と対抗できるようになった。
6.3Vおよびレス・オーディオ用ビーム出力管。東芝1964年。1968年には廃品種。
(原型・構造・特性)
50V,0.15A,9T29-?,-,
210V,210V,-11V,65mA,6mA,25k,11mA/V,RL2.5k,8.0W,10%,
265V/18W,265V/2W
簡易ステレオ用の9T9型出力管。JIS/CESの5極出力管Pシリーズでは初の9T9管で,また外形,最大定格,出力ともに最大の球である。JIS/CES登録球で9T9を採用した球は,この他に東芝の3極複合管6R-AL2があるのみである。最大定格は7M-P18の約2倍で,ヒータ電力は(50V0.15A=7.5W),プレート損失は(265V18W),スクリーンは(265V2W)である。ピン配置は6CW5や6BQ5と同じ。
この球の特徴は,AC100Vを倍電圧整流した経済的な+B電源で,シングルで8W,プッシュ・プルでは6BQ5並みの17Wが得られる点にある。従来のオーディオ用出力管は,250Vから300Vの+B電圧を要し,完全トランスレス化すると動作中心点が低い+B電圧で制限され,十分な出力が得られないという欠点があった。これを解決するには,高いゼロ・バイアス電流を持つ球が必要である。AC220V前後の欧州では1950年代にEL86/6CW5などが開発され十分目的をはたしていたが,日本のAC100Vに適した球は外国から現れる訳がなく,自ら開発しなければならなかった。
原型はゼロ・バイアス電流が大きく,高圧動作可能な米国のTV垂直偏向管21LU8系の5極部と思われる。まず,計算した3接特性を比較しよう。同じ9T9の6GC5(=6W6GT)も同時に示す。
6W6GT/6GC5(T) 110V,-7.5V,53mA,8.7mA/V,μ5.6,rp0.64k,G=1.25
21LU8(T) 120V,-10V,55.5mA,9.9mA/V,μ6.5,rp0.66k,G=2.25
50R-P28(T) 210V,-11V,71mA,12.0mA/V,μ12.0,rp1.0k,G=4.28
改造点は,倍電圧整流で得られるB電圧210V付近で手頃なプレート電流値と感度を持たせることにある。単に増幅率μを大きくすると,感度が高まるだけでなく,プレート電流が減少し,プレート損失も減ずるから,低電圧大電流型の球の場合は動作範囲を高電圧領域に拡大できる。しかし,μを過大にするとゼロ・バイアス電流も減少し,肝心の出力が得られなくなってしまう。そこで,パービアンスGも同時に増大させれば,ゼロ・バイアス電流を再び大きくすることができる。このバランスをうまく取ったのが,50R-P28である。増幅率μを約1.8倍大きく,パービアンスGも約1.9倍に引き上げることにより,5結時のゼロ・バイアス電流は,6W6GT/6GC5の65%,21LU8の50%程度になり,B電圧210V付近で最大出力が得られる高感度の球を作ることができた。しかし,高感度管の常として,歪率の悪化が避けられないということも忘れてはならない。当時は,歪率の悪化はNFBで救われると信じられていた。
さて,具体的にどう増幅率μとパービアンスGを調整したかであるが,3接の場合,パービアンスに関しては,これはヒータ電力とK-g2間ギャップにより決まる因子であるが,上の3者は全てヒータ電力は同じだから,新型管はK-g2間ギャップを狭くしていることが判る。
21LU8は6W6GTに対して,ギャップを25%減少すればGは1.8倍になるが,μは2.24に減少する。実際にはμは6.5だから,g1のピッチを0.60に減少する(蜜に巻く)あるいは線径を増加させるなどの方法でμを2.9倍していると思われる。なお,gmはGの増大では増加,μの増加では減少するが,トータルでわずかに増大する。50R-P28の場合も同様で,21LU8に対してK-g2間ギャップを28%減少させると,Gは1.9倍になるがμは4.7に減少する。グリッド線径を不変のままピッチを約0.64にすれば,μ12が得られる。結果的にgmは20%UPした他,高μ化のために5結時のゼロ・バイアス電流は小さく抑えられているが,3接時のゼロ・バイアス電流は21LU8に比べ約50%UPしている。
最大定格で見ると,一般にゼロ・バイアス電流が大きい球は電極損失の制限により,最大電極電圧は低くなる。21LU8が他のユニットで熱せられる複合管であるにもかかわらず,6W6GT/6GC5よりも遥かに高い電圧と損失が許されるのは,幾何学的な電極構造より,むしろ電極材料の進歩,耐高損失化によるものと考えられる。一方,50R-P28の最大定格(設計最大)は,21LU8系の400V/14W,Esg300V/2.75Wから265V/18W,265V,2Wとなり,印加電圧が引き下げられた一方でプレート損失だけは増加しているのが判る。電極材料は21LU8と同時代であるから同じと考えられるが,3接時のゼロ・バイアス電流が大きいことから判るように電極電圧は引き下げられた。またプレート損失が増加した理由は,21LU8にある他のユニットからの放熱が無くなったためである。スクリーン損失がやや低いのは,高gm化にともなう副産物であろう?
