|
|
|
|
|
| ||||
|
Vertical Def. Amp Tubes(1)triode |
Vertical Def. Amp Tubes (2)Beam |
Video Amp Tubes (1) Single |
Video Amp Tubes (2) Combination |
Sound Amp Tubes |
TV Vertical Deflection Power Triodes/垂直偏向出力用3極管 | |||||
6K6-GT/ 6V6-GT/ 6W6-GT (Triode Connection/3極管接続) | |||||
| |||||
|
|
| |||
|
|
|
|
|
|
|
|
|
| ||
|
|
|
|
|
|
| |||||
|
|
|
| ||
|
|
|
|
|
|
|
|
|
| ||
|
|
|
|
|
|
|
|
| |||
|
|
|
|
|
|
TVの垂直偏向出力管の系譜には大別して2種類の球があります。ひとつは適度の直線性を持った3極管,もうひとつは出力の取れるビーム出力管です。両者は回路やブラウン管の流行とともに盛衰を繰り返したので,それぞれ独立に歴史を語るのは難しいのですが,今日ではオーデイオへの転用という興味の視点から,3極管とビーム管を別ページに分けて紹介することにしました。
戦後のTVセットにおいては,垂直偏向出力管は,欧州では伝統的に5極管が主流のようで日本に伝わった3極管はありません。そこでにここに説明する3極管は米国系か,それをルーツとして開発された日本管となります。まず初期の頃,米国では低増幅率の汎用双3極管,戦前に開発された6SN7-GT,あるいは,小型出力管6K6-GT,6V6-GT,6W6-GTの3極管接続が使われました。1952年頃にRCAから初のカラーTVが商品化されましたが,この時にはなお6SN7GTが用いられています。1955年のCESの推賞品種には純3極管では6SN7-GT, 12BH7, 12SN7-GTがあげられています。ちなみに,この球は1950年代中頃にトランスレス対応品種の6SN7-GTBに姿を変えて使われ続けました。国内では6SN7GTBは1956年に東芝,日立,NECが国産化しています。
そして,垂直偏向出力専用管が誕生しました。第1世代は単管の時代です。まず1950年頃にRCAにより6S4(μ=16, Ik=30mA, Pb=7.5W),GE?が6AH4-GT(μ=8, Ik=60mA, Pb=7.5W)を開発,1951年にはCBS/Hytronにより12A4(μ=20, Ik=30mA, Pb=5.9W),12B4(μ=6.5, Ik=30mA, Pb=5.5W)が作られました。国内ではこれらの球はしばらく需要が無く大型TVの製造がはじまる1950年代後半になって,12B4Aは1957年に東芝, NECが国産化。6S4AはNECが1961年に国産化しました。
第2世代は,再び双3極管時代を迎え,小型TV用にはRCAが1952年に12BH7を開発,国内では12BH7は1953年に東芝が国産化。また,1951年頃には大型TV用に双3極の6BL7GT,1954年頃には6BX7GTが作られました。ところが1954年に登場した新しい21インチ大型カラーTVでは新型専用水平偏向出力管6CB5とともに,6BX7GTではなく6BL7GTが用いられています。国内では,大型TVの製造は1960年代に入ってからだったので,6BX7-GTは東芝が1959年に,6BL7GTAはNECが1962年に国産化しました。次に米国では1955年頃トランスレスTV対応品種として12BH7Aが誕生しました。国内では12BH7Aは1956年に東芝が国産化し各社も製造しました。ちなみに,RCAは1955年,6SN7GTを600mA系のMT管に直して両ユニット間にシールドを挿入した6CG7を作りました。これは時代的にもはや垂直偏向出力に使用されることはなかったようですが,TVの万能管として使われました。国内では6CG7は東芝が1957年に国産化。後に経済性が優先され,1961年RCAはシールドを廃止した6FQ7も作りました。
第3世代は,便利さを追求した球の時代で,小さな発振管と大きな出力管という異なるユニットを封じ込めた複合管の登場となりました。1955年RCAは出力部に12BH7A/6S4の流れを汲む6CM7を作り,開発会社不明6CS7も誕生しました。6CS7は国内では東芝が1956年に,NECは1957年に国産化。TENも1960年頃に製造。1957年にはSylvaniaは90度用の6CY7,110度偏向用に12B4の流れを汲む10DE7を開発,カラーTV用には6CK4が開発されました。10DE7は国内では東芝, NECが1958年に国産化, また6DE7はNECが1958年に,東芝は1961年に製造。米国ではトランスレス化とともにLow-mu管が優勢になり,GT版,9T9版,Nover,Compactronと姿を変えながら作り続けられました。私が持っているサンプルに関係するものだけでも,1959年SylvaniaはMT管の10DR7,GT管の10EG7を開発。これに対抗して,GEは1960年GT管の17EA7を開発。RCAはGT管の10EM7を開発,我が国では1961-2年東芝が6EM7を国産,1060年にはSylvaniaは新しいMT管の太管9T9を発表し,6EW7を開発しました。1961年東芝が6EW7を国産,1962年に東芝が6/10/19EW7を量産, NECも6/10EW7を国産。1963年に東芝は15/20EW7を量産。また,RCAはNovarを発表,1962年RCAは6GF7を開発しています。GEはCompactronを発表,15FM7を開発しました。いずれも入れ物が違うだけで,中身は似たり寄ったりでした。1963年に東芝が6/13GF7, 6/15FM7を量産。1965年にNECは6/10/13GF7を量産。
