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GTG. Octal Glass and GT tubes -American/米国のオクタルガラス管とGT管 |
Loktal. Lock-in tubes(LOKTAL) -American and European/米国と欧州のロクタル管 |
Europe1ST. ST Tubes and Metal Tubes -European (4/4) 戦前の欧州ST管とメタル管 |
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Converter |
RCO Pentode Amp |
Det Diode |
Double Diode Triode |
Medium Mu Triode |
Power Output |
Rectifier |
(Die) RCA-Cunningham 6A8, |
(Die) RCA-Cunningham |
(Die) RCA 6H6 (np) (Print) GE 6H6 |
Not-Yet (Die) Wards 6Q7 (Print) Raytheon 6R7 |
(Die) Unknown 6C5 (Print) GE 6C5 6F5 RCA |
(Print) 6F6, (Print) 6V6 |
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Converter |
RCO Pentode Amp |
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Double Diode Triode |
Medium Mu Triode |
Power Output |
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RCA Victor 6SA7, GM Genuin Part 6SA7, 12SA7 Coronado |
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6SQ7 |
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RMA Name |
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Double Ended |
Single Ended | ||
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12SQ7, 1620, 12SA7, 6AC7, 6AG7, 6SF5, 6AC7W, 6F5, 6AG7, 6AC7W, 6SJ7, |
6SK7Y, 6SK7, 12SK7, 12SQ7, 0Z4, 6SH7, |
KENRAD 6Q7, DELCO/GE 6SK7, F.M. CO/GE 6SQ7, G.M. Genuine Parts/RCA 6SK7, Emarson 12SA7, |
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Inside View of American 6AC7W |
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ここでは中身が見えない米国のメタル管について,外観を眺めながら歴史を紹介することにしましょう。
メタル管,真空容器に金属を用いた全金属管はどの真空管の本にも必ず一度は触れられる程有名な真空管で,いろんな人が取り上げています。メタル管の出現は技術的な見地から当時はセンセーショナルなできごととして受け取られましたが,その後の歴史を見ると,優れたメタル管は主流とは成り得ず,むしろグラス・オクタルのGT管やボタン・ステムのミニアチュア管へと発展するきっかけを作った真空管として功績があったものと見ることができます。特に戦後のラジオ少年の世代にはノスタルジーの原点として映るのか,多くの著名なメタル管コレクターを生み出していることも事実です。しかし,最近のにわか真空管コレクターにとっては,真空管の中身が見えないことは致命傷であって,珍品を欲しがる真空管コレクターですら,最もつまらない分野の1つと捉え,できれば避けて通りたいというのが実状でしょう。どうりで,一時期バブルに沸いたオーディオ真空管の流通業界にあっても人気が今一つ出なかった訳です。
私自身「日本の庶民のラジオと真空管の歴史」を主題に据えていたので,メタル管は送信管や業務管などと同様に私の興味の対象外としてきたのですが,ふと気が付いてみると手元には多くのサンプルが集まってしまいました。万有引力のせいかもしれません。中学生時代に友人からもらったものから始まり,ごみ箱から拾ったもの,秋葉原で自作ラジオ用にと買い求めたもの,さらに,コレクション用に御寄贈いただいたジャンク球や新品球など。そこで,いつものように,目の前にあるサンプルについて考古学的な見地から話を始めましょう。ただし,写真で1本づつ紹介しようとすると,中身が本当に見えないので鉄仮面の品評会になってしまいます。そこで,1品種づつ紹介する代わりに,ある程度まとめて時代毎に外観がどう変わっていったという話に始終します。
メタル管の歴史は,最近のアマチュア向けの雑誌や本でも紹介されています。
- 故宍戸公一さんの「送信管によるシングルアンプ製作集」誠文堂新光社,'92年7月,(記事はペンネーム篠田信之,6L6AB1PPアンプの製作,ラジオ技術誌'86年11月の再録),
- 大塚久さんの「クラシック・ヴァルブ」誠文堂新光社,'94年6月,(記事はMJ誌.'92年10月の再録),最近でも「真空管博物館(MJ誌'99年1月)」
- 藤室衛さんの「真空管半代記」東京文献センター,'00年9月,(記事はJARL Museum '95年2月の再録」)」,
また,インターネット上では岡田章さんが参考文献を紹介され,また自費出版された有坂さんの著書もインターネットを通じて御寄贈いただきその研究成果に触れることができました。
- 岡田章さんの真空管の標本箱の「全金属管('98年3月)」(現在未完成で参考文献だけ完備)
- 有坂英雄さんの「真空管談義」,「続真空管談義」,郁朋社,'00年12月
これらをあわせて,読んでいただけると幸いです。
なお,私が紹介するサンプルのうち,錆びてはいるが貴重な初期のものは,東京都の志田文夫さんに御寄贈いただいた米国のジャンク球大箱1箱に無造作に入っていたものです。ここに謝意を表します。
6C5 |
6J5 |
6F6 |
6H6 |
6V6 |
|
6L7 |
6N7 |
6SK7-12SK7 |
6SJ7- |
6SG7-12SG7 |
6SH7 |
6SQ7-12SQ7 |
6SR7 |
1853-Unknown |
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6AC7-1852 |
6AG7 |
6B8-12B8 |
|
12C8 |
6K8-12K8 |
1007 |
1619 |
真空容器に金属を用いた真空管は,はじめに英国でCatkin管と称する上2/3程の筒が金属製の真空管が1934年に作られ,次いで1935年に「全金属管(通称メタル管)」が,米国GEにより開発され,RCAにより発表,販売されたのが始まりです。同じ年に,米国では他の5社, Ken-Rad, National Union, Raytheon, Tung-Sol, Sylvaniaも製造に参入したとされ,やや遅れて,欧州ドイツでも1938年には独自のメタル管(Steel Valve)が作られた他,英国,旧ソ連,日本などで米国互換管や改良版が製造されました。
John W. Stokes (70 years of radio tubes and valves) を始めとする各文献には,RCAから始めに発表された10品種が紹介されています(Table 1)。当時新しく開発された品種は5Z4,6D5,6F5,6H6,6L7の5つで,他は従来知られていた球を金属管に置き換えたもの,6C5=6J7(6C6/77)の3接,6F6=42,6J7=6C6/77,6K7=6D6/78,6A8=6A7といった具合です。また,6D5はその後,発売されず試作品で終わったようです(大塚久氏,有坂英雄氏のコレクションを参照)。その後,1938年までに16種が追加されました(Table 1B)。
我が国では,米国GEと提携していた東京電気(現東芝)が,米国GE/RCAのメタル管を初期の頃輸入したらしく,同社の販売店向けの製品データシートにおいて(RCAの)全金属管の特徴,外観の写真,特性図を紹介しています。特長としては「(1)丈夫になった,(2)極めて小型,(3)シールド缶が不要,(4)シールドが完全,(5)動作が安定で使用が容易,(6)内部の電気的障害がない,(7)特殊なソケットで便利」とあります。外観を見ると,球のロゴは"RCA Cunningham" または "Cunningham RCA"の球(語順が異なる)が出ていました。最初期のものの写真です。