(オーディオ動作例)
与えられた最大定格内で3接PP動作を考えると,50R-P28はμが21LU8の約2倍であるにもかかわらず,ゼロ・バイアス電流は50%UPである。しかし,同時にプレート電圧の制限を受け,動作は250Vまでに限定される。一方の21LU8は300Vまでの高圧動作が許されるので,より大きな出力が得られる。負荷を内部抵抗の2倍に取った簡略計算では,
21LU8 300V,RL1.5k,Po=15W
50R-P28 250V,RL2.0k,Po=10W
となり,高μ化した50R-P28は3接にやや不利であることが判る。
しかし,一方で,最大定格におけるスクリーン最大電圧は,プレート電流で決められていると思われる。3極管接続で高負荷抵抗時にはピーク・カソード電流は100mA以下に制限できること,高圧領域では電流は流れないことを考慮すると,。。。
(サンプル)東芝製のみ。プレート外観は原型の21LU8の5極部と同一サイズで良く似ている。原型は平坦部分を広く取った偏平箱型プレートで,TV用に大量生産されたため1枚の板を成形し折曲げて綴じ込んでとした簡易型を採用している。50R-P28は側面に放熱フィンを持たせており,2枚の成形板をフィン部分で繋ぎ合せた構造をしている。プレート板には3本のリブがあり,各側面に排気用の丸穴が1つある。2本のG1支柱頂部にはそれぞれ十字型の黒化フィン板が独立に取り付けられている。G3はビーム翼である。
(その後)NEC(新日電)1965年(11)も作った。50R-P28はユーザにわずかにストックがある。
レス(450mA)TV音声出力用5極管。NEC(新日電)。1965〜66年(2)。HL94/30A5 改良球第6弾。
(原型・構造・特性)
5.0V,0.45A,mT18-2,7CV,
110V,110V,-7V,45mA,2.5mA,22k,7mA/V,RL2.5k,1.7W,10%,
165V/6.0W,165V/1.0W
3/4/6M-P26系と同様に30A5をさらに小型化したもので,プレート・サイズは2/3程度,ヒータ電力は30A5(30V0.15A=4.5W)に対して(5.0V0.45A=2.25W)と半分であるが,最大定格は(Eb150V7.5W,Esg150V1.5W)から(Eb165V6W,Esg165V1W(1.8W))となり,プレート損失では20%減に留り,また最大電圧は新規格の165Vに引き上げられ,効率の良い球となっている。ピン配置は30A5に同じ。
レス(450mA)TV音声出力用5極管。NEC(新日電)。1966年(4)。HL94/30A5 改良球第7弾。5M-P29のベースピン改良型。
(原型・構造・特性)
5.0V,0.45A,mT18-2,7BZ,
110V,110V,-7V,45mA,2.5mA,22k,7mA/V,RL2.5k,1.7W,10%,
165V/6.0W,165V/1.0W
5M-P29と双子で,ピン配置だけが異なり,7M-P18や6AQ5と同じベースを採用している。5M-P29より後に作られた。
レス・オーディオ用OTL出力5極管。不明。年代不明。HL94/30A5改良球第8弾。
(原型・構造・特性)
30V,0.15A,mT18-3,7CV,
110V,110V,-9V,64mA,2.5mA,20k,10mA/V,RL1.0k,2.65W,-%,
設計最大165V/8.25W,165V/1.65W
ピン接続,最大定格は30A5と同等だが,ヒータの耐圧は強化されている。ゼロ・バイアス電流が30M-P27よりやや高く,低+B電圧(110V)で30M-P27(130V)と同じ電流が得られる。30M-P23と比べると同じ110V動作では,バイアスをよけいにかけて(-6.7Vから-9V)も大電流型になっており,出力は同じだが最適負荷が低い。したがって,よりOTLに向いた特性となっている。
レス(600mA)TV垂直偏向発振・出力用3極・5極複合管。日立1962年。8B8(6BM8系)の5極部と7AU7の片ユニットの複合管。
(原型・構造・特性)設計最大
8.0V,0.6A,mT21-4,-,