一方,我が国独自の球も開発されました。米国と異なり貧乏でブラウン管が小型であったこともあり,1960年代初頭は6CS7の流れを汲む中増幅率の偏向出力管が望まれました。そこで,東芝は1960年に米国6S4Aのヒータ電力とパービアンスを50%UPしたミニアチュア単管の6R-A6/9R-A6を開発しました。また,同じ頃,(多分東芝によって)10DE7の出力部を取出し単管とした8R-A7が開発されましたが,需要がなく幻の球となりました。1961年に日立は中増幅率の複合管6CS7をの出力部を増強した6R-AL1/9R-AL1を開発し,各社も製造しました。さらに東芝は1961年に9R-AL1の出力部を取出し単管にした6R-A9を開発しました。また,東芝は9T9の6EW7を国産化するに当たり,中増幅率の9T9として6R-AL2/10R-AL2を開発し,需要を期待しましたがTVセットメーカは採用しなかったので,幻の球となりました。
3極出力管は,しかし1960年代半ばになると事情が一変,それまでビーム管との住み分けは余り明確でなく一長一短の特徴故に互いに存在を許し合っていたのですが,最後の超大型カラーTVの時代となりパワーが要求されるとビーム管の独壇場となり,3極管の使命は終わりました。
垂直偏向用の3極管は手頃な出力を持ち,しかも安価であるため,オーデイオ用にはもってこいの球です。しかし,使用上の注意を良く読んでお使い下さい。オーデイオに使うと歪み率が下がらない,直線性が悪いと不平不満が出ます。それもそのはず,垂直偏向管は負荷たる偏向コイルの歪みを矯正するために,わざと直線性を悪くしてあると言われています。1950年代にビーム管でない5極管の6K6-GT/6AR5も3極管接続で垂直偏向用に使われたことがありますが,直線性の良い6F6GTよりもやや劣る6K6-GTが好んで用いられた理由は,経済性だけでなく歪みの矯正により適した歪みの悪さを持っていたからだとも考えられます。オーデイオ転用には工夫が必要です。
米国では1940年代末のTV初期の頃には,5極管6K6-GT,ビーム管6V6-GT,6W6-GTが3極管接続でTVの垂直偏向出力管として使われました。
|
Eb max (V) |
Eb peak (V) |
Ec peak (-V) |
Pb Max (W) |
Ik mA |
Ik max mA |
Rg MΩ |
Eb (V) |
Eg -V |
Ib mA |
gm mA/V |
rp kΩ |
μ |
6K6 |
315 |
1200 |
250 |
7 |
25 |
75 |
2.2 |
250 |
18 |
37.5 |
2.7 |
2.5 |
6.8 |
6V6 |
350 |
1200 |
275 |
10 |
40 |
115 |
2.2 |
250 |
12.5 |
49.5 |
5.0 |
1.96 |
9.8 |
6W6 |
300 |
1200 |
250 |
7.5 |
60 |
180 |
2.2 |
225 |
30 |
22 |
3.8 |
1.6 |
6.2 |
これらの球はいずれもMT化され,早い時期から相当管として6AR5,6AQ5,50C5が知られていますが,プレート電圧などが制限されているため垂直偏向用には向かず,GT版だけが使用されました。
国内では,6V6-GTは1949年頃には最も早く国産化されたこともあり,東芝,ナナオラなどが,初期のTVに垂直偏向出力管として使用した実績もあります。しかし,6W6-GT/12W6-GTは東芝は輸出向け(保守用)に1961年に国産化したに止まり,6K6-GTはついに製造しませんでした。これらの球を一手に製造したのは,RCAと長年提携し輸出を余儀なくされた日立で,1962年のマニュアルには垂直偏向出力仕様を掲載していました。また,最近では三菱の6K6-GTが市場に出回っているので,輸出向けに生産していたことが分かります。我が国では,初期の頃はこれらの球は大きすぎて持て余し,活躍する場面が訪れないうちに専用管の時代にはいり,忘れ去られました。
|
|
|
|
|
|
6 Series Pentode/Beam Triode Connection |
|
|
|
|
|
4 Series Mid-mu |
|
|
|
|
|
4 Series Low-mu |
|
|
|
|
|
7 Series Low-mu Twin |
|
|
|
|
|
7 Series Mid-mu Dissim |
|
|
|
|
|
7 Series Low-mu Dissim |
|
|
|
|
|
|
Eh V |
Ih A |
Eb max (V) |
Eb peak (V) |