さて,メタル管は丈夫という触れ込みでしたが,最近になって私が感じていることは,やはり「錆に弱い」です。50年前の真空管はガラスを磨きベークライトのベースを磨けば,立派に蘇りますが,金属管だけはいただけない。真空隔壁が酸化によって侵されてしまうのでした。
1.1 Early Die Stamp -Flange type/初期の刻印付きフランジ型
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5Z4 cage(刻) 071006 [7jE] |
5Z4 RCA?(刻) 060601 [AiK] |
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鉄製筒に丸マークに6C5が刻印されている。金属筒右下端にはゲッタ突起があるがやや長方形。頭は詰め襟形。1935年-1936年頃の製品と思われる。ベース裏にはLisenced only to Extent, Indicated on Cartonの文字がある。表面は錆が多い,gm=。 |
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刻印が有ること,Cunninghamと表示されていることから,1935年製と思われる。金属筒右下端には丸い突起があり,写真ではややふくれて見える。頭のキャップに丸いつばに茶色の絶縁板がかしめてある。,gm=67。 |
写真未掲載 |
6Q7 WARDS super Airline -1936 Die Stamp(-36), Getter bump(-37), Base bottom License(-36 mid) |
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これも初期の頃に民生用として作られたと思われるRCAの周波数変換用5格子管6A8。(電気的特性は6A8-GT参照) RCA-Radiotron Cunninghamの文字が鉄製筒に刻印されている極初期の球。刻印が有ること,Cunninghamと表示されていることから,1935年製と思われる。金属筒右下端にはバーナーで外からゲッタを炙るための丸い突起があり,写真ではややふくれて見える。この突起は1937年にはなくなる。頭のキャップに丸いつばが付いているがトップグリッドの茶色の絶縁板がかしめてある。ベース裏にはLisenced only to Extent, Indicated on Cartonの文字がある。表面は赤のペイントで汚れている,gc=?。 | ||
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RCA [7jE] |
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Metal Stem with Glass Bead
初期のメタル管は電極引出線の真空封止に1本1本の引き出し線毎にガラス・ビーズを用いており,ステムは縁付きの金属皿を裏返して中央に排気管を突き刺したキノコ形です。オクタル・ベースですから電極の引出線は金属皿の周囲に8本均等に並んでおり,ガラス・ビーズは碍子のように見えます。このビーズを用いた金属ステムは1937年頃まで使われました。
Button Stem/ボタン・ステム
ガラス・ビーズを用いた金属ステムは1937年頃に8ピン一体型のガラスボタンステムに改良され排気管はガラスになったと文献にあります。ガラスステムは金属製Oリングに融着された構造です。
Flange/フランジ
さて,金属ステムの皿(あるいはガラス製ボタンステムの周囲の金属板(Header))と真空管の外囲器としての金属筒(Metal Envelope)との接合,さらに金属製ステムとオクタル・ベースとの接合ですが,金属筒の下部にはフランジがあり,またベークライト製オクタル・ベースの外周には金属製袴(スカート)がかしめてあり,真ん中に金属ステムの皿につながる金属円盤(Header Insert)を挟んで溶接することで接合してあります。このため,メタル管を横から見ると金属筒のフランジが見えます。このフランジを持った球は1939年頃まで製造されたようで,初期のシングルエンド型メタル管にも見れます。
1.2 Midle Times Print -Flange type/中期の印字-フランジ型
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6C5 GE 1937 to 1939 Rubber Stamp(36-), No Getter bump(37-), Base bottom License(36 mid to 39mid), Exposed weld seam(-41), Recessed Collar(-41.3) GEブランドの6C5です。胴部繋ぎのフランジ構造と頭の形状(詰め襟型)は古さを物語ります。RCAブランドでは頭の形状(詰め襟型)は1941年まで使用されたとあります。また,管面の文字は綺麗な黄色乃至オレンジ色のペイントで,RCAブランドの銀色とは一線を画します。管面にLicensed As Stated on Cartonの文字があり,ベース底にはありません。これはRCAでは1936年から1939年までに当たります。したがって,1936-1939年に製造されたように思えるのですが,ひとつ矛盾があります。この球はベース(フェノール)の側面に(U3)と刻印されていました。U3は1943年を示すものとも思えます。1943年までこの古い形式の球を製造したのでしょうか?
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6F5 RCA 1936 mid to 1937 Rubber Stamp(36-), Getter bump(-37), License print (36 mid-) RCA Radiotron 6F5 High-mu Triode (36)写真未掲載 Radiotronの銀プリントの6F5です。胴部繋ぎのフランジ構造と頭のキャップは古さを物語ります。頭の絶縁材料は茶色です。金属筒右下端にはへそ(ゲッタを炙るための丸い突起)もあります。製造は1937年以前でしょうか。 |
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6H6 RCA 1938 to 1940 *6H6 RCA frange 011220, Rubber Stamp(36-), No Getter bump(37-), Base bottom License(38 mid-), Dome top(38.10-), Exposed weld seam(-40) |
GEブランドの6H6です。構造は頭が平らで,胴の繋ぎはフランジ形ですが,胴部にゲッタの突起はありません。古いことは古い。銀プリントですが大分禿げており,製造コードがあったのかどうか判別できません。ベース底にはLicence ..の文字はありません。一体いつ作られたかというと,有坂さんの文献によれば,RCA製は平頭は1938年に丸形になった,銀プリント,ベース底はブランクになったのは1936-1938の間とあり,ゲッタの突起の点を除けば1937年頃と考えるのが妥当と思われます。残っている文字にも7が見えます。 Rubber Stamp(36-), No Getter bump(37-), License print (36 mid-), Flat top(-38.10) |
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6K7 1936-? KR (へそ,frange)x2 041213, Rubber Stamp(36-), Getter bump(-37), Base bottom License(-36 mid) |
6K7 1937-38 6K7 RCA (Frange U2 H) 041213, Rubber Stamp(36-), No Getter bump(37-), Print side License(36 mid-38mid), Brown wafer(-40) |