(P)150V,150V,-10V,50mA,10.5mA,-,7.9mA/V,RL3k,3.5W,12%,
設計最大250V/8W,250V/2.2W
(L)220V,-7.7V,10mA,-,3.4mA/V,-,250V/1W
150V,(1k),6mA,6.8k,2.5mA/V,μ17
原型は,5極部は欧州系8B8/XCL82(6BM8の600mA管),3極部は米国12AU7の片ユニットの最大定格を小さくしたもの(静特性は同じ)と思われる。8B8/XCL82は国内TVで便利な垂直偏向用出力管として使われていたが,同封の3極部は高μで垂直発振管には向いてない。一方,米国12AU7系の600mA管7AU7は初期の頃垂直発振・出力管として小型TVに用いられた実績があり発振には向いている。そこで,両者を組み合わせたのがこの球である。6BM8系はオーディオ出力管としても使われており,動作例が公表されている。日立のデータは両ユニットともオリジナルとは異なる電圧の例で紛らわしいが,ほぼ同特性と考えてよい。ただし,電極構造はECL82/6BM8系とは異なりその後継管6GV8/ECL85で初めて採用された構造,すなわち,3極部の縦サイズを1/3程度に縮めて下部に配置し,5極部の放熱を改善する方法を模倣している。このおかげで,5極部のプレート最大定格は1W程良くなったが,3極部の最大定格は1/3程度に下がり使用が難しくなった。8R-LP1の中古球を見ると分るが,3極部周辺のガラス黒化が激しくまたエミ減も多い。
(その後)松下は,68年にTV保守用真空管シリーズとして,新たに製作した。
[参考8B8/XCL82]8.0V,0.6A,mT21-4
(P)170V,170V,-11.5V,41mA,8mA,16k,7.5mA/V,μ9.5,RL3.9k,3.3W,10%,250V/7W,250V/1.8W
100V,100V,-6.0V,26mA,5mA,15k,6.8mA/V,μ10,RL3.9k,1.05W,10%
(H)100V,0V,3.5mA,2.5mA/V,μ70,250V/1W
100V,-1V,1mA,37k,1.9mA/V,μ70
(参考12AU7)250V,-8.5V,10.5mA,7.7k,2.2mA/V,μ17,300V/2.75W
100V,0V,11.8mA,6.5k,3.1mA/V,μ20
欧州6BM8/ECL82系は,日本国内では,TV用にまず16A8/PCL82(16.0V,300mA)と6BM8/ECL82(6.3V,0.78A)が,次いで8B8/XCL82(8.0V,600mA)が国産化され爆発的に普及した。またラジオ,オーディオ用に32A8/HCL82(32.0V,150mA),50BM8/UCL82(50.0V,0.10A)が,TV用では後に11BM8/LCL82(11V,450mA)が国産化された。さらに後継管として垂直偏向用には6GV8/ECL85(6.3V,0.9A)系,9/10GV8/XCL85(9.5V,450mA),18GV8/LCL86(18V,300mA)が誕生し,音声用には6GW8/ECL86(6.3V,0.7A)系,14GW8/PCL86(14.5V,0.3A)が誕生している。
レス(600mA)TV音声,レス(150mA)ラジオ用電圧増幅・出力用3極・5極複合管。東芝1959年。日立1959年。ECL82/6BM8系の600mA管8B8/XCL82,150mA管32A8/HCL82の同等管。
(原型・構造・特性)
8.0V,0.6A/32.0V,0.15A,mT21-4
(P)170V,170V,-11.5V,41mA,8mA,16k,7.5mA/V,RL3.8k,3.3W
(H)100V,(1k),1.9mA/V,μ70
原型は欧州8B8/XCL82,32A8/HCL82で,全くの同等管。発表当時,国内では6BM8/ECL82と16A8/PCL82だけが知られており,600mA管と150mA管は欧州や米国で発表されていなかった。そこで,国内で独自に開発し,JIS/CES登録したものと考えられる。
(その後)東芝は6BM8HiFiの他,8B8,32A8を1960年に発表し,8R-HP1の形跡を抹消している。また日立も同様と思われる。