Ec peak (-V) |
Pb Max (W) |
Ik mA |
Ik max mA |
Rg MΩ |
Eb (V) |
Eg -V |
Ib mA |
rp kΩ |
gm mA/V |
μ |
| |||||||||||||||
6SN7 |
6.3 |
0.6 |
450 |
1500 |
- |
5.0 |
70 |
20 |
2.2 |
250 |
-8.0 |
9.0 |
7.7 |
2.6 |
20 |
12BH7 |
6.3 |
0.6 |
450 |
1500 |
250 |
3.5 |
70 |
20 |
|
250 |
-10.5 |
11.5 |
5.3 |
3.1 |
16.5 |
6BL7 |
6.3 |
1.5 |
500 |
2000 |
|
10 |
|
60 |
|
250 |
-9.0 |
40 |
2.15 |
7.0 |
15 |
6CG7 6FQ7 |
6.3 |
0.6 |
330 |
|
|
4.0 |
|
|
|
250 |
-8.0 |
9.0 |
7.7 |
2.6 |
20 |
| |||||||||||||||
6S4 |
6.3 |
0.6 |
500 |
2200 |
250 |
7.5 |
105 |
30 |
2.2 |
250 |
-8 |
26 |
3.6 |
4.5 |
16 |
12A4 |
6.3 |
0.6 |
450 |
1000 |
- |
5.9 |
- |
30 |
|
250 |
-9.0 |
23 |
2.5 |
8.0 |
20 |
6RA6 |
6.3 |
0.9 |
600 |
2200 |
250 |
10 |
175 |
50 |
|
250 |
-12 |
21 |
2.2 |
7.2 |
16 |
6RA9 |
6.3 |
0.6 |
600 |
2200 |
250 |
10 |
175 |
50 |
|
250 |
-10.5 |
22 |
2.5 |
6.7 |
16.5 |
| |||||||||||||||
6CM7 |
6.3 |
0.6 |
550 |
2200 |
|
6.0 |
- |
22 |
|
250 |
-8.0 |
20 |
4.1 |
4.4 |
18 |
6CS7 |
6.3 |
0.6 |
500 |
2200 |
250 |
6.5 |
105 |
30 |
|
250 |
-10.5 |
19.0 |
4.5 |
3.45 |
15.0 |
9RAL1 |
9.0 |
0.6 |
550 |
2000 |
275 |
8 |
140 |
40 |
2.2 |
250 |
-10.5 |
22 |
- |
6.7 |
16.5 |
10RAL2 |
9.7 |
0.6 |
600 |
2200 |
250 |
10 |
175 |
50 |
2.2 |
250 |
-12 |
21 |
2.22 |
7.2 |
16 |
| |||||||||||||||
6BX7 |
6.3 |
1.5 |
500 |
2000 |
250 |
10 |
180 |
60 |
2.2 |
250 |
- |
42 |
1.3 |
7.6 |
10 |
| |||||||||||||||
12B4 |
6.3 |
0.6 |
550 |
- |
250 |
5.5 |
105 |
30 |
2.2 |
150 |
-17.5 |
34 |
1.03 |
6.3 |
6.5 |
6AH4 |
6.3 |
0.75 |
500 |
|
|
7.5 |
|
|
|
250 |
-23 |
30 |
1.78 |
4.5 |
8.0 |
6CK4 |
6.3 |
1.25 |
550 |
2000 |
|
12 |
100 |
|
|
250 |
-28 |
40 |
1.2 |
5.5 |
6.6 |
8RA7 |
8.0 |
0.6 |
275 |
1500 |
- |
10 |
225 |
65 |
2.2 |
150 |
-17.5 |
42 |
- |
6.6 |
6.0 |
| |||||||||||||||
10DE7 |
9.7 |
0.6 |
275 |
1500 |
250 |
7.0 |
175 |
50 |
|
150 |
-17.5 |
35.0 |
0.925 |
6.50 |
6.0 |
6DR7 |
6.3 |
0.9 |
275 |
1500 |
|
7.0 |
|
50 |
|
150 |
-17.5 |
35.0 |
0.925 |
6.50 |
6.0 |
10EG7 |
9.7 |
0.6 |
330 |
1500 |
|
10 |
|
50 |
|
150 |
-17.5 |
45 |
0.800 |
7.5 |
6.0 |
6EM7 |
6.3 |
0.9 |
330 |
1500 |
250 |
10 |
175 |
50 |
2.2 |
150 |
-20 |
50 |
- |
7.20 |
5.4 |
6EW7 |
6.3 |
0.9 |
330 |
1500 |
250 |
10 |
175 |
50 |
2.2 |
150 |
-17.5 |
45 |
0.8 |
7.5 |
6.5 |
15FM7 |
14.8 |
0.45 |
550 |
1500 |
250 |
10 |
175 |
50 |
|