2番目の球RCA-Victor 6K7は,文字がプリントに変わり,ゲッタ用の丸突起も無くなったので1937年以降である。RCAの丸ロゴ,Victorの丸ロゴが並記され,その下にRCA Victorの文字がある。RCA Victorの表示は出荷した製品に使われた球と思われる。トップグリッドの絶縁板は茶色。ベース底にライセンス表示が無く,管名の枠の右にLisenced as Stated on Carton, Made in USAとご丁寧にプリントしてある。この表示は1939年の中頃まで使われたという。したがって,この球は1937-1939年製と考えられる。表面は錆が多いが生きている,gm=55。 |
3番目の球RCA Radiotron 6K7は,RCAの丸ロゴとRadiotronの文字, made in USAである。Radiotron表示の球は一般に市販された球であろう。RCA Victorの球と同時期(1937-1939)と思われる。ベース底にライセンス表示が無く管名枠の右にプリントしてあるのも同じ。なお,頭のキャップに丸いつばが無いので形状が違って見える。取れてしまったのか,元々無かったのかわからない。表面は錆が多いが生きている,gm=68。 [TE6= T6E=1938.Nov-Dec] |
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6L7 1936 Rubber Stamp(36-), Getter bump(-37), Base bottom License(-36 mid) |
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*6V6 unkown (旧形frange) 061001, 銀 38-40 Exposed weld seam(-40) |
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1.3 Later Print -Covered weld seam type /後期の印字・カバー溶接ステム型
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6R7 1941 Covered weld seam(41-), Brown top (-41) Raytheon 6R7 Duplex Diode Meddium-mu Triode写真未掲載 C2 (Die N) Raytheonブランドの6R7です。胴部繋ぎのフランジ構造はカバーされ見えません。頭の絶縁材料は茶色です。また,管面の文字はGE製と同様に綺麗な黄色乃至オレンジ色のペイントで,RCAブランドの銀色とは一線を画します。管面にLicensed As Stated on Cartonの文字があり,ベース底にもあります。C2は1942年を示すものでしょうか? |
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1938年にグリッド引き出し線を頭から足に配置しなおしてトップ金具を省いたシングルエンド型の新型メタル管が発表されました。2年の間に14種のメタル管が追加されましたが,そのうち9種がシングルエンド管でした。さらに,この時代,150mA系のトランスレス管も発表されました。(Table 1C)。
Metal 6.3V |
Metal 150mA |
Prototype |
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Metal 6.3V |
Metal 150mA |
Prototype |
6SF5 |
12SF5 |
6F5 |
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- |
12C8 |
|
6SJ7 |
12SJ7 |
6J7 |
|
6AG7 |
|
|
6SK7 |
12SK7 |
6K7 |
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- |
12K8 |
6K8 |
6SQ7 |
12SQ7 |
6Q7 |
|
- |
12A6 |
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1852 |
- |
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- |
12SR7 |
|
1853 |
- |
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6SA7 |
12SA7 |
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6SC7 |
12SC7 |
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下記のサンプルは全て,金属筒とベースシェルの接合部にフランジが見える旧型なので,その当時の製造と思われます。いずれも民生用です。現物はどれもまともな保存状態ではありません。字の見えない球は電球にかざして角度を変えながらうまく光る位置を見つけて,文字を判読します。まるで考古学ですね。まったく。
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RCA-Victor 6SF5(YI made in U.S.A.), the back face, /RCA Victor 6SF5の正面と裏面(ヒータ切れている)。(東京都の志田文夫さん寄贈) |
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CROSLEY? 6SK7(Y9 49- on shell), and the back face. CROSLEY? 6SK7の正面と裏面,gm=38<43でエミ減,文字がほとんど見えない。(東京都の志田文夫さん寄贈) |
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GM-Genuine Parts 6SK7?(-, 40 on shell), and the back face. /右のGM-Genuine Parts 6SK7?(正面と裏面)は真空漏れ,文字がほとんど見えない。(東京都の志田文夫さん寄贈) |
Example (2)のGM-Genuine Parts 6SK7?を金鋸で切り開いてみたところ,ステムは一体型のガラス・ボタンステムでした。ガラスステムは金属製Oリングに融着された構造です。メタル管のステムは1937年頃に8ピン一体型のガラスボタンステムに改良され排気管はガラスになったと文献にあります。 |
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GM-Genuine Parts 6SA7(U0 made in U.S.A./ 30 on shell), the back face, /GM-Genuine Parts 6SA7(正面と裏面)はヒータ・カソードショート。(東京都の志田文夫さん寄贈) [U0=1940.Jun?] |
6SA7 RCAVictor (RE2 36 Frange) 041213, 写真未掲載
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12SA7 Coronado (T1 Frange) 041213, 写真未掲載 39-40 |
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米国のメタル管は第2次大戦中は軍用に使われました。日本には進駐軍とともに大量に上陸しその後払い下げ品が市場に溢れました。
この軍用球ですが,米国陸軍(US Army)は真空管を軍用機器に使用する際には独自の名前を付けて管理していました。それがVT Numberと呼ばれる名称で,第1次大戦前後から第2次大戦前の1941年末まで使用したようです。初期の頃の真空管は陸軍が特別に作らせたもの,VT Numberしか名前を持たない真空管もあったようですが,メタル管が登場した1930年代には,真空管メーカがまずRMA(Radio Manufactures Association)/RETMA(Radio Electronics and Television Manifacturers Association)の名称制度に沿った名称を付け,軍用として採用する段になると改めて軍用の名称を付けるという具合になっていたようです。したがって,同じ球でもRMA/RETMAの名称とVT Numberの2つの名称を持っていました。VT Numberの球は軍に納めた球ですので,発注の段階で特別な仕様をつけ加えたり,受け入れ検査の基準を厳しくする(いわゆる選別球)ことによって,民生用に比べてバラツキが少ない,ノイズが少ない,故障率が低い,などの特長を有することになっているようです。戦後の高信頼管のルーツと考えたら良いでしょう。
