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UY-807A, FZ-064A |
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P112, |
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Introduction/前書き
私は真空管の歴史調べとコレクションを趣味としてはいますが,ラジオやテレビなど一般の民生用受信管がその守備範囲と心得ており,これまで幾度かの誘惑にもめげず送信管には手を染めまいと思ってきました。送信管のような業務管についてはその開発の経緯は数多くのプロフェッショナルの方々が書き物にして残されているのが普通ですし,コレクションなどといっても大変高価で手が出ないからです。「小型」送信管もその意味では例外では無く,アマチュア無線関係では多くの先駆者達が記録を残し,また今日でも記録の編纂や博物館の整備を行っています。ですから,私などの出る幕は無いものと思っていました。ところが,超有名な球UY-807や6146がいったいいつ頃誕生し,どのように発展したのか?などについてそこら辺の本を調べても何も書いていないし,現にアマチュア無線を長年やってきた人々がご存じないのが普通なのです。てな訳で,今回は例外として「小型」送信管の特集を組むことにしました。
古今東西,受信管といえば広く普及させるために同じ物ばかり多量に安く作るのがいわば使命であったから考え無しにコピー製品の乱造が大流行,はじめに誰が作ったのかを知る由もないのに対して,送信管はその正反対にあった。ほとんどが業務用として作られで,特に大出力放送機の送信管などは1点豪華主義の最たるものであったから,各社とも威信をかけて精力を結集して作ったものばかりであり,また新しい球ができる度に論文や記録を残している。いまさらその歴史を語ろうにも馴染みの無い話ばかりで我々にとっては余り面白味はない。またサンプルを集めようにも1個1個が高価だし,漬け物石以上の難物ときては置場所にも困る。そんな中で,小型の送信管だけは,業務用ではあっても自動車,船舶,鉄道,飛行機などの移動通信に利用されたため大量に出回り,各社が同じ物を製造した。また日本はともかく,米国では1930年代にはアマチュア無線は歴とした送信管消費分野の1つに数えられており,アマチュア向けの品種も開発され製造されていたことには,いまさらながら驚かざるを得ない。日本では1960年代になりはじめてそのような品種が開発された。したがって,小型送信管の歴史は,一般の受信管と同様に,曖昧もことした部分があり,ここで改めて振り返ってみるのも一興かと思う。
最近はアマチュア無線とは別に,真空管オーデイオ・アンプの分野で,送信管が見直され,高価で流通している。このうち,米国球は日本人に古くから影響を与え,また馴染みがある。Western Electricはオーデイオでは良く研究されているし,欧州管は格好の良さにも定評があるが馴染みがないの除外するとしても,大塚久氏の著書クラシック・ヴァルブでは,RCA系として803, 2E22, 826, 832A, 829B, 815/VT287, 2E26, 6850, 6360/QQE03/12, 6146A, 5A6が取り上げられている。さらに,大塚久氏のオーデイオ用真空管では211とか845,811Aが取り上げられている。また,ロシア管が輸入される今日ではロシアの3C33CB,Gy50は有名である。
RCA 1937年。前年の1936年に発表されたメタル管6L6をベースにガラス管トップ・プレートとした送信管。廉価な球として戦後1960年代まで一世を風靡した。MaxFreq.60MHzだが,プレート入力を抑えれば125MHzの使用も可能との資料がある。実質的には50MHzが限度である。
UY-807 Family
UY-807の一族は数が多い。我が国で知られているだけでも次の物がある。6.3V族では戦前はバンタムステム/GT管の軍用UY-807A, 戦後は米国5933準拠の電電公社用2B33, また最近になって目にした通信仕様で強制空冷用と思しきUY-807R, またTV用にUY-807Hがある。12.6V管では戦前の米国産で戦後進駐軍とともに入ってきた1625/VT136, 戦前の日本軍のUY-807B, 戦後のPT-1,戦前の軍用航空機用トップ金具なしのUY-807SR(FZ-064A)。
東芝1941年。UY-807のバンタム・ステム,T38ガラス管版。1956年になってもUY-807A, UY-807B(12V版)を掲載。
5933はTX_Tubeに特集している国産2B33の原型でUY-807のストレートガラス版であるが,ここに紹介する5933WAはその高信頼管で軍用版。
本サンプル5933WAは電極が箱型であり,807系よりも3D21Bに似ている。ただし,ベース部はガラスに絞りが無くそのかわりジャンボシェルを用いている。ベースに茶色のマイカノールを使用している辺りがWAを付けた由縁か。製造メーカのPhilips ECGはSylvaniaの末裔である。さすが1983年製だけあって,ゲッタはドーナツ型2個。天井にはプレート引き出し線が来るため,天井のフラッシュではゲッタ遮蔽板が上部にある。
5933はUY-807をボタンステムとしT管に詰め込み縦寸を短くしたもの米国1952年頃。5933WAはその高信頼管。1950年代末から1960年代中頃にかけて日本のアマチュアは高価な6146に代わり安価に入手できる中古の5933を用いるのが流行った。今日では新品の5933Wが比較的安価に店頭で入手できる。残念ながらサンプルはありません。
2B33は日本で開発した米国5933互換管(相当管)。NECがECL(NTT電気通信研究所)の依頼で1957年に開発。 東芝も1960年代に製造。5933はUY-807をボタンステムとしT管に詰め込み縦寸を短くしたものだが,2B33はUY807との互換性を考慮し,縦寸をUY-807と同じに取った。このため,ステム・リード線の長さはUY807並である。5933にはむしろ戦時中に作っていた東芝のUY807Aの方が近い。SSBでは6146よりも出力の点で劣るが歪みの点で優れているらしい。
NEC 2B33 (P2 192, 1966) and (407, in 1969?)