175 |
-25 |
40 |
0.92 |
6.0 |
5.5 |
6GF7A |
6.3 |
0.985 |
330 |
1500 |
250 |
11 |
175 |
50 |
|
150 |
-20 |
50 |
0.75 |
7.2 |
5.4 |
6AH4-GTは米国GE?が1950年頃に開発したテレビ用の垂直偏向出力用の低増幅率3極管です。GEのマニュアルECR-15Fによると1952年頃には,21インチのモノクロ大型ブラウン管21ALP4-Aの垂直偏向出力管として使われています。ちなみに水平偏向出力管は6BQ6-GA,ダンパー管6AX4-GT,高圧整流1B3-GTという組み合わせでした。当時の日本には無縁な球でした。
American GE 6AH4-GT (60-17) in 1960/米国GEの6AH4GT(60-17 1960年製)の側面と正面。[YiO]
ガラス管が短く首なしみたいで格好が悪い球。プレート材料は黒化艶消し。3リブ付きで,左右にカシメで接合,プレート放熱フィンは比較的大きい。グリッド支柱は銅製,ゲッタは側面に取り付けられ,充填棒2本付きの角型。新品,gm=88と110。
Top of GE 6AH4-GT (60-17) in 1960/米国GEの6AH4GT(60-17 1960年製)の上部から見た図。[YiO]
マイカ板はマグネシア塗布。上部グリッド支柱には箱型に囲った黒化放熱フィン。グリッドとプレート間には絶縁用の切り込みがある。
この頃までは箱の赤色の下の部分は黄色の混じった灰色。
Other GE 6AH4-GTs (NT) and (CY) in 1960s/1960年代のGEの6AH4GTの左は(ロットNT),右は(ロットCY)。[YiO]
ゲッタはともにドーナツ型。ロットNTの球まではカソード・スリーブのマイカ板離脱対策として,スリーブ上部を金属ベルトで留めている。ところが,ロットCYでは,これが省略されている。gm=105,89。
Top of GE 6AH4-GTs (NT) and (CY) in 1960s/GEの6AH4GT(1960年代)の上部マイカ板。左は(ロットNT),右は(ロットCY) [YiO]
12B4はCBS/Hytronが1951年に開発したミニアチュア管の垂直偏向出力用の低増幅率3極管(μ=6.5, Ik=30mA, Pb=5.5W)です。同時に中増幅率の12A4(μ=20, Ik=30mA, Pb=5.9W)も開発しています。国内では、1957年に東芝, NECが12B4Aを国産化。6S4AはNECが1961年に国産化しました。
6BX7-GTは米国で1954年頃に開発されたテレビ用の垂直偏向出力用の低増幅率双3極管です(開発者は不明)。大型のテレビ向けに大きな電力が扱える球として同じユニットを2つ封じ込めた中増幅率の双3極管6BL7-GT(μ=15, Ik=60mA, Pb=10W)が1951年頃にRCA(?)により作られました。双3極管という意味は,片側ユニットを発振に,他のユニットを出力に用いても良し,さらに出力が欲しい時には並列接続で用いるなどの芸当ができるというものでした。それを低増幅率に焼き直しゼロ・バイアス電流を増加させた一層強力な球が6BX7-GTでした。
テレビの垂直偏向出力用の双3極管は,(MT管の12BH7系,6CG7/6FQ7系を除けば),後にも先にも6BL7-GTと6BX7-GTだけで,それ以後は2つの異なるユニットを封じたデュアル3極管だけが主流になりました。特に,6BX7-GTは電力増幅ユニットを2つ封じてあるので応用範囲が広く,電源のレギュレータ管,プッシュ・プル・アンプなどにも活用されました。国内では大型テレビの開発が1960年代にずれこんだこともあり,1959年頃に東芝がようやく国産化しました。この時,東芝はオーデイオ・アンプとしての適性に着目し,出力管動作例を発表した他,これを単管とした版6G-A4を同時に作り販売したことでも有名です。
東芝の6BX7-GT。左から,1960年7月(中古,gm=76,74),1961年1月(新品,未測定),1962年頃(中古,gm=77,77)。
1960年製はベースにマツダのロゴと製造コード(07)。ガラス管の頭は丸く,ガラス管壁にToshibaのロゴと管名を印字。電極上部にさらに1枚のマイカ板があり,ゲッタ遮蔽としている。ゲッタは角型2個で2本のプレート支柱に繋がっている。電極構造は6G-A4と全く同じ。プレートは着炭型黒化プレート,マイカは半透明。ボタン・ステム。ヒータはヘアピン型。
1961年1月にはマツダのロゴが無くなる。また,ゲッタはドーナツ型1個に変更され,指向性の向上によりゲッタ遮蔽マイカ板も無くなる。
それ以降,1962年頃にはガラス管上のToshibaのロゴがベース部に移る。ガラス管の頭はまだ丸い。
東芝の6BX7-GTの頭部。左から,1960年7月,1961年1月,1962年頃。左だけにゲッタ遮蔽用マイカが見える。それ以降はドーナツ型ゲッタになる。
東芝の6BX7-GT。左から,1960年代中頃(中古,gm=58,58-),1967年?(中古,ベースに朱印(79),gm=68,69),1970年代(1つ星,新品,gm=73,73)。1960年代中頃の球はガラス頭がやや扁平となる。さらに1967年にはだいぶ扁平となる。1970年代には電極部が4mm程上になっていることが分かる。