一方,米国海軍(US Navy)は初期の頃には特別な名称制度を持っていなかったようで,1930年代後半から,RMA/RETMA名にU.S.N.とメーカ名(記号)を冠した球が出現するようです。そして,1941年以降は陸軍と海軍の共同管理球,いわゆるJAN球が登場しています。球の名前は,RMA名にJANとメーカ名を冠して表示する方式で,ご丁寧にVT Numberも並記している球があります。
U.S.A. VT-167 [6K8] (SC 278A)
ここでいうU.S.A.はUS Armyのこと,SC278Aは契約番号です。
U.S.N. CRC-12A6 (K4E) RCA (shell 63)
U.S.N.とはUS Navyのこと
JAN CRC-6J5 VT-94
JANはJoint Army Navy,CRCのCは Contract,RCはRCAの略号
メタル管のVT数字管は使用機器に登場する順番に登録されたようで,下記の表にある通り,ほぼ開発年代に従っています。これによると,同じメタル管であっても全てが軍用として使われたのではなく,開発初期の頃の球の一部,トランスレスの初期の球,それに高ミュー管など民生用に開発された初期の球は登録されていないケースが見られます。
Prototype |
Developed Year |
US Army VT Number |
US Army VT Number +RMA |
U.S.Navy Contract |
JAN Contract |
| |||||
5Z4 |
1935 |
- |
|
|
|
5W4 |
1937 |
VT97 |
|
|
|
5T4 |
1937 |
VT114 |
|
|
|
0Z4 |
1935 |
- |
|
|
|
0Y4 |
1945 |
- |
|
|
|
| |||||
6C5 |
1935 |
VT65 |
|
|
|
6D5 |
1935 |
- |
|
|
|
6F5 |
1935 |
- |
|
|
|
6J5 12J5 |
1937
|
VT94 VT135A |
VT94/6J5
|
|
6J5/VT-94
|
6X5 |
1936 |
VT126 |
|
|
|
6SF5 12SF5 |
1938 1939 |
- - |
|
|
|
| |||||
6F6 |
1935 |
VT66 |
|
|
|
6H6 12H6 |
1935 1941 |
VT90 VT214 |
|
|
|
6L6 |
1936 |
VT115 |
|
|
6L6/VT115 |
6V6 |
1937 |
VT107 |
|
|
|
12A6 |
1939 |
VT134 |
VT134/12A6 |
12A6 |
12A6/VT134 |
25A6 |
1936 |
- |
|
|
|
25L6 |
1937 |
VT201 |
|
|
|
25Z6 |
1936 |
- |
|
|
|
- |
1944 |
- |
|
6AJ6 |
|
| |||||
6J7 |
1935 |
VT91 |
|
|
|
6K7 |
1935 |
VT86 |
VT86/6K7 |
|
|
6L7 |
1935 |
VT87 |
VT87/6L7 |
|
6L7/VT87 |
6N7 |
1936 |
VT96 |
|
|
|
6Q7 |
1936 |
VT92 |
|
|
|
6R7 |
1936 |
VT88 |
|
|
|
6S7 |
1938 |
- |
|
|
|
| |||||
6SA7 12SA7 |
1938 1939 |
VT150 VT161 |
|
|
|
6SC7 12SC7 |
1938 1939 |
VT105 VT268 |
|
|
|
6SF7 12SF7 |
1941 1941 |
-* -* |
|
|
|
6SG7 12SG7 |
1941 1941 |
VT211 VT209 |
VT-209/12SG7 |
|
|
6SH7 12SH7 |
1941 1941 |
- VT288 |
|
|
- 12SH7/VT288 |
6SJ7 6SJ7Y 12SJ7 |
1938 - 1939 |
VT116 VT116B VT162 |
|
|
6SJ7/VT116
|
6SK7 12SK7 |
1938 1939 |
VT117 VT131 |
|
|
|
6SQ7 12SQ7 |
1938 1939 |
VT103 VT104 |
|
|
|
6SR7 12SR7 |
1940 1939 |
VT233 VT133 |
VT-233/6SR7
|
|
- 12SR7/VT133 |
6SS7 |
1941 |
VT199 |
|
|
|
6ST7 |
1941 |
VT205 |
|
|
|
1851 |
1938 |
- |
|
|
|
1852 6AC7/1852 6AC7 |
1938 1939
|
- -
|
|
|
6AC7/VT112 |
1853 6AB7/1853 6AB7 |
1938 1939
|
- VT176
|
|
|
|
6AG7 |
1939 |
VT247 |
|
|
6AG7/VT247 |
6AK7 |
1944 |
- |
|
|
|
| |||||
6A8 |
1935 |
- |
|
|
|
6B8 12C8 12C8 special |
1937 1939
|
VT93 VT169 VT153 |
VT-93/6B8
|
|
|
6K8 12K8 12K8 Special |
1938 1939 - |
VT167 - VT132 |
VT-167/6K8
VT-132/12K8 |
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以下で取り上げる球は全て軍用で,製造年代は1939年-1945年頃のようです。1941年以降に製造されたメタル管は全て軍用だったのではないかと思われます。金属筒とベースシェル部の接合は,シェルが覆い被さるように改められ,横から見てフランジが見えなくなりました。フランジが見える民生管は1939年頃まで製造されたことを考えると,このように改められたのはどうもこれは1940年頃のようです。さらに,6J5を始めとするシングルエンド型の球もオリジナルの姿は金属筒の頭が凸型でしたが,直管型に改められています。
球の表面にMADE IN USAとある場合は米国を示すが,単にU.S.A.と印刷されているのはU.S.Armyのこと。また,U.S.N.とあればU.S.Navyである。VTは陸軍の真空管登録番号。SCxxxAは契約番号で,S6E等は製造コードで,またシェルにある刻印, D, 65, なども製造コードです。海軍は民生品と同じRMA名を使っていました。陸軍はVT Numberで管理していましたがこれでは不便なので途中からRMA名を並記した球が登場しています。これら軍用球は黒い防錆処理塗料が厚く塗られており,一般に光沢が有りますので民生品と違って見えます。軍からメーカーへの真空管の製造依頼は1945年頃まで陸軍(VT番号のあるもの)と海軍(ないもの)は別々に発注管理していたようですが,後に述べるように1943年から共同管理する品種JANが現れました。
以下,雑多のコレクションをおめにかけます。珍しいものはありませんが,外観上の分類と年代の推定にご注目ください。
VT-131は12SK7相当,RCAオリジナルは1939年の開発。Radiotronの表示があるので,シングルエンド型メタル管の軍用としては最も早い時期のものと思われます。管名表示はVTナンバーのみです。残るVT-94/6J4とVT-87/6L7はVTナンバーとRMA名が並記されており,やや後の戦時中の製造と思われます。VT-87/6L7のトップ・グリッドの絶縁板は1940年から1941年以降の黒色です。
RCA Radiotron made in U.S.A. VT-131 Y6 (shell 45) ...12SK7, gm=74>48 [Y6=1941,Nov-Dec]
RCA U.S.A. VT-94 [6J5] S3 (shell 05), gm=115>50 [S3=1942,May-Jun]
RCA U.S.A. VT-87 [6L7] 4-5? (SC300A) (shell J?), gm=[33,42-40]>[16,16] [4-5?=195?, 4th w]
U.S.A. VT-134 12A6 (K1E) RCA (SC 278A) (shell 65) (京都府 辻野氏寄贈) [K1E=1943, Jan-Feb, OEM]
箱の情報, RCA赤箱, U.S.Army Order No. 4567 PHILA-42, Signal Corps, For Bendix Radio Corp. The Pattent Number ..., December, 1943., C.V. 525,
U.S.N. CRC 12A6 (K4E) RCA (shell 63) [K1E=1943, Jul-Aug, OEM]