左は(407, 1967年頃? Left(P2 192, 1966年製), 右は(407, 1969年頃? 文字が消えてしまったので黒マジックで手書きしてある)。
ともにドーナツ・ゲッタ2個。その他はUY-807の造りに準ずるが,ベースはボタン・ステム。ただし,中央に排気ダクトが残っており,UY-807Aのようにベース中央に穴がある訳ではないので,その分,ベース筒は長くならざるを得ない。ステムからベース・ピンまでの引き出し線は実に長いのである。左は1970年代後半に,また右は1960年代後半に入手したもの。ともに中古。左gm=102>48, 右gm=99>48。ヒータを通電しても音はしないが,球を振ると少しガチャガチャ音がする。
ただし,球と無関係に箱だけコレクターから譲ってもらった。左は鉄道関係の制御器の保守に関係していたらしい。
1625は米国でUY-807の12.6V版で,ベース・ピン配置が異なる。戦時中作られた軍用のVTナンバーにVT136と登録され,UT-1625/VT136と表示されていることもある。1950年代末に東芝が国産化し製造していた。
ともにWE製のRCAブランド。ガラス管壁に1625のマーク,マイカノール・ベースにRCAの旧ロゴとU.S.A. VT-136 S.C.300A。戦後民生用807よりも良くできている。プレートはカーボン・コート,タイトスペーサによりマイカ板から浮かせて取り付けてある。マイカ板はマグネシア塗布。電極は上部マイカを介してガラス管壁に支持されるが,右の1941年モデルは2枚の長方形サイドマイカ板で固定しているのに対し,左の1942年モデルは4本の金属板バネで固定している。ゲッタはともに2本の充填棒を取り付けた角型2個である。ベースにはガイド・ボス(バヨネット・ピン)が出ている。
Upper; U.S. Army Signal Corps Tube VT-136 Order No. 1509-NY-41 Date 11-1-41 Western Electric Company (SC300Aゴム印),
Lower; U.S. Army Signal Corps Tube VT-136 Order No. 293-Phila-42 Western Electric Company (SC300A)
数年前,秋葉原で中古として2本だけ購入。500円。「本当に中古?」と念をおしたが。売れていなかった。数週間後に訪れたときにはもうなかった。
UY-807Bは日本で戦時中に作られたUYベースの球で,UY-807Aの12.0V版で外形は同じT38ガラス管。
UY-807SAはUY-807BのUZベース・シングル・エンド版(トッププレートを止めてUZ形式の足にしたもの)。FZ-064Aはその海軍での別名である。写真は軍用無線機の項にある。
PT-1は川西機械/神戸工業TEN?の開発による戦後の球で1625のベース・ピン配置をUZとしたもの(と想像している)。
ゲッタは皿型2個。マイカ板は透明で無処理。ゲッタ膜にあぶりあと。中古,未計測。PT-1の資料が無く探している。
2C22/7193はいちおう送信用3極管。2C22は1945年頃の開発(あるいは登録)。数字管7193はEIA登録順でいくとかなり後期(1960年頃)だが,この番号は1940年代に付けたのではないかと思われる。6J5相当管であるがグリッドとプレート引き出し線が最短になるよう頭にもってきて高周波向きに改良した送信管。トップ・キャップを2つ付けているので小鬼と呼ばれる? 電極間容量のうちCoutが0.7pFと小さい。何に使ったかは不明。
6.3V, 0.3A Cgp3.6pF, Cin2.2pF, Cout0.7pF
(A1 class) 300V, -10.5V, 11mA, rp6.6k, 3.0mA/V, mu20
軍用。バンタム・ステム,下部に小型角ゲッタ。中古。未計測。宇多弘氏寄贈。
日本無線が作った送信管。戦後,1946-1947にJRCが開発した球と判明(H23.8.7)。C級電信,電話用5極管。短波用。
酸化物陰極。12.0V/0.75A, Ebmax500V, Esgmax200V, Pinmax40W, Pb12W,
Eb450V, Esg200V, Eg3=0V, Eg1=-90V, Ib50mA, Pg=0.27W, Po12W, gm2.0mA/V, mu4.5, fmax=30MHz
(1964, 新版無線工学ハンドブック,オーム社,調べ)
この球はHytron(後にCBSに吸収)が戦時中?(1942-3年頃?)に開発した即時加熱型(直熱)のビーム4極管。高周波増幅,発振,周波数変調,A, AB1, AB2変調など多目的のシールド型4極管。 完全に高周波をシールドしているので60MHzで運用しても中和が不要とある。1945年頃$3.00であった。
6.3V, 0.8A, Ebmax450Vdc, Ibmax63mAdc, Esgmax250Vdc, Egmax6mA, Pbmax10W(CCS), mu75, gm2.6mA/V
Cgp0.12pF, Cin 9.5pF, Cout 7.4pF
球の性格はどうも2E24クラスらしいが,こちらの方がフィラメントが大きく,スクリーンの最大定格も大きい。しかし,電極間容量も大きい。最近米国の戦後一時期出回った球が日本に輸入され,秋葉原に出てきた。
タイト・ベースに錨のマーク。カーボン・コート・プレート。電極はマイカ板に直接乗せられており,マイカ板も無処理であるから,あまり無理な高熱負荷運転はできない。ゲッタは何と桶(柄杓)型。秋葉原で購入。未計測。
U.S. Army U.S.Navy JAN-65, Contracted No. NXSR-33814, Accepted June, 1944, Hytron Corp., Salem, Mass., U.S.A.