東芝の6BX7-GT。1970年代(1つ星)モデルの正面と側面の図。
Top of Toshiba 6BX7-GT, 1970s [YiL] 東芝の6BX7-GT。1970年代(1つ星)モデルの電極上部。 2つのユニットが隣接しているため,プレート最大損失Pb=10Wだが,2ユニット合計は12Wと厳しい設計。そこで,片ユニットだけ取り出した6G-A4(Pb=13W)が作られた。6G-A4は経済性を重視し同じ材料で電極を作ったため,ガラス管のサイズの割にプレート放熱フィンが小さいから損をしている。
RCAとDu Montの6BX7-GT(ともに1959年,GE製)。側面と正面。 RCAは59EX9。プレートは着炭型?,造りは細部で東芝と異なり,プレート・フィンの端部での折り返しは無い。グリッド・フィンは箱型になっており,ゲッタ・フラッシュからカソード上部を保護している。ゲッタはドーナツ型だが,細身でまだ中身が古いのかも知れない。gm=63,67。
Du Montは新品で59-48 188-4。コード188から中身はGE製,1959年であることが分かる。造りはRCAのものと全く同じで,ガラス面の砂文字も同じだから,RCAのものも製造はGEと思われる。gm=未測定。
RCAとDu Montの6BX7-GT(ともに1959年,GE製)の頭部。側面と正面。
左より東芝の箱。1970年頃の1つ星モデル(4CF61 P1た09),1961年1月(SB-308-2DD と10)。Du Mont(1959年)。
6CK4は米国で1957年にSylvaniaにより開発されたテレビ用の垂直偏向出力用の低増幅率3極管です。
Sylvaniaの1957年当時のデータ
(6.3V,1.25A), Ebpeak2000V, Pbmax12W, Ikmax100mA
250V, -26V, 55mA, μ6.7, 1k, 6.5mA/V,
250V, -50V, 0.5mA
250V, -38V, 10mA
100V, 0V, 125mA
この球は日本では作られませんでした。最近ではオーデイオ界においてかつての日本の6G-A4に匹敵する球として有名です。良く,プレート損失が6G-A4は13W(設計中心),6CK4(設計最大)は12Wと比較されます。MJ誌(1993.2)で黒川達夫氏は設計中心と設計最大の違いがあり,1Wの差は無視できる旨述べていますが,それ以前の問題として,垂直偏向出力は正弦波で規定されるオーデイオ出力と異なり矩形波ですので,プレート損失だけを取ると正弦波の方が厳しいのですが,グリッド電流については矩形波の方が厳しく,この点から最大プレート損失も低めに制限を受けていることが考えられます。
RCAと印刷されているものの,ガラス表面の様子(波がある)から恐らくSylvaniaのOEM製品。プレート材料は黒化艶消しだが,着炭し焼き付けたような感じ。プレート・フィンは十分大きい。グリッド・フィンは黒化光沢。グリッド支柱は銅。グリッド引き出し線が2系統ある。ゲッタはやや大きいドーナツ型。マイカ板はマグネシア塗布。ヒータはヘアピン型並列2系統。gm=92,97
白黒TV垂直偏向出力用3極管。東芝1960年。垂直偏向用3極管の第1弾。トランスレス600mA管(9.5V)とトランス付き6.3V(900mA)がある。
(原型・構造・特性)
6.3V,0.9A/9.5V,0.6A,mT21-4,10-64,(K,G,NC,H,H,IC,G,NC,P)
(T60) 250V,-12V,26mA,1.75k,8.5mA/V,μ15,
設計中心/550V/10W,Ehk+100/-200Vp(+100Vdc),Ik40mA,ik140mA,+1500V/-250V,2.2M
(CES,T62)250V,-12V,21mA,2.2k,7.2mA/V,μ16,
設計最大600V/10W,Ik50mA,ik175mA,+2.2kV
参考(6S4A/RCA)
6.3V,0.6A,mT21-3,9AC,
250V,-8V,24mA,3.7k,4.5mA/V,μ16.5,550V/8.5W,Ik30mA
(6S4A/一木)
250V,-8V,26mA,3.6k,4.5mA/V,μ16,500V/7.0W,Ik30mA,ik105mA,
2.2kV/(-250V),2.2M,+250V/dc100V,-250V
原型は米国の垂直偏向出力用単3極管6S4Aで,ヒータ電力とパービアンスを50%UPしたものです。110度偏向用の中μ3極出力管として開発しました。始めに600mA管9R-A6が後に6.3V管6R-A6が作られました。東芝は,「水平偏向出力の一部を整流して+B電圧をかさあげするブースト電圧を使用すれば,12G-B7と組合わせブラウン管プレート電圧16kVまでの110度偏向トランスレスTVに対応可能」と言っています。
6R-A6の改造の要点は,110度偏向に必要な数Wの出力を得るため,中増幅率管6S4Aをそのまま大電流化することにあり,増幅率μ16を維持しながらパービアンスを50%UPしたことにより,6S4Aを1.5本並列動作させた教科書的な特性,すなわちgmが1.5倍,内部抵抗が1/1.5倍の球ができあがりました。