箱の情報, RCA赤箱, U.S.Army Order No. 151-WFSCPD-42, Signal Corps, For Bendix Radio Corp. [5960-100-6024], 箱は球と一致していないかもしれない。
U.S.A.とは米国陸軍,U.S.N.とは米国海軍のことだったのだ。
以後紹介する球は全てRCA製なのですが,製造コードY6, S3, S5, V4E, S6E, S1E?, K1E, K4E, K6E, H2E, H4Eが気になります。Y, X, V, S, K, Hの6種が登場します。(Y, X, V, S, K, H=1941, 1940, 1945, 1942, 1943, 1944) 数字の後にもう1文字付く場合は決まってEです。(E=OEM)
6AJ6 (H2E) RCA (shell 85) (H2E=1944, Mar-Apr, OEM)
箱の情報, RCA赤箱, U.S.Navy Contract NXSS. 38686, RCA 6AJ6 ACPT April 1944
From the Left hand side, 6K8/VT-167(S6E)(RCAの発表年は1938年), 6SR7(S1E)(RCAの発表年は1940年), 6SR7/VT-233 (S5)
球の表面に記されている文字や箱の文字は,次の通り。
S6E (RCA) U.S.A. VT-167 [6K8] (SC 278A) .. shell (D) [S6E=1942,Nov-Dec, OEM]
(RCA) [SC300A] [6SR7] S1E MADE IN U.S.A. .. shell (62) (辻野氏寄贈) [S1E=1942, Jan-Feb, OEM]
S5 RCA U.S.A. VT-233 6SR7 [SC300A] ..shell ( 62) [S5=1942,Sep-Oct]
6SH7,6AG7,6J5はいずれもRMA表示のみで,VT表示が無く,さりとてJANでも無いが,塗装は他の戦時中と同世代であることを示しています。軍用とすれば海軍向けと思われます。6J5はシェルに管名が刻印されており,1945年以降のものと思われます。
RCA 6SH7 made in U.S.A. K4E (shell 89), gm=70>43 [K4E=1943,Jul-Aug, OEM]
RCA 6AG7 made in U.S.A. K4E (shell 51), gm=10-8<30 (エミ減) [K4E=1943,Jul-Aug, OEM]
RCA 6J5 made in U.S.A. V4E (shell 6J5 -V4), gm=-27<50 (エミ減) [V4E=1945,Jul-Aug, OEM]
1943年以降にJAN(Joint Army Navy)球が登場します。新規発注分を契約する作業の効率化?共同で行う必要に迫られたのでしょうか。球はVT Numberの球と同様に黒い防錆処理塗料が厚く塗られています。JAN表示の球ですが,VT名も並記されています。JAN CRCのCは Contract,RCはRCAの略号。JANの場合,RCAの丸ロゴは小さくなりました。
From the Left hand side, JAN CRC-6AG7/VT-247(K6E)(RCAの発表年は1939年), JAN CRC-6J5/VT-94(H4E)(RCAの発表年は1937年)
球の表面に記されている文字や箱の文字は,次の通り。
JAN CRC-6AG7 VT-247 MADE IN U.S.A. K6E (RCA) .. shell (51) [K6E=1943,Nov-Dec, OEM]
JAN CRC-6J5 VT-94 MADE IN U.S.A. H4E (RCA) .. shell (6J5 -H4), ...1945- [H4E=1944,Jul-Aug, OEM]
ここに写真は無いが,JAN CRC-6AG7については他のサンプルがある。
JAN CRC-6AG7 VT-247 MADE IN U.S.A. *V3E (RCA) [SC278A] .. shell (6AG7 -V3) [V3E=1945,May-Jun, OEM]
JAN CRC-6AG7 VT-247 MADE IN U.S.A. *H6E (RCA) [SC278A] .. shell (6AG7 H5-) [H6E=1944,Nov-Dec, OEM]
シェルの管名の有無により,6AC7は1945年以前, 6SJ7と6L6は1945年以降でしょうか。出力管6L6はオーディオ界では人気があってなかなか手頃なものが入手できませんでしたが,ようやく中古を他の球と十把一絡げで入手できました。しかし,哀れ,ペイントが禿げて下部は補修のためか塗りつぶされており製造コードは消えていました。しかし,皆同じ時代のもので1945年前後というところでしょう。gmはほどほどにありました。
JAN CRC-6SJ7 VT-116 made in U.S.A. V1E (shell 6SJ7 H6/), gm=66>40 [V1E=1945,Jan-Feb, OEM]
JAN CRC-6AC7 VT-112 made in U.S.A. V2E (shell -33 -V2), gm=54>30 [V2E=1945,Mar-Apr, OEM]
JAN CRC-6L6 VT-115 made in U.S.A. ---(shell 6L6 -V4), gm=37>25 [shell code -V4=V4E=1945,Jul-Aug, OEM]
1619は受信管ではなく送信管に属します。内部構造は6L6-UY807族と同じですが,クイックスタート用にカソードを2.5Vのフィラメントにしたものです。
1619の入手した2本のサンプルは,管名以外の文字が消えていて,またシェルには刻印も無いので,製造メーカや年代についての手がかりがほとんどありません。僅かに黒のペイントは他の軍用球と同世代であることを物語っていますので戦時中のものと分類しました。管名表示枠は8角形ですので,RCAのように見えます。後に入手した他の1本は管名の数字だけがあり枠はありませんでしたので,こちらは他のメーカかもしれません。
RCA製と思しき2本のうち1本はフィラメントが切れていたため,中身を見るのにちょうど良いと鋸で切ってみました。同じ図は大塚久さんの記事にも見られます。米国の戦時型真空管特集の中で1619の内部写真を掲載しています(MJ93.4)。電極のサポート金具がちょっと違います。ゲッタフラッシュの痕は丸天井部にありました。ですから電極上部にはゲッタ遮蔽用の天井マイカがあります。また,グリッドフィンは電極下部にありました。
Ken-Radの軍用メタル管です。Ken-Radブランドのメタル管は戦前の1930年代から戦時中の軍用管を経て,戦後GEの受信管部門としてのKen-RadがGEブランドに代わる1948年頃までありますが,ここに紹介するのは,開戦前から戦時中にかけてのものです。(ちなみに下記のサンプルのRCAの発表年は6K7,6L7ともに1935年,6SJ7は1938年)。
(9) Double Ended Tube; VT-86, VT-86/6K7 -SCO Pentode, JAN CKR-6L7/VT-87 -Pentagrid Mixer
4本は製造年代順に並べたつもりです。まず名称がVT-86単独のもの。次いでVT-86/6K7並記のもの。次にJAN 表示のCKR-6L7,最後にJAN CKRをそのまま削除しRMA名だけを残した文字パターンの民生用です。トップ・グリッドの絶縁板は全て黒色で1940年から1941年以降の製造。問題はトップ・グリッド絶縁板の鍔(つば)で,左のVT-86だけは完全な円周(古いタイプ),他の3つは突起が2カ所ある鍔(新しいタイプ)です。RCA製品ですと新しい鍔は1944年以降の製造ですが,Ken-radがいつから採用したかは分かりません。ここで,製造コード(W2, B3, R4)を見るとKen-radの場合は何となく末尾の数字は1942,1943,1944に見えてきます。鍔を採用したのは1943年かもしれません。(まゆつばかも)。
Ken-Rad VT-86 W2 (shell 9-), gm=66>36, ....1940-1944, (1942?) [W2=1942.Aug]
Ken-Rad VT-86/6K7 B3 (shell 9-), gm=66>36, ....1944- (1943?) [W2=1943.Feb]
JAN-CKR-6L7/Ken-Rad U.S.A. VT-87 R4 (shell 67-), gm=[40,46]>[16,16], ...1944-1945 (1944?) [R4=1944.Apr]
Ken-Rad U.S.A. 6K7 (shell 9-), gm=67>36, ...1945- (これは民生品?)