RCA, 1946年。100MHz用送信管の広告(1946.2)に初めて現れ,その開発は1945年頃と思われる。被覆フィラメントを採用し,2秒以下で動作温度に達する即時加熱形なので緊急待機の用途に使われた。傍熱形の2E26と同時に開発され,電気的特性は2E26に準じる。定価$3.50だった。2E26より少し高い。我が国では2E24は2E26より大分遅れて1956年に東芝が国産化。NECは1964頃まではマニュアルに掲載されていないが,その後製品が出ている。
RCA, 1946年。100MHz用送信管の広告(1946.2)に初めて現れ,その開発は1945年頃と思われる。ゆっくり加熱する傍熱形,FM送信機に適する。1940年に発表されたオクタル・ベースの双ビーム管815の1ユニットを独立させた球といわれている。名称2E26は戦後一時期採用された名称制度に従ったもので,2は不明,Eは5本足,26は登録順番号を意味すると思われる。その後,(軍用・産業用)小型出力管はEIA名の4桁数字管になった。MaxFreqが832Aの200MHzに比べてやや小さく125MHz。MaxFreq.は815と同じ。6146系で有名となり真空管時代の最後まで使われたオクタル・ベースの小型ビーム送信管は,使用可能周波数の上限が125MHzで,このスタイルは2E26により初めて確立された。RCA 1946.2,価格は815が$4.50(翌年の実売価格は$2.25)に対して$3.20(実売価格不明)だった。また832A(実売価格は$2.25)に比べ約1/4。144MHzでは相当入力を落とさねばらなないが,容易に使え安価。50MHzだと2倍調波のスプリアス低減を除けば832Aを使うメリットはない。6146が出るまではVHFの定番だった。
2E26は米国では1949年にGEがGL-2E26として広告している。我が国では戦後,米国球を一斉に国産化しはじめたが,2E26は車載移動無線用として重要度が高く,比較的早い1950年(GEの広告の翌年)に東芝が国産化した。NECも後に製造している。
(45 406, グリッド遮蔽箱上青インク)。下部ゲッタ,下部マイカ板の下にゲッタ遮蔽金属円板あり。gm=94/khショート。ゲッタやや退化。やや黒色の光沢ありプレート。ゴミ箱からのひろいもの。
その後米国では,RCAが1957年4月に12.6V仕様の6893を発表している。
VHFポータブル・トランシーバの送信用ビーム出力管。国内では東芝が1954年頃国産化。
DH 1.25V/2.5V, 0.33A/0.165A, T-18
Cgp=0.16pF, Cin4.5pF, Cout7.5pF
Ebmax150Vdc, Esgmax135Vdc, Egmax-75Vdc, Ibmax25mAdc, Isgmax=1.5mAdc, Pbmax3W, Psgmax1.1W
動作例100MHz; 90V, 90V, Rg45k, eg35Vp, Ib15mA, Isg4.3mA, Po0.5Wmin
小さいけれど電極構造は6146などと同じ形をしている。灰プレート,ドーナツ・ゲッタ(天井マイカなし)。電極上部,下部のマイカ板上にグリッド支柱を囲う黒色のシールド箱あり。5960-752-5996 One EA Electron Tube USA 3B4WA Order No. 19077-PP-63-B1-B1, Date Packed 2-63。Yahooオークションで入手。未計測。
ドイツ製は頭に3B4,下に(T)の標記あり。黒化プレート,角ゲッタ,天井マイカ付きで1950年代製と思われる。オランダ製は灰プレート,小型ドーナツ・ゲッタ天井マイカ付きで1960年代と思われる。ガラス表面は全て防湿処理をしていると思われ,くすんでいる。秋葉原で100円で入手。未計測。
Box of Haltron CV2240 (made in Holland) 箱。紙は風化し少々痛んでいる。