パービアンスの向上は原型のカソード幅の拡大とプレートの厚みをやや薄くする方向で進められたため,カソード幅,G1支柱幅ならびにプレート横幅もそれに合せて若干拡大された他,プレート厚みが約1mm程薄くなっています。プレート縦寸法,プレート・フィンの大きさ,ガラス容器は同じなので,電極外観は全体的に原型に良く似ています。ただし,プレート材料は,RCA製の6S4Aは黒化プレートなのに対して,東芝の6R-A6/9R-A6はアルミ・クラッド鉄製の灰プレートです。放熱対策の最大の違いは,6S4A系にはG1放熱フィンが無いのに対して,6R-A6/9R-A6ではG1支柱上部に比較的大きい板状放熱フィンが付けられ,プレート損失は17%UP(8.5Wから10W)している点です。また,マイカ板上のPK間の高圧時絶縁対策として,6S4Aでは端部がプレートに直接掛からない長方形のマイカ板を用いているのに対して,6R-A6/9R-A6ではマグネシア塗布の円形マイカに切込みを入れているのが異なります。
(モデル)
手元の東芝の全てのサンプルは,G1フィン付き,ヒータはスパイラル。ベース・ピン規格のpin3,pin8はNC,pin6はICですが,これらのピンは全て電極支持棒に使用されています。製造年月により異なるのはガラス管表面の管名とロゴの印字だけです。
(1)管名はハイフン付き「6R-A6」金文字,ロゴは赤茶字。
(2)管名は同じ,ロゴは白字になる。
(3)管名ハイフンなし「6RA6」金文字,ロゴに星が付く
(4)管名同じだが,うすい銀文字。ロゴ同じ。
(その後)
東芝の他NECも生産した模様。9R-A6は国産TVには9R-AL1に次いで普及したと思われる。1960年代末に米国にも輸出された。1980年後半に9R-A6ppオーディオ・アンプの記事(ラ技,奥村氏)が紹介されて以来,TV保守用の在庫品が市場に流れ頻繁に見かけるようになった。今日では逆輸入版も入手できる。オーディオ用にはμが16と高いため高圧をかけないと出力はとれない。代替管は6S4Aあたり。
(時代背景)
垂直偏向出力管には,初期の頃,7AU7,12BH7,6SN7-GTなどの中増幅率の3極管や出力をもっと欲しい場合には6AR5,6AQ5などの5極管あるいはその3極接続が使われました。その後,ブラウン管の偏向角度が70度から90度,110度に発展するとともに,米国では専用MT3極管として,中増幅率(15前後)の6S4(RCA1956年頃)と低増幅率(6.5前後)の球12B4が開発され,以後2系統のまま発展しました。国内でもまず,中μ管の系譜では6S4A(NEC1958年)やこれを複合管とした6CS7(東芝1956年)が国産化されました。一方低+B電圧で動作する低μ管の系譜では12B4A(東芝1956年),またやや遅れて複合管10DE7(東芝1958年)が国産化され,110度偏向用の大型TV用には,GT管6EM7(NEC?年),9T9管の6EW7(東芝1961年),さらにノーバル管やコンパクトロン管へと変っていきました。一方,小型TV用には,6SN7-GTをMT化しプレート損失を小さくした6CG7(東芝1957年)が一部で使われ,多極管では6AQ5の後,5/6CZ5(東芝1958年),国産6R-B11(東芝1959年)を経て6/8EM5(NEC1959年)へと移行しました。複合管には欧州の6BM8系,6GV8系,国産8RLP1などが使われました。
この中で,中μ3極管の系統は,出力を得るのに高いプレート電圧を要するという欠点があるため,大型ブラウン管が主流の米国では6S4A,6CS7以降,後継管は開発されませんでした。ところが,中μ管は感度の点で優れており,小型ブラウン管が主流の日本市場では経済的メリットがあるため,日本独自に発展することになったのです。中μの垂直偏向出力3極管は,6R-A6以降さらに3品種が日本で開発されました。
白黒TV垂直偏向出力用MT3極管。開発者不明。1960〜61年。垂直偏向用3極管の第2弾。トランスレス600mAシリーズのみ。低圧大電流型。
(原型・構造・特性)
8.0V,0.6A,mT21-,10-28,
150V,-17.5V,42mA,{0.909k},6.6mA/V,μ6.0,275V/10W
(10DE7)9.7V,0.6A,
150V,-17.5V,35mA,0.925k,6.5mA/V,μ6.0,275V/7W
(6EW7)6.3V,0.9A,
150V,-17.5V,45mA,0.8k, 7.5mA/V,μ6.0,330V/10W
8R-A7は110度偏向TVの垂直偏向出力用に開発した低μ3極管です。原型は米国の3極複合管6/10DE7の出力部(低μ管12B4Aの系譜,μ6)で,これを独立させ単独管にした日本独自の球です。ユニットの独立により放熱が改善されプレート損失を3W大きくできましたが,他の最大定格はほぼ同じです。このクラスの低μ管は,後に米国系TVの主流になり数々の品種が開発され,国内でも最大定格を引き上げたネオノーバル(9T9)6EW7やGT管6EM7,コンパクトロン管15FM7,ノーバル管10GF7Aなどが次々と国産化され使用されました。高μ管は感度の点で有利なことから国内では需要が多く日本独自の球が開発されましたが,大型ブラウン管に向いた低μ管の需要はもっぱら輸出用に限られたため,米国との互換性を考えるとこれ以上日本独自に設計する必要がなくなり,8R-A7が最初で最後の球となりました。
