|
|
|
|
| |||
|
|
|
|
|
| ||
|
|
|
|
|
J(189) Kobe-Kogyo TEN Jeuel-Star DR-2S5 12GTE in 1951/神戸工業テンジュエルスター ('04.1.27), ('04.3.27) |
神戸工業テンが1951年頃に作ったオールウェーブ型トランスレスGT管ラジオ。我が国で米国互換型のGT管を製造し始めた時期のラジオで,また短波放送が我が国でも開始された時期でもある。GT管のコンバーター(6SA7)は旧来のST管(6W-C5)に比べて足が短いので短波帯の性能が優れているといわれ,ラジオメーカーは短波付きというとGT管を採用した。神戸工業テンは真先に国産したメーカーの1つで,本機は自社製の真空管を使用している。逆に言えば,この初期の神戸工業テンのトランスレスGT管が欲しくて入手したラジオである。本機は最近中身が整備されたものを入手した。前オーナーから,音量を絞ると歪むということが報告されている。
Back View, Tubes are, from the left hand side, TEN 12SA7-GT(A3P), Toshiba-Matsuda 12SK7-GT, TEN 12SQ7-GT (A4R), TEN 35L6-GT (A4Q) and Toshiba-Matsuda 35Z5-GT.
真空管は左よりTEN 12SA7-GT(A3P), Toshiba-Matsuda 12SK7-GT, TEN 12SQ7-GT (A4R), TEN 35L6-GT (A4Q), Toshiba-Matsuda 35Z5-GTである。テン製の3本はオリジナルでともに1951年製である。マツダ製の2本は後に取り替えられた物と分かる。
バンドスイッチを切り替えるとパイロットランプが切り替わりM.C./K.C.の点灯も切り替わる。本機はオールウェーブ型といってもBC帯とSW帯の2バンドの簡易なものである。ただし,後の日本標準の短波付き2バンドラジオのSW帯は3.9-12MHzに設定されたのに対して,本機はいきなり6-17MHzと高い側をカバーしており,GT管を採用した意気込みが感じられる設計である。
本機はトランスレスとは言っても,我が国では米国に比べてAC電圧が低いので,オートトランスを使っている。また,コンデンサ類のうち,ケミコンやフィルムコンなど新しいものが見えるのはごく最近の修理の痕跡である。
アンテナコイルはBC-SW同軸構造で内部にはコアが1つだけ入っており下部から調整する。コイル左側にはBC-SWそれぞれトリマーコンデンサが配置されている。
局部発振用コイルもアンテナコイルと同様にBC-SW同軸構造で内部にはコアが1つだけ入っておりシャーシ脇から調整する。コイル側面にはBC-SWそれぞれトリマーコンデンサが配置されている。
シャーシ上面に出力用トランスが配置されている。スイッチ付き音声ボリュームは新品に交換されているが,涙ぐましいことにシャフトが短いので,最近Webで紹介されているアルミパイプによる連結方法がとられている。
回路図を調べたが,内部はオリジナルの線が切断され分からなくなっている部分がある。前オーナーから,音量を絞ると歪むということが報告されているが,検波用2極管の1つはIF管グリッドに直接配線されており,何かおかしい。
双2極管の使い方は常識的には2つ並列,または片側接地である。まれに,片側を音声検波,他方をAVC用に使う。すなわち,遅延型のD-AVCがある。この例に三菱電機のHiFiラジオ5H-670を見てみよう。AVC用のIF入力は音声用2極管と同じ場所から50pFを介して取る。6AV6のカソードは2kohmを介して接地し,2極にはDCバイアスがかかる。AVC用2極は1Mohmで接地,2Mohmを介してIFTのAVC側に供給,時定数はIFTのAVC側で接地した0.05uFと2Mohmで決まる。AVC用2極の入力電圧はDCバイアス分小さくなって,AVCのかかり過ぎが防止できると,検波歪みが抑えられる。ただし,結合場所は,IFTの1次側のプレートから100pFを介して取る場合もある。
さて,本機では12SQ7-GTのカソードは直接接地である。したがって,2極のうち5番ピンは接地すべきところ,誤ってAVCの2Mohmラインに接続してしまったものと推定される。