(10) Single Ended Tube; VT-117(6SK7) -RCO Pentode, 6SJ7/VT-116 -SCO Pentode
Ken-radのシングル・エンド型の球。左はVT-117のみの表示,右はJAN球です。製造コード(X2, O5)からそれぞれ1942年,1945年と思われます。
Ken-Rad made in U.S.A. VT-117 X2 (shell 49-) ...6SK7, gm=80>48, ...1940-1944 (1942?) [X2=1942.Oct]
JAN CKR-6SJ7 KEN-RAD U.S.A VT-116 O5 SC961A (shell 48-), gm=66>40, 1944-
(11) Single Ended Tube -Large; VT-96(6N7) -High mu Twin Power Triode
KEN-RAD VT-96 (U2) Made in U.S.A (shell L-) ...6N7, 1940-1944 (1942?)
VT-96のみの表示であり,製造コード(U2)から1942年製と思われます。 [U2=1942.Jul]
ここに写真は無いがJAN CKR-6AG7もある。
JAN CKR-6AG7 KEN-RAD U.S.A VT-247 B5 SC961A (shell 89), 1945? [B5=1945.Feb]
(12) With Box; 12A6 -Power Triode, VT-209/12SG7 -RCO Pentode
JAN-CKR-12A6 KEN-RAD (W4) U.S.A VT-134 SC961A (shell 72) [W4=1944.Sep]
箱の情報, 白箱, U S Army- U S Navy, Tube JAN-CKR-12A6 VT-134, Order 1461-DAY-44, Contractor. Kingston Products Coprp., Accepted September 1944 SC961A..1944年
VT-209/12SG7 KEN-RAD (D3) made in U.S.A (81-) [D3=1943.Apr]
箱の情報, 巻紙, 5960-100-6040, Electron Tube Type VT-209, 1 EA A-3/68 AT5 ...(1968.3) 戦前に作られたものを再ペイント(補修)し,新たに箱詰めしたものと思われる。(東京都の志田文夫さん寄贈)
2つのサンプルは箱に年代情報があります。CKR-12A6は製造時期も1944年とはっきりしています。やはり製造コード(W4)の末尾は1944年製でしょうか。一方のVT-209/12SG7は出荷した筒には1968年と記されていますが,VT NumberとRMAが並記してあり,大戦中とわかります。製造コード(D3)は1943年を示していそうです。実際の造りもそのように見えます。
メタル管は戦後,一部に軍用規格の球が作られた他,産業用の特別仕様の球が作られました。末尾にYやWが付くものはベースがベークライトからアンフェノールに替えられ,高周波損失を改善したものです。数字管は選別球や低雑音球があります。5693だけは電極構造が異なる超寿命の高信頼管です。
Name |
MIL |
Developed |
Prototype |
Service |
Description |
6L6Y |
|
|
6L6 |
Government End Use Only |
|
6V6Y |
|
|
6V6 |
Government End Use Only |
|
6AB7Y |
|
1946 |
6AB7 |
Government End Use Only |
|
6AC7W |
|
|
6AC7 |
Government End Use Only |
|
6AG7Y |
|
|
6AG7 |
Industrial |
|
6SA7Y 12SA7Y |
|
|
6SA7 12SA7 |
Government End Use Only |
|
6SJ7Y |
|
|
6SJ7 |
Industrial |
|
6SK7Y |
|
|
6SK7 |
Government End Use Only |
|
12SG7Y |
|
|
12SG7 |
Government End Use Only |
|
12K8Y |
|
|
12K8 |
Government End Use Only |
|
1612 |
|
(1943) |
6L7 |
Industrial/Broadcast |
Voltage expander compressor circuits |
|
1613+ |
(1943) |
6F6 |
Military? |
Select 6F6 for Transmitting |
|
1614+ |
(1946) |
6L6 |
Military? |
Select 6L6 for Transmitting |
|
1619+ |
1943 |
- |
Military? |
Direct heated Transmitting Power Tube |
1620 |
|
(1943) |
6J7 |
Industrial/Broadcast |
applications critical as to microphonics |
1621 |
- |
(1943) |
6F6 |
Industrial |
|
1622 |
- |
(1943) |
6L6 |
Industrial |
|
|
1631+ |
(1945) |
6L6 |
Military? |
12V version of 6L6 |
|
1632+ |
(1945) |
25L6 |
Military? |
12V version of 25L6 |
1634 |
- |
(1945) |
12SC7 |
Industrial |
|
|
1649+ |
|
6AC7 |
|
same as 6AC7W |
|
1655+ |
|
6SC7 |
|
Select 6SC7, both unit balance |
|
1664+ |
|
12C8Y |
|
same as 12C8Y |
5693 |
|
1948 |
6SJ7 |
Industrial or Military |
10000-hours life Special 6SJ7 |
5961* |
|
1950 |
6SA7 |
|
|
6134 |
6AC7WA |
1953 |
6AC7 |
Industrial or Military |
|
6137 |
6SK7WA |
1952 |
6SK7 |
Industrial or Military |
|
RCAの業務管は1955年の業務管カタログ(普通のマニュアルには民生用の6SB7Yしか出てない),残りの業務管はGE1975年頃のマニュアルETRM-15Pによる。開発年代のうち()はRCA Tube Handbook-3のTentetive Dataの年代。+は藤室衛氏の「真空管半代記」を参照,軍用と思われる球で戦後廃止管。
JAN CRC-6SJ7Y made in U.S.A. 2-52 (RCA) (SC177A) (shell 6SJ7 -U5), ...1952年