(その後)
8R-A7の開発メーカは特定できていません。少なくとも9R-A6と同時期に開発されJIS/CES登録されたことは確かです。しかし,国内は中μ管が主流になり,海外市場にはJIS名管はマイナーであったため需要が無く,結局市販しなかったものと思われます。
白黒TV垂直偏向出力用3極MT管。東芝1962年。垂直偏向用3極管の第5弾。6.3Vおよびトランスレス600mAと450mAに対応。
(原型・構造・特性)
6.3V,0.6A,mT21-3,10-48(K,G,NC,H,H,IC,G,IC,P),
250V,-10.5V,22mA,2.5k,6.7mA/V,μ16.5,
設計最大600V/10W,Ik50mA,ik175mA,2.2kV,2.2M,+/-250V,
(参考)
(6R-AL1)6.3V,0.86A,mT21-4,10-25,250V,-10.5V,24mA,2.34k,7.5mA/V,μ17.5,
設計最大500V/8W,Ik40mA,ik140mA,2kV,2.2M,-275V
(CES) 250V,-10.5V,22mA,2.46k,6.7mA/V,μ16.5
(6R-A6) 6.3V,0.9A, mT21-3,10-64,
(T60) 250V,-12V,26mA,1.75k,8.5mA/V,μ15
(CES,T62) 250V,-12V,21mA,2.2k, 7.2mA/V,μ16
設計中心,550V/10W,Ik40mA,ik140mA,1.5kV
設計最大,600V/10W,Ik50mA,ik175mA,2.2kV
原型は1961年に日立が開発した6/9R-AL1の出力ユニット(米国6CS7の50%UP管)で,これを単管としたものと考えられます。ただし,ヒータ電力がやや小さくなっており(6.3V,0.72A(推定)に対し0.6A),1品種で6.3Vと600mA系に対応できる特徴があります。特性は6/9R-AL1にほぼ同じ(詳細は6/9R-AL1参照)ですが,資料により若干の違いも見られます。ヒータ電力の違いは現在のところ,説明できていません。
最大定格は単管にしたことにより改善され,最大プレート損失は8Wから10Wに,またプレート最大電圧も500Vから600VにUPされました。
先に開発した6/9R-A6(米国6S4Aの50%UP管)と比較すると,増幅率μは15〜16に対し16.5とほぼ同じで,また最大定格も同じですが,ヒータ電力が2/3に削減されているため,カソードがやや小型化し,gmは7.2〜8.5mA/Vに対し6.7mA/Vで7〜21%減,内部抵抗は2.2k〜1.75kに対し2.5kで30%〜12%増です。まとめると,感度はやや落ちますが省電力型となっています。
(モデル)
手持ちのサンプルは東芝だけです。これによると,(6.3V系の)ヒータはストレートです。ゲッタ・リングは6/9R-A6系より一周り大型で排気が改善されてます。また放熱対策としては,G1支柱は6R-AL1系に比べて太く,G1フィンは6R-A6系の灰フィンに対し放熱の良い黒化フィンが使われ,プレートのかしめも6R-A6系4箇所から8箇所に改善されています。防振対策として,頂部のマイカ板にはカソード振動を抑えるバネマイカが使われてます。なお,ベース・ピン配置は番号(10-48)が6R-A6系(10-64)と異なりますが,違いは3本の遊休ピン(3,6,8)の定義だけです(NCは6R-A6系はpin6,6R-A9系はpin3で,他はIC)。これらの遊休ピンは,手元のサンプルではpin2(NC)とpin(IC)にマイカ板に鳩目で繋がった電極支持棒が接続され,pin8(IC)は無接続となっています。
(その後)
東芝の他,NECや松下(1968年)も製造に参加しました。開発が9R-AL1と同時期で性能も競合するため国内ではそれほど普及しませんでした。しかし,1960年代後半に米国に輸出されたこともあり,今日,逆輸入品が手に入るし,また国内市場にもときどき姿を現します。
白黒TV垂直偏向(発振・出力)用の非対称双3極複合MT管。日立1961年。トランス付き6.3Vとトランスレス600mAに対応。12G-B3と組合わせて14kVまでの高圧パルスに対応。
(原型・構造・特性)
6.3V,0.86A/9.0V,0.6A,mT21-4,10-25(2P,2G,2G,H,H,1P,1G,1K,2K)
(CES/日立)(A)250V,-10.5V,22mA,2.46k,6.7mA/V,μ16.5;100V,0V,50mA
設計最大 ;500V/8W,40mA/140mA,2.2M,+2kV,Eg-275V,
(東芝) (A)250V,-10.5V,24mA,2.34k,7.5mA/V,μ17.5;
100V,0V,52mA/250V,-17.5V,1mA/400V,-28V,1mA
;500V/8W,40mA/140mA,2.2M,+2kV,Eg-275V,
(L)250V,-11V,5.5mA,8.75k,2mA/V,μ17.5,
;330V/1.5W,22mA/77mA
参考(6CS7)6.3V,0.6A,
(A)250V,-10.5V,19mA,4.5mA/V,3.45k,μ15.5,250V,-22V,50μA,3.0pF,0.5pF,2.6pF