オーディオ,レスTV(600mA)音声,レス(150mA)ラジオ用電圧増幅・出力用3極・5極複合管。NEC(新日電)。1960年(9)。欧州6BM8系の改良球。
(原型・構造・特性)
6.3V,0.78A/8.0V,0.6A/32.0V,0.15A,mT21-4
(P)250V,250V,-6.7V,30-31mA,7-14mA,-,8.8mA/V,RL6k,3.8W,300V/8W,300V/2W
(H)原型に同じ
欧州6BM8/ECL82系の改良。3極部は同じであるが,5極出力部のgmを70%UPし,感度を(6AV6-6AQ5)より25%UPしたもの。最大定格もUPしEsgmax250Vとなっている。初期の頃NEC(新日電)などが国内生産した6BM8/ECL82系は最大定格の低さとヒータ・ハムでユーザからのクレームが多く,NECでは製造途中から出力部のプレート材料を変更しPbを7Wよりもやや高めに強化にし,ハム対策も講じた規格外の球を出荷していたが,これでは歯痒いため自ら高規格の球を設計した。
(その後)各社とも6BM8/ECL82系の改良を実施し,しかも他の球に比べてコストが格段に安かったことなどから,6/8/32R-HP2はほとんど普及せずに終わった。
なお,6R-HP2のシングル動作時の最適負荷に関して,武末氏(ラ技誌,63.12)は,NEC発表のRL6kは低すぎて十分な出力が得られない,実際には7〜10kが適当としている。この理由について,同氏は,NECはこの球の最適負荷をグリッド・インピーダンスが変化しない理想的な場合について示しており,現実とはギャップがある,フィリップス系の出力管は動作時にグリッド・バイアス変動が深めになるのを考慮して最適負荷を高めた実際的な値が示されている,として暗に国内メーカを批判している。
レス(450mA)TV音声用電圧増幅・出力用3極・5極複合管。三菱1965年。12AX7の片ユニットと5M-P29/5M-P30を複合管にしたもの。
(原型・構造・特性)
8.4V,0.45A,mT21-4
(P)110V,110V,-7V,45mA,2.5mA,22k,7mA/V,RL2.5k,1.7W,165V/6W,165V/1.8W
(H)100V,-1V,(0.5mA),1.35mA/V,μ100,330V/1.1W
原型は,5極部は5M-P29/30,3極部は12AX7の片ユニットで,特性は同等。従来の音声出力複号管は,旧時代の高圧用のものばかりで,省ヒータ電力型の低電圧動作出力管が無かった。そこで,450mAシリーズ用に開発された5M-P29/30と旧来の電圧増幅管を組み合わせた新しい複合管を開発したのである。開発の狙いはTVセットのコスト低減である。
レス(450mA)TV音声検波・電圧増幅・出力用5極・5極複合管。NEC(新日電)。1966年〜1968年。4DT6Aと5M-P29を複合管にしたもの。
(原型・構造・特性)
(P)110V,110V,-7V,45mA,2.5mA,22k,7mA/V,RL2.5k,1.7W,165V/6W,165V/1.8W
(R)6DT6Aに同じ。
450mAシリーズ管4DT6A+5M-P29をコンパクトロン化したもので,各ユニットの特性は原型に全く同じ。音声検波・増幅・出力が1本で行える。開発の狙いはTVセットのコスト低減である。国産化された米国系の同目的の複合管には
6AL11(6.3V,0.9)/10AL11(9.8V,0.6A),250V,250V,6.5mA/V,RL5k,4.2W,10%
6BF11(6.3V,1.2A)/17BF11(16.8V,0.45A),145V,110V,8.6mA/V,RL3k,2.4W,10%
6T10(6.3V,0.95A)/12T10(12.6V,0.45A),(6AL11に同じ)
13V10(13.2V,0.45A),145V,125V,6.4mA/V,1.5W,7%
がある。検波部は全て同じで出力部のみが異なる。低電圧型は6BF11系と13V10系で,省電力型は13V10のみ。9R-PR1の方が優れているように見える。