JAN CRC-6SJ7Y made in U.S.A. 5-26 (RCA) (shell 6SJ7 R3), ...1955年
箱の情報, 白箱, One EA. Electron Tube, RCA (RCA Vivtor Div.) Date PKD. 6-55
JAN CRC-6AC7W made in U.S.A. 56-52 (RCA) (shell 6AC7W Y5), ...1956年 (旧ロゴ)
JAN CRC-6V6-Y. 6L6と同時に入手。この球,gmはやや下り気味で,gm=79>46。錆はあるがまだ活きている。
JAN CRC-6V6-Y made in U.S.A. 2-39 (RCA) (SC471) (shell 6V6 -U5),..1952年
写真はないが次のサンプルがある。
JAN CRC-6V6 MADE-IN U.S.A. 1-43 (RCA) (shell 6V6 Z3), ... 1951
(GE) JAN CG-12SA7Y made in U.S.A. 2-18 188-5 (shell 12SA7) ...1952年
箱の情報, 白箱, One Electron Tube, JAN CG 12SA7Y, SC 495A, Contractor General Electric Co., Made in U.S.A. Acc. 12/51 ...1951年
メタル管は戦後産業用・民生用に活躍しました。サンプルは1950年から1960年にかけてのものです。下記の民生品のサンプルは,GE製が5本,RCA製は2本,Sylvania製1本,他にOEM製品を並べました。OEM製品ではGEとRCAが自動車ラジオのシェアを争い凌ぎを削っていました。
RCA New Logo Entertainment Tubes/RCAの新しいロゴの民生用管
RCAはメタル管の表面にロゴを印刷しています。戦前はRCAの飾り文字を丸で囲ったロゴを使用していましたが,1940年代後半から,右に旧ロゴを,"RCA"の文字を縦に伸ばしたロゴを左に配置し,真ん中に"Radiotron Electron Tube"と書くスタイルを採用し,1960年代末まで使用しました。印字のインクは,戦前から1959年の22週から30週くらいまで銀色を用いましたが,それ以後,赤茶色に切り替えました。1969年頃にロゴを太文字で"RCA"と表示するものに変更し,色は朱色に変えました。製造時期のコードは1950年代から1960年代末まで数字で示し,年号は1950年から1954年頃まで1桁,以後2桁で表示しました。1960年代末からはアルファベット2文字に変わりました。
All RCA Metal Tubes during 1950s with New RCA logo by Silver paint. From left, 12SQ7(009), 1620(1-48), 12SA7(-) and 6AC7(3-48). (縦長のRCA文字と丸いRCAロゴ並記)(銀色の時代)1950年から1959年まで
12SQ7 RCA, made in U.S.A. 009 (12SQ7 -06 on shell), ...1950?
1620 RCA (SC71A) made in U.S.A. (1-48) (6J7 Z4 on shell) (This is Broadcast Standard, これは放送用規格)...1951
12SA7 RCA, -, (12SA7 Z4- on shell), ...1951?
6AC7 RCA 3-48 (+6AC7 4J on shell), ...1953?
All RCA Metal Tubes during 1950s with New RCA logo by Silver paint (Continued). From left, 6AG7(56-43), 6SF5(56-52), 6AC7W(57-26), 6F5(57-35) and 6AG7(59-22). (縦長のRCA文字と丸いRCAロゴ並記)(銀色の時代)1950年から1959年まで(つづき)
6AG7 RCA 56-43 (6AG7 Y5 on shell), ...1956
6SF5 RCA 56-52 (6F5 Y3 on shell), ...1956
6AC7W RCA 57-26 (6AC7W 6Y on shell) (for Military, これは軍用規格), ...1957
6F5 RCA 57-35 (6F5 3S on shell), ...1957
6AG7 RCA 59-22 (6AG7 H2 on shell), ...1959
All RCA Metal Tubes during1960s with New RCA logo by Orange paint. From left, 6AC7W(62-48) and 6SJ7(68-04). (縦長のRCA文字と丸いRCAロゴ並記)(オレンジ色の時代)1960年代
6AC7W RCA 62-48 (6AC7W 5A U.S.A. on shell) (for Military, これは軍用規格), ...1962
6SJ7 RCA 68-04 (6SJ7 U5 U.S.A. on shell), ...1968
RCA Industrial Metal Tubes/RCAの産業用メタル管
All RCA OEM Metal Tubes, From Left, 6SH7(Hewlet Packard, 59-30), 6SJ7(EAI, 64-35) and 6AC7W(EAI, 64-35).
6SH7 (Orange) HP Hewlet Packard made in U.S.A. 59-30 274 (6SH7 H1), ...1959
6SJ7 EAI (Sky Blue) 64-35 274 (X6SJ7 J1 U.S.A.), ...1964
6AC7W EAI (Sky Blue) 64-35 274 (6AC7W N3 U.S.A.), ...1964
GEやRCAは測定器や計算機メーカに真空管を供給しました。製造会社のコード274はRCAを意味します。計測器で有名なHewlet Packardやアナログ計算機で有名だったEAIにもOEM製品を出荷しました。オシロスコープやアナログ計算機ではこれらの球は直線アンプに使われました。フィードバック付きのオペアンプの概念はこのころ確立したのではないかと思います。常に性能がでるように定期的に検査し,不良球は交換されました。アナログ計算機は出力が100Vのマシーンで,良く感電したそうです。後にトランジスタ式になったオペアンプでは10Vマシーンになり感電はなくなりました。なお,High gmの6AC7はWの付くマイカノール・ベースの特別規格品が用いられました。6SH7や6SJ7は一般品ですが,いずれもユーザーメーカにより受け入れ検査が行われています。
GE Entertainment Metal Tube/GEの民生用メタル管
All GE Metal Tubes, From Left, 6SK7Y(1-52/188-5), 6SK7(4-52/188-5), 12SK7(6-52/188-1), 12SQ7(7-17/188-5), 0Z4(60-25/188-5).