;500V/6.5W,30mA/105mA,2.2M,+2.2kV,Eg-250V,Ek+/-200V
(L)250V,-8.5V,10.5mA,2.2mA/V,7.7k,μ17,250V,-24V,10μA,1.8pF,0.5pF,2.6pF
;500V/1.25W,20mA/70mA,2.2M,Eg-400V
(10DE7)9.7V,0.6A,150V,-17.5V,35mA,0.925k,6.5mA/V,μ6.0,275V/7W
9R-AL1は14〜17インチ程度の110度偏向TVの垂直偏向発振・出力用に日立が開発した中増幅率3極複合管です。原型は米国6DE7および6CS7で,電圧増幅・発振部のユニットは6/10DE7に同じ,出力部は6/10DE7の低増幅率出力ユニットを6CS7の中増幅率出力ユニットの特性にしてパービアンスを50%UPしたものとなっています。大型ブラウン管が主流の米国では,110度偏向用垂直出力管は低増幅率3極管が主流になり10DE7(600mA系)や6DE7(6.3V系)が開発されましたが,国内では10DE7は東芝が1958年にまた6DE7は1961年に国産化していました。一方,中増幅率管はブースト電圧を利用して高電圧動作させないと出力が得られないため米国では嫌われましたが,小型ブラウン管が主流の日本ではむしろ感度の良さが買われて人気があり,従来品種の110度偏向用が望まれていたのです。
出力部の電極構造ですが,プレート厚み(PK間)は6/10DE7よりもやや薄く6CS7(μ15.5)と同じ寸法になっています。プレート縦横寸法は6CS7(8mmX20mm,フィンは6mmX20mm2枚)がよりも大きく6/10DE7(12mmX25mm,フィンは7mmX25mm2枚)と同じです。最大プレート損失は6/10DE7系(7W)に対し8Wです。ヒータ電流は6CS7(電圧部は12AU7片ユニット相当なので,出力部は6.3V,0.45A)から(6.3V,0.71A,電圧部は0.15A程度)と約1.5倍で,パービアンスが50%UPしています。このため,ゼロ・バイアス電流が1.5倍になった他,gmが1.5倍,rpが1/1.5倍程度に改善されました。この特性は,先に開発された中μ系の単管6/9R-A6と比較すると,μはほぼ同じですがgmがやや低く,また最大定格も概ね20%低くなっています。また,出力部のユニットは同時期に東芝により単独管化され,最大定格を概ね20%UPした6/9R-A9(μ15)が発表されました。
(モデル)
東芝,NEC(新日電),日立,双葉のサンプルがあります。東芝は出力部プレートのかしめが4点で,6R-A9(8点)と比べるとラフな作りである。NEC(新日電)は8点となっている。G1フィンの無いモデル(NEC)もあります。
(その後)
日立の他,この球はNEC(1961),東芝(1961),双葉など各社で一斉に生産され,特に9V管は国産TVには最も多く使われました。松下だけは1968年保守市場を狙って他社の球を作り始め9R-AL1も生産しました。今日では多量のストックが市場に姿を現すことはありませんが,この球はTV以外に用途がないため,ときどき店先に埋もれているのを見かけます。オーディオに流用するには,他の中μ管と同様に高圧をかけないと出力はとれません。
白黒TV垂直偏向用の非対称双3極複合9T9管。開発者東芝1961年。垂直偏向用3極管の第4弾。垂直発振用の電圧増幅3極管と偏向出力用電力増幅3極管の2ユニットから成る。トランス付き6.3Vとトランスレス600mAに対応。
(原型・構造・特性)
6.3V,0.9A/9.7V,0.6A,9T29-?,10-25
(A)250V,-12V,21mA,2.22k,7.2mA/V,μ16,600V/10W,Ik50mA
(L)250V,-11V,5.5mA,8.75k,2mA/V,μ17.5,330V/1.5W
東芝では米国の低μ型9T9管6EW7の国産化と同時に開発した。電圧増幅部は6/10EW7や6/9R-AL1などと同じユニットで,出力部は前年(1960年)に発表された単管6/9R-A6(μ16)と同等である(初期に発表されたパラメータは全く同じ)。9R-AL1は6R-A9のユニットを複合管化しているため最大プレート損失などに制限があったのに比較して,6/10R-AL2は外囲器に9T9(T29バルブ)を採用しているので,6R-A6の性能がそのまま生かせるという特徴がある。ちなみに試作番号はM3385。東芝では同時期には水平偏向管12G-B3のマグノーバル化が図られ12B-B14(M3383)が誕生し,垂直偏向管に関しては9T9の採用が検討され,「9R-AL1でプレート損失8Wができているが,発振部を別にすれば10Wの単一管ができている以上,この性能での複合管の要望が出るのは当然のこと」として開発が進められた。
(その後)
東芝で開発生産されたが,高μ管の時代は9R-AL1で終わり,以後低μ管の6EW7系がTV製造メーカーに採用され,活路は開けなかった。あちこちで紹介されているが市販されずに終わったようである。今日入手はまず不可能?。オーディオ用にはやはりμが16とやや高いため高圧をかけないと出力はとれないが,少なくとも6/9R-AL1より高圧がかけられる点では有利である。