製造コードの1番目の数字(6,7,8,9,0,1,2,3,4,5)は(1946-1955)の意味。2番目の数字は製造週。次のコード188-5はGEの5番目の工場。188-1もある。ですから,1-52は1951年の第52週製造。
6SK7Y(1-52/188-5) 1951年,
6SK7(4-52/188-5) 1954年,
12SK7(6-52/188-1) 1946年,
12SQ7(7-17/188-5) 1947年,
0Z4(60-25/188-5) 1960年製造
のサンプルとなります。0Z4は自動車ラジオ用の冷陰極整流管です。6V管と12V管はともに自動車ラジオのジャンクと思われます。 (東京都の志田文夫さん寄贈)
GE Industrial Metal Tubes/GEの産業用メタル管
これは,Hewlet Packard用にGEが製造した6SH7です。製造会社のコード188-21はGEを意味します。made by General Electricと,はっきりとOEMであることを示しています。なお,6SH7は軍用として名称末尾にYやWが付く特別規格球が作られた形跡はありません。(東京都の志田文夫さん寄贈)
6SH7 (白) 60-35 188-21 (6SH7) hp Hewlett Packade, made by General Electric, N5960-116-9919, 6SH7 Electron Tube, 1EA. NOBSR-8 507, A-11-61, ...1960
OEMs (Ken-Rad, Delco/GE, Genuine Parts/RCA, Emarson)
From Left, KEN-RAD 6Q7(?3/188-5), DELCO 6SK7(9-43/188-5), F.M. CO 6SQ7(0-43/188-?), G.M. Genuine Parts 6SK7(6-39/274), Emarson 12SA7 IIPI。自動車ラジオのジャンクと思われます。(東京都の志田文夫さん寄贈)
KENRAD 6Q7(?3/188-5)は,製造コードがGEと同じですから,GEに吸収されて以降の製造となります。KENRADは1947年にGEの一部門になっており,1950年にはKENRADブランドを廃止してGEブランドを表示していますので,製造は1940年代後半,1948年頃ではないかと思われます。(KEN-RADだけはOEMではない)。
DELCO 6SK7(9-43/188-5)もGE製で1949年製造です。
F.M. CO 6SQ7(0-43/188-?)はGE製で1950年製造です。
G.M. Genuine Parts 6SK7(6-39/274)はRCA(=274)製で1946年製造です。
Emarson 12SA7(IIPI)だけは,製造メーカ,年代不詳です。エマーソンは直営の真空管工場を持っていたのでしょうか?製造コード IIPIが何を意味するのか分かりません。
写真は無いが次の自動車ラジオ用と思われるサンプルがあります。いずれもRCAが製造した1949年製です。
DELCO 6SQ7 274 9-39 MADE IN U.S.A. (6SQ7 -J4 on shell), ...1949
DELCO 6SQ7 274 9-39 MADE IN U.S.A. (6SQ7 J4- on shell), ...1949
DELCO 6SK7 274 9-39 MADE IN U.S.A. (+ 6SK7 -J4 on shell), ...1949
DELCO 6SK7 274 9-52 MADE IN U.S.A. (6SK7 -J5 on shell), ...1949
また1つだけ0Z4はRaytheonの1949年製造です。
DELCO 0Z4 280 9-52 delta MADE IN U.S.A. P (Metal envelope Z), ...1949
From Left, Sylvania 6J5 DB (6J5 4Y), 6AC7 YAA ah (6134 U.S.A.), 6SJ7 YHE bb (6SJ7)。6J5は測定器に使われていたジャンク,他はNewです。
Sylvaniaは戦後沢山のメタル管を販売しています。6J5は自社製と思われますが,シェル部の刻印(6J5 -4Y)はRCA製に似ています。印字されているDBは製造ロットを示すコードと思われますが,数字ではないので直読が困難です。(1964年でしょうか)。
6AC7はシェル部の刻印から中身は6134で,産業用または軍用です。確かにベースはマイカノール製です。軍用(MIL規格)の6AC7WA相当の球です。何故,一般のEIA名6AC7を記したのか不明です。製造はYAA ahとあり意味不明ですが,昔の8角形の管名表示枠が有りません。1970年代かもしれません。YAA ahは25.1.1/18, 1970年頃?。
6SJ7は一般用ですが,黒塗りは昔の軍用のように濃厚です。これも 1970年頃?
(参考;DB=1970,Sep, ah=1964.Sep, bb=1966.May)
6SJ7 RCA DV (6SJ7 3Y U.S.A.) ベース底に文字。(DV=1972, May)
赤白箱。管名表示してある蓋は赤と白。カートンには生産国は球に表示ありとある。
6SJ7 RCA CU (6SJ7 T6 U.S.A.) ベース底に文字無し。(CU=1970, Feb)
赤白箱。管名表示してある蓋は白。カートンには米国製とある。
1970年初頭は一番怪しげな時代の真空管。印字もそっけない。ともに米国製なのだが,性能の点では?が付く。増幅の点では検査を合格して出荷しているに違いないが,ヒーター雑音の管理が特に為されていないらしい。これは佐藤定宏氏の記事(2A3ppトランス結合AB2級パワーアンプの試作,ラジオ技術誌86.7,p.55-)の欄外に6SJ7の沢山のサンプルの写真と寸評があり,60年代と70年代のものとのできばえの比較に触れている。「新マークの(箱の)ものは比較的後期に作られたもので,1971年以降のものだが,このロットは雑音が比較的多いものがあり,製造管理が行き届かなくなって来たことをうかがわせる」とある。比較の対象が60年代の品質管理の行き届いた6SJ7Y(軍用)であったのは止むを得まい。
(以前,別のページ「Page-Jmetal. Japanese Metal Tubes/日本の金属管(メタル管)」にあったものを引っ越してきました)(2011.8.5)
参考までにメタル管の構造を紹介しておきましょう。国産メタル管は希少価値があるので解体するのは戦後の米国管です。ここでは10年程前に解体し標本箱に貼り付けておいたものを取り出してきました。6AC7のメタル・キャップは初め一番下に鋸をあてましたが切れませんでした。5mm程上ですと簡単に切れます。では内部の様子を紹介しましょう。
[YhH] Removed Base - EAI/RCA 6AC7W(EAI, 562 0056 0/ 64-35 274, N3 U.S.A.) 6AC7W(刻印は6AC7W N3 U.S.A.,管壁に水色で印刷されているのは,ブランド名EAI,562 0056 0/ 64-35 274)。274はメーカー・コードでRCAが製造したことを示している。1964年製。左は活きている球,中央はベースを剥がしたところ。ボタン型ステムで,中央に排気管が突き出ており,円周状にリード線が配置されている。ボタン・ステムは周囲に円盤型の1枚の金属板が封着されており,これにメタル管筒の裾を広げて円盤状にした部分を重ね,さらにその上から円盤状のスカート状の座金を履かせて,3枚の金属円板を圧着したものである。戦時中,日本ではこのボタン・ステムにおける金属とガラスの接合,ならびに3層の金属板の圧着の技術で苦しんだ訳である。右はベース。ガイドピン部には金属シールド板が挿入され,ピン8に接続されている。
[YhH] Inside View of 6AC7W 電極全体は2本足の櫓(やぐら)で支えられている。これは幅広い金属板で下側はメタル管壁に溶接され,上側は上部と下部マイカ板にあるシールド板に溶接されている。これらは10年の空中放置による錆が出ているので鉄製と分かる。写真で左右に見える板は縦にリブが1本ある板状プレートである。錆が出てないのでニッケル製,しかも着炭で黒化している。グリッドは写真では第3グリッドだけが見える。カソードは平型で上部マイカ板に爪で固定されている。下部シールド板から下の排気管の中に金属板が伸びており,プレート引出線だけが他の引き出し線に対してシールドされている。マイカ板は透明ではなくマグネシア塗布などの処理がされているように見える。ゲッタは見あたらないが,メタル管壁のステム部に近い場所に白くなった部分があり,もとよりここに付着していたことが分かる。
6AC7は,ハイ・ゲインのオーデイオ・アンプに使う時はヒータを電池電源で動作させろ,とRCAの1950年代のマニュアルは言っている。ヒータは単なるヘアピン型であるが,それ以上にヒータの被覆材の厚みと絶縁抵抗が問題なのだろう。